それまで弾いていたテレキャスターをレスポールに持ち替えた村松が新年の挨拶をしながら、語りはじめる。
「すごい大真面目に思ってることがあります。『By Your Side』というアルバム、10年かかってようやく作れた。こうして僕らの音楽を信じて、僕らのステージから何かを感じ取って、自分の中に何かエネルギーを溜められる、僕たちと同じ様な感性を持ったみなさん。そういうみんなに、心から、音楽で、みんなのすごく近くまで、僕らは行きたい。みんなの側で音楽を奏でて、みんなの人生のために、ほんのこの一瞬がみんなの人生のためになるような。その命のきらめきがいつかみなさんの明日、明後日、明々後日、1年後、2年後、5年後かもしれない、10年後かもしれない。いつか、今日この思い出、今日取り入れたこの幸せな情報たち、これがいつかみなさんの次のステップに繋がるような、心の少しの糧に、ほんの少しの糧にでもなるように。本当にそう思って最近演奏してるんです。ようやくこのアルバムに辿り着きました。ありがとうございます!」

「このステージで大真面目に思ってること話すのずっと恥ずかしかったんだ。だからすごいおちゃらけて、いい歳になってもみんなと向き合えないでいた。だけど、『By Your Side』作って、ようやく、このツアーでみんなの側に行けそうな気がする」
そして、この言葉に思わず巻き起こる拍手を感謝しつつ静止してこう続けた。
「自己満で音楽やってきて、すげぇ良かったこといっぱいあった。苦しいこともいっぱいあった。で、どこに完結して、どこで俺たちは終わっていくんだろう。どこにバンドの終わりはあるんだろう。どこに俺たちがやってる音楽の答えはあるんだろう。そうやって考えてずっとやってきた。俺たちはここで死ぬ気で音楽を鳴らしてる。音楽を作ってきた。俺たちの命のきらめきはこのステージの上にある。だけど、だけどだよ?ここに来てるみんな。みんなの命のきらめきは今だけじゃない、明日からそれぞれのステージがある。そこにつながっていくようなステージに俺たちはしたい。そのためだけに、音鳴らすから。着いてきてくれますか東京!嘘っぱちじゃないんだ!俺の言葉は下手くそかもしれないけど、嘘っぱちじゃねぇぜ!!行けるとこまでいくんだ。そのために俺たちのこと使ってくれよ。東京行けるか!?行こうぜ!!」

そこから立て続けに『Spirit Inspiration』『Like a Shooting Star』『Around the Clock』といったナッシングスがこの10年に紡ぎ歌い続けてきた名曲の数々をプレイ。会場はこの日一番の熱気を上げ、村松の「揺らそうか!Zepp揺らしていくか!?」の言葉の通り、比喩表現ではなく本当にライブハウスが揺れていた。更に、これらの曲の中で『By Your Side』からのナンバー『Kill the Emotion』も全く遜色なく存在感を放っていたのも特筆すべきだろう。

メンバーのプレイも益々熱を帯び、それだけではなくパフォーマンスのテンションも上がっていくようだ。特に、客席を指差したり、大きなアクションでプレイしたりと一見クールに見える大喜多のダイナミックなアクトも印象的であった。日向の視線や表情で観客をポジティブなグルーヴへと巻き込んでいく力も素晴らしい。『Around the Clock』では日向と大喜多が顔を見合わせ、その後に大喜多によるツーバス連打フレーズが飛び出すなど本当に心からこのステージを、音楽を楽しんでいる様が伝わってくる。また、機材面では『Kill the Emotion』で生形がリバースシェイプのファイヤーバードをプレイしていたのもポイントのひとつに挙げられるだろう。

「ありがとうございました!また会いましょうNothing’s Carved In Stoneでした!」

その言葉に続くのは『Out of Control』!イントロからフロントの3人が客席ギリギリまで前に出てくると会場はまさにクライマックスという盛り上がりに。アニメ主題歌へのタイアップもあり多くの人に知られるこの曲ながら、間奏のプログレッシヴとも言えるリズムのキメなど器楽的な聴きどころにも溢れている。

