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この日のライブを通し、原田喧太は30年間の歩みというよりも、ずっと変わらぬアーティストとしての生き様を示していった。
原田喧太が、ソロデビュー30周年を記念し、1月25日に下北沢シャングリラで「原田喧太ソロデビュー30周年記念 第一弾Live「addiction Guitar circus」」を行った。この日のメンバーとゲストは以下になる。
Vocal&Guitar 原田喧太
Drums CHARGEEEEEE…
Bass IKUO
Keyboard 柴田敏孝
Guitar 田川ヒロアキ
Guest Guitar SAKI
Guest Vocal 下山武徳
Guest Vocal 大黒摩季
とても豪華な面々だ。しかも今回は”第一弾Live”。今後の展開も気になるが、まずは第一弾公演の模様をお届けしたい。
ライブは、メンバー紹介も兼ねたブルージーなロックナンバーのセッション演奏からラフ&タフにスタート。いきなりクレイジーぶりを‥というよりも、これから狂ったように気持ちをHOTにするライブを繰り広げるぞと宣言をするように、原田喧太は渋いギターのフレーズを次々と繰り出しながら、この場に心地よい熱を生み出してゆく。
「立たんかい!! Are You Ready!!」の声を合図に、原田喧太自身が攻撃的な感情へ一気にシフト。豪快なロックンロールソングの 『Born to be crazy』を手に、気持ちも、身体も前のめりに攻めだした。ゴツゴツとした刺々しい音が舞台の上から解き放たれるたびに、その音が身体をチクチクどころか、ゴリゴリと刺激する。飾らない、ただ沸き立つ思いのままに、原田喧太が、演奏陣が真っ直ぐに音をぶつける。生々しい音の衝撃が身体を揺らす。立ち上がった満員の観客たちの身体の動きも、曲が進むごと、次第に大きくなっていた。
止まることなく、いや、心地よい高揚感を持ったまま『嘆きの天使』へ。とても解放感を持ったスケール大きな楽曲だ。原田喧太は、雄大かつ広大な演奏を通し、観客たちを自身のインナーフィールドへ招き入れる。歌に、演奏へ心地よく酔いながら、ゆったりと。でも、振幅大きく身体を揺らしていたい。原田喧太の歌へ、共に腕を高くあげて想いを返したい。互いの距離が自然と縮まる。この関係性が嬉しい。
ノイズ混じりのシンセの音が狂騒とした空気を描きだす。そこへソリッドなギターの音を突きつけ、原田喧太はこの空間に心地よくもスリリングな空気を作り出す。サビではエモーショナルな歌を届けつつも、原田喧太は『Days of glory』を通して、切れ味鋭い旋律の数々を繰り出していた。ソリッドさとエモさをミックスアップした、そのスタイルが格好いい。演奏は気持ちを奮い立てるほどザクザクしているのに、歌に人肌感を覚えるからだろう、彼の歌声をギュッと抱きしめたくなる。
「気がつけば、ソロデビュー30年でした。23歳の曲を53歳で演るのは無謀です。キーが高いんだよ。でも意地でもキーを下げずに歌います」
その姿勢が、常に一本筋を通した活動を続けてきた原田喧太らしい。
メンバーらと顔を見合せ、ラフなモードで次のブロックへ。心地よいビートに乗って気持ちを軽やかに弾ませるように、原田喧太は『Close to my heart』を歌唱&演奏。いい感じで肩の力を抜いたプレイをメンバーみんなで繰り広げてゆくのがいい。その空気に触れていると、こちらまで変な気負いを捨て、たとえ素面だろうと、音へ酩酊してゆくような感覚で楽しさを摂取していける。
ピンク色のFujigen Kenta Modelから、ライブ冒頭でも使用していた青いシェクターへシフト。繊細ながらも鋭利さ持った音を繰り出しながら、原田喧太は歌心を大切に『白い雨』を歌唱。攻めるように歌う姿も心を揺さぶるが、甘めな歌声で場内中の人たちの期待をギュッと抱き抱えるように歌う姿にも親しみを覚え、互いの心の距離を、さらに縮められた気持ちにもなっていた。田川ヒロアキの奏でるフレーズへ寄り添うように音を鳴らす、その関係性もいい。
伸びのある、しかもメロディアスなフレーズを原田喧太が奏でつつ、『Lost paradise』へ。ここのブロックでは歌心を持った、甘くキャッチーな楽曲を次々と演奏。愛しい人へ優しく歌いかけながらも、厚い胸板ですべての思いを受け止めるような様で『Lost paradise』を歌い奏でていた。印象深い燻銀なフレーズを繰り出しながらも、優しい表情と歌声で、観客たちを自身の懐の中へグイグイ引き寄せる。だから、素直に気持ちを原田喧太へ預け、流れる歌や演奏に身を任せられる。終盤、原田喧太と田川ヒロアキによる2本のギターがハモリあう様も、気持ちを温かく躍らせていった。
