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トゲナシトゲアリが12月20日に豊洲PITで行った「トゲナシトゲアリ 4th ONE-MAN LIVE “協奏の響” 」公演。当日の模様を、ここにお伝えしたい。

演奏が始まると同時に、ステージ上にライトが照らされた。哀愁を帯びた『誰にもなれない私だから』のイントロが流れだすと同時に、上がる歓声。その声へ呼ばれるように、理名が「誰かに染まれない 誰にもなれない」と言葉を零すように歌いだす。その背景に流れる、胸をキュッとしめつける夕莉のギターの音色。理名の気持ちが少しずつ高ぶるのに合わせ次第に演奏の熱も上がりだす。サビ歌に触れる頃には、感情の揺れの見える歌や演奏に気持ちが揺さぶられていた。けっして派手な楽曲ではない。むしろ、切々とした歌声や音色が胸の内に広がるミドルメロウな曲調だ。でも、夕莉の泣いたギターの音色を含め、その演奏は、心を揺さぶる力を持っていた。だから、歌い奏でるその姿をじっと見つめていたかった。


理名が次々と早口で感情的な言葉をぶつけだす。『名もなき何もかも』の始まりを合図に、フロア中の観客たちが一斉に沸きだした。強烈な熱を秘めた歌声と演奏がステージの上から音の矢となり、次々と胸に突き刺さる。気持ちを揺さぶるように歌い演奏をするメンバーたち。攻めたその姿に刺激を受け、心が奮い立つ。曲が進むごとに理名の歌が存在感を増し、強い意志を持ったその声が、触れた人たちの気持ちを揺さぶっていた。

『無知のち私』でも、理名が言葉の弾丸を次々と撃ち放つよう感情を剥き出しに歌い、演奏も勢いよく走り出す。スリリングという言葉が浮かぶ。確かに、歌声と演奏は心地好い緊張感を持っている。その刺激が、気持ちを揺さぶり、拳を振り上げさせる。気を抜けない…のではない。その瞬間瞬間をずっと逃さずに見ていたい。強烈な存在感を放つ理名の歌声に、ずっと心が惹きつけられていた。いや、心の中へ次々飛び込む歌声と演奏の迫力に、気持ちがずっと圧倒されていた。

矢継ぎ早にトゲナシトゲアリは『理想的パラドクスとは』を繰り出した。一度上がった感情を冷ますどころか、ステージ上に視線を釘付けにし、気持ちを熱く揺さぶり続ける。この曲では、朱李がコーラスとして参加。次々と展開しながら多様な表情を見せる様も魅力だが、この曲でも、理名の歌声の迫力に気持ちが惹きつけられていた。ステージの上で圧倒的な存在感を放つ理名の姿に、今宵は心がひと際引き寄せられる。
でも、MCになると緩くて親しみやいす様を見せるのが、このメンバーたち。

夕莉の奏でるギターのアルペジオの音色が示したのが、『黎明を穿つ』だ。ギターの演奏の上で感情を零すように歌う理名。その様を力強く押すように他の演奏陣も加わるのをきっかけに、楽曲はより感情的になる。『黎明を穿つ』はもちろん、他の曲でも、演奏が進むごとに、その楽曲はドラマを描くようにいろんな景色を見せ、気持ちをぐんぐん高ぶらせる。間奏では、夕莉と朱李が互いを見合いながらフロントで演奏。どんな曲調だろうと、曲を重ねるごとに感情の温度計が確実に上がっていくのを、自らの身体が感じていた。

「淀んでいる 歪んでいる この世界に立って」と魂を揺さぶるように理名が歌いだす。『偽りの理』だ。スリリングながらも熱情した演奏が気持ちを騒がせる。サビへ突入した頃には、フロアの観客たちも高く腕を突き上げ、ステージの上から溢れでる衝撃を、その手でしっかりとつかみ取っていた。曲が進むごとに振幅の激しくなる楽曲に、熱く心が奮い立つ。この曲では、夕莉と朱李もコーラスで参加。とにかく迫力に満ちた歌と演奏だった。
メンバーのフレッシュさが垣間見えるMC。そのフレッシュさを楽曲でも示すかのように、次に新曲の『吹き消した灯火』を披露。理名の歌声と夕莉のギターの演奏が同時に始まる。序盤は切々とした表情を抱きながら、サビへ入る頃には気持ちの揺れるままに歌声や演奏を届け、感情の動きが見える様を示してゆく。けっして派手な楽曲ではないが、歌に込められた想いが目の前にまざまざと見えてくる。だから、歌詞に刻まれた想いの一つ一つをしっかりと確かめたい気持ちで耳を傾けていた。

