2人で1つの宴を作りあげた、岸谷香とmiwaによる2マン公演。

岸谷香にとって初となる“弾き語り形式2マンライブ”、その名も「ふたりぼっちの大パーティー!!」が6月に東名阪で開催された。名古屋公演にはスガシカオ、大阪公演には馬場俊英が参加。そして、6月18日に日本橋三井ホールで行った公演にはmiwaが参加した。ここでは、東京公演の模様をお届けしたい。

暗くなった場内。明かりに照らされたステージへ、両袖から岸谷香とmiwaが登場。舞台中央に陣取った2人は、満員の観客たちに向かって揃ってお辞儀。その後、それぞれがアコギを手にし出した。

2人が綺麗に声を重ねて歌いだしたのが、miwaのデビュー曲『don’t cry anymore』。miwaが澄み渡る歌声で高音部を歌えば、岸谷香が中低音域を艶めいた歌声で歌唱。それぞれの声の色を生かしたハーモニーが、楽曲に深い彩りを与えてゆく。この曲では、miwaを軸に据え、岸谷香が歌声を寄り添える形で進行。2本のアコギの演奏も、miwaがストロークを中心に、そこへ表情を描き加えるように岸谷香がメロディアスな旋律を奏でていたのも印象的だった。曲が進むのにあわせて、感情が高まるごとに2人の歌声にも熱が加わり、客席からも自然と手拍子が起きていた。

ここからは、miwaのソロコーナーへ。この日の2マン公演は、先にゲストが演奏し、そのバトンを受け継ぐ形で主催者が演奏。最後に、おまけ程度に1曲共演という在り来りのライブではないことを、先に伝えておきたい。すでに1曲目で、miwaのデビュー曲を一緒に演奏している時点で、次々と何かを起こしそうな予感が漂っていたわけだが…。

白いスポットライトに照らされたmiwaが最初に歌ったのが、社会へ飛び出していく大学卒業の時期に感じていた思いを歌詞に記した『Delight』。アコギを爪弾く優しいアルペジオの音色に乗せ、miwaがゆっくりと、でも確かな強さを持った歌声を響かせだす。爽やかな歌声からは、希望にも似た前向きな色が見えてきた。最初は穏やかな表情を描いていた楽曲が、気持ちが動き高ぶるのにあわせて熱や力を増し、次第に感情的になってゆく。その様が、歌声やストロークするギターの音の表情から伝わってきたのが嬉しい。この曲はドラマの挿入歌として流れていたこともあり、耳馴染んでいた人たちも多かったようだ。

この日のmiwaは、シングル曲を軸に選曲。続く『ハルノオト』は、最新曲であり、アニメ「MIX MEISEI STORY ~二度目の夏、空の向こうへ~」のエンディングテーマとして流れている。これだけを聞くとピンとこないかも知れないが、あだち充の描いた「タッチ」の30年後の物語と聴いて納得していた人たちが多かったところから、この日の観客たちの世代層が見えてきた。miwaの澄み渡るハイトーンの声から歌がスタート。彼女は、歌詞に綴った思いを物語るように歌っていた。その目線は、目の前の観客たちに向けていながらも、どこか遠くを、この物語の行く先を追いかけるように見つめていた。いや、そのように見えてきた。

キラキラとした目映い光を放つように、miwaは軽やかな心模様で『ミラクル』を歌っていた。とても気持ちの弾む歌声や演奏だ。客席のあちこちで、大きく左右に手を振りながら歌を楽しんでいた人たちがいたのも納得だ。

続く『ヒカリヘ』も、ドラマの主題歌として制作された楽曲で、たくさんの人たちがmiwaと出会うきっかけになった大ヒット曲。その理由も背景にあるからか、舞台の上から溢れだすように流れた透明感を持った澄み渡る声に触れ、会場中の人たちが、その歌に心が釘付けになっていた。歌声やアコギを爪弾く演奏へ次第に強さと輝きが増すのに合わせ、心引き寄せる輝きにどんどん魅了されてゆく。終盤にはパワフルな歌声を響かせ、miwaは観客たちを眩しい歌の光の中へと包み込んでいった。

miwaは『あなたがここにいて抱きしめることができるなら』でも、言葉のひとつひとつを噛みしめるように、愛しい人へ向けての思いを温かみを持った声で歌っていた。この歌から滲んできたのは、とてもおおらかな愛。この曲に触れている間中、ずっとmiwaの歌声の手に抱き抱えられている気分だった。

