2020.11.8 “仮BAND Streming Live vol.03” ライブレポート

スタジオ・セッションやアーティストのバックミュージシャンを生業として国内外で幅広く活動しているBOH(B)と前田遊野(Dr)によるセッションバンドの仮BAND。彼らが、ゲストミュージシャンに増崎孝司(Gt)、ユッコ・ミラー(Sax)、西脇辰弥(Key)、岡聡志(Gt)を迎え、11月8日(日)に配信ライブを行なった。その日の模様をここへ記したい。

ベースのBOHがエフェクターのスイッチを入れ、ドラムの前田遊野がスネアを叩いて音を確認する。側からは、ギターの岡聡志が出音を確認する音も聞こえる。ライブは、3人が顔を見合わせ、ドラムの音を合図に『侍Groove』を奏でながらスタート。そこに映し出されているのは、何台ものカメラを駆使したまるでドキュメンタリー映画のような姿…。

と、思っていたところ、それは、この日のライブ前のイントロダクションとなった『侍Groove』のミュージックビデオの映像。場面を切り換えるように、映像はスタジオで円陣を組む形で演奏を行なう6人の姿を映し出した。先の映像を受け継ぐように奏でたのが『侍Groove』。タイトルに相応しい気迫あふれる音のセッションが繰り広げられる。伸びやかな岡聡志と増崎孝司のギタープレイ。対照的にユッコ・ミラーが攻めたフレーズを次々と投げかける。その様をBOHと前田遊野のリズム隊が微笑ましく眺めつつ演奏しながらも、しっかりグルーヴを支えていた。エレピとシンセを巧みに使い分ける西脇辰弥もまた、楽曲に彩りを与えながらも各自が音で会話をしてゆく様を楽しそうに見つめている。勇ましいグルーヴを持って疾走してゆく様は、観ていて刺激的だ。

身体をグッと前のめりにする変拍子が炸裂。そこから楽曲は、増崎孝司の演奏を合図に雄大な景観を描きだす。攻めた姿勢ながら、伸びやかな音を空間中に広げてゆく増崎孝司のギターの音色も心地好い。『Pleasure』、とてもスケールが大きな楽曲だ。ユッコ・ミラーの攻めた演奏が、同じく西脇辰弥の攻めたオルガンの音色が身体を刺激する。増崎孝司のギターが荒涼とした景観を描けば、岡聡志は晴れた青空を描くように、同じ壮大な音色でも巧みに景色の違いを表しているようだ。4人がゴツゴツとした荒ぶる演奏を繰り広げていったのも、BOHと前田遊野のゴツゴツとした岩石群のような土壌を成す演奏が、気持ちを沸かせる音の衝撃を全体に与え続けていたからだ。

高いテンションのまま、勇ましく、激しく攻める演奏が炸裂。全員がユニゾンした音を突きつけ、観ている側の気持ちへ高ぶる刺激を注ぎ込む。そのまま高い緊張感を抱きながら、『Some Skunk Funk』が強烈な音の刺激臭を撒き散らしてゆく。手綱を緩めることなく、常に前のめりの姿勢で次々と音の弾丸を撃ち放つメンバーたち。そこには、一瞬でも気を抜いたらこのグルーヴから置いていかれるぞというスリリングな空気があった。互いに呼吸を感じながら、緩急巧みに音の表情を塗り替えてゆく6人。観ている側も気を抜けない音のバトルが、そこには繰り広げられている。毛羽立った演奏のぶつけあいは、触れているだけで気持ちが嬉しく奮い立つ。

岡聡志のボリュームペダルを駆使した柔らかなギターの音色が壮麗な景色を波紋のように広げれば、その小さな音の波の上に増崎孝司のガットギターが哀愁を帯びた音色を重ね、浪漫を誘い出す。『Song of my heart』、とても温かな、でも、哀愁という言葉を頬張りたくなる演奏だ。ユッコ・ミラーのソプラノサックスの音色も、たおやかな音の香りへ少しビターな甘味を与えていた。この曲で、西脇辰弥はハーモニカも披露。哀愁を持ちながらも揺れる演奏は、BOHと前田遊野が穏やかさの中へ巧みに疾走感や刺激を与えたからこそ。テンションの高まるリズム隊の演奏の上で、他の4人は、馳せる気持ちを覚えながらも、哀愁という音色へ滑らかな演奏を塗り重ねていった。

トークコーナーでは画面にコメントを映し出し、それを観ながら和気藹々した雰囲気で語り、参加メンバーたちとも気心知れた会話を繰り広げていた。

BOHの6弦ベースによるソロから、ライブは再開。厳かさも感じる両手タッピングのフレーズから前田遊野のドラムカウントを合図に、岡聡志のギターが大空へ羽ばたくようにおおらかで開放的なギターの音を奏でだす。飛びだしたのは、『Dancing Baloney』だ。猛々しい前田遊野のドラムビートの上で踊るように、でも勇壮なギターの音を岡聡志が描き出せば、BOHも激しいスラップを繰り出してゆく。全体的に大空を羽ばたくような、雲の上のフロアで心地好く踊るような演奏を示してゆくのだが、その中にも力強さを覚えずにいられなかった。

