岸谷香が自らのバンドであるUnlock the girlsとともに、ゲストを迎えて予測不可能なコラボを展開する「岸谷香 感謝祭」。日頃の感謝を込めた恒例の企画ライブは、念願の声出しが解禁となったことで、ここ数年でいちばんの熱狂と一体感が生まれた。

スタートダッシュを飾ったのは、Unlock the girls。メンバー4人が現れて岸谷香(Vo&Gt&Key)のソロ曲『49thバイブル』が始まると、満員のオーディエンスはすぐさま総立ちとなり、岸谷が頭を振って歌う激しいアクションや、Yuko(Gt&Cho)、HALNA(Ba&Cho)、Yuumi(Dr&Cho)が繰り出すパワフルなバンドサウンドとチャーミングなコーラスを受け、客席のあちこちから拍手喝采が沸き起こる。これがコロナ禍で初めて体験する歓声ありライブという来場者も多かったに違いない。

ひさしぶりだね、この感じ。コロナに負けず、『岸谷香感謝祭』は4回目を迎えました。こういうライブがまたできて、めっちゃ嬉しく思ってます!」と岸谷も笑顔。自らギターソロを弾いたプリンセス プリンセスの『MELODY MELODY』、そのボーカルがより気持ちよく会場全体にスパーンと響きわたったUnlock the girlsの『STAY BLUE』と、ヒストリーを辿るように新旧のナンバーが惜しみなく放たれる。

ここで最初のゲスト、藤巻亮太がステージに招かれ、颯爽とレミオロメンの『雨上がり』へ。彼のやさしく透き通った歌声やきれいなメロディによって、オーディエンスのときめきはますます高まっていく。女性バンドの中に澱みなく溶け込みながら堂々たる存在感を発揮する藤巻も、しなやかなグルーヴ+清らかなハモリで支えるUnlock the girlsも素晴らしい。間奏では、岸谷と藤巻が向かい合ってギターを掻き鳴らす。

あるとき、Yuumiが藤巻くんのサポートメンバーと知り合いだと聞いたので、“何かいっしょにできたらいいね”というラブレターを託しました」(岸谷)、「直筆の手紙をいただいたんですよ?こんなに嬉しいことはないじゃないですか!」(藤巻)といった感じで、両者の出会いや共演に至った経緯、「Mt.FUJIMAKI」(藤巻が地元・山梨でオーガナイザーを務める野外音楽フェス)での交流が改めて語られる一幕も。

バンドでデビュー後にソロ活動を経験したりといくつか共通点のある2人だが、岸谷は作家として藤巻にシンパシーを強く感じているそうで、「次の曲は初めて聴いたときに“マネしてないよ!”とつい口に出しちゃったくらい、私の世界観とすごく似てます」と紹介。そんなレミオロメンの『南風』は、温かい曲調と岸谷の弾くウーリッツァーが映えたポップなアレンジが相まって、フロアに美しいワイパーが起こる。いい流れのままメドレーで繋ぎ、昨年の同イベントにおいてTRICERATOPSの和田唱と歌った『ミラーボール』を今回は藤巻とコラボ。アッパーなノリから一転、続いては落ち着いた照明の中、藤巻(ギター&ボーカル)×岸谷(エレピ&コーラス)で春の名曲『3月9』をしっとり奏でるなど、この自由度の高いパフォーマンスこそ「岸谷香 感謝祭」の醍醐味と言えよう。

3月9日』はサンキューの日なので、感謝祭には合ってるのかなと思いました(笑)」と、世代を超えた貴重な共演を喜ぶ藤巻。その後はバンドスタイルに戻り、彼の最新ソロアルバム『Sunshine』から前向きに音楽を続けていきたい気持ちを綴った『この道どんな道』をプレイ。さらに、こちらも説明不要のウィンターソング『粉雪』を、凛としたボーカルとまさしく粉雪のようにふんわり舞うコーラスを軸に披露する。みんなが聴きたい曲を漏れなくやってくれるのも、本イベントの大きな魅力だ。