ここで、ふたたび岸谷香が舞台へ。次にmiwaが歌った『片想い』で、岸谷香はピアノを伴奏。デュエットではなく、岸谷香が伴奏に徹するところも、この2マン公演の面白さ。『片想い』では、切ない心模様を描くmiwaの歌声へ、岸谷香が寄り添うようにピアノの音色を重ねていたのも印象的だった。切々とした感情に、悲しみの色を描き加えるように岸谷香の演奏が折り重なる。曲が進むにつれ世界観が大きく広がってゆく様を覚えたのは、それだけ気持ちが揺さぶられていたからか…。

ここから、歌のバトンは岸谷香へ。これまでの温かな空気へ一気に沸騰した熱を加えるように、岸谷香がアコギを用いてブルージーな音色を奏でだす。次第に躍動する演奏は、ノリノリなロックンロールのビートに変化。飛び出したのが、『GET CRAZY!』だ。ブルージーでクレイジー…とは流石に言わないが、それでも、ノリの良いロックンロールの演奏を通して、岸谷香は満員の人たちの気持ちを騒がせる。観客たちも、手拍子はもちろん、身体を揺らしながら、岸谷香と一緒に気持ちのストッパーを緩め、心を青春時代へ戻す気持ちではしゃいでいた。ループマシンを用いて、楽曲に厚みを与えていた様も印象的だった。

続く『STAY BLUE』は、コロナ禍時代に、もっと心を自由に解き放ちたくて作りあげた、こちらも超ノリノリのロックチューン。冒頭から岸谷香はテンションの高い歌声をぶつけ、気持ちを解き放つように力強くアコギを掻き鳴らし、歌い奏でていた。たとえ舞台の上に一人で立とうと。アコースティックなスタイルであろうとも、気持ちが熱を帯びたら、その歌声や演奏は感情のストッパーを外し、心を自由にする力を見せてゆく。この曲でもループマシンを用いながら、楽曲に次々と彩りを加え、一人オーケストラのように壮大な景色を作りあげていた。彼女が作り上げたロックンロールな世界は、本当に心を自由にしていった。

続いて披露したのが、miwaのカバー曲の『ホイッスル~君と過ごした日々~』。この曲から、岸谷香はピアノを演奏。最初こそ、何処かノスタルジーな雰囲気も醸しだしていたが、次第に気持ちが熱を帯びるのにあわせ、歌声から、揺れる感情の動きがどんどん伝わってきた。演奏が進むごとに楽曲がドラマチックさを増すところも、見ていて心騒ぐ場面だった。いわゆる、10代の頃の青春模様を描いた楽曲だ。それを今の岸谷香が歌うと、10代の頃の気持ちに戻ってではなく、あの頃を懐かしみながら、当時の自分にエールを送るように歌う様として見えてきたのも印象的だった。

『ホイッスル』は、miwaが22歳のときに作った楽曲。そこから岸谷香が次に選んだのが、自身が22歳のときに発表した『パパ』。大好きな彼氏をパパに紹介してゆく、結婚という現実も見据えた年代特有の思いを、この曲では歌っていた。その楽曲を、母親の立場になった岸谷香が歌うことで、双方の思いを理解しながら噛みしめるように歌う姿として見えていたのも印象的だった。

岸谷香のコーナーの最後に歌ったのが、ピアノの弾き語りによる『Diamonds<ダイアモンド>』。いつもよりもテンポをゆったりめに演奏。この曲が始まるのにあわせ、場内中から熱い手拍子が起きれば、馳せる気持ちをぶつけた手拍子に刺激を受けたのか、岸谷香の奏でるテンポも次第に上がり出していたのも印象的だった。この曲には、お客さんたちも参加。岸谷香と歌の掛け合いを行う場面も印象的だった。間奏では、岸谷香がホンキートンクなピアノプレイを見せながら、会場中の人たちを沸かせていたのも嬉しい見せ場だった。

