2026年3月14日、Zepp DiverCity(TOKYO)にて「トゲナシトゲアリ Zepp Tour 2026 “拍動の未来”」ツアーファイナルが開催された。2025年には日本武道館の単独公演を成功に収めたトゲトゲだが、意外にも全国を巡るツアーは今回が初。
MCたっぷりの自由な構成、アニメと連動した演出も――ツアーファイナルに宿った、トゲトゲのいまとこれからをお届けする。


2階席まで笑顔で手を振り、フロアとたっぷりコミュニケーションを取りながら登場したトゲナシトゲアリ。しかしその和やかな雰囲気は、物語の始まりを告げるアッパーチューン『雑踏、僕らの街』が吹き飛ばした。

バックスクリーンには、楽曲とリンクしたアニメ「ガールズバンドクライ」の映像が投影。原曲より前に出た朱李のベースに下腹を刺激されながら、観客はリアルとアニメを自由に行き来する。


間髪入れずに『ダレモ』の爆音が響きわたると、たまらずオーディエンスからもクラップが発生。曲終わりでは理名が「私たちのライブは、初っ端から結構飛ばしがち。乗り遅れ注意です!」と声を上げる。その宣言を回収するかのように、ライブ初披露曲『蜃気楼ニ問フ』を解き放ち会場のボルテージを上げた。

このステージでは、ライティングの細やかさや思い切りの良さも目立った。ステージの両サイドから3人にパーライトが直接ぶちこまれていく。閃光に照らされたトゲトゲの面々は、蜃気楼のように揺れながら歌う。
パフォーマンスを濃密に詰め込みつつ、MCも連発するトゲトゲらしさ全開だった本ステージ。ここでは、朱李が「活動3年」という言葉を放った瞬間に、会場全体から拍手が巻き起こった。



続けて「アニメ放送後もトゲトゲは日々頑張っており、日本武道館でワンマンも開催しました。でも、ちょっとまってください。私たちはまだ、国内ツアーをやったことがない!」と叫ぶ。その勢いのまま「あれ、やっちゃいますか?」の声とともにスタートしたのは、夕莉による『空の箱』ソロ歌唱。
サビをローテンポで弾き語ると、気持ちの良いタイミングで理名が言葉を紡ぎ始めた。仁菜と桃香がはじめてストリートライブをした、始まりの日を思い起こさせるような演出だった。アニメ初放送から約2年。より洗練された『空の箱』は、トゲトゲだからこそ届けられるまさに未来の姿だ。
続いて実施された自己紹介のターンでは、理名が現在18歳の高校3年生であることをあらためて口にする。卒業も無事に決定したことが明かされると、フロアは一気に祝福ムードへ。また、ツアーの振り返りをしつつ「全部の市町村を周りたい」というドデカスケールの夢も語った。
なんでもありなトゲトゲツアー。朱李が「埼玉西武ライオンズ」のユニフォームやオリジナルグッズを全身に纏いながら登場し、球団の良さを長尺で語るという一幕も。


夕莉はツアー名の「拍動の未来」について「活動を始めてからいまの私たち、そしてこれからの未来へと繋げていきたい」という思いが込められていると語った。そんな先を見据える覚悟を示すかのように、『黎明を穿つ』では理名が空に手を伸ばし、何かを掴み取ったように見える振る舞いが際立った。



ステージでは、2025年に公開された「劇場版総集編 ガールズバンドクライ」の話題が展開。仁菜と酔いつぶれた桃香が語り合うシーンなど、新規カットが多数追加されていたことが語られた。そして3人は、思い出を辿るように「劇場版総集編 ガールズバンドクライ 【前編】 青春狂走曲」オープニング主題歌『もう何もいらない未来』、エンディング主題歌『命をくれよ』を連続で披露。どの場面を切り取っても勇ましいそのシルエットは、フロアに安心感と高揚感を与えた。

トゲトゲが現在進行系で歴史を創っていると実感したこのタイミング。3人が次に打ち鳴らした楽曲は、「ガールズバンドクライ」はじまりの歌『名もなき何もかも』。憎すぎるセトリに、オーディエンスの盛り上がりは留まることを知らない。
またもやってきたMCでは、夕莉が「全国ツアーを周り、ようやく東京に戻ってきましたね。各地で美味しいものを食べたので、みんなで川崎の吉野家に牛丼食べに行こうね」と言葉を残す。

意味深な雰囲気を纏ったまま、ステージは朱李のベースソロタイムへ。伸びやかに、自由に、恐ろしいほど重厚で軽やかなタッピングで場の熱を上げていく。最後には朱李が「東京!」と叫んだのを皮切りに『空白とカタルシス』がスタート。3人含めこの場にいる全員が、空を切るような音圧に揺られながら感情をすべて吐き出した。



この勢いを牽引できる楽曲は、BPM200を記録するモンスターソング『爆ぜて咲く』しかない。それぞれの見せ場で大暴れするトゲトゲメンツに負けじと、観客もサビで「爆ぜて咲いた!」と絶叫してみせた。