『また恋ができる』ではMartin Custom OO Style18 Kaori Kishitaniが使用された。

盛大な拍手とともに藤巻を送り出し、中盤はUnlock the girlsでお届け。岸谷のやわらかな歌唱と赤いマーティンギターの音色が立ったミディアム曲『また恋ができる』で恍惚のムードを深めたりと、彼女たちのアンサンブルが一段と心地よいものになる。プリプリのメガヒット曲『Diamonds<ダイアモンド>』をみんなでシンガロングできたことも、この日のハイライトのひとつと言えるほどハッピーな時間だった。

そして、2人目のゲストである荻野目洋子が登場。サポートに山本哲也(Key)も入ってサウンドに厚みが増す中、いきなり『六本木純情派』をEX THEATER ROPPONGIに投下する大胆不敵ぶり、スパンコールのスカートやピンヒールが目を惹く眩しい衣装、ステージを練り歩きながら見せる抜群の歌唱力、アイドル感も健在なキレッキレのダンスで、オーディエンスのハートを一気に掴んでしまうのがすごい。得意の強いビートを活かし、先程までとはまた別の華やかさが生まれている。

スパンコールのスカートは岸谷がリクエストしたそうで、「お揃いの恰好でライブできるのかと思ってたら、香さんはなんだか黒でシックな装いですね。(森高)千里ちゃんとの共演(「岸谷香感謝祭2020」)ではミニスカートを履いたって聞いたんですけど(笑)」と荻野目がツッコミを入れるシーンもありつつ、プリプリの前身バンド“赤坂小町”と荻野目のデビューが同時期だったこと、長きにわたる芸能の仕事後に結婚、出産、活動休止を経験し、復帰を果たしたことなど、お互いの接点について話が弾む2人。

そんなトークのあと、岸谷が“奥居香”時代に荻野目へ楽曲提供(作詞は白井貴子)した1992年発表のキュートなナンバー『ラストダンスは私に』が聴けたのは非常にレアだった。また、NHK『みんなのうた』で放送された『虫のつぶやき』も、荻野目が緑のウクレレを手にひとりで演奏を担い、Unlock the girlsの4人はコーラス&ささやかな振り付けのみでサポートするという特別バージョンで披露。“僕はカマキリ 狩りが得意さ だけど優しく抱きしめられない”などと虫の特性と悩ましさにやさしく目を向け、そこから世界の真理を歌うゆるふわなアコースティック曲に、場内が思わずほっこりと和む。

すべて自作曲からなる10曲入りのアナログレコードを4月にリリースすることも明かし、意欲的なモードが加速している様子の荻野目は、クライマックスでさらにフィーバー。あのバブリーダンスが飛び出す鉄板ディスコチューン『ダンシング・ヒーロー』を、七色に輝くミラーボールの下で岸谷と全力で歌い踊ると、今度は白のエクスプローラーを携えてプリプリの『OH YEAH!』をロックに熱唱。“あなたの声 もっと聞かせて”の歌詞に応えるようなコール&レスポンスもバシッと決まり、存分にはっちゃけてステージを降りた。

最後のブロックは、再びUnlock the girlsが担当。オリエンタルなメロディや各パートのソロ回しでカラフルに聴かせた『Unlocked』、サビを伸び伸びと歌う感じが岸谷の生きざまを象徴していたような『バタフライ』と、現バンドの楽曲を通してメンバーのプレイヤビリティもハツラツと伝わってきた。『Dump it!』では「みんな、余計なものは全部捨てるぞー!」と岸谷が呼びかけ、ハンドマイクでロックボーカリストらしく躍動。その奔放かつ圧倒的なシャウトに、ゲストの藤巻と荻野目を含め、誰もが度肝を抜かれたのではないだろうか。

どうもありがとうー!立っちゃいけないとか、お客さんが半分とか、コロナ禍でいろんなライブがあったけど、今日は満員のEX THEATER ROPPONGIで、マスクはしているものの声出しOKで出来てね。みんなの声援にすっかり発狂させられ、56歳になったというのに、26歳みたいな攻め方をしてしまいましたが(笑)。でも、これが音楽かなって。こうやって私たちアーティストはエネルギーをもらって、次のガソリンにしていくんだなと思いました

充実の表情を浮かべ、そう語った岸谷。集まってくれたオーディエンスへ感謝を込めて、近年のライブで大切に聴かせてきたバラード『Signs』を届け、盛りだくさんすぎる本編を味わい深く締め括った。

