吉川晃司、大黒摩季、デーモン閣下をはじめ数々のアーティストのサポートを務め、自身のバンドやセッション等でも幅広く活躍するギタリスト原田喧太氏。1994年のソロデビューから今年2024年でデビュー30周年を迎えるのを記念し、自身のソロキャリア初となるギターインストゥルメンタルアルバムをリリースした。今回はそのアルバム『Addiction』について詳しく話をきかせてもらった。

―今回のアルバム『Addiction』は喧太さんのソロデビュー30周年記念ということですが、アルバムの発表は何年振りですか?

原田喧太(以下、喧):ソロアルバムは、多分14年振りじゃないかな。『心ノ音』っていうアルバムを出したのが最後で(編注:『心ノ音』は2010/11/13リリース)、それ以来ソロアルバムは出してなかったです。KATAMALI(原田がGuitar/Vocalをつとめる満園庄太郎(Bass)、満園英二(Drums)とのスリーピースバンド)では2枚ぐらい出してますけど。
『心ノ音』にはインストは2曲入ってたと思いますけど、他は歌物だったので、30年で初インスト(インストゥルメンタル)アルバムですね。

―聴かせて頂いたんですが、すごいインストアルバムだったなぁと思いまして。曲もすごく振り幅が広いっていうのと、あとギターのサウンドがやっぱり喧太さんならではで色々こだわってるんだろうなぁと思いました。本日は1曲ずつ詳しいお話を聞かせて頂きたいと思っています。

まず、1曲目の『Going Home』はすごく壮大なイメージで、アメリカっぽい、でも、とは言え日本ぽさも感じますね。

喧:そうですね。夕方の川辺、みたいな。「家に帰るよ」、「早く家帰っておいで」っていう。壮大なイメージなんだけど、日本の唱歌っぽいものを作りたくて。「思い出深い家に帰ろうよみんなで」っていうのがイメージですね。

―まさに、そういう夕焼けがイメージされたり、子どもの頃の夕方5時ぐらいのような、そんなイメージをしたんですけど。

喧:そうそう、そんな感じ。“夕陽”な感じです。

これはいつごろ作られた曲なんですか?

喧:今回2~3年かけて曲を作ってて、20曲ぐらい作ったかな?もっと作ったかな?───その中からチョイスしてるんです。

―このアルバムは2~3年かけて制作されたんですね。

喧:はい。前からちょっと、インストゥルメンタル作りたいねってなってまして。この曲は、ギターとベースとドラムしか入ってないけど、ギターが10本ぐらい入ってるかな?後ろで全部ギターオーケストラみたいになってるんです。

―この1曲に10本ですか!?

喧:そうです。後ろで全部バッキングはオーケストラみたいにして。ベース音とか、バイオリンをイメージしてたりとか、そういうのを1本1本全部重ねていったんです。バッキングだけで、7~8本入ってるのかな。

―途中でギターがユニゾンで出るところがあって、あの部分はそれぞれどのギターを使ってたのかなっていうのも気になったのですが。

喧:これは1曲全部シェクター(SCHECTER EX-V KENTA CUSTOM)1本ですね。メロディーが入ってるときも、後ろのバッキングもギターが常に7本鳴ってるんです。それも全部シェクターで、サスティニアックを使って「フィーン」って音を出したりしています。1本1本重ねていって、7本ぐらいで1個のコードにしてあるんですよ。

―たしかに、サスティニアックならではのハーモニクス・サウンドも特徴的ですね。

喧:バッキングは全部サスティニアックで、ちょっとオーケストラみたいにしてます。真ん中でハモってるのも全部その(それぞれのトラックごとのメロディーの)流れでハモってるんですよ。

―7本は微妙に音色は変えていったんですか?

喧:ちょっと歪みの成分を減らしてるぐらいで、だいたい同じ音色でバッキングはやってると思います。

―音作り的にはシンプルだなとは思ったんですけど、サウンド面でのこだわりはいかがですか?

喧:今回は全部そうなんですけど、エレキは全部フラクタル(Fractal Audio Systems Axe-Fx)で、全部ラインで録りました。全部家で作ってるんで。ベースも俺、ドラムも俺が全部一人で作ってるから(笑) この曲に関しても全部フラクタル以外使ってないんじゃないかと思います。

―『Going Home』に関して喧太さんから一言いただけますか?

