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楽しむ以上は、全力で心を解き放たないともったいない。
春畑道哉の3年振りとなる全国ツアー「MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2025 Itʼs Now or Never」。1月よりスタートした同ツアーは、2月末まで全8公演が実施される。ここでは、2月9日にZepp DiverCityで行われた公演の模様をお伝えしたい。
滴り落ちる雨音が響く場内。荘厳なSEに乗せ、ライブは厳かに幕を開けた。メンバーの登場に合わせて起きた拍手。春畑の登場時には、拍手の音がひと際大きくなっていた。おもむろにギターを手に取る春畑。そして…。

SATOKO(Drums)のカウントを合図に、春畑が最初に届けたのが、空を駆けるような景色を描きだす華やかな曲調が魅力の『Wings』。歪みを上げた野太いギターの音が空へ羽ばたくように響くのを合図に、この空間へ眩しい光を射すようにライブは幕を開けた。心地好く跳ねる演奏の上で春畑の奏でる音色の一つ一つが、小さな羽根を羽ばたかせるように響く。この場にいる人たちみんなを引き連れ、これから始まる現実を忘れた物語の世界へ導くようだ。野太く、でも、一つ一つの音をしっかりと胸に届ける演奏に触れ、気持ちが弾む。心が光を感じる、いや、期待に胸を弾ませていたといったほうが正解だろうか。その旋律が高く鳴るたびに、心の翼を広げ、一緒に大空を駆け巡る気持ちでいた。けっして派手ではない。でも、胸踊る力強さを覚える演奏なのは間違いない。だから、春畑の奏でる旋律の描いた道の後をついていきながら、共に気持ちを弾ませていた。ギターの音色へ寄り添うように演奏をするメンバーたちの心も、どこか弾んでいるように見えていた。
斎藤渉(Key.)が奏でるピアノの旋律と美しいコーラスの声が響き渡る。その音色を受けて、春畑が一つ一つの音に思いを込めて『WE PROMISE』を奏でだす。その音色が光を放つたびに気持ちをときめかせる。いつしかフロア中の人たちも手拍子をし、身体も心も弾ませ、春畑の奏でる雄大な演奏を先頭に、力強く行進し続けていた。途中からはステージ上のお立ち台に上がり、観客たちを荒々しい演奏で挑発。その後に響かせた、美しくエモーショナルな旋律の数々という冴えた展開に上気せずにいられなかった。だから、ずっと手拍子を止めることなく、気持ちを沸き立てていた。ステージ左右のお立ち台に乗って演奏をするなど、少しでも観客たちと音を通した触れ合いを求めていた春畑の姿も、嬉しいインパクトを持って瞼に焼きついた。
MCでは、とても気さくに観客たちへ言葉をかける春畑がいた。「曲のメニューはばっちりだけど、MCでは変な間があるかも」など、ちょっと照れた仕種で語る、その親しみやすさも彼らしい。ツアータイトルには「今やらなかったら後はない。やる(行動を起こす)なら今でしょ」「楽をしたくて明日に延ばすのではなく、今やるためにも。自分の気持ちを奮い立てる意味で、このタイトルにした」と伝えていた。

シャキシャキッとした心地好くカッティングするギターの旋律を合図に、ソウルフルでエモーショナルな『Spring has come』を演奏。勝田一樹(Sax)による華やかなサックスの音色をリードに、ときにその音へ寄り添いながら。ときには、自ら先頭に立ち、この場に温かくも心地好い旋律の風を吹かせる。春畑のギターを中心に据えつつも、ときにサックスの演奏と交じり合い、ときにメンバーとセッションを交わす様を見せながら、春畑はこの場に、温かい日射しの降り注ぐ心地好くも胸弾むひとときを描いていった。ギターとサックスが音を交わしながら、互いに演奏の熱とグルーヴを上げていく様に触れ、思わず笑顔の花を咲かせていた。楽しい。だから、ずっと手拍子をしながら、この場の空気を、ここに生まれた熱を、さらに温かく上げていきたかった。
躍動するドラムビートを合図に、春畑はブルーズな旋律を響かせて『I feel free』を演奏。ときに大きくビブラートを効かせながら、一つ一つの音色へ強い存在感を与えてゆく。響かせる旋律に人の心を揺さぶる命を授け、目の前にいる人たちの胸の奥に優しく刺していく。そこへ歌声も重ね、春畑はこの場に、華やかでゴージャスなセッション演奏の様を描きだす。ときに激しく攻めた演奏をぶつけ、そこへ他の演奏陣が華やかな音を重ねるなど、感じるままに音を響かせる春畑の演奏に、メンバーらが躍動した彩りを添えてゆく。感じるままに楽しめば、それでいい。
