トラブルさえも、心騒がせる景色へ塗りかえた一夜。

コロナ禍の時期でもあった2020年6月28日に行った公演から、約3年。満を持して、ついにDAITAがライブの場へ戻ってきた。今年1月には、3年半ぶり、ダイレクト・シリーズとしては10年ぶり、4作目となるアルバム『DIRECT WORD』をリリース。しかも、ソロ活動20周年というアニバーサリーも重ね合わせ、DAITAは6月25日に日本橋三井ホールで「DAITA Solo Debut 20th Anniversary Concert THE GUITAR EMISSION – DIRECT WORD -」を開催した。

最新アルバム『DIRECT WORD』に描き出した世界観をこの場へ臨場感を持って描き出すように、荘厳な物語を告げるような物々しい重厚な音を響かせ、『Beginning』(SE)が流れだす。舞台に現れたDAITAがギターを手にするや、フロア中から上がる歓声。楽曲に煽られるように鳴り響く手拍子。そして…。

DAITAの指先がギターのネックの上で踊りだす。ライブは、DAITAのタッピングプレイも印象深い『Fingeroid』からスタート。次々と叩きつける荒ぶる音の刺激へ煽られるように、楽器陣の演奏も高鳴りだす。DAITAは一心不乱にギターのフレットを見つめながら、気持ちを奮わせる音を響かせていた。卓越したプレイにも目を奪われるが、DAITAの気迫あふれるその姿に刺激を受け、客席中の人たちの気持ちの糸も次々とほぐれ、心が解き放たれてゆく。

壮大かつシンフォニックな音が響きだす。それを合図に、広大な景観を描く『Direct Word』の演奏に乗せ、DAITAのギターのリフが鮮やかな色を振りまきながら走り出す。彼は多彩な色を持った音を響かせ、この会場へ、ふたたび気持ちを自由に解き放つ音の絵を描きだした。強い意思を抱いた戦士たちが戦いを繰り広げる、そんな音絵巻が脳裏に広がり出す。軽快に走るDAITAのギターの音色が、心地好く気持ちを高ぶらせる。チョーキングした音の響きは、抱えていた剣を何時しか翼に変え、雄々しい気持ちを胸に荒ぶる空間へと羽ばたきだしていた。そんな気持ちに、いつしか心が塗り変わっていた。

タイトなドラムビートに乗せ、DAITAのギターの音が五線譜の上を滑るように駆けだした。『Rock’n Roll Driver』に乗せ、砂ぼこり舞う荒れた大地を、身体を前のめりに疾走し続ける。自ら困難へ挑み、そのすべてを、奏でるギターの音色の斧でなぎ倒すように進み続ける。ここは都会の喧騒から離れた、荒れ果てた荒野が広がる世界。広大な地をDAITAは、自ら奏でる音色を進撃の合図に、自由に走り続けていた。

「3年ぶりに戻ってきました」の言葉。この日は、何の制限も制約もない、自由の場。その空間を改めて手に出来たことが嬉しい。

3人が繰り広げるバトルによって生まれた熱い演奏が、唸りを上げて騒ぎだす。DAITAが突きつけたのが『Emphatic Line』だ。ソリッドにしなるギターのメロディアスな音色が、この空間を飛びかいながら歌っていた。DAITAは、自由を手にした喜びを、自らの肉体や声の変わりに、ギターの旋律に乗せて歌っていた。いや、ここで暴れ騒ぐことを謳歌していたと言ったほうが正しいだろう。演奏が進むにつれ、歌っていたギターの音が叫びに変わっていたのも、DAITA自身が、己の気持ちを縛っていた鎖をすべて蹴散らし、消し去ろうとしていたからだ。気持ちが燃える。魂が奮い立つ…。

重厚で黒い荘厳シンフォニックな『AVG』に乗せて、DAITAのギターが雄々しく攻めたてる。戦いを挑む?いや、DAITA自身は切っ先鋭いギターの旋律を鋭利な刀のように突きつけ、あらゆるものを薙ぎ倒し、この場に自由という楽園を作り上げようとしていた。重厚な音を持って攻めるのも、あらゆる困難を切り開き、そこへ新たな王国を作りあげるための行動。いつしかその音色は黒い二つの翼となり、雄々しき気持ちを胸にこの世界(空間)を飛びかっていた。

