INORAN(Vo/Gt)が毎年開催している9月29日のバースデーライヴを中心に、東京2DAYS、京都、大阪を巡る『INORAN BIRTHDAY CIRCUIT‘24』を完走した。INORANにとっては、LUNA SEAの35周年記念ツアーと並走する相当なハードスケジュールとなったが、Yukio Murata(G / my way my love)、u:zo(B)、Ryo Yamagata(Dr)らと約1年ぶりに集結して鳴らすロックンロールサウンドには、この4人ならではの熱量とグルーヴ感、中毒性があり、定期的に“摂取”したいと渇望してしまう。レポートするのは、誕生日当日開催のオフィシャルファンクラブ「NO NAME?」限定公演前夜、ツアー初日9月28日(土)東京・LIQUIDROOMの模様である。

1曲目から意表を突いて、美しいメロディーと日本語詞に叙情性が宿るミディアムナンバー『千年花』で幕開け。INORANの真っ直ぐな歌声が心に染み渡ってくる。ライヴで久しく披露されていなかったオリジナルアレンジだったことに歓喜したファンもいたことだろう。明白なスローガンを掲げた反戦歌ではないものの、この時代と共鳴し、平和への祈りを感じ取ることができる。終盤に向かって歌唱も演奏もドラマティックに昂っていき、アカペラで<いつまでも>と最後の一節を歌い終えると歓声と大拍手が起きた。即座にスタートした『Calling down』では、スタンドからマイクをもぎ取り、INORANはころがしに足を掛けて熱唱。光と闇、繊細さと激しさのコントラストを内包した名曲に聴き惚れる。『Something about you』『Beautiful Now』と連打された2曲は、ヴォーカルが独立して聴こえてくるというよりもバンドアンサンブルの中に自然に溶け込んでいるように聴こえた。かつ、詰め掛けたファンも含めて想いが一つの塊になり、温かな空気が会場に満ちているのを感じた。

素晴らしくハッピーな、“爆幸(バクコウ)”な時間を、このメンバーとスタッフとお前らと過ごしたいと思うので、最後までよろしくお願いします!」とINORANはファンに語り掛け、「ライヴハウスっぽく行こうか? 行けるか?」と荒々しくシャウト。身体の内から喜びが溢れ出るようなジャンプとクラップを伴いながら『Awaking in myself』を披露した。連打した『One Big Blue』『Get Laid』『grace and glory』は、9枚目のオリジナル・アルバム『Dive youth,Sonik dive』(2012年)収録曲で、これに先立つ2011年発表の『Teardrop』から2012年に掛けての時期が、INORANがロックンロールにどっぷりと身を投じる起点となった時代だったと記憶している。10年以上の時が経ち、お馴染みとなったメンバーたちとINORANが生み出すバンドの音のうねりは強さと粘度を増していて、抗い難い心地良さがある。

INORANが「“わんぱく”メニュー、どう?」と問い掛けると、ファンは大拍手で応答。「ソロのライヴは1年ぶりだもんね。みんなに会いたかったです」と率直な想いを語りながら、フレンドリーに投げキッスを放つと、誕生日祝いの「ケーキとかプレゼントとか要らないから、熱を頂戴」とリクエスト。ギターを刻み始めると、インストゥルメンタル・ナンバー『Come Away With Me』へ。その後放ったのは、2001年リリースの2ndアルバム『Fragment』収録の『Come closer』で、このメンバーで鳴らすのは初となるレア曲だった。煌めく光を音像化したようなクリーンなギターアルペジオが美しく、明るさ、爽やかさは当時のINORAN楽曲としては異色とも言えるポップなナンバー。色褪せるどころか、今この時代にこそ真価を発揮する曲だったのではないか?と思うほど、現在のINORANバンドとこの日のセットリストに馴染んでいた。

このツアーではTシャツがチケット代わりになる“プレミアム・チケット”を初導入。ブルーに染まった客席を見渡して、「海みたいでいいよ。俺の作戦通りだ、ありがとう(笑)。でも一体感があって、良くない?」と笑顔で問い掛けたINORAN。メンバーも交えてトークを繰り広げ、より一層和やかなムードを醸し出したかと思えば、直後の『no options』では、空気を切り裂くような鋭く激しいギターリフで圧倒。この日は水素エネルギーによって発電した電気を用いたライヴだったのだが、その利点をハッキリと感じた瞬間だった。電気の供給は、ライヴ会場の敷地内に燃料電池自動車「クラウンFCEV」を停車し、出来立てのフレッシュな電気をステージ上の楽器へ届ける、というシステム。LUNA SEAのライヴでは2017年から推進しているプロジェクトの一環で、後にU2のライヴにも取り入れられた試みだが、INORANソロとしては今回が初だった。

ヒップホップテイストを取り入れたエッジィなロックンロール『2Lime s』、歌も演奏もリミッターを外し振り切ったカオティックなアッパーチューン『Hide and Seek』と畳み掛けていき、KEN LLOYDとのロックユニットFAKE?のセルフカバー『LEMONTUNE』ではシャウト混じりの太い声を聴かせたINORANは、ステージを右へ左へと動き回って前のめりで絶唱。「いい音でしょ? 爆音が心地いいだろ? 水素最高だろ?」と問い掛け、ファンは「イエーイ!」と満足げに大声で叫んだ。爆音で鳴らされるラウドな曲たちが連続しても、決して耳が痛くなることもなければ不快感もなく、もちろんPAの手腕があってのことだが、水素エネルギー発電による電気がクリアーな音づくりに貢献しているのを体感した。