ふたたびmiwaが舞台へ。岸谷香のピアノと、miwaのアコギというスタイルで披露したのが『世界でいちばん熱い夏』。1番をmiwaがメインで歌い、岸谷香が歌声を寄り添えれば、2番では岸谷香が歌をリードし、miwaが歌声を寄り添える形で進行。灼熱の夏ではなく、爽やかな歌声のハーモニーを感じながら、はしゃぐ気持ちに染め上げる、青春という言葉の似合う夏景色に染め上げてゆく様を味わえたのも嬉しかったこと。岸谷香とmiwaの歌の掛け合いも、印象深く見えていた。

次に歌唱したのが、2人とも大好きなシンディーローパーの楽曲のカバー。先に、miwaがメインを担う形で『True Colors』を歌いあげれば、岸谷香は『All Through the Night』を熱唱。澄み渡る歌声でピュアな思いを届けたmiwa、熟成した声も示しながら奥深い歌を届けた岸谷香。2人の歌声がハモる場面でも、それぞれの異なる声の魅力を味わえたのも嬉しい見どころになっていた。

最後は、岸谷香が奏でるピアノの演奏に乗せ、1番をmiwaが、2番を岸谷香がリードを担う形で『M』を熱唱。ときに、顔を見合わせながら歌う姿も含め、一緒に切ない恋心を噛みしめるように歌う様へ、ずっと視線と心が釘付けになっていた。

ただ、共演するのではない。お互いに求めあいながら、その日、その場だからこそ見られる(その場でしか見れない)共演を存分に味わえた一夜だった。このシリーズ、また見たいと素直に思ってしまうのは罪だろうか…。岸谷香自身、このシリーズを楽しんでいたように、またきっとやってくれる…と期待したい。

PHOTO:MASAHITO KAWAI
TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. 岸谷香&miwa
  2. 1.don’t cry anymore
  3. miwa
  4. 2.Delight
  5. 3.ハルノオト
  6. 4.ミラクル
  7. 5.ヒカリヘ
  8. 6.あなたがここにいて抱きしめることができるなら
  9. miwa&岸谷香
  10. 7.片想い
  11. 岸谷香
  12. 8.GET CRAZY!
  13. 9.STAY BLUE
  14. 10.ホイッスル~君と過ごした日々~(miwaカバー)
  15. 11.パパ
  16. 12.Diamonds<ダイアモンド>
  17. 岸谷香&miwa
  18. 13.世界でいちばん熱い夏
  19. 14.True Colors (シンディ・ローパーカバー)
  20. 15.All Through the Night(シンディ・ローパーカバー)
  21. 16.M

岸谷香 使用楽器・機材紹介

岸谷香/Unlock the girls

岸谷香 感謝祭2024 トータス松本さん、永井真理子さんのゲスト出演が決定!

「岸谷香 感謝祭2024」
日時:2024年2月23日(金/祝)
会場:EX THEATER ROPPONGI
会場 16:45 / 開演 17:30
全席指定 9000円(税込/ドリンク代別)

「岸谷香デビュー40周年」記念イヤーの2024年!第一弾公演として開催する今回の感謝祭に
トータス松本さん(ウルフルズ)、永井真理子さんをゲストに迎えて晴れやかに開催します!

詳細は岸谷香オフィシャルサイトまで
http://kaorikishitani.com/

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“今こそ青空を駆け抜けよう!岸谷 香・富田 京子の盟友コンビによる光輝く青春エールソングを収録!”こんな時代だからこそ精一杯の元気を届けたいという想いから、プリンセス プリンセスの盟友・富田 京子と共に、世代を超えたエールソング「STAY BLUE」を制作。切ない恋愛を歌った「A VISITOR」の作詞には中山 加奈子が参加。岸谷 香率いるガールズバンド”Unlock the girls”のパワーアップした演奏にも注目の、キラキラとした青春を感じる1枚が完成。

SECL-2498 ¥2,400 tax in

<収録内容>
M1:STAY BLUE 作詞:富田 京子 作曲:岸谷 香
M2:Wrong Vacation 作詞・作曲:岸谷 香
M3:A VISITOR 作詞:中山 加奈子 作曲:岸谷 香
M4:charm 作詞:富田 京子 作曲:岸谷 香

各販売サイトはこちらから
https://smer.lnk.to/JPvqfYkq


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