ここで楽器のトラブルが発生。即座にMCへと切り換え、アルバムが世界各地でチャートの上位、香港で1位になったことを嬉しそうに報告していた。だが、なかなかトラブルが解決しない………。

長いトラブル解決の時間を経て、仕切り直しという名目のもと、ライブはふたたび最初からスタート。

DAITAの指がギターのネックの上でふたたび自由に滑り出す。唸りを上げて駆けだした演奏の上で、気持ちを新たに塗りかえたDAITAが『Fingeroid』を叩き出す。これまでの鬱憤をすべて解き放つように、彼は一心不乱に弦に指を叩きつけ、情熱を抱いた音を繰り出していた。それまでのネガティブな気持ちを消し去るよう、鬼気せまる表情で演奏をするDAITA。一度切れた緊張の糸を結び直すのは、DAITAを含むミュージシャンたちも、観客たちも容易ではないだろう。でも、曲が熱を帯びるごとに、互いの気持ちは、生きた音をむさぼり出していた。

それを強く感じたのが、続く『Direct Word』のときだった。気持ちのはやるリズム隊の演奏を身に受けながら、DAITAは巧みにビートの上に感情を寄り添え、旋律の一つ一つを滑るように響かせて演奏を楽しんでいた。いや、楽しんでいたというのは勘違いかも知れない。DAITAを筆頭に、楽器陣のみんなが鬱積した感情をぶつけ、心を解き放つように奏でながら、自らの気持ちを奮い立たせていた。

タイトなドラムビートに乗せ、DAITAと観客たちがクラップを始めた。DAITAが野太い音を響かせ、勇壮にギターを鳴らしだす。重厚な音を轟かせる『Rock’n Roll Driver』に乗せて豪快に。でも、勢いを持って演奏が走りだした。あらゆる困難をなぎ倒す勢いで駆ける演奏。DAITAの奏でる野太いギターの旋律の一つ一つが、気持ちを煽り、高ぶらせる。DAITA流のロックンロールは、いつしか先の記憶など消し去り、ここにいる人たちの気持ちをしっかりと熱情させていった。

本来の音に戻りました。引き続き、飛ばしていきます」の言葉をきっかけに演奏をしたのが、『Emphatic Line』。ジェフ・ベックを彷彿させるしなるソリッドな旋律を奏でながら、DAITAは、心地好いロックンロールな世界へ観客たちを導いてゆく。耳馴染み好くも激しいフレーズの数々が、身体を揺らしだす。身を反らし、フロア中へ粒だった音を次々と放ち続けるDAITA。その音が、胸を嬉しく騒がせた。

荒ぶる漆黒の音色がフロア中を覆い尽くす。その上で、DAITAは『AVG』を通して美しく、でも存在感の強いフレーズを響き渡らせる。クリアーながらも硬質な音が舞台の上で踊っていた。いや、五線譜の上で短距離走をするように、印象深いフレーズを次々と響かせ、ここで魂を燃やしているぞという姿をしっかりと示していた。

とても美しく華やかな楽曲だ。この空間に華やぐ音色の花を舞い踊らせる『Maillot Jaune』の演奏の上でDAITAは、心踊る、美しく伸びやかな旋律の数々を届けていた。何をも恐れない無敵で、自由な気持ちを胸に、今を、青春を謳歌するように響き渡るギターの音色に触れていると、気持ちが奮い立つ。その演奏を掲げ、希望を胸に突き進む。そんな意識に心を染めてくれたのが嬉しい。

幻想的な音色が、ゆったりとフロア中へ染み渡りだす。DAITAは、心を震わす音色を天へと高く舞い上がらせるように奏でていた。澄み渡る美しい音の数々が、心を洗い流す。『Dawn Valley』が描きだしたのは、幻想的で優しい、魂を浄化してゆく演奏だ。目の前に広がっていたのは、広大な夜の谷間の中、その空間を自由という翼を羽ばたかせ、朝焼けの景色へ向かって飛びかうDAITAの姿。そんなファンタジックな景色が浮ぶくらいロマンチックな気持ちに浸っていた。