そして、これで終わりではない。『Out of Control』から立て続けに奏でられたこの日の本編最後の曲は『Music』。先程の村松によるMCの内容とも呼応する歌詞が一層エモーショナルに響く。2000年代前半頃のポスト・ハードコアバンドを想起させるようなサビ前のキメも懐かしさを孕んでエモさに拍車を掛けてくるようにも感じる。《ほらそうだよ隣を見て 今同じ顔してるきっと 答えはいつも僕らを見てる》そう歌う村松の顔とそれを見つめる客席の顔はきっと同じ顔をしていた。

4人を讃える拍手はそのまま大きなアンコールの手拍子となり、程なくして4人をステージへと呼び戻す。村松はMartin D-18 Authentic 1939 Agedを、生形はFender 59 Esquire Relicを携え、日向はキャップを被っている。村松が「アンコールありがとうございます」とだけ告げると『Bridges』が奏でられはじめた。喉で少し歪ませたように歌い上げる村松の声はザラついたカッコよさを感じさせ、寂寥とした雰囲気の楽曲をより物悲しく響かせる。

笑いも交えつつ客席へ感謝を伝え再開を誓う短いMCを挟んで、この日最後となる曲がはじまる。アルバム『By Your Side』のラストと同じく『Beginning』だ。

Nothing’s Carved In Stoneは前を向いている。10年以上、常に新しいことに挑戦し、自らを更新し続けてきたバンドだが、それだけではない。ステージ上で前を向いて、客席のひとりひとりと向き合っている。『By Your Side』の言葉の通りいつも側にいて一緒に前を向いてくれる。

《明日が怖いとなげいていた君を連れ出して 世界を見せる》

僕らも前を向いていきたい。だってこんなにかっこいいバンドが側にいてくれるのだから。

取材・文:稲葉悠二
撮影:西槇太一

《SET LIST》
  1. 1.Who Is
  2. 2.In Future
  3. 3.Blow It Up
  4. 4.The Poison Bloom
  5. 5.ツバメクリムゾン
  6. 6.YOUTH City
  7. 7.きらめきの花
  8. 8.The Savior
  9. 9.Still
  10. 10.シナプスの砂浜
  11. 11.One Thing
  12. 12.Milestone
  13. 13.Alive
  14. 14.Spirit Inspiration
  15. 15.Like a Shooting Star
  16. 16.Around the Clock
  17. 17.Kill the Emotion
  18. 18.Out of Control
  19. 19.Music
  20. EN1.Bridges
  21. EN2.Beginning
Nothing’s Carved In Stone

NEW EP『BRIGHTNESS』2024.5.15 On Sale!!

NEW EP『BRIGHTNESS』
2024年5月15日(水)リリース
初回限定盤(CD+DVD) 3,960円(税込) 品番:WPZL-32124~5
通常盤(CDのみ) 2,200円(税込) 品番:WPCL-13557

初回限定盤DVDには“Live on November 15th 2022”ライブ全18曲を収録!

▼ご予約、Pre-Add / Pre-Save受付はこちらから
https://ncis.lnk.to/2024EP

“BRIGHTNESS TOUR” 開催!

全15公演を回るワンマンツアー “BRIGHTNESS TOUR”
5/19(日)YOKOHAMA Bay Hall
5/25(土)高松MONSTER
5/26(日)松山WstudioRED
6/1(土)福岡DRUM LOGOS
6/2(日)長崎DRUM Be-7
6/8(土)米子laughs
6/9(日)岡山CRAZYMAMA KINGDOM
6/15(土)名古屋DIAMOND HALL
6/16(日)甲府CONVICTION
6/22(土)長野CLUB JUNK BOX
6/23(日)金沢EIGHT HALL
6/28(金)札幌PENNY LANE24
6/30(日)仙台Rensa
7/13(土)GORILLA HALL OSAKA
7/15(月祝)Zepp DiverCity(TOKYO)

各プレイガイドにてチケット一般発売中!

チケットぴあ
https://w.pia.jp/t/ncis/
e+
https://eplus.jp/ncis/
ローチケ
https://l-tike.com/ncis/


Larrivee MONO Case
BlackSmoker_BM_MISA BS FUJI 聖飢魔II&DHC
LOVEBITES digimart DIXON