竹内アンナが11月から12月にかけて全国11ヵ所を回る弾き語りツアーを開催。本稿では、12月9日(土)に東京・自由学園明日館 講堂で行なわれた第2部(夜公演)の模様をレポートする。
2021年、2022年に続き、3回目となる自由学園明日館でのライブには、立見席チケットが追加販売されるほどたくさんのオーディエンスが詰めかけ、昼・夜公演ともにソールドアウトを記録。アコースティックギターをはじめ、観葉植物、ランプ、ウッドチェア、本棚、レコードプレーヤーなどが飾られたステージも、冬の時期にふさわしいクリスマス感があったり、一段と素敵なビジュアルに仕上がっていた。
黒のセットアップスーツ+ヒールというシックな衣装で登場した竹内アンナは、中央のスツールに腰掛けると、倍音がきれいな12弦ギターで早くも印象的な響きを届ける。名刺代わりの『Free! Free! Free!』から快調にライブをスタートさせ、そのまま流れるように『RIDE ON WEEKEND』へ。
「ようこそー!私のお部屋に遊びに来た感覚でリラックスして、最後までたっぷり味わっていってください」と清々しく放たれた第一声。そんな『atELIER -アトリエ-』のコンセプトや旨みを、過去の自由学園明日館公演を通していちばん深く堪能できたのが、今回のライブだったように思う。各地でツアーを丹念に重ねてきた賜物か、竹内の繰り出す歌、ラップ、ギタープレイは気持ちいいくらいの自信と落ち着きに満ちていて、現場のシチュエーションと相まってなんとも優雅な余韻を残す。
「歌とギターだけの、とてもシンプルなステージです。この会場だからこその響きを楽しんでほしかったりもするので、手拍子とかはちょっとお休みしていただいて、今日は目と耳で集中してもらえたらなと思います」
自由学園明日館が大正10年(1921年)に造られたこと、もともとは学校だったこと、本館を建築家のフランク・ロイド・ライトが、講堂をその弟子・遠藤新が設計したこと、客席の両脇と最後方に連なる大きな窓に情緒があることなど、『atELIER -アトリエ-』により没入するためのガイドをしてくれる竹内。
切ない失恋ソング『サヨナラ』では、熱のこもったボーカルやストロークからあふれ出す想いが伝わってくる。耳を惹く吐息混じりの歌唱、メロディの良さ、巧みなテクニック、自由なタイム感、コード展開の妙……歌とギターだけで勝負できる彼女の持ち味がどんどん輝きを帯びる中、先程までエモーショナルに掻き鳴らしていたアコギの厚みをグッと抜き、単音多めで軽やかに奏でた『I My Me Myself』の余白あるアプローチも素晴らしい。
また、ステージに並ぶMartinのアコギを、竹内がわかりやすく紹介する時間も。オープニングの『Free! Free! Free!』で手にした本ツアーが初登場だという12弦ギター、デビューの頃からおなじみのジョン・メイヤーモデルのOMJM、約2年の歳月を経て完成に至った世界にひとつだけしかないオリジナルカスタムモデル、ナイロン弦を張ったことによるやわらかな音色が特徴的なガットギター。それぞれに表情が異なるこの4本を自在に使い分けながら、ライブはソロの弾き語りとは思えないほど彩り豊かに進む。
数ヵ月前に過ぎ去った夏が恋しくなるような『ICE CREAM.』、夏の黄昏時に海沿いでチルアウトするような気分へと誘った『泡沫SUMMER』は、ナイロン弦の響きが美しいガットギターで演奏。季節外れなサマーチューンさえも、曲が持つ甘みを全面に出したサーフロック/ハワイアンミュージック調のゆったりとしたアレンジで夢心地に聴かせてみせる。
中盤では、『atELIER -アトリエ-』ツアー恒例のカバーとして、なんとYOASOBIの『アイドル』を披露。原曲のスリリングさを活かしつつ、ファンキーなカッティングや意表を突くマイナーコードなど竹内アンナ節を存分に溶け込ませ、ここでも見事なリアレンジぶりで、オリジナル音源から大きく変わったプレイに魅了されるオーディエンスを沸かせた。「“タイトル+弾き語り”でYouTubeに出てこない曲を選ぶようにしていて、参考動画がないことがすごく楽しいんです」と笑顔で話していたのが彼女らしくて好感触だ。