いきなり激しくスケールの大きな演奏が飛び出した。『渇く、憂う』でも、トゲナシトゲアリはスリリングさを持った歌声や演奏を突きつけ、触れた人たちの気持ちにもピンと張りつめた心地好い緊張感と高揚感を示してきた。1曲ごとにいろんな変化を見せながらも、一貫して感情を揺さぶる生き様を彼女たちは突きつける。だから、気持ちが揺さぶられるのだろう。
理名の「切り裂いた 空は綺麗で」と歌う声が響き渡る。トゲナシトゲアリは立て続けに『気鬱、白濁す』を演奏。作り上げていた空気に、さらに張りつめた彩りを描き加える。いや、張りつめたというよりも、気持ちを緩ませないテンションの高い演奏と言うべきか。だから、フロア中に多くの拳が突き上がる景色が生まれていた。間奏では夕莉と朱李が、熱情したプレイも披露。一つ一つの動きが、気持ちを熱く熱く揺さぶり続ける。

次に届けたのが、TVアニメ「ガールズバンドクライ」の劇中に登場する楽曲たち。力強い理名の歌声と切れ味鋭い夕莉のギターも印象的な『空の箱』を披露。背景のスクリーンにはアニメの映像が投影される。夕莉のカッティングするギターの音色が心地好い。熱を持って駆ける楽曲に観客たちも身体を揺らし、高く手を振り上げ、思いきり楽しんでいた。夕莉のギターソロに向けて、フロア中から大きな声のエールが飛び交っていたのも印象的だった。

冒頭から熱く荒々しく攻めるように演奏をした『視界の隅 朽ちる音』。この曲で理名は早口で次々と言葉を突きつける。熱を持って駆け続ける演奏に刺激を受け、観客たちも声を張り上げて熱狂。とてもインパクトの強い、しかも解き放つような解放感を持った歌や演奏なのが嬉しい。気持ちが熱く騒ぐのも当然だ。理名が声を張り、高らかに歌いあげる様も胸アツだ。

MCでは、理名が「目指せ、(日本)武道館」と宣言。ここから後半戦へ。激しくドラマチックに躍動するピアノロックナンバーの『傷つき傷つけ痛くて辛い』が、ふたたびテンション高くも心地好い緊張感を与える。その刺激は、サビで一気に解き放つように炸裂。ここぞとばかりに観客たちも沸き上がる。この日は、いつも以上にライブの進行を早く感じる。それは、彼女たちが作り上げる気迫みなぎるライブのパフォーマンスにずっと惹きつけられ、時間という概念を忘れていたからに違いない。

「サヨナラ サヨナラ サヨナラなんだよ」と理名が早口で歌いあげる声から『サヨナラサヨナラサヨナラ』へ。強烈な熱を抱いた演奏が暴発寸前の勢いを持って襲いかかる。感情的な歌声と突き刺すような演奏に刺激を受け、気持ちが騒ぎだす。彼女たちと一緒にこのスリリングな空気を膨らませ、どこまでも上がっていきたい。


カラフルなレーザーの飛び交う空間に、理名の歌声が絡み合う。朱李のスラップしたベースの演奏も印象的な『極私的極彩色アンサー』だ。疾走する楽曲の上で、クールな様で歌う理名。研ぎ澄ました演奏に気持ちを揺さぶられつつ、途中から一気に感情がバースト。巧みに緩急を付けた歌声と演奏を通し、トゲナシトゲアリは観客たちの気持ちを揺さぶり続ける。本当に、畳みかけるような演奏だ。


そのうえで突きつけたのが、TVアニメのオープニング主題歌として流れていた『雑踏、僕らの街』。この曲の登場に、場内中からひと際熱い声が上がりだす。理名自身も、早口で次々と熱情した言葉を撃ち続ける。演奏陣も含めたその迫力に、気持ちがずっと熱く揺さぶられる。理名の「変わらないはずはないよ 手を伸ばして」と挑発するように歌う声に触れた途端、感情が高ぶり、声を上げずにいられなかった。気迫漲る熱情した歌と演奏に刺激を受け、その場で思いきり飛び跳ねずにいられない。突き上げた拳を下ろすなんて考えられない!!


『爆ぜて咲く』のイントロが流れだしたときも、場内中から熱い声が上がった。演奏が勢いよく駆けだした途端にフロア中の熱気がさらに上昇し、爆走する楽曲と胸をくすぐる理名の歌に向け、場内中から熱い歓声が上がり続ける。ライブも終盤へ。この勢いを胸に、熱狂に包まれた空間の中、彼女たちと一緒に気持ちをグチャグチャに掻き回す勢いで騒いでいたい。フロア中から飛び交った「爆ぜて咲いた」の声も印象的だった。


朱李がベースを激しく鳴らしだす。豪快なソロプレイへ向けて、フロア中から熱いクラップが鳴り響く。そこへ、理名の歌声が絡み合うのを合図に飛び出したのが『空白とカタルシス』だ。場内中から沸き立つ熱い歓声。力強く、エモーショナルに歌いあげる理名。その声を力強く押すように演奏が炸裂。声を張り上げて煽る理名、その気迫へ、同じように気迫の漲った声を返す観客たち。ともに感情のアクセルをグイグイと踏み込みながら、このまま上がり続けたい。