喧:これはやっぱりギターオーケストラですよね、本当に。ギターのオーケストレーションを楽しめる曲だから。バッキングもよく聴くといろんなメロディーが混ざり合ってるから、面白いと思います。

―これだけあると、ステージでギタリストが何人かいて一緒に弾けますね。

喧: 1月のライブでは、ギタリストが5人並んだのかな?SAKIとうちの田川(ヒロアキ)くんと、おーちゃん(大沼智雄氏)と(伊東)大貴も弾いてたから。5人ギターで再現したんですよ。

―アルバム最後の曲『Sanbonjime』はやっぱり“締め”ですけど、『Going Home』もさっきも言った通り夕焼けのイメージで、アルバムの最後になってもおかしくないような曲だと思うんですけど、それがいきなり最初っていうのはどういう狙いがあったんですか?

喧:大きくはじまりたかったんですよ。

―そのスケール感も聴きどころってことですかね。そして、そこから真逆になっていくのが2曲目で。

喧:そう、『Addiction』です。

―これもまた出だしのタッピングから…

喧:あれはタッピングじゃないんですよ。普通に弾いてます。

―あ、そうなんですか!?

喧:イントロでしょ?あれはタッピングじゃないんですよ。これが一番最近作った曲で、最後に作った曲。っていうのも、ライブが決まってから作ったんですよ。ライブが2024年の1月25日だったから…年末に作ったのか。

―2023年の12月ですね。

喧:ええ。IKUOくん、CHARGEEEEEE…、田川くん、トシ(柴田敏孝)、っていうメンバーでライブが出来るって決まったときに、このメンバーでしか再現できない曲を作ろうと思って、こういうちょっとワチャワチャした曲を作ったんです。メタル系…メタルと言うか、すごいテクニカルな、テクニックしか入ってない曲ですから(笑)

―確かに。生で見たのを思い出しましたけど、IKUOさんぽさもあって、IKUOさんじゃないベースの方が弾くのは大変そうだなと思いました(笑)

喧:ちゃんとベースのコーナーも作って。ライブだとそこはフリーのベースソロになるんだけど、CHARGEEEEEE…のドラムソロもあって。だから、これは今回のメンバーじゃないと再現できないだろうなーってほくそ笑みながら作った曲なんですよ(笑) 田川くんはヒーヒー言いながらコピーしてたけど(笑)

だから、変なフレーズだし、イントロからメロディーもちょっと変な感じだし。ずっとハモってるし(笑)

―とは言え、喧太さんぽいような暴れん坊な感じがずっとしてて。このアルバムの中で、これも代表曲になるような曲ですよね。

喧:そうそう。キー曲だと思いますね。

―アルバムタイトルトラックですもんね。そうですよね。これは私のメモに書いてあったんですけど、「3:02 ブレイクした後のオルガンぽいサウンド」っていうのが気になったんですけど…

喧:なんだろう?

―音はこれもフラクタルなんですかね?

喧:全部フラクタルです。(音源を再生して)…これか!

―ギターシンセですか?

喧:いや、普通のギターですね。これも5本ぐらい重ねてるんじゃないかな。これは1本1本でコードにしてるだけです。

―ここのギターもシェクターですか?

喧:この曲に関しては全部レス・ポール、(写真を指して)これですね。重ねてるのも全部レス・ポールです。さっきの部分も「テーテテーテッテーテテッテッテ」っていうのを3~4本ぐらい重ねて、1本1本を、コードにしてるんです。

―フラクタルでこういう音を作ってるんですね。

喧:これも普通のアンプのシミュレーター、Marshallのシミュレーションで作ってます。で、ちょっと自分なりの音色を作って。別にこれは、大した音色は使ってないんですよ(笑)

―そのパートの最後の「シュー」って音もかっこいいですね?

喧:この部分は、最初はギターで反転させてリバースを作ろうかなと思ってたんですけど。「ブワーッ」って作ろうと思ったんだけど、なんかちょっと勢いが足りないかなと思いまして。で、ちょっといろんな音源を探して、この音色いいなって思って(笑)

なにか面白いのないかなーって、ずーっと1日中12弦のチューニングを変えて(笑)

原田喧太

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