フロアのボルテージが上がり続けるなか、途中でなぜか演奏が完全にストップ。そして少しの静寂をはさみ、理名がそっと「夕莉ちゃん……私が言うのもなんだけどさ、川崎は東京じゃないね。」とつぶやいた。すると、先のMCで川崎の吉野家発言をしていた夕莉が、ハッとした表情を浮かべ観客を笑顔に。
「ガールズバンドクライ」第1話、熊本から上京した仁菜は、東京と川崎の区別がまったくついていなかった。それからすっかり成長した仁菜の姿を、理名によって体現したコミカルなやり取りだった。


明るさと熱狂が共存した舞台は『極私的極彩色アンサー』へと続く。朱李の荒々しいベースを起点に、メンバーが縦横無尽にステージをスイッチする様子は、フロアにさらなる興奮を注ぎ込んだ。
転換のタイミングで、理名の手にギターが収まる。観客は当然、期待感に心を震わせる。

仁菜がギターボーカルとしての姿をあらわすのは、アニメ最終話で『運命の華』を披露するとき。しかしリアルのトゲナシトゲアリは、その先の未来を見せてくれる。『渇く、憂う』や『声なき魚』など、多様な楽曲でギターを掲げながら歌う理名の姿が見れるのだ。

作中では、ギター演奏に憧れる仁菜に対し桃香が「歌がおろそかになる」と釘をさすシーンがある。しかしいま、理名のどこまでも広がる高音域は衰えることもなく、ひたすらにバンドのピースとして機能している。


そして、満を持して始まる『運命の華』のイントロ。その一節がほんの少し流れただけで観客はうなりを上げ、そのままトゲトゲが作り上げる世界へと没入していった。

1度3人はステージを去ったが、観客からの激しい呼びかけに応えるべく舞い戻る。“拍動の未来”のライブグッズであるTシャツに着替えたトゲトゲの面々は、アンコールを『誰にもなれない私だから』でスタートした。
原曲よりもテンポを落とし、心地よさを優先したようなメロディが会場を温かくする。スクリーンのED映像では、本来「ガールズバンドクライ」と描かれるところが「トゲナシトゲアリ」とマークされていた。次元を越えて続くコンテンツの壮大さを感じざるを得ない、細やかな仕掛けだったように思える。
ラストMCでは、ツアーの振り返りをしようとするメンバーをよそに、突然ステージがまっくらに。フロアからのどよめきの声は、スクリーンに移った「特報」で歓喜の声へと変貌した。
映像には、「劇場版総集編 ガールズバンドクライ」のBlu-ray&DVD発売などさまざまなサプライズ報告が映し出されていく。そして2026年5月1日に、本ツアーのアンコール公演が東京ガーデンシアターにて開催されることも発表された。

熱気冷めやらぬ会場の空気をまとめるように、理名が「全部ぶち込んでくれますか?」と尋ねる。ラストナンバー『最期の禱り』では、残ったエネルギーをすべて絞り出すように、思いをぶつけ合うファンと3人の姿があった。すべての曲を終えたトゲナシトゲアリは、登場時と変わらぬ笑顔を残し舞台を去った。
アニメの最終話。トゲトゲはキャパシティが半分も埋まっていない状態でステージに立った。そして集まった人々のことを「へそ曲がりたち」と敬意を込めて呼んでいた。
しかしそのへそ曲がりたちは増え続け、いま会場を埋め尽くしている。トゲナシトゲアリが歩む未来は、心臓の鼓動のように止まることを知らない。
Photo by 冨田味我
取材・文:川上良樹
《SETLIST》
- 01. 雑踏、僕らの街
- 02. ダレモ
- 03. 蜃気楼ニ問フ
- 04. 闇に溶けてく
- 05. 空の箱
- 06. 理想的パラドクスとは
- 07. 吹き消した灯火
- 08. 黎明を穿つ
- 09. 薄采ディスプレイ
- 10. もう何もいらない未来
- 11. 命をくれよ
- 12. 名もなき何もかも
- 13. 空白とカタルシス
- 14. 爆ぜて咲く
- 15. 極私的極彩色アンサー
- 16. 無知のち私
- 17. 渇く、憂う
- 18. 声なき魚
- 19. 運命の華
- <ENCORE>
- EN1. 誰にもなれない私だから
- EN2. 最期の禱り
ガールズバンドクライ/トゲナシトゲアリ
「トゲナシトゲアリ TOUR 2026 FINAL “拍動の未来 -ENCORE-”」

「トゲナシトゲアリ TOUR 2026 FINAL “拍動の未来 -ENCORE-”」
■日程:5月1日(金)
■開場 / 開演:18:00 / 19:00
■会場:東京ガーデンシアター
■詳細:https://girls-band-cry.com/live/post-20.html
『劇場版総集編 ガールズバンドクライ』「【前編】青春狂走曲」 / 「【後編】なぁ、未来。」 [Blu-ray][DVD] 2026年7月22日(水)発売決定!

「劇場版総集編 ガールズバンドクライ【前編】青春狂走曲」
「劇場版総集編 ガールズバンドクライ【後編】なぁ、未来。」
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