Nothing’s Carved In StoneとABSTRACT MASHのフロントマン、村松拓による自身初の弾き語りツアー「The Fireplace Tour 2022」。その追加公演が5月12日(木)に東京キネマ倶楽部で行なわれた。

本ツアーはこれまで5度の弾き語りワンマンを成功させてきた村松が、そのタイトル「The Fireplace」を冠し、今年2月より彼の地元・千葉LOOKを皮切りにスタート。途中、自身の新型コロナウイルス罹患によって6公演が延期・振替となってしまったが、3月半ばからは無事に復帰を果たし、この日の開催へと至った。

ラグマットの上にアコギや椅子などが置かれたステージに現れた村松拓が、サイドテーブルのランタンを灯し、「ようこそ、『The Fireplace』へ。ゆったりやっていくんで、最後まで楽しんでいってください」と挨拶。ライブはABSTRACT MASHの『アスピリ』で幕を開けた。曲を歌い出す前、会場のどこかから“チッチッチッ”と時計の秒針を刻むような音が大きく聞こえてしまうハプニングがあったものの、さほど動じることなくペースを立て直すさまはさすがで、アコギを爪弾きながら、時にそのボディを叩きながら、まずはNothing’s Carved In Stoneの定番曲『Diachronic』まで、集まってくれたお客さんに力強い歌声を心地よく響かせる。

思いのほか暑いんで」と早くもシャツを脱ぎつつ、「“Fireplace”は暖炉という意味です。リビングとかにあるものですけど……まあ、のんびりとね。恋人や友達、家族に歌う感じで。僕が暖炉のような存在だったらいいな、みたいな。だから、すごく暑いのかな(笑)」と、ソロワンマンの趣旨を伝える村松。続くナッシングスの『きらめきの花』では、そうしたアットホームな空気感、東京キネマ倶楽部の素敵な内装に加え、彼の歌に合わせてスタンドライトが明るさを増し、客席からハンドクラップも巻き起こるなど、どんどんいいムードになっていく。そして、バンドでのテクニカルで変則的なアンサンブルが影を潜めたぶん、歌とメロディにたっぷり集中できる。それはシンプルな弾き語りだからこそ。

4月20日(水)に行なわれたLINE CUBE SHIBUYAでのライブを境に、しばらく充電期間へと入ったNothing’s Carved In Stoneだが、活動再開の時まではこうして村松がソロでバンドの曲を歌っていってくれるのだろう。熱の籠ったパフォーマンスの中、そんなことを温かく感じさせてもらえたファンもきっと多かったはずだ。

平日の木曜なのに、こんなにたくさんのお客さんが来てくれて嬉しいです。存分に楽しんでもらいたいので、2部構成でやります」と伝えたあとは、同年代の友人であるKeishi Tanakaが村松のために書き下ろした『ラブレター』を披露。「ちょっと自分っぽくないんだけど、それをあえて俺に歌わせるっていうドSな曲です(笑)」と前置きしながらも、ボッサ調の洒落たコード進行に甘いボーカルを乗せたアプローチがとても新鮮な耳当たりでよかった。

さらに、赤い照明の中でグルーヴィに聴かせた、変われない自分自身を憂うような歌が沁みるソロ曲『Is That Where You Are』。「尊敬しているバンドのメンバー(Nothing’s Carved In Stoneの生形真一)が書いたすごく好きな曲」だという『Perfect Sound』を奏でると、今この瞬間のありがたみを実感したのか、「こんなに幸せな時間はないですよ。だって、僕を観に集まってくれたんですもんね!」と、あらためて言葉にする場面があったりも。

一方で、「昨日は個人的に悲しいニュースがあって。ま、みんなもそうなのかなっていう感じなんですけど……」と多くは語らず、今日のために急遽作ってきた新曲を届けるなど、ひとつのライブにおいてさまざまな表情を見せてくれたのも印象深い。光に包まれるような温かみをもって、“もう君が笑わせないなら しっかり立とうと決めたんだ 遠くまで行こう 遠くまで行こう”と歌われる曲はどこまでもやさしく、その世界観にしみじみと浸って第1部が終了となった。

10分間の休憩タイムを経て、もう一度シャツを着て登場した村松。そして、スペシャルゲストとしてアナウンスされていたバイオリニストのNAOTOを呼び込み、2020年11月から12月にかけて行なわれたイベント「ROCKIN’ QUARTET vol.4」以来の共演となる2人は、早速トークに花を咲かせる。今回の出演が決まるまでの経緯を明かしたり、村松が「NAOTOさんってわりと僕たち(バンドマン)寄りの人間なんですよ」と観客に説明したり、いっしょにお酒を飲んで酔い潰れた話をしたりと、演奏前からとても楽しそう。

