Nothing’s Carved In Stoneは前を向いている。先日ベーシストの日向秀和がTwitterで自身の若き日のライブ映像に沿えて「ほんとに前向かないでプレイしてた頃のライブ🤣」とツイートしていたが、確かに今このバンドは日向だけではなくメンバー4人ともがしっかり前を向いてステージに立っている。勿論、そういう話ではなく、常に新しいことに挑戦し、自らを更新し続けてきたバンドの姿勢を指しての言葉だ。

2018年に結成10周年を迎え、記念となる武道館公演を開催。新たに自主レーベルを立ち上げて歩きだしたNothing’s Carved In Stoneが昨年2019年の9月にリリースしたのが10枚目となるアルバム『By Your Side』。このアルバムのリリースに合わせて昨年10月から“By Your Side Tour 2019-20”を開催。メンバー自らがセレクトした若い世代のバンドをゲストに迎え北海道から鹿児島まで各地を回ってきた後、ワンマン・シリーズの幕開けを飾るのがこの2020年1月9日のZepp Tokyo公演だ。

開演時間を迎えるとステージを覆うスクリーンに映像が流れる。「Who is the hero?」「Who you really are」といったメッセージに続き、スクリーンにシルエットだけが浮かび上がり、はじまったのは勿論『Who Is』だ。幕が落ち、メンバーの姿が現れると大きな歓声が上がる。1曲目からバンドは圧倒的なグルーヴを放ち、客席も待ちわびていたかのように熱狂で応える。日向のタッピングによるシーケンスフレーズも心地よい。

間髪入れずに続いた『In Future』ではヘヴィなグルーヴに早くも会場が一体となった。ハンドマイクに持ち替え「行こうぜ!!」と客席を煽動する村松拓(Vo)はフロントマンとしての風格たっぷりだ。重戦車のようなヘヴィさを畳みかける『Blow It Up』では「みなさんの力借りてもいいですか!?」と呼びかけ、共に「Oh oh…」と合唱。続く『The Poison Bloom』のイントロでは村松が「よく来たなお前ら!耳の穴かっぽじって、心の穴開いて、しっかり感じて帰ってください。よろしくお願いします!」と投げかけたが、村松だけではなくメンバー4人全員が、言葉だけではなく、アクションで、表情で、プレイで積極的に観客とコミュニケーションを取りながらライブを楽しんでいるのが伝わってくる。間奏で村松がそれぞれのメンバーを紹介しながら、3人の名前をコールした後に「お前らの出番だ!行けるか東京!!」と叫んだのもステージ上のメンバーだけでなく、客席のひとりひとりが一緒になってこのライブを作り上げているのだと感じさせてくれた。

村松がレスポールを持ち、『ツバメクリムゾン』『YOUTH City』と人気曲が続くと益々会場の熱気は高まっていく。一聴すると爽やかで疾走感のあるキャッチーなギター・ロックソングにも聞こえるが、その中で複雑で高密度な器楽アンサンブルが繰り広げられているまさにナッシングスらしい4人全員が主役だと思える楽曲だ。特にバチバチに絡み合い、ぶつかり合い、高め合っていくリズム隊には圧倒される。

勢いを止めることなくはじまったバスドラムのリズムに乗せて村松が「By Your Side Tourワンマン編初日でございます。みなさん来てくれてどうもありがとう!今日がツアーの中でも一番よかったって思われるような日にしたいな。俺ら全力でやります。みんなの楽しんでる顔が一番大事。それをステージにたくさん届けて。それに俺たちもっともっと応えて最高の夜にみんなで仕上げていこうよろしく!」と伝える。「だいたい何やるかわかってんだろ?準備できてんのか東京!行けるか!?」の言葉に続いてコールされたのは『きらめきの花』。手拍子をし、手を振り、日に向かう花の様に会場一面に笑顔の花が咲き乱れた。

一転、静謐な雰囲気からはじまったのは『The Savior』。生形真一(Gt)はレスポールに持ち替え、エフェクティブなイントロを奏でる。日向のベースによるコードアルペジオとともにアトモスフェリックな空気感を作り出したかと思えば、濁流が押し寄せるようなリズム、激しく展開する楽曲が会場の空気を一変させた。続くのもアルバム『By Your Side』からのミドルチューン『Still』。生形によるピエゾピックアップの音色を活かした哀愁を感じさせるカッティングもさることながら、この曲での日向と大喜多崇規(Dr)のバスドラムが一体となって奏でるリズムはまるで打ち込みのビートのようなディープなサウンドであったことも特筆しておきたい。

村松がアコースティック・ギターMartin 00-16DBMを手に取ると、奏でられたのは『シナプスの砂浜』。村松の深い歌声、サブスネアを使用しステディなビートを刻む大喜多のドラム、ビグスビー・アームを巧みに操り美しく音を揺らす生形のプレイ、日向のフィルター・エフェクトの掛かったサウンド、すべてが渾然一体となって作り上げるエモーショナルな情景に観客は一心に聴き入り、曲終わりには大きな拍手が自然と湧き起こった。

一瞬の間を置いて、生形がフランジャーの効いたリフを奏で始める。最新アルバム2曲目に収録された『One Thing』だ。大喜多の奏でる太いタムサウンドとタイトなスネアがリズミカルに踊る中、熱い歌詞が胸に刺さる。しっかりと耳を傾けながらも、サビでは手を高く掲げずにはいられなかった。

静寂を切り裂く、と言うよりはまるで空間を切り刻むように生形がピエゾピックアップで奏でるアコースティックなサウンドのファストなリフ、『Milestone』に一際大きな歓声が上がる。《永遠の様な感情でさえ 現実の前じゃ無力だけど 僕らは今日も寄り添っていて それを自由って呼ぶんだ》Nothing’s Carved In Stoneのバンド名にも込められた“自由”というステイトメントを高らかに歌うこの歌が、『By Your Side』の文脈とも響きあってより一層心を震わせてくれる。

一呼吸の余韻を挟んで『Alive』。符点8部ディレイのギターによる開放感のあるイントロ。小さな音をしっかりと叩き出す大喜多のダイナミクス溢れるプレイも見事だ。また、個人的には2番Aメロでの日向によるウォーキングラインは決して派手なプレイでは無いが音価のコントロールがあまりに絶妙で度肝を抜かれた。そして、そんなプレイをしながらも楽しくて仕方がないというような気持ちが溢れる笑顔なのだから尚更驚愕してしまう。

「ようやく、このツアーでみんなの側に行けそうな気がする」

Nothing’s Carved In Stone

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