そこから、他アーティストへの提供曲をセルフカバーする流れも嬉しかった。伊藤美来の『気づかない?気づきたくない?』、KinKi Kidsの『感情愛情CRAZY』、坂本真綾の『discord』のみならず、ハウス食品のCMで竹内がカバーしたゴダイゴの『ビューティフル・ネーム』までを加えた『atELIER MEDLEY』が届けられ、特別な空間はいっそう特別なものになる。さらに、最新曲『たぶん、きっと、ぜったい』で歌われる淡い期待を湛えたおまじないが、12弦ギターのふくよかなサウンドとともに講堂全体に広がっていく。
自身のカスタムギターでボサノバ的な味わいをやさしく施した『Love Your Love』、憂いを含んだガットギターにとろけそうな歌が重なるミディアム曲『If you and I were,』で、愛おしくメロウなひと時を作り上げたあとは一転、『YOU+ME=』において「みなさんの声を聴かせてください!」とコール&レスポンスを解禁し、場内が明るく照らされる中でオーディエンスの大合唱が巻き起こる。竹内は高速ラップあり&ドライヴ感抜群の『WILD & FREE』も痛快に轟かせ、再びアッパーなパフォーマンスを発揮。
ライブ終盤には、約5年前にリリースしたデビュー曲『ALRIGHT』をラテンのノリを交えて颯爽と演奏。そして、あなたのことを一途に想うラブソング『あいたいわ』を12弦ギターによる豊潤なアレンジで畳みかけ、歓喜の拍手が鳴りやまない、とびきり幸せなムードのままに本編を締め括った。
日がとっぷり暮れた時間帯にマッチしていた『TOKYO NITE』、“またね”の想いを込めて会場に集まった人たちを送り出した『生活』と、アンコールでもバリエーションの多彩さを印象づけた竹内は、「こうやって弾き語りツアーがやれるのも、みなさんのおかげです。本当にありがとうございます!」と改めて感謝を告げる。
その上で「デビュー5周年イヤーはたくさんの企画を準備中なので、楽しみにしていてください」と、2024年の活動についても触れてくれた。本公演の1週間後には、3月に東京、大阪、横浜を巡る自身初のビルボードライブツアー開催を発表。“パジャマで海なんかいかない”ことPAJAUMIがバックバンドを務めるこのステージでも、これまでとはまた違う竹内アンナが観られるはず。ぜひ足を運んでみてほしい。
photo by Kazushi Hamano
取材・文:田山雄士
《SET LIST》
- 1.Free! Free! Free!
- 2.RIDE ON WEEKEND
- 3.サヨナラ
- 4.I My Me Myself
- 5.ICE CREAM.
- 6.泡沫SUMMER
- 7.アイドル
- 8.atELIER MEDLEY
- 9.たぶん、きっと、ぜったい
- 10.Love Your Love
- 11.If you and I were,
- 12.YOU+ME=
- 13.WILD & FREE
- 14.ALRIGHT
- 15.あいたいわ
- <ENCORE>
- EN1.TOKYO NITE
- EN2.生活
竹内アンナ
《ライブ情報》
ACOUSTIC LIVE -atELIER-
2025年3月29日(土) ヒューリックホール東京
開場16:00 / 開演17:00
ゲスト:幹葉(スピラ・スピカ) / 竹内朱莉 / 佐藤まりあ(フィロソフィーのダンス)
<チケット>
at TENDERチケット:8,000円 (終演後に竹内アンナの生歌演奏+お見送り)
指定席一般:6,500円
指定席学割:5,000円
ファンクラブ先行受付中 https://smam.jp/s/sma01/artist/2103
一般発売日 2025年2月15日(土)
問 HOT STUFF 050-5211-6077