賑やかな幕開けとなった第2部のオープニングナンバーは、「ROCKIN’ QUARTET」でカバーしたことがあり、村松のルーツでもあるオアシスの名曲『Whatever』。弾き語りの歌唱に、NAOTOの優美で瑞々しいバイオリンの音色が添えられ、また違った質感が味わえるのがたまらない。アウトロのソロで「パッヘルベルのカノン」のメロディを織り交ぜるなど、自由度の高いNAOTOのプレイは素晴らしく、「ヤバい、めっちゃ興奮する!」と喜びを爆発させる村松。NAOTOも「今日のたっきゅんは声の伸びがすごいよ」と褒め返す。

続いては「せっかくなので、NAOTOさんの曲もやってもらいたい」と目を輝かせる村松のリクエストで、4月にリリースされた最新アルバム『Get over it』から『Like a gigue』をソロで演奏。本人曰く「いわゆるクラシックのジーグという様式(バロック時代に流行した6/8拍子や3拍子の舞曲)を、現代にポップスを作っている僕がやったらどうなるんだろう」という想いで仕上げた曲とのことで、その圧倒的な音の支配力、気品のある美しい響きに、ステージ上手で体育座りをして見守っていた村松(弾き終わって「ブラボー!」とガッツポーズ)を含め、会場の全員がうっとりと酔いしれたのだった。

NAOTOとのブロックのラストは、ナッシングスの『Shimmer Song』。うねるギターリフのメロディなどをバイオリンが担うというこの日ならではのスペシャルなアレンジによって、村松のボーカルもますます冴えわたり、孤独な夜を越えるためのエールソングがまた新しい形で堪能できたのも、なんとも贅沢な時間だったと思う。

大きな拍手でNAOTOを送り出し、ここからは再び村松による弾き語り。このツアーの高松公演の楽屋で原型ができて、東京へ戻ってきた桜の季節、世田谷区の淡島通りでカップルのような家族のような2人を見かけたときにイメージが湧いたという『ただいま』は、「なんか幸せそうだなと思いながら、世界平和とかも願ったりしてね」と、曲が完成するまでの背景を、まさに暖炉の前に居るみたいなトーンで語っては聴かせてくれた。『You’re My Friend』も同じくツアー中に、ファンの方々を想って作ったとのこと。今の自分を色濃く反映させたソロの温かな新曲には、彼の人間性や包容力がナチュラルに滲み出ている。

自分の中にある何かを大切にしてほしいなって、最近よく思います」と言って奏でられたナッシングスの『青の雫』然り、この日は全体的にやさしい眼差しが感じられるような選曲になっていた気がする。裏話をすれば、事前のセットリストでは『We’re Still Dreaming』の予定だったのだが、おそらく村松に想うところがあって本番は『青の雫』に差し替えられた。実は第1部の新曲も変更の末、より印象に残る曲順で披露されており、そうやって今の本心に従って、歌いたい曲、聴かせたい曲を素直に届けていくのが「The Fireplace」の醍醐味なのかもしれない。

その後も「ここに来ていただいたからには、僕のことをもっと知ってほしい」と、ABSTRACT MASHの『1mmタール』『Silent Wheel』でバンドを始めた頃の葛藤を曝け出してみせる村松。当時の曲に関しては「今自分で聴いても、歌詞の意味がわからない!」と笑うなど、多少の気恥ずかしさはあるようだけれど、それ以上に一周回って嬉しそうに歌っている姿が胸を打つ。

昔は悲しみに耐えるような曲をよく書きました。10年くらい前、僕の大切な人の大切な人が亡くなって。そのときに“残された人ってどういうふうに生きていくんだろう”と思いながら書いた曲です」と紹介して始まったのは、ナッシングスの『Red Light』。聴き手の心に明るく火が灯って、よりいっそう暖炉のそばに居る気持ちが増す。

強くて温かい村松の声が会場いっぱいに染みわたり、なんだか泣いてしまいそうになる。感動が最高潮を迎えたところで、鳴らされたのはナッシングスの『朱い群青』。来たる夏の気配もほんのりと薫らせつつ、理想的なテンションで本編をやさしく締め括った。

