今年ソロデビュー35周年を迎えたTUBEのギタリスト、春畑道哉が4月から6月にかけて全国で開催し、大盛況のうちに幕を閉じたホールツアー『MICHIYA HARUHATA LIVE AROUND 2022 SPRING HAS COME + next』。本稿では、5月13日(金)に神奈川県民ホール 大ホールで行なわれた神奈川公演の模様をお伝えする。

35周年の節目を飾る、4月にリリースとなった11thアルバム『SPRING HAS COME』を引っさげた本ツアーの脇を固めるサポートは、おなじみの宮崎裕介(Key)と勝田一樹(Sax/DIMENSION)に、奥野翔太(Ba/WEAVER)、SATOKO(Dr/FUZZY CONTROL)を加えた強力な布陣。ピンスポットに照らされた春畑道哉がステージに登場すると、早速オーディエンスは総立ち状態で、背面スクリーンから桜の花びらが飛び出す粋な映像とともに、ニューアルバムと同じく表題曲『Spring has come』でライブが幕を開けた。自身のシグネチャーモデルであるリバースヘッドの赤いフェンダーストラトキャスターを弾く春畑の華麗なフレーズやカッティングを中心に、勝田のサックスとのホットな掛け合いなど、各自のプレイがいきなりゴキゲンに際立つアレンジ、客席の手拍子すらバンドのビートに組み込まれている感じもいい。

世界地図やスタジアムライトの画をバックに始まったのは、『FANTASIA ~LIFE WITH FOOTBALL~』。天高く駆けるようなあの恍惚のメロディを春畑が紡げば、演出として取り入れた歓声音も手伝って、ホールがまさにサッカーの競技場に変わったかのような盛り上がりに! センターで豪快に弾きまくる彼のギターを聴いていると、本当に気持ちいいサウンドを気持ちよく奏でる人だなとひたすらに感心させられてしまう。

みなさんお足元の悪い中、来てくださってありがとうございます! 今回3年ぶりにニューアルバムを出して、同時に全国ツアーをやることになって。35周年なのでね、普段やってこなかった曲とかアレンジとか、いろいろ飽きずに楽しんでいただけるように考えてきました

続いては、夜明けの風景に合わせて春畑のギターと勝田のサックスがむせび泣きながら絡まる『Sunrise』。奥野のファンキーなベースラインを軸に、“明けゆく 空にハイウェイ 続くよ 僕らは 永遠を 探してる”と爽やかなボーカルが乗る『Daybreak Highway』の世界観へスムーズに繋げる流れも素晴らしい。ド派手な照明が輝いた『Freaky Jammin’』は、セッション感の強いジャムロック。SATOKOのどっしりとしたドラムが底を支え、ワイルド&タフな音の応酬で魅せる展開に、観客のボルテージがいっそう上がっていく。その中心で目と耳を惹くのは、やはり春畑のサウンドアプローチで、ハードロックの王道がギラギラと感じられたり、アーミングを効果的に入れたりと、弾き方を多彩に使い分けて本当にこちらを飽きさせず、ギターインストの楽しさというものを教えてくれる。

次のMCでは、憧れのギタリストであるCharとのコラボの話題に。最新アルバム『SPRING HAS COME』制作の際、楽曲を依頼したもののすぐに快諾は得られず、1ヵ月くらいしてから突然かっこいいデモテープが送られてきたこと。ウーリッツァーやコンガもすべてCharが手がけたそのレコーディングデータをもらおうとしたら、“ダメ! これをもっと超えてきてください”と断られたこと。そこで今回のツアーに集まってくれたメンバーに頼み、結果すごいグルーヴが生まれたことを嬉しそうに明かす。

そんなCharが春畑に書き下ろした大切な曲『I feel free(feat.Char)』は、彼にいただいたというムスタングで演奏。さらに、この時間のみ写真・録画撮影OKのサービスもありで、墨絵のようなクールなグラフィックを背に、しなやかに唸るギターや息の合ったユニゾンパートなど、迫力満点のサウンドをもって届けられた。

そのままムスタングでなだれ込み、5人のソロ回しを活かしてブルージーかつグルーヴィに聴かせた『Jack in the Box』。カリビアンブルーのストラトに持ち替えた『DRIVIN’』は一転、カラッと爽快なメロディをめいっぱい解き放ち、時にジャンプを決める姿が眩しい。35年もの長いキャリアを持ちながら、ここまで落ち着きもフレッシュさも兼ね備えたギタリストはそういないだろう。

中盤は観客を座席に座らせ、春畑1人のみでピアノ曲『ノスタルジア』を披露。「僕が生まれ育った町田での日々。小さいときからハタチ過ぎまでのいろんな記憶を繋ぎ合わせて作った」という、その名のとおり懐かしさを感じさせる旋律が印象的なナンバーでは、時にしっとりと、時にコミカルなフレーズで、マルチプレイヤーぶりを発揮する。

