昨年の8月8日でメジャーデビュー5周年を迎えて以降、弾き語りツアーや自身初となるビルボードツアーの開催、3rdアルバム『DRAMAS』のリリースなどを精力的に重ねてきた竹内アンナ。そんなアニバーサリーイヤーのフィナーレ、選りすぐりの楽曲で構成された“アーリーベスト”ワンマンライブの模様をレポートする。

森光奏太(Ba/dawgss)、松浦千昇(Dr/Yukino & Glanax)、半田彬倫(Key)、佐瀬悠輔(Tp/Gentle Forest Jazz Band、Answer to Remember、賽)、屋嘉一志(Sax/DEARS、GOLDEN HORNS AGT.)をバックに据えたブラスありのバンド編成に加え、開演/閉演アナウンスを、竹内アンナ(Vo&Gt)と親交が深い声優の伊藤美来とスピラ・スピカの幹葉がそれぞれ務めるなど、何かと特別感にあふれていたこの日。チケットは見事にソールドアウトを記録した。

豪華絢爛な白のフリルドレスに黒のブーツを合わせて現れた竹内アンナは、赤のエレキ(Gibson ES-335)を手に、キャリアの原点にあたるデビュー曲『ALRIGHT』から軽やかにライブをスタートさせる。日本語と英語を織り交ぜてなめらかに歌いつつ、バンドのギターをひとりで担う、ソロまでカッコよく弾いてしまうところが彼女らしい。最新アルバム『DRAMAS』の収録曲『BREAK MY CASE』になれば、ファンキーなビートに乗せて自然と手拍子が湧き起こったり、メインアコギのOMJMに持ち替えた『Free! Free! Free!』での高速ラップも冴えまくっていたりと、森光、松浦、半田との4人編成で届けた序盤にして、場内のムードは早くも上々に。

5周年を掲げてるんですけど、“言うても数字やん?”と感じてもいます。今日初めて観てくれる人もいるだろうし、デビュー前から知ってんねんって人もおるかもしれんしね。いつからとか、年齢とか、性別とか、そういうことが関係なくなるのがライブの良さ。“あなたらしくいなくてどうすんねん!”と思ってるので、ぜひそれぞれに楽しんでいってください

関西弁を交えて親しみやすく挨拶したあとは、オーディエンス一人ひとりの顔を見渡しながらハンドマイクで歌った『I Love Youの言葉より』、屋嘉のサックスを加えていっそうスウィートな味わいが深まった『ICE CREAM.』と、吐息混じりのキュートなボーカルが映えるラブソングで魅了。竹内が15歳のときに作った『Ordinary days』では、昨年の弾き語りツアーでお披露目となった12弦アコギを使うなど、曲ごとにカラフルなアプローチが際立つ。

さらに、ニューアルバム表題曲で英語のセリフを含む寸劇トラック『DRAMAS』を果敢に投じ、そこからドライヴ感抜群のアンサンブルで痛快なヒートアップを生む『WILD & FREE』に勢いよく接合。一転して『生活』は、佐瀬のトランペットや半田のエレピがジャジーな雰囲気を醸し出す、クールとエモーションを兼ね備えた展開へ。主演・助演・監督・脚本・音楽のすべてを竹内が務める、ドラマティックで心を惹きつけてやまないパフォーマンスの連続に、響きわたる歓声はどんどん大きさを増していく。

いやー、最高ですね!」と喜びの表情を浮かべながら、「実はこんなふうに音源に近い形のアレンジでやるのって、私にとってはけっこう珍しいことなんです」と明かす竹内。今までフルバンドのほか、弾き語りやDJとの2ピースなど、さまざまなスタイルでライブをしてきた彼女だが、それを自分が好きで取り組む一方、「何か変化をつけなきゃいけないと思っていた時期もあった」のだという。

特にデビューの頃は、周りにギターを弾いて歌うシンガーソングライターがたくさんいたため、「みんなと差をつけなきゃと必死にもがいていた」そうで、苦しくはあったものの、「プレイの変化が生まれたりしてよかった」と当時を振り返る。オリジナルに準じたこの日の演奏を「覚悟の要ることだった」とも話し、ブルーの照明に包まれる中、上京前のタイミングで書いたという『TOKYO NITE』をアンニュイに聴かせる流れがまた秀逸。ソウルフルな横ノリが恍惚の『made my day』と合わせ、この2曲はトランペットとサックスを入れた6人編成で披露されたのだが、2020年に同じ恵比寿 The Garden Hallで行なわれたライブも思い起こしつつ、竹内の表現力が格段にスケールアップしたと改めて実感できる時間だった。

そして、切なく疾走感のある失恋ソング『サヨナラ』からは、オープニングの4人でパワフルに攻める。この日のために作ってきたという“AT Medley 2018-2024”では、『WONDERLaND mAGIC』~『Lovin’ Drivin’ Darlin’』~『SUNKISSed GIRL』~『Chili Chili Chillax』~『泡沫SUMMER』~『Now For Ever』~『WONDERLaND mAGIC』と快調に繋ぎ、『YOU+ME=』のコール&レスポンスも大盛り上がり。エネルギッシュで元気をもらえる、メリハリの利いたステージングがなんとも心地よい。

さっき“5周年は数字”としたけど……」と切り出し、竹内は再び過去の自分について言及。感情を伝えるのが得意じゃなかったこと、そうした理由からアウトプットの手段として13歳のときにギターを弾き始めたことを語り、「人と話すのが苦手だった私が、こうやって歌を届けてるのは、奇跡みたいなことです」と笑顔を見せる。

ちょっとしたときに思い出して幸せになれたり、日常の些細な瞬間の解像度が上がったりとか、変わらず(自分の曲で)みんなの生活に魔法をかけていきたい、みんなに寄り添っていたいなと。まだまだ続けていくし、今日のライブは未来がもっと楽しみになるようにという想いも込めてるので、これからも竹内アンナの音楽をいっぱい愛して、いっぱい聴いて、ついてきてもらえたら嬉しいです!