トラックを背景に、DAITAのギターの演奏のみで届けたのが『Jindai』。この曲では、巧みにアーミングを用いて感情の揺れを描き出し、美しく伸びやかなチョーキングの音色を響かせ、この場を、無限の大地と澄み渡る夜空が広がる異国の夜の景色へ塗りかえてゆく。一つ一つの旋律が心地好く胸を貫けば、そのたびに魂が揺さぶられる。何時しか観客たちは、時代を超え、異境の世界へと心を旅立たせていた。

ふたたび楽曲は、輝きを持って走り出した。『Red Wings』の上で、DAITAは想いを語るようにギターの音を鳴らす。いや、心地好く駆ける演奏の上で、もっと一緒に楽しもうぜと音の言葉を投げかけてきた。華やかで開放的な音色の上で、言葉を連ねるように歌うDAITAのギター。その誘いを受け、彼らの演奏という飛行船へ一緒に乗り込み、共に心地好い風を感じていたい。

1曲ごと巧みに表情を塗りかえ、DAITAは様々な物語を目の前に描き出す。『Ancient Moon』では、ふたたびこの空間を、スリリングさを抱いた荘厳な音色に染め上げる。その上で、DAITAのギターが勇ましく行進をするように音を奏でていた。月明かりに照らされた中、気持ちを高ぶらせ行軍する。その勇ましい気持ちを、この曲が、想いを奮わせる音色を通して示していた。

『Spinning』(SE)をブリッジに、DAITAは、この空間に描いた物語の新たなヘージをめくりだす。

変拍子や溜めを用いたスリリングな演奏が、炸裂。DAITAは、心地好い緊張感を抱いた演奏も魅力的な『Exotic Soul』に乗せ、気持ちを前へ前へと突き動かしながら、勇壮なフレーズの数々を次々と解き放っていた。心地好い緊張感を持った中での音の駆け引きが、気持ちを嬉しく騒がせる。巧みなタッピングプレイも、華やぐトリッキーな要素に加えながら、DAITAはふたたびこの場へ、魂を勇ましく奮わせる音の刺激を降り注ぎだした。

熱狂するあまり、フロアのあちこちから上がる声。重厚な音色が波紋のようにフロア中へ染み渡る。その音の上で、ギターのクリアな音色がハーモニーを描くように音を重ね出す。何かが始まる、心地好い緊張感を持った演奏だ。その演奏が、重厚な音をまといながら雄々しく躍動するのに合わせ、DAITAのギターも勇壮な戦士が魂を鼓舞するように、気持ちを奮わす音を響かせる。『Goðafoss』に乗せてDAITAがこの場に描きだす音色が、感情の内側を掻き回すような心地好い刺激を与える。その姿と演奏に心を奪われ、その様をずっと凝視していた。

ここで『Lucifer D -Limited Edition-』に触れ、狂喜した人たちも多かったろうか。この日は、DAITAのソロでの速弾きの演奏を合図にスタート。お馴染みのピアノの旋律が流れだし、DAITAのギターが寄り添いだす。そこへ演奏陣が猛々しい音をぶつけるのに合わせ、DAITAのギターが進撃の音色を高らかに響かせ、魂を掻き立てる情熱的な旋律の数々を次々と繰り出してゆく。その音色の数々は、一人シンフォニックオーケストラのような、感情を嬉しく奮い立てる勇壮さを持っていた。DAITAのギターを先導に、彼が導く場所へ向かい、共に拳を突きあげて行軍したい。魂を奮い立てる、まさに、その言葉の似合う様をDAITAは見せていた。

演奏は止まることなく、『真実と闘争(TRUTH AND STRUGGLE』へ。この曲では、ステージの上で演奏する3人が荒ぶる感情をぶつけあうように音を交わしあっていた。いや、戦わせていたというべきか。もちろんこの曲でもDAITAがリードを取り、この場に嵐のような喧騒を巻き起こす。DAITAは進撃の音色を突きつけ、あらゆる困難を蹴散らしながら、勇壮に、雄々しき姿で突き進む。感情を奮い立てる演奏に刺激を受け、客席でも腕を突きあげ、身体を揺さぶる人たちも、あちこちに登場していた。