溜めを活かした、ゆったりとした演奏が流れだした。これまで以上に一音一音に思いを乗せ、春畑は美しくも躍動した音色で、触れた人たちの心の背中を力強く押してゆく。『Straight to My Heart』を通して春畑は、自らの奏でるギターの旋律で一人一人の心の大地に未来へ芽吹く音の種を植えつけ、触れた人たちの心を少しずつ奮い立てていた。エモーショナルな音色が一つ一つ響くたびに胸が熱を覚え、力強く拳を振り上げたくなる。気持ちを揺さぶる演奏とは、この曲のようなことを指すのかも知れない。温かな演奏なのに、感情が奮い立つ。だからおおらかな気持ちで、胸に熱い血潮も覚えていた。
春畑がキーボードの前に。「みなさんと楽しい時間を過ごせたらいいなと思っています」とフレンドリーに語りかけるその言葉も嬉しい。MCでは、生まれ育った町田にまつわる想い出話を語りだす。5年前のツアーで初めて町田のホールでライブを行うにあたり、そこで地元にまつわる新曲を披露しようと決意。そのうえで春畑は、幼かった頃の記憶を思い出して楽曲を制作した。それが、ファンの間では「山羊」と呼ばれている『ノスタルジア』。中学時代にギターを手にしてからは勉強に身が入らなかった道哉少年は、数学のテストで0点に。その答案用紙を、帰り道の畑にいる山羊に食べさせたこと。その姿を見られ、畑の所有者に怒られたことなどを懐かしそうに語っていた。
切々としたピアノの旋律が響き渡る。『ノスタルジア』というタイトルに相応しい、郷愁を呼び起こす楽曲だ。この曲は、春畑によるピアノの独奏で表現。一つ一つの音色が、幼かった頃や、在りし日の青春の日々を記憶の中から甦らせる。背景には満天の星空を投影。途中、楽曲が軽やかに弾みだすのも、この曲をドラマチックに彩る大切な要素だ。哀愁を帯びた物悲しい演奏を軸に据えつつも、郷愁を呼び起こす音色の雫を身に感じていると、時が経つのも忘れ、想い出の旅を巡る気分に心が染まってゆく。ピアノソロだからこそ、一つ一つの音色がより強く人の心を惹きつけていた。

奥野翔太(Bass)によるベースソロを挟み、『花鳥風月』へ。ここでも春畑は、哀愁を帯びた音色をゆったりと響かせ、郷愁の旅を巡り続けていた。むせぶように泣いたギターの音色へ他の楽器陣が優しく寄り添い、声を上げるように泣き濡れるギターの旋律の数々に触れ、同じように込み上げる思いを感じていた。その後に生まれた、哀愁を帯びたサックスの音色との優しい重なりあい。互いに泣き濡れる感情を膨らませ、春畑は『花鳥風月』の演奏を通して触れた人たちの心を滲ませていった。
眩しい光を背にしながら奏でた『Continue』で春畑は、触れた人たちの心へ少しずつ光を降り注がせるように音を紡いでいた。背景には、哀愁を帯びたストリングスの音色も響いている。この曲でも、ギターとサックスの音が互いに寄り添い、それぞれにリードを取りながら、穏やかで優しい音色へ次第に熱と輝きを描き加え、楽曲自体を雄大な様へと膨らませていく。演奏が進むにつれ音圧が増し、いつしか雄大な音に包まれてゆく。その感覚も、とても心地好かった。
次は、これまでに春畑が手がけてきたスポーツにまつわるテーマ曲を矢継ぎ早に繰り出すブロックへ。まずは、サッカー中継のテーマ曲に起用されている『FANTASIA 〜LIFE WITH FOOTBALL〜』から。 勇壮な弦楽の音から幕を開けた楽曲は、春畑の突き刺すようなギターの旋律を合図に、一気に身体中に熱い血を巡らせだす。常に躍動した旋律を繰り出し、彼は感情をずっと滾らせ続ける。とても勇壮な演奏だ。奏でる一つ一つの音色が、心を奮い立てる力になる。勇ましく突き進むようなギターの音に魂を奮わせられたからだろうか。春畑の描き出す栄光への道を、勇ましさを胸に共に突き進みたい気持ちになっていた。フロア中でも熱い手拍子が起き、サックスの音色も勇壮なギターの旋律と寄り添うように絡みあう。まさに、熱情した世界を描き出す後半の物語に相応しい、魂を歓喜と興奮へと導く最高の賛歌だ。
続く『Wave Rush』では、ファンキーかつ華やかな演奏が、この会場を煌めくダンスフロアへ染め上げる。とても彩り豊かな楽曲だ。力強い春畑のギターとサックスの演奏がバトルするように絡み合う。その姿に、気持ちが嬉しく煽られた。野太い音を響かせる春畑のギターの音色はもちろん、演奏陣の奏でるそれぞれの音が躍動しながら、触れた人たちの気持ちを華やがせていたのも嬉しい。
春畑の奏でるギターの音色の一つ一つが、触れた人たちの気持ちを奮い立てる。とても勇壮で気高い始まりだ。そこから、豪快かつハードロックなギターの演奏が炸裂。春畑はタイトなビートの上で、ハードエッジな演奏と気持ちを揺らすメロディアスな演奏を巧みに組み合わせつつも、終始、強気な姿勢で観客たちを攻めていた。『Kingdom of the Heavens』、息をつく間もなく激しくもドラマチックでスリリングな展開を次々と繰り出す楽曲だ。曲が進むごとに、華やかに躍動していく展開にも胸が踊る。

