LUNA SEAの結成35周年を記念した自身最大規模のホールツアー。そのEPISODE 2より、8月24日(土)に東京ガーデンシアターで行なわれた『IMAGE or REAL』編の模様をレポートする。

メジャーデビューアルバム『IMAGE』発売に伴う1992年のツアー『IMAGE or REAL』を現代へと蘇らせる本公演。以前、結成30周年のタイミングに一夜限りのスペシャルで実施されたことがあるものの、当然の如くチケット即完となってしまっただけに、このライブは多くのSLAVE(LUNA SEAファンの呼称)が強く待ち望んでいたものに違いない。

当時と同様、ケイト・ブッシュの『バブーシュカ』をSEに現れた5人。音玉がドーンと響いた『Déjàvu』でライブを華やかにスタートさせると、サングラスをかけたRYUICHI(Vo)の先導によって早くも熱いシンガロングを巻き起こし、ソールドアウトとなった会場のアリーナからバルコニー席までを大いに揺らす。SUGIZO(Gt&Vn)とINORAN(Gt)が奏でる対照的な輝きを持つ音色も、“未来・過去・今”が交差するさまも美しく、まさに『ERA TO ERA』にふさわしい幕開けだ。

J(Ba)と真矢(Dr)のパワフルなビートから火が付く『MECHANICAL DANCE』も痛快で、レーザーを贅沢に使った演出はもちろん、今のLUNA SEAならではの豊潤なアンサンブルがとにかく衝撃的。四半世紀以上前の楽曲ともう一度じっくり向き合う試みは大正解だったようで、キャリアを積んだメンバーが紡ぐ2024年らしい音の太さ、重厚なスケール感、エフェクトの好みなどが、実に生々しく浮き彫りになっていた。単なる焼き直しのライブにおいては味わえない現象ゆえ、序盤にして思わず面食らってしまう。

俺たちの限界に挑戦するツアーでもあります」と告げたRYUICHIがサングラスを外し、ここからギアが一段アップ。『ERA TO ERA -EPISODE 2-』を通してより磨きがかかったサウンドの中、SUGIZOの深遠なアルペジオリフに心奪われる『IMITATION』、Jのウォーキングベースが抑揚を生む『IN MIND』と、ライブでの演奏機会が少なかったレアナンバーが次々に聴ける、『IMAGE』の世界を間近で体感できることが素直に嬉しい。30年以上も昔、20代前半の新人バンドがデビュー期に作ったという事実が信じられない楽曲クオリティの高さにも、改めて驚かされるばかり。

『IMAGE』のライナーノーツによれば、アルバムのレコーディングには気が遠くなるほどの膨大な時間が費やされたそうだが、音の構築度や世界観の濃さはやはり尋常ではない説得力を感じさせる。また、LUNA SEAのメロディアスな側面もすでに確立されていたことが、今回のライブからクリアに伝わってくる。異端で前衛的なアプローチに挑みつつ、耳当たりはどこまでもキャッチーなため、作品としていっさい古くならないのがすごい。ゴシック、パンク、プログレを取り入れた、非常にメランコリックな初期曲の数々。しかし、現在の5人が鳴らす演奏はむしろブライトに映り、その進化と相まって、表題曲『Image』の“人間はただイメージに、輪廻の様に生き続ける。”という崇高な歌詞も胸を打つ。

オーディエンスであり、ファンであり、メンバーであるみんなから熱をもらって、俺たちは気づきました。そうか、このツアーは全国どんなホールも、ライブハウスにするために回ってたんだってね」と笑顔を見せるRYUICHI。

1stアルバム『LUNA SEA』のミディアムチューン『SANDY TIME』もセットリストに馴染み、中盤はさらにディープゾーンへと突入する。真矢の後方に十字架を象った照明が灯り、スモークが焚かれる演出のもと披露された『WALL』は、切なく刺さる曲のストーリーに加え、それを優しく癒すアウトロの流れ、INORANのアルペジオからSUGIZOのバイオリンソロに繋げる様式美も見事で、『IMAGE』に宿る奥ゆかしさがいっそう際立っていく。

そして『IMAGE or REAL』のハイライトのひとつとなったのが、暗雲が垂れ込めるスクリーンをバックに届けられた、退廃的なムードの『VAMPIRE’S TALK』だろう。ウィスパーやシャウトを果敢に交えながら、今この瞬間に懸ける、命を燃やし尽くすようなRYUICHIの鬼気迫る歌唱に、SLAVEたちはただただ息を呑む。極めつきは妖艶な声が舞う、アカペラの高音スキャットによるフィニッシュ。オリジナルとは一線を画す、曲の印象が大幅に更新されるライブアレンジが素晴らしく、願わくば『IMAGE』のセルフカバーアルバムもぜひ聴いてみたくなった。

『VAMPIRE’S TALK』の余韻も残る15分間のインターミッションを経て、大歓声が待つステージに真矢が登場。「別に照れなくてもいいんだよ。全部、ここに出し切ってもいいんだぜー!」と呼びかけ、タフなドラムソロと恒例のコール&レスポンスで客席をガツンと温めてみせた。RYUICHI、SUGIZO、INORAN、Jも程なくして合流し、そのまま疾走感あふれる『FATE』へとなだれ込む。

みんな、気分はどう? 32年ぶりだって『IMAGE or REAL』。過去に行ったらさ、未来があったんだよ。やっぱり、当時の俺たちの楽曲とアルバムツアーはすべてが新しかった。時代が追いついたんだなって再確認しました