アンコールはオールキャストが舞台に揃い、なんとプリプリの代表曲『M』を演奏。荻野目、藤巻、岸谷で歌い分けるというスペシャルなアプローチにより、またも至福の時が訪れる。そして、Unlock the girlsが『ハッピーマン』でガールズバンドのパワーを豪快に解き放ち、イベントは最高のフィニッシュを迎えた。今回も驚きのコラボが満載で大盛況だっただけに、来年以降のリピーターが増えそうな「岸谷香 感謝祭」。なお、岸谷は6月に初のアコースティックツーマン企画を東名阪で開催するほか、「この先もライブをじゃんじゃんやっていきます!」とのことなので、ぜひオフィシャルサイトなどをチェックして現地に足を運んでみてほしい。

取材・文:田山雄士
PHOTO:MASAHITO KAWAI

《SET LIST》
  1. Unlock the girls
  2. 1.49thバイブル
  3. 2.MELODY MELODY
  4. 3.STAY BLUE
  5. ゲスト:藤巻亮太
  6. 4.雨上がり
  7. 5.南風~ミラーボール
  8. 6.3月9日
  9. 7.この道どんな道
  10. 8.粉雪
  11. Unlock the girls
  12. 9.また恋ができる
  13. 10.Diamonds<ダイアモンド>
  14. ゲスト:荻野目洋子
  15. 11.六本木純情派
  16. 12.ラストダンスは私に
  17. 13.虫のつぶやき
  18. 14.ダンシング・ヒーロー
  19. 15.OH YEAH!
  20. Unlock the girls
  21. 16.Unlocked
  22. 17.バタフライ
  23. 18.Dump it!
  24. 19.Signs
  25. アンコール
  26. EN1.M
  27. EN2.ハッピーマン

岸谷香 使用楽器・機材紹介

岸谷香/Unlock the girls

岸谷香 感謝祭2024 トータス松本さん、永井真理子さんのゲスト出演が決定!

「岸谷香 感謝祭2024」
日時:2024年2月23日(金/祝)
会場:EX THEATER ROPPONGI
会場 16:45 / 開演 17:30
全席指定 9000円(税込/ドリンク代別)

「岸谷香デビュー40周年」記念イヤーの2024年!第一弾公演として開催する今回の感謝祭に
トータス松本さん(ウルフルズ)、永井真理子さんをゲストに迎えて晴れやかに開催します!

詳細は岸谷香オフィシャルサイトまで
http://kaorikishitani.com/

MARTIN CUSTOM 00 Style 18 KAORI KISHITANI

「KAORI PARADISE 2021 年末スペシャル」でお披露目された、「Transparent “KAORI” Red」の鮮やかなカラーも印象的なMartin Custom Shop製のカスタムモデルが遂に発売!!

【受注生産】
MARTIN CUSTOM 00 Style 18 KAORI KISHITANI
https://www.kurosawagakki.com/martin/kaori_custom/

岸谷香 Mini Album 『Unlock the girls 3 –STAY BLUE–』Now On Sale!!

“今こそ青空を駆け抜けよう!岸谷 香・富田 京子の盟友コンビによる光輝く青春エールソングを収録!”こんな時代だからこそ精一杯の元気を届けたいという想いから、プリンセス プリンセスの盟友・富田 京子と共に、世代を超えたエールソング「STAY BLUE」を制作。切ない恋愛を歌った「A VISITOR」の作詞には中山 加奈子が参加。岸谷 香率いるガールズバンド”Unlock the girls”のパワーアップした演奏にも注目の、キラキラとした青春を感じる1枚が完成。

SECL-2498 ¥2,400 tax in

<収録内容>
M1:STAY BLUE 作詞:富田 京子 作曲:岸谷 香
M2:Wrong Vacation 作詞・作曲:岸谷 香
M3:A VISITOR 作詞:中山 加奈子 作曲:岸谷 香
M4:charm 作詞:富田 京子 作曲:岸谷 香

各販売サイトはこちらから
https://smer.lnk.to/JPvqfYkq


Larrivee MONO Case
BlackSmoker_BM_MISA BS FUJI 聖飢魔II&DHC
LOVEBITES digimart DIXON