荒々しいドラムの演奏が炸裂。観客たちとリズムのやり取りも交わしつつ、フロア中の人たちの気持ちを熱く沸き立てたところで、春畑は、超絶速弾きの演奏を繰り出す『SPEED ST☆R』を突きつけた。腰をグッと落とし、ギターをしっかりと支え、彼は次々と激しく速く、でも、耳心地好い良いメロディアスなフレーズを次々解き放ち、観客たちの感情を熱く揺さぶり続ける。ときにサックスと絡み合い、途中に泣きの表情も描き加えるなど、激烈な速弾き演奏を軸にしながら、その中へ気持ちを躍動するドラマを作りあげる。その手腕は、流石だ。
唸りを上げたギターの音が勇ましく吠えだした。『JAGUAR’13』でも春畑はハードロックな演奏を軸に据え、心を騒がせる印象深いリフメロを次々と奏で、春畑流のハードロックな演奏を豪快に描き続けていった。その様は、風を切ってハイウェイを爆走していく様にも見えてきた。この曲では、ときに各楽器陣と演奏のバトルも展開。終始激しく牙を剥き出した音を突きつけながらも、胸をスカッとさせる演奏をしっかり見せてゆくところが春畑らしい。
ライブもクライマックスへ。本編の最後を飾ったのは、やはりこの曲だ。ここからスペクタクルな物語が次々と繰り広げられるのを予見するかのように、逞しくもおおらかなギターの音が、胸を奮い立てる勇ましい旋律を響かせた。『J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.』の登場だ。きっとここに集った大勢の人たちが、春畑の歌うギターの音へ気持ちを寄り添わせ、心の中で「Oh!Oh!Oh!」と歌っていたに違いない。とてもスケール大きな、魂を熱く揺さぶる楽曲だ。曲が進むごとに春畑の演奏もダイナミックさを増し、この場にいる一人一人を勇者へと塗り替えてゆく。でも、それを感じたくて、たくさんの人たちがここに集まっていたのも間違いない。
アンコールは、先にCreepy Nutsの『Bling-Bang-Bang-Born』を、メンバーみんなでセッション演奏するのはもちろん、振りを真似ながら楽しくはしゃぐ様を見せて始まった。春畑もこのときばかりは、ギターの演奏よりも、お馴染みの振りを真似ながら、無邪気にはしゃぐ姿を見せてくれた。

そんな遊び心を見せたうえで、ふたたび演奏へ。最初に披露したのが、日本バドミントン協会の公式アンセムに選ばれた新曲の『We can Fly 〜もっと高く、もっと強く〜』。日本バドミントン協会が打ち出していた「We can Fly」という言葉に共感した春畑は、その言葉を楽曲のタイトルにも命名。大会の中の様々な場面に使える楽曲にしたいという思いもあり、この曲では印象深いフレーズを軸に据え、そのフレーズを巧みに変化させながら、次第にスケール大きな表情へ成長していく楽曲として作りあげた。耳心地好い旋律を軸に据えているからこそ、その音色が彩り華やかに、しかも表情豊かに曲を塗り上げてゆく。その様へ触れながら、共に気持ちを熱くしていた。春畑のライブの中へ、魂を奮い立てる新たな楽曲が加わった。
流れだしたのが、春畑がソロ活動を始めて最初にリリースした『DRIVIN’』だ。1本のライブを通して、彼の歩みを、時間の流れを行き来しながら楽しめたのが嬉しい。この曲で春畑は、まるで湘南の爽やかな音の風を巻き起こすように、耳心地好い旋律を次々と繰り出していた。その演奏に触れ、フロア中の人たちも高く手を上げ、ステージの上から吹く、胸を踊らせる音色の数々を身体中に感じ、笑顔を浮かべながらはしゃいでいた。
春畑が最後に届けたのが、『青いコンバーチブル』。この曲で春畑は、自ら奏でるギターの旋律に合わせて軽やかにステップを踏みながらステージの上で踊っていた。気持ちを弾ませ、奏でる音をスキップさせれば、そこへサックスの音色も寄り添うようにハモりだす。ときに、腰をグッと落として野太い音を奏でる様も見せてはいたが、この曲でも春畑は、場内中の人たちを跳ねたビートが生み出す華やかな宴の中へ巻き込み、フロア中に拳の突き上がる景色を作り上げた。みんなで気持ちを騒がせながら、アガるところまでアガり続けていった。光輝く眩しい世界の中、何時しか無邪気な笑顔の童心に戻り、夢中になってはしゃいでいたライブだった。やはり楽しむ以上は、今、目の前で、全力で心を解き放たないともったいない。
TEXT:長澤智典
Photo:田中和子(CAPS)
《SET LIST》
- 1.Wings
- 2.WE PROMISE
- 3.Spring has come
- 4.I feel free
- 5.Straight to My Heart
- 6.ノスタルジア
- 7.花鳥風月
- 8.Continue
- 9.FANTASIA 〜LIFE WITH FOOTBALL〜
- 10.Wave Rush
- 11.Kingdom of the Heavens