自信に満ちたRYUICHIのMCに続いて繰り出されたのは、プリミティブな狂気で駆ける怒涛のハードコアナンバー『SYMPTOM』。溜め込んでいた鬱屈を爆発させるようなパフォーマンスが波状攻撃の合図となり、Jの激烈ベースラインで始まる『CHESS』、ブレイクの狭間に真矢が「ハッ!」という声を威勢よく轟かせた『TIME IS DEAD』と、ヘドバン必至なアッパーどころの連打で、ライブはみるみるうちに終盤へ向かう。SUGIZOとINORANが掻き鳴らすギターサウンド、重ねるコーラスも鋭く力強い。

『CHESS』の導入部や『TIME IS DEAD』のチョーキングソロなど、ここぞのフレーズは至ってシンプル。にもかかわらず、耳に残るインパクトは果てしなく絶大で、魅力的な響きを生み出すとともに、聴き手の心をギュッと掴んで離さない。そんな一つひとつのプレイが本当に流石だなと感嘆してしまう。結成35周年の今、LUNA SEAが唯一無二のバンドであることをまた思い知る。

本編ラストの『PRECIOUS…』では、SUGIZO、INORAN、Jが、RYUICHIの立つセンターに集まるシーンも。身近なミュージシャンの死を経験することが多くなり、“あの時には戻れない”という気持ちが高まったからこそ、LUNA SEAはオリジナルメンバーで現存できている幸せを大切に噛み締めながら、後悔しないように、振り絞るように、今の音を全身全霊で出す。バンドの覚悟が凛々しく見て取れる時間だった。

アンコールで5人が再びステージに立つと、『IMAGE』の収録曲において最も綺麗な『MOON』へ。ミラーボールがじんわりと輝き出す中、深い霧を思わせる心地よい音像とロマンティックかつ流麗な旋律が溶け合い、LUNA SEAの美意識がこの上なく極まる。RYUICHIが鏡をかざして光をキラキラ反射させるという、月でSLAVEたちを照らすかのような所作もたまらなく幻想的。

さらに、Wアンコールとして『BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー』を投下。東京ガーデンシアターを今一度ヒートアップさせたあとは、真矢、J、INORAN、SUGIZOが胸の内を明かす。

こうやって32年ぶりに『IMAGE or REAL』ツアーができるのも、ここに来てくれた人たち、ネット(U-NEXT)で生配信を観てくれている人たちのおかげです。みんなのおかげでLUNA SEAは、俺たちが結成当初に想像していたよりもとってもとっても素敵な、とってもとってもカッコいいバンドになりました!」(真矢)

35年前、俺たちには音楽しかなくて、周りに仲間は誰もいなくて……でも、気がついたら全国に、俺たちの音楽を好いてくれる子たちがたくさんいた。そしてずっとずっと歩んできて、今ここにいます。簡単に言ったけど、すげえことだと思わない? 信じれば絶対に何かは叶うんだということを、相変わらず俺たちは証明していってるのかもしれません」(J)

どうですか、今のLUNA SEAは? ひと回り、ふた回り大きくなりましたか!? このツアーで俺らがライブするの、週末じゃんか。でも、週末に会う前にみんなが愛しくなっちゃうんだよね。もちろん、メンバーは最初からずーっと愛しいです。スタッフもね。そうやってどんどん募る想いを、(2025年2月23日開催の)東京ドームまでいっしょに持っていきましょう!」(INORAN)

約3年ぶりにガーデンシアターへ帰ってきて、俺たちの故郷なんだなと実感しました。ここでかけがえのない時間を過ごせること、心から光栄に思います。今年の東京公演ってすごく貴重だからね。今日と明日しかないから。来年のグランドファイナルのドームに向けて、その最後の瞬間まで、みんなといっしょに旅をしたいです。まだまだ走り続けるので」(SUGIZO)

『IMAGE or REAL』の締め括りは、混沌や苦悩が渦巻くアルバムにおいて、ほのかに希望を覗かせる『WISH』。スマホでの写真撮影が許可された「#LUNAPIC」企画の実施、恒例の銀テープ発射、大型ビジョンに映るメンバーとSLAVEの笑顔、全員でのシンガロングが、眩しいくらいにハッピーな空間を作り出し、シングル曲ゼロの濃厚なライブは終演を迎えた。最後に、RYUICHIが語った去り際の言葉も書き残しておく。

今やれることをすべてやる。その瞬間に、みんなと会えたらいいと思う。明日があるとは思わない。今日できることが、明日できなくなるかもしれない。それでも、必ず明日を信じて突き進んでいく。俺たちはもう10回くらい立ってるけど、東京ドームをLUNA SEAの本当のライブハウス、どこよりもカッコいいLUNATICな会場にしようよ

取材・文:田山雄士
PHOTO:田辺佳子、上溝恭香

《SET LIST》
  1. 1.Déjàvu
  2. 2.MECHANICAL DANCE
  3. 3.IMITATION
  4. 4.IN MIND
  5. 5.Image
  6. 6.SANDY TIME
  7. 7.WALL
  8. 8.VAMPIRE’S TALK
  9. Drum solo
  10. 9.FATE
  11. 10.SYMPTOM
  12. 11.CHESS
  13. 12.TIME IS DEAD
  14. 13.PRECIOUS…
  15. <ENCORE 1>
  16. 1.MOON
  17. <ENCORE 2>
  18. 1.BLUE TRANSPARENCY 限りなく透明に近いブルー
  19. 2.WISH
LUNA SEA

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ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE-

LUNATIC TOKYO 2025
-黒服限定GIG-

2025年2月23日(日祝) 
東京ドーム
開場15:00 / 開演17:00

チケット・公演情報
https://www.lunasea.jp/live/20250223tokyodome

The Millennium Eve 2025 LUNA SEA|GLAY

The Millennium Eve 2025
LUNA SEA|GLAY

2025年2月22日(土)
東京ドーム
開場16:00 / 開演18:00

チケット・公演情報
https://www.lunasea.jp/live/20250222tme

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