チェロのような音色のまろやかなベースが映えた『Hello』は奥野と勝田との3人で、ほんのりラテンジャズ風味が薫る『Wings』は宮崎(エレピ)、奥野(アップライトベース)、SATOKO(パーカッション)との4人で、レイドバックなムードを深めながらうっとりと鳴らすなど、曲ごとにさまざまな見せ方を用意してくれた点も特筆したい。この2曲において、春畑はエレガットギターをパフォーマンス。その甘美な響きで、聴き手の心をやさしく潤していった。

元の5人編成に戻り、春畑のギターがとりわけ優雅に歌う『Promised Land』を終えたあとは、頼もしいサポートの4人について触れる時間も。「オックンのお父さんがTUBE好きなんだよね(笑)。最近は自分が考えるより10倍いいフレーズを出してくれます」と奥野を、「予想の遥か上のグルーヴというか、曲がハッピーになる最高のドラムで。妊娠しているときもレコーディングをお願いしちゃいました」とSATOKOを、「TUBEでもソロでもアレンジをけっこう任せていて。アイデアの宝庫なので、とても頼りにしてます」と宮崎を、「10代の頃から、もう35年以上の付き合いです。何もかもわかってる仲で、カツオのサックスは作曲の一環になってますね」と勝田を、それぞれ誇らしげに春畑がメンバー紹介した。

再びスタンディングモードになって、いよいよラストのブロックへ。80’sっぽいキーボードリフがきらめく『Solid Sky』とダイナミックで瑞々しいメロディが全開の『Shooting Stars』はメドレーの如くシームレスに届け、広いステージの上手・下手へと移動しながら愛機を存分に弾き倒す春畑。SATOKOのドラムソロタイム(+ハンドクラップでのコール&レスポンス)を経て、新日本プロレスのイベント「WRESTLE KINGDOM 14 in 東京ドーム」のテーマ曲として書き下ろした疾走感あふれるロックナンバー『Kingdom of the Heavens』もついに降臨し、業火や稲妻、七色の光をバックに、ヘヴィでエッジの効いたギターがエモーショナルに轟く。

そして、ピークに達した激しいアンサンブルをじわっと落ち着かせるアダルトな締めが素敵だった『青いコンバーチブル』。辺り一面がブルーに染まる中、あらためて全員のソロ回しをセンスよく挟みつつ、多幸感いっぱいのドラマティックなギターインストを繰り広げ、5人は充実の表情を浮かべてステージを降りた。

春畑が白、サポートメンバーの4人が黒のツアーTシャツで再登場したアンコール。1曲目は自身で初めて作詞を手がけた思い入れの深い『Smile On Me』だったのだが、冒頭の一節が歌われたのち、黒Tシャツを着た誰かもう1人が突然ステージに現れる。飛び入りしたのはなんとTUBEの前田亘輝で、まさかのビッグサプライズに客席は大盛り上がり! そのまま前田が続きのボーカルを執り、春畑は彼の横でギターを活き活きと掻き鳴らす。

まだどよめきが残る場内で、「ダメだよ。なんで黙ってツアーとかしてんの。ソロデビューしたのだって同じ年なんだからさ。何もできてない俺の身にもなってよ(笑)」と春畑にツッコミを入れた前田は、TUBEのレコーディングが先日無事に終わったことなど、楽しいトークを聞かせ、1990年にリリースされた前田の初シングル曲『D・A・M・E』まで、さすがの存在感と歌唱力で披露し、節目の35周年に花を添えた。春畑のライブでTUBEおよび前田ソロの曲も聴けるなんて、この神奈川県民ホール公演に来られた人は本当にラッキーだったと思う。

前田が捌けたあともアンコールは続き、女子プロサッカーリーグ“WEリーグ”の公式アンセム『WE PROMISE』では、女子サッカー選手たちの躍動する映像が流れて気分がまたグッと高まる。キラキラとした音が舞う演奏もさることながら、手を左右に振って踊るオーディエンスの姿も美しい。さらに、プロ野球の中継テーマとして長年愛されている代表曲『JAGUAR’13』。スポーツにちなんだ楽曲を畳みかけた春畑はメロディメイカーとしての才を遺憾なく発揮し、会場に鮮やかな一体感を生み出してみせた。

みんな、今日は本当にどうもありがとうございます。楽しかったー! ソロデビュー35年目は通過点で、まだまだ曲をいっぱい作りたいし、もっともっとギターを弾きたいし、上手くなりたいし、ライブもやりたいので、また遊びに来てください!

今なおギター少年であるかのように清々しく告げ、「『SPRING HAS COME+ next』というのは、こういった出会いを大切に、自分たちのプラスにして、前へ進んでいけたらいいなと思って付けたツアータイトルです」と加えた春畑は、最後の最後にニューアルバム『SPRING HAS COME』のエンディング曲『Period.』を、飽くなき挑戦心を滲ませつつ味わい深くプレイ。割れんばかりの大きな拍手に包まれ、スペシャルを含む2時間強に及ぶライブが終了した。

取材・文:田山雄士
ライブ撮影:ViVi 小春

春畑道哉 使用楽器・機材紹介(1)


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