- 12.SPEED ST☆R
- 13.JAGUAR’13
- 14.J’S THEME(Jのテーマ)25th ver.
- -ENCORE-
- EN1.We can Fly 〜もっと高く、もっと強く〜
- EN2.DRIVIN’
- EN3.青いコンバーチブル
春畑道哉
40th. Anniversary Live TUBE LIVE AROUND 2025-2026 Keep On Sailin'
7月6日(日)神奈川・厚木市文化会館 大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:キョードー横浜 045-671-9911
7月12日(土)高知・高知県立県民文化ホール オレンジホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:DUKE高知 088-822-4488
7月13日(日)愛媛・松山市民会館大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:DUKE松山 089-947-3535
7月20日(日)長野・ホクト文化ホール・大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:FOB新潟 025-229-5000
7月21日(月・祝)石川・本多の森 北電ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:FOB金沢 076-232-2424
9月21日(日)奈良・なら100年会館大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:サウンドクリエーター 06-6357-4400
9月23日 (火・祝)滋賀・滋賀県立芸術劇場びわ湖ホール大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:サウンドクリエーター 06-6357-4400
10月11日 (土)宮城・仙台銀行ホール イズミティ21 大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info
10月12日 (日)岩手・奥州市文化会館Zホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:GIP https://www.gip-web.co.jp/t/info
10月24日 (金)鹿児島・宝山ホール(鹿児島県文化センター)
開場 18:00/開演 18:30
お問い合わせ:BEA 092-712-4221
10月26日 (日)熊本・市民会館シアーズホーム夢ホール(熊本市民会館)
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:BEA 092-712-4221
11月1日 (土)香川・レクザムホール大ホール(香川県県民ホール)
開場 16:30/開演 17:30
お問い合わせ:DUKE高松 087-822-2520
11月3日 (月・祝)島根・島根県民会館・大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:キャンディープロモーション岡山 086-221-8151
11月22日 (土)千葉・市川市文化会館・大ホール
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:キョードー横浜 045-671-9911
11月25日 (火)東京・東京国際フォーラム ホールA
開場 17:30/開演 18:30
お問い合わせ:キョードー横浜 045-671-9911
11月26日 (水)東京・東京国際フォーラム ホールA
開場 17:30/開演 18:30
お問い合わせ:キョードー横浜 045-671-9911
12月7日 (日)新潟・新潟県民会館
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:FOB新潟 025-229-5000
12月12日 (金)愛知・刈谷市総合文化センター アイリス
開場 18:00/開演 18:30
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
12月14日 (日)岐阜・土岐市文化プラザ
開場 17:00/開演 17:30
お問い合わせ:サンデーフォークプロモーション 052-320-9100
12月26日 (金)富山・富山県民会館
開場 18:00/開演 18:30
お問い合わせ:FOB金沢 076-232-2424