アンコールでは一転、「リハで盛り上がった曲があるんで」とTM NETWORKの『Get Wild』を突然カバーするという驚きの展開も! NAOTOのバイオリン伴奏のもと、階段上のサブステージに村松がハンドマイクで立ち、本編をやり終えた解放感も伴ってノリノリで歌いまくる。

このサプライズにお客さんは大喜び。さらに、ここには書けない爆笑トークをNAOTOと共に繰り広げ、8月29日(月)に再び東京キネマ倶楽部で新たなライブイベント「ROCKIN’ QUARTET SPECIAL」を開催することも発表した。

そんなハッピーな雰囲気のまま、最後はNAOTOとのセッションでナッシングスの『Dream in the Dark』。しんどいときに背中をそっと押してくれるような、この先の未来を照らしてくれるようなナンバーで、村松が「めっちゃ楽しいー!」と何度も叫んでいた充実のライブはエンディングを迎えた。

なお、「ROCKIN’ QUARTET SPECIAL」にはボーカリストとして山田将司(THE BACK HORN)と村松拓が登場し、NAOTO率いる弦楽四重奏とコラボを繰り広げる。これまでのBillboard Liveでの公演以上のロングセットを予定していて、スペシャルチケットの購入者はアフタートークショーにも参加できるとのことなので、8月29日(月)はぜひ東京キネマ倶楽部に足を運んでみよう。

PHOTO:RYOTARO KAWASHIMA
取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. <第1部>
  2. 1.アスピリ
  3. 2.Diachronic
  4. 3.きらめきの花
  5. 4.ラブレター
  6. 5.Is That Where You Are
  7. 6.Perfect Sound
  8. 7.新曲
  9. <第2部>
  10. 8.Whatever
  11. 9.Shimmer Song
  12. 10.ただいま
  13. 11.You’re My Friend
  14. 12.青の雫
  15. 13.1mmタール
  16. 14.Silent Wheel
  17. 15.Red Light
  18. 16.朱い群青
  19. <ENCORE>
  20. EN1.Dream in the Dark

村松拓 使用楽器・機材紹介

Nothing’s Carved In Stone

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【通常盤】CD DDCZ-9072(SSRA-2008)/ 2,800円(税別)

<CD>
01.Deeper,Deeper
02.Recall
03.Flame
04.No Turning Back
05.Beautiful Life
06.Walk
07.Impermanence
08.Wonderer
09.We’re Still Dreaming
10.Bloom in the Rain

<DVD>「Studio Live "Futures"」全17曲収録 ※初回限定盤のみ

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NAOTO

最新アルバム『Get over it』Now On Sale!!

Artist:NAOTO
Title:Get over it
型番:SURE-1001
発売日:2022年4月6日(水)
価格:¥5,000(税込)

01 SHARE! KFB福島放送「シェア!」テーマ曲
02 Nice Try!!!
03 NATURE SOUR FM栃木 RADIO BERRY開局25周年記念「レディオベリーウエザー(お天気のお知らせ)」テーマ曲
04 Get over it
05 Like a gigue
06 Stay With Me
07 幸せな食卓 La La TV「眼福食堂」テーマ曲
08 Explorer 改 〜Band ver〜 アバルト「The SCORPION SPIRIT―挑戦―」オリジナルアレンジ曲
09 Shining FM岡山「牛嶋俊博ドリームファクトリー」テーマ曲
10 Conflict of mind
Bonus Track 心のふるさと〜Inst Ver〜 北清水小学校創立50周年記念歌

10/28(金)「NAOTO LIVE 2022 -Get over it-」@東京国際フォーラム・ホールC 開催決定!

ジャンルをスタイリッシュに跨ぎ、ポップス&ロックを表現する唯一無二のヴァイオリニストNAOTOのNew Album「Get over it」発売記念ライブ開催!常に時代を捉えて進化を続けるNAOTOによる、新しいヴァイオリンミュージックをどうぞお楽しみください。

公演名:NAOTO LIVE 2022 -Get over it-
日程:2022年10月28日(金) 開場17:45 / 開演18:30
会場:東京:東京国際フォーラム・ホールC
出演:NAOTO(Violin),松本圭司(Keyboard),伊藤ハルトシ(Guitar/Cello),須藤満(Bass),齋藤たかし(Drums),大谷舞(Violin)
料金:全席指定 ¥7,500(税込) ※未就学児童入場不可
一般発売:2022年7月2日(土) 10:00~
詳細はNAOTO Official Siteまで
https://www.naoto-poper.com/news/343403


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