切々としたエレピの演奏から、楽曲はスタート。その音が甘く優しい音色へ変化するのに合わせ、原田喧太は旋律の上に身と心を預けるように。そして、胸の内に抱いた悲しみを昇華するよう、ひと言ひと言を紡ぐよう大切に歌っていた。バラードナンバー『Last time forever』で原田喧太は、気持ちの揺れを繊細に描き出す一人のヴォーカリストとして、この曲と向き合っていた。切々とした演奏へ原田喧太自身が寄り添う…のではなく、愛しい人への想いを、まるで届かないラブレターを読むように歌う原田喧太の歌声に、演奏陣のみんなも温かく寄り添い、その想いに悲しみの色を描き加えていた。終盤へ向かうほど、楽曲はスケール大きな世界に変貌してゆく。いつの間にかフロア中の人たちも、その歌声や姿に視線が強く惹きつけられていた。演奏が終わり、場内中から大きな拍手と歓声が起きていたのも納得だ。
セミアコギターへ持ち替えた原田喧太は、鍵盤奏者の柴田敏孝と一緒に『Lluvia』を演奏。シンプルな編成のもと、小さな場末のクラブのような雰囲気を醸しながら、原田喧太は物語の語り部となって歌い奏でていた。小編成ながらも、2人は触れた人たちの心と視線を、共に描き出した世界へ惹きつけ続けていった。セッション感覚で物語にいろんな変化を与えてゆく様に、気持ちがずっと惹かれていた。
ここで、ゲストギタリストとして伊藤大貴が登場。ここからはインストナンバーを披露するブロックへ。トリプルギター編成で最初に奏でたのが、『It’s show time』。ゴリゴリでソリッドなブルーズ&ハードロックな演奏が炸裂。原田喧太の繰り出す攻撃的なリフと、胸を躍らせるメロなフレーズの絡み合いに、気持ちが嬉しく奮い立つ。1曲の中、巧みに転調もしながら、原田喧太はこの場に疾走した心地よいウネリを作り上げていった。
続く『Let it go』では、ダブルネックの12弦ギターと6弦ギターを巧みに使い分け、どこかアイリッシュな香りも漂わせ、この場に心躍らせる宴の様を描き出す。みんなで心をからっぽに、楽しい空気を作りながら音で酔いしれる。気心許した陽気なバイキング野郎たちの宴の様が、目の前には広がっていた。
1曲ごとにギターを持ち替えて演奏。続いて披露したのが、「三本締め」のリズムも楽曲の一部に据えた、かなり攻撃的な装いを持ったハード&ロックンロールナンバーの『Sanbonjime』。この曲では激しく駆け続ける演奏の上で、次々と速弾きで数多くの音玉を撃ち続ける姿を見せていた。メロディアスでハードロック/メタル寄りの姿勢を持って、原田喧太は観客たちの騒ぎたい感情に熱い刺激を注ぎ続ける。終盤の三本締めのフレーズも、気持ちを熱く沸かせてくれた。最後にみんなで三本締めをして終わるところも、この曲らしい。
インストコーナーの最後を飾ったのが、『Addiction』。自ら「すごい曲をやります」と語っていたように、原田喧太は、心の中へマイケル・シェンカーを降臨させ、原田喧太を含む3人のギタリスト陣と共にユニゾンやトリプルでハモりながら、メロディアスながらも超絶速弾きをした演奏を繰り出していった。途中には、ベースのIKUOの超絶ソロプレイも登場。さらに、観客たちを巻き込んだCHARGEEEEEE…のドラムプレイや、リズム隊によるセッション演奏も繰り広げるなど、メンバーそれぞれが馬鹿テクぶりを遺憾なく発揮。このバンドの持つ懐深さをがっつりと示していった。曲の後半でも、メンバー全員で跳ねた攻撃的な演奏を繰り広げ、まるでメタルなカーニバルのような様を創出。次々と表情を塗り替えながら、演者たち自身が音をぶつけあう様を存分に楽しんでいた。
NEMOPHILAのSAKIが、ゲストギタリストとして登場。さらに、原田喧太のギターテックをいつも手がけているおーちゃん(大沼氏)も加え、なんと5人のギタリストで『Going Home』を演奏。まるでギターのオーケストラだ。その言葉に相応しい雄々しき景観を描きながら、楽曲は勢い良く躍進し続ける。これぞまさにロッケストラ(ロック×オーケストラ)。勇壮で極太い演奏に触れ、しばし気持ちも雄々しき様に染めあがっていた。
