2019.11.11 “THE BASS DAY LIVE 2019” ライブレポート(3)

MC藤田琢己と2ステージ目の4人のベーシストとのトークパートを挟み、この日最後となる3つ目のステージはマイケル(夜の本気ダンス)がホストを務める。

先に登場したマイケルの呼び込みで4人のベーシストと1人のドラマーが舞台に上がる。ステージ向かって左手側から酒井亮輔 (BRADIO)、辻怜次 (Bentham)、中央にマイケル、長島涼平(the telephones, フレンズ)、有江嘉典(VOLA&THE ORIENTAL MACHINE, MOON・BEAM)の5人が並び、中央後方のドラムセットに佐藤謙介(髭, パスピエ)が陣取る。そうして演奏された1曲目はYMO(Yellow Magic Orchestra)『Rydeen』のカバー。先程のベースのみの四重奏とは異なりドラマーのいる編成ながら、勿論ドラム以外はすべてベースが担う。さらに、先程と異なるのはこのステージでは全員がアンプから音を鳴らしているという点。同時に出力されるベース5本のサウンドの迫力は半端ではない。とは言え、全員が低音を無遠慮に鳴らし放題鳴らすのではなく、そこはひとつのバンドとしてのアンサンブル。メイン・メロディーをベースシンセのようなエフェクティブなサウンドでマイケルが奏で、他のメンバーも様々な音色で原曲の様々なシンセサイザーによるメロディーやシーケンスフレーズを再現していく。中でも酒井がスラップでプレイするベースラインのクールさが耳を惹いた。メロディーが展開するパートでの渾然一体となってベース5本が突進してくるような勢いの迫力も特筆すべきだろう。

ベース5人編成ならではの苦労や裏話が笑いを交えて語られたMCを挟んで、続く2曲目はTM Network『Get Wild』。メインメロディーは辻が奏で、この曲でもイントロ~Aメロ~Bメロの印象的なベースラインは酒井がスラップでプレイ。イントロやAメロのキメ部分、原曲のオーケストラヒットのようなサウンドを深く歪んだサウンドでプレイする有江の轟音はもの凄い迫力だ。原曲のシンセやギターのフレーズを5本のベースで織り成していく様は圧巻であった。

そして、再びMCを挟みつつ早くも最後の曲と宣言してプレイされた3曲目はQueenの『Don’t Stop Me Now』。イントロの、原曲ではピアノと歌で始まる部分をナチュラルなベースサウンドだけでの美しいアンサンブルで聴かせ、リズムが入り疾走感溢れる展開に。この曲ではメインの歌メロは酒井が担当し、ベースラインは有江がプレイ。原曲でのリズミカルなピアノの雰囲気を辻がギターカッティングのようなプレイで加えていく。2コーラスを終え間奏に入るところで、突如(同じくQueenの楽曲)『Another One Bites The Dust』のリフへと展開。このリフに乗せてベーシスト達によるソロ回しタイムへと突入していく。マイケルのMCに導かれて最初にプレイしたのは辻怜次。激しく歪んだサウンドでRed Hot Chili Peppers『Around The World』のFleaのフレーズも引用しながらサウンドに負けじと勢いよく弾ききった。続いては酒井亮輔のターン。辻とは打って変わってオーソドックスな太いベースサウンドで、ロータリー奏法を駆使した音数の多いランフレーズを披露した。さらに続くは長島涼平。フランジャーの効いたサウンドながらプレイ自体は非常にベースらしくグルーヴと間を活かしたプレイだ。そして有江嘉典はこの日のベーシストで一番とも言われた激しく歪んだサウンドで豪快にプレイ。

さらにここで1バンド目、2バンド目のホスト・ベーシストをマイケルが呼び込むとウエノコウジと武田祐介が登場。マイケルがウエノへ、長島が武田へと自身のベースを手渡し、ウエノと武田もこのセッション・タイムへ加わる。ウエノは8小節のソロを取った後マイクで「まだまだ!」と盛り上げ、その後も「まだ!」「まだ!」と煽っていく(最後は「もういいか」と締め笑いを誘った)。マイケルのベースをそのまま弾いているが、やはり間違いなくウエノのプレイだと分かるギンギンなピッキング・サウンドだ。そして、このウエノのプレイに合わせるように武田も巧みに参加してくる。ペンタトニック系のフレージングが中心ながら後半にはスラップも飛び出しこの豪華な共演に会場中が盛り上がりを見せた。2人を拍手で送るとホスト・ベーシスト、マイケルのソロ・タイム。フィルターの掛かったサウンドで右手に付けたモーション・コントローラーによるパフォーマンスも印象的だった。そして最後は佐藤謙介のドラムソロから再び『Don’t Stop Me Now』へと戻り大団円を迎えたのだった。

ベースだけでも様々なサウンドが表現できる。ベースだけでも美しいアンサンブルを奏でられる。ベースがいればロックバンドをかっこよくドライブさせられる。3つのバンド、10人のベーシスト、それぞれがそれぞれにベースの魅力や新たな可能性を見せてくれた、まさに「ベースの日」に相応しいライブであった。

ライブ撮影:上飯坂一
機材撮影:小野寺将也
取材・文:稲葉悠二

《SET LIST》
  1. 1.Rydeen/YMO
  2. 2.Get Wild/TM Network
  3. 3.Don’t Stop Me Now/Queen ~ Another One Bites The Dust/Queen ~ Session

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