演奏は、ふたたび高い緊張感を抱きながら、一触即発のスリリングな音のバトルを繰り広げだした。『Jamrika』、とても刺激的な音のセッション曲だ。演奏は、増崎孝司のブルーズなギター演奏へ。緊張感を抱いた性急な音の上で、野太いギターの音が自由奔放に踊りだす。西脇辰弥はショルダーキーボードを手に図太い攻めた音を突きつけ奇天烈な衝撃を加えれば、ユッコ・ミラーも身体を大きく逸らし、同じくゴツいアルトサックスの音を唸らせていた。一音一音が太い岡聡志のギターも、次々と尖った音を弾き出しながら気持ちを騒がせてゆく。各自の攻めた演奏が冴えているのも、メロディアスなフレーズを持って支えるBOHのベースと、スリリングかつ疾走する前田遊野のドラム演奏が生きているからこそ。

少しの間を置いたうえで、演奏は『U-yeah!!!』へ。ファンキーなリズムと解放感を持った音色の重なり合う演奏が、気持ちをさらに騒がせていった。西脇辰弥のブルーズ/ハードロックした演奏も挑発的だが、負けじと腰を揺さぶるフレーズの数々を吹くユッコ・ミラーの攻めた姿勢も凛々しい。2本のギターも、時にユニゾンでリズム隊と一緒にドライブした演奏を作りあげていた。

2本のギターが、ベースが、サックスが同じフレーズを重ねながら、跳ねた演奏の上に派手なフレーズを撒き散らす。勢い良く駆けるドラムビートの上で、BOHが滑るように、走るようにメロディアスなフレーズを描き出す。『Chuku』、気持ちを揺さぶる決めのフレーズと疾走するビートを軸に、そのうえで各自が自由に音の絵筆を走らせてゆくフリーフォームな楽曲だ。演奏がとてもグルーヴィだからこそ、各自のソロプレイがどんなベクトルに描き進もうと、それを彩りとして見せていた。

再び登場したトークコーナーでは、メンバーどうしがお互いのことをリスペクトしあう会話を交わすと、そこから各自の人間性も見えてきたように、演奏面だけでは伺え知れない各ミュージシャンの素顔が浮き上がってきたのも嬉しかった。

岡聡志と前田遊野のまろやかな音の交わしあいから、演奏は夜の帳を覚えるように『Shinjuku』へ。触れた人たちの気持ちを優しく音の毛布でくるむような温かい演奏だ。そこへ、西脇辰弥の歪んだオルガンの音が都会の喧騒を加えてゆく。全体的には音数を減らし、互いにまろやかな音を塗り重ねながら穏やかな夜の景観を描いてゆく形だ。ゆったり気持ちを寄り添わせ、テールランプの光が流れるような演奏に心地好く触れていたい。楽曲が色を濃くするごとに演奏も熱を帯びてゆく。何時しか景観は、都会の夜の喧騒の中へと足を踏み入れていた。2本のギターが気持ちを騒がせる。その音を煽るドラム演奏。そこへ、演奏のテンションを上げながらも変わることなく落ち着いたまろやかな空気をBOHのベースが与えていた。

演奏後に軽く会話をしてゆくのも、スタジオからのライブ配信らしい風景。続く『Hungarian Ambulance』は、BOHの弾むフレーズを合図にスタート。各自が軽快な音色ながらも、その中へ攻めた意識を注ぎ込み、演奏の中へ飛び込んでこいと観ている人たちに誘いをかけていた。各自のソロプレイも心地好く耳に飛び込むのだが、いずれもエッジ鋭い攻めた音色や意識を忍ばせている。BOHや前田遊野のリードする音に他のメンバーが勢いを持って絡む姿には開放的なのに攻撃性も感じられ、とても刺激的だった。

ここで飛びだしたのが、BOHが10代の頃にコピーしていたという増崎孝司のバンドDIMENSIONのナンバー『IMPRESSIONS』。伸びやかな演奏の数々の土台を支える、性急なドラムビートも心地好い。いや、気持ちを騒がせる疾走感のある演奏だからこそ、伸びやかな増崎孝司のギターフレーズをはじめ、各自の演奏が、緩急を付けながらも踊るような旋律の数々を楽曲の上に刻んでいた。素直に身を預け、心地好く演奏に浸っていたい気持ちだ。とはいえ、演奏はどんどん熱を帯びていき、後半から終盤へかけてのスリリングな音の会話は、観ていて嬉しく心を奮わせた。

最後に仮BANDは、これからの季節に似合う『Snowflakes』を演奏。真っ白な雪の結晶をしっとり降らせるようにBOHのフレットレスベースが優しいフレーズを零せば、他の演奏陣も、夜の闇の中、キラキラ反射しながら降る雪のような様を描きながら、少しずつ音を積み重ね、綺麗な音の雪でこの空間を埋めつくしていった。それまでの熱をゆっくりと落とすように。でも、その熱をすべて奪うことなく、体温よりも少しだけ温かな熱で心を包むような演奏を届け、肌に余韻を覚えながらライブの幕を閉じていった。

果たして、4回目となる配信ライブは来年に行なわれるのか。いや、ぜひとも行なっていただきたい。

TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. 1.侍Groove
  2. 2.Pleasure
  3. 3.Some Skunk Funk
  4. 4.Song of my heart
  5. 5.Dancing Baloney
  6. 6.Jamrika
  7. 7.U-yeah!!!
  8. 8.Chuku
  9. 9.Shinjuku
  10. 10.Hungarian Ambulance
  11. 11.IMPRESSIONS
  12. 12.Snowflakes
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