本編最後にDAITAは、これまで以上に感情も、ギターのフレーズも荒ぶらせ、『Volcano High』を突きつけた。とても攻撃的だ。沸き立つ感情を、高揚した想いを、DAITAは低音の効いた野太いリフに乗せ、場内にいる一人一人の魂を打ち抜くように音の弾を次々と放っていた。途中には、メンバーらとのセッションプレイも登場。荒々しいその駆け引きが、さらに演奏を猛々しく尖らせれば、見ている人たちの気持ちも熱く揺さぶっていった。荒々しい中にスリリングさを持った演奏による駆け引きを見せたところも、この曲に触れながら興奮を覚えた嬉しい要素だ。

ふたたび舞台に姿を現したDAITAは、アンコール曲として一人で『Handroid』を演奏。この曲では、得意の速弾きを存分に繰り広げながら、歪んだ攻撃的な音をマシンガンのように弾き続け、観客たちを熱狂へと先導してゆく。フロアでも、アクレッシブな演奏に刺激を受け、クラップし続ける人たちが登場。荒ぶる感情をダイレクトな音へ繋げながら、DAITAは場内中の人たちの気持ちを熱く沸かせていった。

ふたたびバンド演奏に戻って披露したのが、ライブ初披露となる『Laramidia』。「Sony presents DinoScience 恐竜科学博」のテーマ曲という理由もあるのか、どこか遊び心を持った、ドリーミーでファンタジックな音色や演奏なのが嬉しい。いろんな宝物が詰まったおもちゃ箱をDAITAのギターで掻き回したら、胸を踊らせるおもちゃたちが次々飛びだした。そんな感覚だ。時を忘れた、巨大な生物たちが自由に闊歩する空間の中、一緒にフロンティアへ向かって旅を続ける。そんな気持ちを、この曲に触れながらずっと感じ続けていた。

荘厳な音色が場内中を染め上げる。その上へシンフォニックな音色が折り重なる。フロア中から起きたクラップ。その気持ちも演奏に加えながら、DAITAは野太くも澄み渡る音色を空へ向かって高らかに響かせた。『Zenith』の演奏が、触れた人たちの心にも自由という翼を授け、自由奔放に空を駆けめぐるDAITAと一緒にランデブーしていた。共に高みを目指し、笑顔を浮かべ、気持ちを心地好く解き放つ。エンディングで奏でた音色が、優しく心を抱きしめてくれたのも嬉しかった。

最後の最後にDAITAが、ぶつけたのが『19 Boogie』。攻撃的なリフビートを次々と繰り出し、DAITAは観客たちの感情をふたたび熱く騒がせる。DAITA流のブギーなロックンロールナンバーは、勇ましく攻撃的な音で身体を激しく踊らせる最高の興奮剤だ。華やかで激しい音を背に、ときに心地好くもスリリング&ブルーズなセッション演奏も繰り広げながら、DAITA自身が理性を破壊するロックンロールの衝動を存分に楽しんでいた。

大きなトラブルがあったとはいえ、それさえも忘れさせる至福のときをDAITAは届けてくれた。でも、彼自身は、いろいろ心残りもあるだろう。その想いは、ぜひ、次のライブという形を通して爆発させてほしい。

PHOTO:KAZUKO TANAKA(CAPS)
TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. SE.Beginning
  2. 1.Fingeroid
  3. 2.Direct Word
  4. 3.Rock’n Roll Driver
  5. 4.Emphatic Line
  6. 5.AVG
  7. 6.Maillot Jaune
  8. 7.Dawn Valley
  9. 8.Jindai
  10. 9.Red Wings
  11. 10.Ancient Moon
  12. SE.Spinning
  13. 11.Exotic Soul
  14. 12.Goðafoss
  15. 13.Lucifer D -Limited Edition-
  16. 14.真実と闘争(TRUTH AND STRUGGLE)
  17. 15.Volcano High
  18. -ENCORE-
  19. EN1.Handroid
  20. EN2.Laramidia
  21. EN3.Zenith
  22. EN4.19 Boogie

DAITAが当日使用したギターを紹介!

DAITA

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