会場敷地内の燃料電池自動車TOYOTA「クラウンFCEV」と外部給電器HONDA Power Exporter 9000

みんながこうやって来てくれて…毎日生きている中で、冒険というか、旅というか、新しい面を見られるのも、みんなのお陰だと思う」と、感謝の気持ちをしみじみと語ったINORAN。「その全ての意味を込めて、次の曲を贈ります」と告げて『Thank you』を届けた。手をワイプしながらシンガロングするファンの姿を見渡すINORANが、優しく幸せそうな笑みを浮かべていたの印象的だった。歌い終えて「どうもありがとう」と呟くと、「もっともっとみんなと一つになりたいと思ってます。次の曲は、みんなの魂をステージに。もっと近くに来てください」と呼び掛け、始まったのは『All We Are』。フロアに背を向け、魂のこもったギターリフをまずは奏でると、向き直って歌い始める。一言一言とても丁寧に、やはり魂を込めているのだ、と感じられた。<Yeah yeah>の熱いコーラスをファンが紡ぎ、それを受け止めたINORANは熱く歌い、メンバーも歌心に溢れた音を鳴らす、という想いのキャッチボール。たっぷりとした掻き回しの末に最後の一音が鳴り止むまで、その連鎖は続いた。「これが本当にラストよ。9月28日、最高の日にしようぜ!」とイントロに乗せて煽り、『raize』でハッピーにライヴを締め括った。

今日から始まるツアー、とことん楽しみたいと思います。京都も大阪も来るよな? (2025年2月にLUNA SEAが開催する)東京ドーム来る人? 明日来る人?」とINORANが問うとファンは幸せそうに「はい!」と挙手。本人も幸せそうに「合格!」と笑った。「今日のライヴは53歳最後のライヴ。次に会った時は、一つ大人になってるからな。子どものINORANを楽しんでいただけた? また会おうぜ、サンキュー!」と挨拶してステージを後にした。長いMCがあるわけでもなく、あくまでも音楽的な、ロックバンド然とした公演なのだが、1曲目を『千年花』にしたことが最後まで利いていて、ライヴという一期一会を楽しむことができる“日常の尊さ”を痛感できる、秀逸なセットリストだった。INORANソロバンドが築いてきた関係性、その絆が生む熱量、グルーヴの心地良さも至高。INORANファンはもちろんのこと、未体験の音楽ファンがいるならば是非、一見を薦めたくなるツアーだった。

取材・文:大前多恵
PHOTO:Yoshifumi Shimizu

《SET LIST》
  1. 1.千年花
  2. 2.Calling down
  3. 3.Something about you
  4. 4.Beautiful Now
  5. 5.Awaking in myself
  6. 6.One Big Blue
  7. 7.Get Laid
  8. 8.grace and glory
  9. 9.Come Away With Me
  10. 10.Come closer
  11. 11.no options
  12. 12.2Lime s
  13. 13.Hide and Seek
  14. 14.LEMONTUNE
  15. 15.Thank you
  16. 16.All We Are
  17. 17.raize

INORAN(Vocal, Guitar) 使用楽器・機材紹介(1)

INORAN

INORAN初のオリジナルレシピブック発売決定!

INORANが初のオリジナルレシピブックを発売!
食も音楽も、好きなものにはとことんこだわるINORANが、「もしもレストランをオープンしたら…」をコンセプトに、朝食から夜食、〆のデザートまでさまざまなレシピを網羅した一冊。
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INORAN自身がシェフやソムリエに扮した、前代未聞のヴィジュアルもたっぷりご堪能ください!

別バージョンのカバーとオリジナルエプロンが付いた「限定版BOX 〜Exclusive edition〜」 も同時発売!
HMV&BOOKS online、NO NAME? WEB SHOP他で、予約受付中!

◆書籍情報
《通常版》
2024年12月24日発売
「INORAN KITCHEN」
[販売価格] 2,970円(税込)
[仕様] AB変版(210×210mm)/オールカラー/96P予定
[発行] 主婦の友社

《豪華版》
2024年12月24日より順次発送
「INORAN KITCHEN オリジナルエプロン付き 限定版BOX 〜Exclusive edition〜」
※HMV&BOOKS onlineおよびNO NAME? WEB SHOP限定販売
[販売価格] 14,300円(税込)
[仕様] 限定カバー(書籍本体は通常版と同仕様)/オリジナルエプロン付/ BOX入り
[発行] 主婦の友社

▼書籍詳細はコチラ
https://books.shufunotomo.co.jp/book/b10105539.html

Blu-ray「IN MY OASIS Billboard Session」Now On Sale!!

2022年6月にリリースされたセルフ・カバー・アルバム「IN MY OASIS Billboard Session」を全編映像化したBlu-ray作品。アルバム・レコーディング時に同時収録されたBillboard Live YOKOHAMAでのセッション・ライブを全編完全収録!

[品番] KIXM-515
[価格]¥8,580(税込)

【収録予定曲】
01.千年花
02.Beautiful Now
03.I swear
04.raize
05.Daylight
06.Starlight
07.Fading Memory(feat. Mao Denda)
08.Time After Time(feat. Mao Denda)
09.Glorious Sky(feat. Mao Denda)* Origin version
10.Long Time Comin
11.Rise Again
12.Thank you
<特典映像>
The Story of IN MY OASIS


ESP E-II Horizon Infinite MOGAMI
山野楽器Ginza Guitar Garden Digimart LOVEBITES
Ryoga Snare Weight DRUMSHOW
Dean Martin Ukulele Cannonball
Hofner Orange Valve Tester MkII Heritage
Orange Glenn Hughes MONO