1曲ごとに色と表情を巧みに変えながら。彼女たちは、熱を抱いた演奏と抑揚のある歌声で触れた人たちの気持ちを刺激してゆく。『碧いif』でも、曲か進むごとにエモーショナルさを増す歌声と演奏に、魂を嬉しく奮わせていた。


理名がギターを手に歌いだしたのが、『声なき魚』。シャキシャキッとした夕莉のギターの音に乗せて、理名が凛々しい声で歌いだす。この曲では、理名と朱李が同じマイクに向かい、顔を寄せ合い歌声とコーラスを交わす場面も。ギターが2本になったことで音の圧が増している。理名が歌っているときに、夕莉と朱李が顔を見合わせ演奏する場面にも胸が熱くなる。そして…。

本編を締めくくる最後の曲は、『運命の華』。この曲でも理名はギターを演奏。溜め込んだ膨大な熱を大空へ一気に解き放つような、開放的な歌声と演奏だ。心の中に溜まっていたいろんなわだかまりを吹き飛ばすようだ。彼女たちの演奏に触れていると、気持ちが晴れ上がる。間奏では、理名と夕莉が互いに向き合ってギターを演奏し、そして理名と朱李も同じように向き合い、笑顔を見せながら楽しそうに音を奏でる場面も。フロア中の人たちも、突き上げた拳を翼にして、気持ちを自由に空に駆け巡らせる。トゲナシトゲアリの演奏に触れながら、そんな気持ちを覚えていた。

アンコールは、「君がくれた花束 枯らしてしまったり」と理名が歌いだす『蝶に結いた赤い糸』からスタート。言葉のひと言ひと言を大切に。そこへ強く気持ちを込めて歌う。だから、その声が響くたびに胸が揺さぶられる。この曲の演奏中、ずっと彼女たちの歌い奏でる姿に見入っていた。いや、心が惹きつけられていた。
理名の歌う「闇に溶けて 溶けて 溶けて 溶けてく」の歌声を聴いた瞬間に心が奮えた。『闇に溶けてく』でも、フロア中から熱い声が上がり、無数の手が突き上がる。曲が駆け上がるように進むにつれ、気持ちも爆上がる。
トゲナシトゲアリがこの公演の最後に届けたのが、「誰とも分かりあえない」と歌いだす『運命に賭けたい論理』。アンコールの3曲とも歌始まりなのは偶然か、狙ったのか。歌声に触れた瞬間から気持ちが上がっていく展開がとても嬉しい。この曲でも、歌いながら左右に手を振る理名の動きに合わせ、フロアの観客たちも振り上げた手を大きく左右に振り、想いを一つにしていた。「羽ばたくんだ 暴れるんだ 信じてるんだ」の歌詞の一節ではないが、その気持ちのまま彼女たちと一緒に熱くなり続けたライブだった。まさに、トゲナシトゲアリからもらった強さが、僕ら私たちの論理だ。
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.誰にもなれない私だから
- 2.名もなき何もかも
- 3.無知のち私
- 4.理想的パラドクスとは
- 5.黎明を穿つ
- 6.偽りの理
- 7.吹き消した灯火
- 8.渇く、憂う
- 9.気鬱、白濁す
- 10.空の箱
- 11.視界の隅 朽ちる音
- 12.傷つき傷つけ痛くて辛い
- 13.サヨナラサヨナラサヨナラ
- 14.極私的極彩色アンサー
- 15.雑踏、僕らの街
- 16.爆ぜて咲く
- 17.空白とカタルシス
- 18.碧いif
- 19.声なき魚
- 20.運命の華
- En1.蝶に結いた赤い糸
- En2.闇に溶けてく
- En3.運命に賭けたい論理
ガールズバンドクライ/トゲナシトゲアリ
トゲナシトゲアリ 4th ONE-MAN LIVE "協奏の響" アーカイブ配信
トゲナシトゲアリ 4th ONE-MAN LIVE "協奏の響" アーカイブ配信
【チケット販売期間】
2024年12月19日(木)18:00~2025年2月11日(火)21:59
(視聴期間: ~2月11日(火)23:59まで)
▼詳細はこちら
https://girls-band-cry.com/live/post-5.html
トゲナシトゲアリ 5th ONE-MAN LIVE "鳴動の刻" アーカイブ配信
トゲナシトゲアリ 5th ONE-MAN LIVE "鳴動の刻" アーカイブ配信
【チケット販売期間】
2025年2月6日(木)18:00~3月16日(日)21:59
▼詳細はこちら
https://girls-band-cry.com/live/post-9.html
トゲナシトゲアリ5th ONE-MAN LIVE "鳴動の刻"

5th ONE-MAN LIVE
■日時:2025年2月7日(金)
■時間:OPEN/18:00 START/19:00
■会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
■チケット金額:9,900円(税込)