ライブを通して描きだされるドラマも追いかけ続けようじゃないか。

4月5日よりTVアニメ放送がスタート。オリジナルアニメ『ガールズバンドクライ』の劇中に登場するガールズバンド、“トゲナシトゲアリ”。メンバーは、Vo.井芹仁菜役の理名(りな)、Gt.河原木桃香役の夕莉(ゆり)、Dr.安和すばる役の美怜(みれい)、Key.海老塚智役の凪都(なつ)、Ba.ルパ役の朱李(しゅり)。これまでに5枚のシングルをリリース。4月24日には初のアルバムとなる『棘アリ』を発売するのに先駆け、3月16日に横浜・1000 CLUBで「トゲナシトゲアリ 1st ONE-MAN LIVE “薄明の序奏”」を行った。観客たちによって生まれた熱気と熱狂の模様を、ここにお伝えしよう。

暗転した場内に流れたのは、本番を前に緊張を隠せないメンバーたちの楽屋でのやりとり。まるでドラマCDを聴いているような感覚だ。ゲームに没頭したり、牛丼を食べたり、各々の方法で緊張をほぐしてゆく様から、それぞれのキャラクター性が見えて嬉しい。フロア中から鳴り響く手拍子。その音を耳にし、「お客さんたちが呼んでるよ」の声を合図に、メンバーは舞台へ姿を現した。各々が、楽器やマイクを手にする。そして…。

「いつだって傷ばっか カラダもココロもバラバラになっていっちゃって」と理名がアカペラで歌いだす。トゲナシトゲアリの始まりを告げた『名もなき何もかも』からライブはスタート。爆発したような凄まじい音を携えて駆けだした演奏。理名は、身体を奮い立てるその音へ身を預け、目の前にいる大勢の観客たちを攻めるように歌っていた。曲が進むごとにパワーとエナジーが増す歌声。楽器陣もそれぞれに細かい旋律を繰り出しながらも、沸き立つ情熱をぶつけるように演奏。胸の内で渦巻くもどかしい感情をぶち撒けるような歌声はとても情熱的だ。フロアでも大勢の観客たちが腕を振り上げ、舞台の上からあふれでる熱をその手でつかみとろうとしていた。

MCで言葉にした、「今日からがもう一つのスタート」という言葉が嬉しい。

「淀んでいる 歪んでいる この世界に立って ただここで息をしていた」。理名のエモーショナルな歌声を合図に始まったのは、『偽りの理』。とてもスリリングな演奏だ。歌に登場する主人公の自問自答するもどかしい感情へ、肌をざわめかせる緊張感を演奏が与えていく、と言ったほうが正しいだろうか。今にも破裂しそうな熱を抱きながら、その熱を、切っ先鋭い歌声や演奏に乗せて彼女たちは届けてきた。その声や音に刺激を受けた大勢の観客たちが、先ほどよりも高く拳を突き上げ、気持ちを熱く奮わせていた。

凪都がピアノの鍵盤を叩く音に合わせ、理名が高く指を突き上げる。飛び出したのは、爆裂したピアノロックナンバーの『傷つき傷つけ痛くて辛い』。場内から「Oi!Oi!」と熱情した声が上がり続ける。この曲では、演奏陣が濃密な音の塊を互いにぶつけあい、さらに緊張感を高めていた。間奏で夕莉が奏でたギターソロへ向けて、たくさんの声が沸き上がる。濃密なその音は、曲が進むごとに外へ外へと解き放たれてゆくようだ。どんどんパワーとエモさが増してゆく。でも、それが胸を騒がせる。

ここでは、各メンバーのキャラクター紹介と自己紹介をしていた。メンバーそれぞれに演じるキャラクターとの共通性や違いなどが見えてきたのも嬉しい。

「瞬間的な衝動」の歌詞ではないが、『理想的パラドクスとは』でも、各自が演奏を通して衝動のままに熱を放ちながら、スリリングな演奏を描きだす。その上で理名は、揺れ動く気持ちを赤裸々に、生々しい声を乗せて歌っていた。とても情熱的だ。理名の歌声を通して、歌詞に綴られた主人公の心の揺れがまざまざと伝わってきた。胸の内に秘めた想いへ熱を与えるように歌う理名。感情的なその声を濃密な演奏が盛り立てる。

夕莉のクリーントーンなギターのアルペジオから、『黎明を穿つ』へ。切々とした演奏や歌声から始まったドラマは、ギターの音が歪みを上げるのに合わせて一気に爆裂し、サビでは、もどかしさを打ち消すように歌声と演奏が爆発。曲に登場する主人公の感情の揺れが荒れすさぶのにあわせて、歌声や演奏が凄まじい勢いで熱を放ち続けていた。

アニメ予告映像の上映に続いて、理名が「サヨナラ サヨナラ サヨナラなんだよ」と荒ぶる感情を持って吐き捨てるように『サヨナラサヨナラサヨナラ』を歌いだす。凄まじい熱と速度を持って爆走する演奏の上で、痛い言葉の数々を早口でまくし立てる。一心不乱に音を掻き鳴らし、叩きつける演奏陣。その上で、拠り所のない自分の感情を叩き壊すように理名は歌っていた。凄まじい音の刺激に触れ、観客たちも気持ちを奮い立て、彼女たちに挑みかかる。