終盤はフルメンバーが揃って、5周年イヤーのハッピーな今にふさわしい、“何気ない一瞬も切り取ればドラマ”と歌う『最幸のふたり』、愛が詰まった揺るぎないアンセム『手のひら重ねれば』を演奏。ミラーボールが燦然と輝き始め、グッと膨らむ祝祭感と一体感に、満員のオーディエンスはうっとりと酔いしれる。キャリアを経るにつれ、壮大になっていった曲のテーマに涙腺が緩んだりも。竹内が白いレスポールで繰り出すカッティングが眩しかった『I My Me Myself』で、会場の熱量はいよいよピークに。バンドの面々も楽しそうに躍動し、本編が鮮やかに締め括られた。

大きなアンコールに応えて再登場した竹内は、自身のカスタムアコギで『Love Your Love』を弾き語り。“信じた「好き」はちゃんと本物だから 大丈夫”という肯定のメッセージとともに、“ほら今だってこの歌に 出会ってくれてありがとう”と集まった人たちに感謝の意をしっかりと伝える。そのためにノークラップをお願いした姿勢も好印象。

最後のMCでも、アニバーサリーらしくこれまでの歩みを回想。本公演に向けての準備をしていたところ、「机の中から黒歴史と言ってもいいノートが出てきた」そうで、デビュー前に書いていた当時の目標などを数年ぶりに見返したと話す。叶わなかったことはたくさんある一方で、描いてさえいなかったことが実現したりと、嬉しい気持ちもすごくあるという竹内は、「自分がやってきたことが成功かどうかはわからないけど、正解を選び続けてきたなと思ってます。選んできた先で今こうしてみんなと会えてるので」と結んだ。

ラストはバンドメンバーをすべて呼び込み、ファンに長く親しまれる『RIDE ON WEEKEND』。“キミとならどこへでも 行ける気がしているよ”と、今後の未来を照らすように歌い、新旧ナンバーを聴かせる節目の集大成ワンマンは美しく幕を閉じた。なお、アンコールでは次のツアー『THE BEST DRAMAS TOUR』を発表。10月から12月にかけて全国9ヵ所を3ピースで回り、ファイナルは自身初のZepp Shinjuku (TOKYO)で開催される。こちらもチェックしよう。

Photo by Kazushi Hamano
取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. 1.ALRIGHT
  2. 2.BREAK MY CASE
  3. 3.Free! Free! Free!
  4. 4.I Love Youの言葉より
  5. 5.ICE CREAM.
  6. 6.Ordinary days
  7. 7.DRAMAS
  8. 8.WILD & FREE
  9. 9.生活
  10. 10.TOKYO NITE
  11. 11.made my day
  12. 12.サヨナラ
  13. 13.AT Medley 2018-2024
  14. 14.YOU+ME=
  15. 15.最幸のふたり
  16. 16.手のひら重ねれば
  17. 17.I My Me Myself
  18. <ENCORE>
  19. 1.Love Your Love(弾き語り)
  20. 2.RIDE ON WEEKEND

竹内アンナ 使用楽器・機材紹介

竹内アンナ

《ライブ情報》

竹内アンナ「THE BEST DRAMAS ACOUSTIC」
10月6日(日) 東京都 LIVE HOUSE FEVER

<チケット詳細>
OFFICIAL FUNCLUB「atTENDER」会員限定チケット先行受付
9月4日(水)23:59まで
https://sma-ticket.tstar.jp/lots/events/51958/entry/50412

SNS先行受付
9月5日(木)23:59まで
https://sma-ticket.tstar.jp/artist/takeuchianna

<出演者>
竹内アンナ

竹内アンナ「THE BEST DRAMAS TOUR」
2024年10月19日(土)香川県 高松TOONICE
2024年10月20日(日)大阪府 umeda TRAD
2024年11月2日(土)宮城県 ROCKATERIA
2024年11月4日(月)北海道 SPiCE
2024年11月9日(土)福岡県 LIVEHOUSE OP's
2024年11月10日(日)岡山県 CRAZYMAMA 2nd Room
2024年11月17日(日)新潟県 GOLDEN PIGS BLACK STAGE
2024年11月23日(土)愛知県 ElectricLadyLand
2024年12月15日(日)東京都 Zepp Shinjuku(TOKYO)

<チケット詳細>
https://linktr.ee/AnnaTakeuchi

<出演者>
竹内アンナ(Vo, G)/ 森光奏太(B, Cho)/ 松浦千昇(Dr)/ 守真人(Dr / 新潟公演および愛知公演のみ)


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