ここからは、原田喧太・田川ヒロアキ・SAKIのトリプルギター編成へ。続くエクストリームでエモーショナルな『Running out』では、弾き倒すSAKIを中心に据え、3人で巧みにハモりながら、野太い音でギターバトルを繰り広げていった。一心不乱に頭を振り乱して演奏をするSAKIの姿も印象的だ。途中には、柴田敏孝の超絶な鍵盤プレイも登場。この曲でも、バリテクの演者たちによる暴れ倒すセッションプレイが繰り広げられる。中でも、SAKIの歪みを上げた野太いギターの音が自由奔放に暴れ倒す様には、見ている側も魂を熱く奮い立てられた。終盤には、大きく手を振り歌う原田喧太に合わせ、フロア中の人たちも大きく手を振る様も。見入るのではなく、メンバーらの作り上げた暴れ祭りへ一緒に参加。ソロ演奏も含めた、3人のギタリストたちによるファンキーでロックなパーティーへ嬉しく溺れていった。
この熱さを、さらにもっと熱くしたい。原田喧太がゲストシンガーとして呼び入れたのが、大黒摩季。演奏したのが、大黒摩季の『熱くなれ』なのが嬉しい。しかもこの日は、同楽曲をヘヴィメタル・バージョンにアレンジ。激しく唸るパワフルな演奏を背景に、大黒摩季も、いつも以上にハスキーさを生かした歌声を魅力に、この場に熱情した空気を作りあげていった。ズドドドドッとした凄まじいツーバスドラムの演奏を軸に据えた『熱くなれ』は、もの凄い馬力を持っていた。SAKIに至っては、頭を振りながら演奏。間奏では、ソロプレイを奏でる原田喧太に大黒摩季が寄り添う場面も登場。メタル版の『熱くなれ』も、本当に気持ちを熱く熱く騒がせてくれた。
大黒摩季とSAKIを送り出したうえで、ライブも佳境へ。「上がっていくよ」の声を合図に飛びだしたのが、『Frantic…』。激リフの応酬を繰り広げつつも、ふたたび気持ちを前のめりに、原田喧太は観客たちを煽るように歌いだした。歌も演奏も、だいぶ攻めた姿勢だ。激しくもノリ良い楽曲に合わせ、場内中の人たちも身体を大きく揺らし、ときにクラップをしながら、舞台からあふれだす楽しい空気へ思う存分酔いしれていた。
そのノリを引き継ぐ形で、原田喧太は最後に『Do it boy』を演奏。胸躍らせる、つかみを持ったロックンロールナンバーを魅力に、ときに観客たちも「Oh!Oh!Oh!Oh!」と叫びながら、身体を縦に揺らし、ロックンロールの持つ心踊る衝撃を全身で味わっていた。
アンコールで、ゲストヴォーカリストとして下山武徳が登場。演奏したのが、AC/DCの『Highway to Hell』。ボン・スコットの魂を身体へ降臨させたような迫力を持って、下山武徳が歌いあげる。そこへ、アンガス・ヤングに身を染めた原田喧太が、野太いギターの音でグイグイとせまる。カバーというよりも、彼らなりのオマージュ的な様を持って演奏。その豪快なノリに、身体が素直に反応し続けていた。
思いきり激しく、ハード&ロックンロールなセッション演奏を繰り広げるように、原田喧太は『人生得てしてそう云うもんdeath』を歌唱&演奏。疾走する演奏と歌声が巧みに寄り添い、どんどん勢いを増してゆく。つかみを持ったキャッチーな楽曲の上で、心地よい緊張感を持って演奏が炸裂。親しみを覚えながらも、やはり身体はずっと騒ぎ続けていた。
この日の出演者たちをふたたび招き入れ、最後の最後に原田喧太が届けたのが『生きてるうちが花なんだぜ』。「オーウオゥオゥ 生きてるうちが花なんだぜ」と歌う原田喧太の声とブルーズなセッションをするように楽器陣が演奏。大黒摩季や下山武徳も歌に参加。いなせなブルースナンバーを通し、最後の最後に人生訓的な楽曲を届けてきたところも嬉しい。舞台の上でセッションをするメンバーたちの姿を見ながら、場内中の人たちも大きく左右に手を振り、共に歌っていた。後半には、「オーウオゥオゥ 生きてるうちが花なんだぜ」と観客たちが大合唱する場面も誕生。約3時間に渡ったこの日のライブを通し、原田喧太は30年間の歩みというよりも、ずっと変わらぬアーティストとしての生き様を示していった。
TEXT:長澤智典
PHOTO:渡邉俊夫
《SET LIST》
- 1. Born to be crazy
- 2. 嘆きの天使
- 3. Days of glory
- 4. Close to my heart
- 5. 白い雨
- 6. Lost paradise
- 7. Last time forever
- 8. Lluvia
- 9. It’s show time
- 10. Let it go
- 11. Sanbonjime
- 12. Addiction
- 13. Going Home
- 14. Running out
- 15. 熱くなれ
- 16. Frantic…
- 17. Do it boy
- EN1. Highway to Hell
- EN2. 人生得てしてそう云うもんdeath
- EN3. 生きてるうちが花なんだぜ
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