続く『気鬱、白濁す』では、希望を求めながらも不安定な心模様を、彼女たちは巧みに緩急を付けながら感情的なドラマ曲として描きだしていた。観客たちは気持ちの高ぶりにあわせて拳を突き上げ、理名と一緒に左右に大きく手を振る景色も生まれていた。この曲でも彼女たちは、攻めた歌声や演奏を見せていた。どんどんパワーが増してゆくのに呼応するように、どんどん気持ちが高ぶりだす。

美怜の凄まじいドラムロールを合図に、演奏は止まることなく『極私的極彩色アンサー』へ。爆裂したピアノロックに乗せ、場内中から「Oi!Oi!」と力強い声が上がり続ける。終始クールに攻めるトゲナシトゲアリ。だがサビへ入った途端、表情は一気にエモーショナルに。エモく炸裂した歌声や演奏に呼応するように、観客たちは「Oi!Oi!」と声を張り上げ、拳を高く突き上げる。騒げ、騒げ、このまま運命に抗い騒ぎ続けろ!!

熱狂したその感情を、一気に天空へ解き放つように理名の歌声が響きだす。どの曲でも、もどかしい心模様を歌い続けてきたトゲナシトゲアリ。『運命に賭けたい論理』でも、不安に苛まれる気持ちを歌にしている。それでも闇や弱さを振り切り、心を羽ばたかせようとする想いと呼応するように、演奏にも光や開放感があふれていた。観客たちが振り上げた手を大きく振る姿は、この場に生まれた熱を推進力に、希望へ向かって羽ばたくようにも思えた。

終盤に初披露したのは、TVアニメ「ガールズバンドクライ」のオープニング主題歌となる新曲、『雑踏、僕らの街』。冒頭から激しく煽る、エモくパワフルな楽曲だ。観客からは、早くも「Oi!Oi!」と声が上がっていた。激しく駆ける演奏の上で、挑むように早口でまくしたてる理名の姿は、まるで革命を起こす戦士のようにも見える。荒々しいながらも、闇(病)んだ心へ光を照らすような歌だ。ライブを通すことで刺々しさが増していたが、アニメの始まりに流れると、もっとエモさを持って響く楽曲だ。

最後に、勢いを持った景色へさらに熱を注ぐように『爆ぜて咲く』を演奏。張り裂けそうな心を、叫びたい想いを、彼女たちはすべて解き放とうと、熱狂の景色の中へ観客たちを導いていった。突き上がる無数の拳と絶叫。そこにいるすべての人たちのフラストレーションを打ち消す勢いで、会場ごと爆上がっていった。

熱狂止まない声を受け、5人はアンコールの舞台へ。最初に披露したのは、こちらも初披露となる、TVアニメ「ガールズバンドクライ」エンディング主題歌の『誰にもなれない私だから』。痛い心の内を零すように歌う理名。彼女の歌声へ、演奏陣が寄り添うように音を奏でる。サビでは、すべてのもどかしさを吹き飛ばすように、自問自答しながらも心の闇や悩みを解き放つように歌う。これから、物語のエンディングでこの歌に触れるたびに、気持ちが揺さぶられる楽曲になりそうだ。

最後の最後に彼女たちは、トゲナシトゲアリの始まりの歌となった『名もなき何もかも』をもう一度演奏。理名のアカペラから始まり、そこへ轟音鳴らす演奏が重なり、一気に駆けだしてゆく。この曲に触れていると、気持ちが奮い立つ。もちろん場内は、暴れ騒ぐ観客たちの熱気に支配されていた…と言いたいところだが、この曲だけ撮影が許可され、大勢の観客たちが夢中でスマホを舞台の上に向け、この瞬間を記録していた。もちろん、拳を突き上げて騒ぐ観客たちもいたが、それまでの爆裂した歓声は抑えられていたことも伝えておきたい。きっとSNS上には、そのときの映像が多くアップされているだろうから、探して、見ていただきたい。

TVアニメ放送をきっかけに、トゲナシトゲアリの支持はさらに広がってゆくだろう。これからも、ライブを通して描きだされるドラマも追いかけ続けたい。

TEXT:長澤智典
Photo:冨田味我
©東映アニメーション

《SET LIST》
  1. 01. 名もなき何もかも
  2. 02. 偽りの理
  3. 03. 傷つき傷つけ痛くて辛い
  4. 04. 理想的パラドクスとは
  5. 05. 黎明を穿つ
  6. 06. サヨナラサヨナラサヨナラ
  7. 07. 気鬱、白濁す
  8. 08. 極私的極彩色アンサー
  9. 09. 運命に賭けたい論理
  10. 10. 雑踏、僕らの街
  11. 11. 爆ぜて咲く
  12. EN1. 誰にもなれない私だから
  13. EN2. 名もなき何もかも (reprise)

理名(Vocal) 使用機材紹介

ガールズバンドクライ/トゲナシトゲアリ

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