今年7月にオープンから18周年を迎えたLIQUIDROOM、1994年新宿でスタートし2004年に恵比寿へ移転。様々な音楽文化を最前線で捉え、東京を代表するライブハウスとしてカルチャーを支え続けてきた。

そんな老舗のライブハウスの18周年のアニバーサリーイベントとして行われた羊文学のライブは、ツアーでも無くフェスでも無い、純然たる羊文学の音楽を届ける特別なライブとなった。

スタート前、羊文学とも親交の深いDJトミーによるDJタイムが既に会場を盛り上げ、SEと共にメンバーが登場。期待の中披露された1曲目は『Step』1stEP『トンネルを抜けたら』、1stフルアルバム『若者たちへ』に収録され、岩井俊二監修、松本花奈監督によるMVも印象的だった楽曲だ。どこまでいっても満たされない思春期の葛藤や曖昧模糊とした感情のグレーゾーンを感じさせながらもそれを肯定してくれるような塩塚モエカ(Vo.Gt.)のリリックが美しくも儚い。

こんばんは羊文学です」と塩塚モエカの声が優しく語りかけ情緒的なイントロからシンプルなリズムとサウンドで展開され、決して焦らず噛み締めるようにスタートした1曲目が非常に印象的だった。

2曲目は『Girls』90年代オルタナティブ、グランジを彷彿とさせるイントロの攻撃的なギターリフに会場の熱量が一気に湧き上がる。

塩塚モエカの使用するFender JaguarはNirvanaのカートコバーンが使用した事でオルタナ、グランジサウンドの象徴的なギターになっているが、元を辿れば60年代サーフミュージック全盛期に発表されたギターで、高音に特徴がある。『Step』のアルペジオではリバーブ、コーラスサウンドの揺らぎと眩きのあるサウンドを響かせ、一方でドライブサウンドとなると90年代オルタナティブで聴くことができる非常に攻撃的できめが細かくエッジの立った金切りサウンドが特徴となっており、楽曲の攻撃的な側面、憂い、儚さ、美しさを楽器のヒストリカルな部分がしっかりと支えて表現している。

塩塚モエカ(Vo.Gt.)

人間だった』では「ぼくたちはかつて人間だったのに」と時代の歪みや危うさを歌い、続く『ラッキー』では「今日は理屈じゃないとこでしあわせが訪れる」と塩塚モエカらしい幸福論を説いてくれる。対照的な明暗を感じさせるが、互いを対比するような展開に羊文学としての変化が感じられた。

河西ゆりか(Ba.)

もうちょっと夏したい、夏を楽しみましょう」と河西ゆりか(Ba.)が語りかけ演奏されたのは『ソーダ水』。ガラス玉のような煌めくギターのアルペジオと河西ゆりかのコーラスワークが夏の残像や淡い青春の気怠さを感じさせ、フクダヒロア(Dr.)はビートの揺らぎをしっかりと捉えて表情を付けていく。『くだらない』では16分で細かく刻むハイハットのビートやリフレインするギターサウンドがスローバラードなボーカルを少し急かすように感じられ、そのタイム感が心情と現実の対比のようで歌詞の世界観をより強く印象付けていた。

フクダヒロア(Dr.)

ドラマ』では音源にも収録されているDJトミー本人がシャウトで出演し、「青春時代が終われば 私たち 生きてる意味がないわ」というあまりに非可逆的な残酷なキラーワードをライブで体現し、共感し、圧倒的なパフォーマンスで魅了させた。今回のライブではこの楽曲がよりリアルに感じられた。

トミーありがとう!ようやく実現したね」と塩塚モエカのMCでの補足があり、「バイブス上がる!楽しいね!」と笑みも溢れる。

電波の街』は東京がテーマとなったアルバム『our hope』に収録された楽曲だが、新宿に住んでいた塩塚モエカの経験と18年前新宿でオープンしたLIQUIDROOMの背景がリンクするようだ。河西ゆりかのベースのフックのある鋭いサウンドがグイグイと引っ張る疾走感があり非常にキャッチーなナンバーとなっていた。続いて演奏された『キャロル』では新宿という街を「同じ昨日に起きたニュースの真相は曖昧にしてみんな違う話をしてる」とアイロニーな表現で歌い、東京の街の中でも特に悲喜交交溢れる新宿という街を表現しているかと思えば、『hopi』ではどこまでも深く広いサウンドの中に朝焼けを思わせるアーバンな側面があり、街に生きる人々の前途を照らす光明のような情景をまじまじと感じさせた。

深く息を吐き出すほど音に圧倒された瞬間の後、演奏された『夕凪』では塩塚モエカと河西ゆりかの掛け合いのコーラスワークが優しくコミカルに響き、会場全体を暖かく包み込んだ。バンドの成長、安直さだけではないポピュラーな表現の幅や広がりをみせたからこそ、リリックとの対比となって塩塚モエカのパーソナルな想いがより強く伝わってくるのだろう。

そして本編最後に披露されたのは『OOPARTS』。シンセサイザーを取り入れたことでバンドの世界観を大きく広げ話題となった楽曲は、この日はオルタナティブ全開の3ピースならではの演奏で大団円となる最高の盛り上がりをみせた。

アンコールではリリースワンマン以降久々に披露したという『RED』。どこまでも衝動的でモラトリアムだった時代の心情がフラッシュバックし、攻撃的でかつ愛おしさがある。対比するように『光るとき』では「最終回のストーリーは初めから決まっていたとしても 今だけはここにあるよ 君のまま光ってゆけよ」と、永遠に続くものは無いのだからこそ美しいという時代を超えて普遍的な人の諸行無常な物語を歌う。

そして、『天気予報』で「僕らの憧れた未来予想その先は?」と観客へ問いかけるのだ。

この日の物語(セットリスト)は本来ここで終わり、過去現在未来を示唆するような展開で幕を閉じる予定だったのかもしれないが、特別アンコールで『あいまいでいいよ』を披露。どこか張り詰めた今の世の中に彩を加えて、生きにくさを感じている若者たちに愛のある未来を感じさせてくれる、そんなメッセージのようで予定調和に終わらなかったこの日の物語にも羊文学らしさが詰まっていたように思う。

冒頭でも記した通り、ツアーでも無くフェスでも無い、純然たる羊文学の音楽を届ける特別なライブとなったことは間違いが無く、次の物語がどうなっていくのか見続けたくなる「羊文学」にはそんな期待がまだまだ尽きない。

ライブ撮影:YUKI KAWASHIMA
取材・文:日下部拓哉

塩塚モエカ(Vo.Gt.)使用楽器・機材紹介

羊文学

クリスマスライブ「まほうがつかえる2022」開催決定!

羊文学自身最大規模となる初のホール会場でのワンマンライブが東京・大阪で開催!

2022年12月11日(日)
東京・中野サンプラザ
OPEN 17:00 / START 18:00

2022年12月25日(日)
大阪・フェスティバルホール
OPEN 17:00 / START 18:00

チケット等詳細は羊文学オフィシャルサイトまで
https://www.hitsujibungaku.info/live/

メジャー2nd Album『our hope』Now On Sale!!

初の地上波アニメタイアップ曲を含む羊文学のメジャー2nd Album。
昨年8月リリースのアニメ映画主題歌「マヨイガ」や初の地上波アニメタイアップ曲「光るとき」を含む全12曲を収録。初回盤BDには昨年のワンマンツアーより東京公演をフル収録。

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