岸谷香が毎年行なっている年末のスペシャルライブが、大阪と東京のビルボードライブで計4公演にわたって開催。ここでは、12月30日(金)の東京編より2ndステージの模様をレポートする。

前回の「KAORI PARADISE 2021 年末スペシャル」はゲストにチェロ奏者の江口心一を迎えてのアコースティック公演だったが、今回はガラッと趣向を変え、親交の深いsugarbeansがバンマスを務めるビッグバンド“sugarbeans Jazz Orchestra”を従えてのライブ。岸谷香(Vo)をフロントに、sugarbeans(Pf)、千ヶ崎学(Ba)、岡本啓佑(Dr)、Tocchi(Tb)、湯本淳希(Tp)、大泊久栄(Tp)、橋本和也(A.Sax&Fl)、河村緑(T.Sax&Fl)、中村尚平(B.Sax&Fl)という計10人による豪華な編成だ。

開演時刻になると、まずはsugarbeans Jazz Orchestraがステージに登場。ビッグバンドによるオープニングセッションを経て赤のドレスを纏った岸谷香が客席後方からプリンセス プリンセスの『パレードしようよ』を歌いながら姿を現した。“ほらね 聞こえるファンファーレ”のフレーズにもぴったりの華やかなサウンドとともに彼女が明るく元気に歌えば、フロアには早くも賑々しいハンドクラップが溢れ出す。

年の瀬の忙しい中、たくさん集まってくださって本当にありがとうございます。今日はスペシャルバージョンで、sugarbeans Jazz Orchestraのみんなと2022年最後のステージをうんと楽しんで帰りたいです。馴染みのある曲もこのバンドで演奏すると少しロマンチックで違った世界になるし、もう28年くらい歌っていないひさしぶりの曲、初めて歌う曲もやります!

sugarbeans(Pf, Arr)

最初のMCでも期待を膨らませたあとは、「ビッグバンド編成で絶対にやりたかった」という『THE SUMMER VACATION』へ。プリプリのサマーチューンといえば『世界でいちばん熱い夏』が脚光を浴びることが多いけれど、この隠れた夏の名曲こそ実はファンにはたまらなかったりするのかもしれない。大人っぽさと高揚感を兼ね備えたsugarbeans Jazz Orchestraのアンサンブルで聴くと、確かにまた異なる味わいがあって、岸谷もキャリアを重ねた今ならではのボーカルで心地よく酔わせてくれる。

「ヘイ!」というシャウトから始まったのは、1994年に発表された1stソロアルバム『Renaissance』のナンバー『ある朝魔女になってたら』。こうして“奥居香”時代のソロ曲がたくさん聴けたことも、今回のライブで特筆すべきポイントだろう。ギターやピアノを自ら弾くスタイルではない分、曲が進むごとに岸谷の自由度はどんどん増し、ここではブルースロックの熱量とジャズの小粋さを湛えた表情豊かな歌唱でオーディエンスを魅了。ボーカリストとしてめいっぱい振り切った開放的なパフォーマンスを見せ、会場のムードもさらにいい感じになっていく。

シュガビン(sugarbeans)とは2015年くらいから一緒にやり始めまして、彼はピアニストなんですけど、ある時はドラマーであり、ある時はビッグバンドを率いて譜面を書いたり演奏したりするのを知っていたので、いつかその切り札を私に出してほしいなと密かに思っていました(笑)」と、今回のライブの経緯が語られるシーンも。

『スターライト・セレナーデ』では中村がフルートに持ち替え、トランペットの2人はミュートを取付けてプレイしていた。

続いては、前フリがあったライブ初披露となる『スターライト・セレナーデ』。1stソロアルバム『Renaissance』のリリースに伴う公演「音楽会」を映像作品化(1995年にVHSとLDで発表)した際の特典CDに収録された楽曲で、オーケストラレコーディングだったことも関係して、なかなか演奏のタイミングがなかったのだという。そんな眠っていたレア中のレア曲を生で聴けるのも、このビッグバンド編成だからこそ。夜に遠く離れた恋人を想う歌詞の世界観、サックスやフルートの印象的な甘い音色、その響きに乗る美しい声に、思わずうっとりさせられてしまった。

素敵なラブソングの余韻に浸っていると、今度は軽快なベースが鳴り始め、モータウンビートが光るプリプリの名曲『Diamonds<ダイアモンド>』が降臨。岸谷の明るく煌びやかなボーカルに加え、“AH”のコーラスをホーンセクションが担ったり、キレキレのトランペットソロが決まるなど、ビルボードライブ東京はさらなる多幸感に包まれる。

『Diamonds<ダイアモンド>』では湯本がトランペットソロを披露した。
『恋は素晴らしい』ではサックスの橋本と河村がフルートを演奏。

いい流れのまま、再び奥居ソロの『恋は素晴らしい』へとなだれ込み、ミラーボールが輝く中、バンドサウンドは一段とノリノリに。岸谷もボックスステップを踏みながら、各席のオーディエンスに手を振りながら、とても楽しそうに歌う。プリプリの『OH YEAH!』では、ラモーンズの『リメンバー・ロックンロール・レイディオ?』を彷彿とさせる力強いビートに後押しされ、“抱きしめたい この夜に抱かれていたい”“火をつけたい 燃え尽きたい”と熱唱。ライブハウスのような躍動ぶりが逆に清々しい。

『OH YEAH!』ではT.Sax 河村のソロも大きな盛り上がりのひとつとなった。

お酒を片手にしっとり楽しむビルボードのはずが、今年でいちばん発狂してるね。ま、こういうのもいいか!」と笑い、「私はこれが36ステージ目なんですけど、そのすべてを一本もキャンセルせずにやってこられたことが嬉しいです。皆様からたくさんの拍手をいただいて、それをガソリンに1年間走って参りました」と感謝を伝える岸谷。

sugarbeans Jazz Orchestraとの再共演も誓い、充実した笑顔を浮かべる舞台上の10人。岸谷が「2023年がやさしくて温かくて、そして楽しい一年でありますように」と願いを込め、本編ラストはプリプリのいちばんのバラードだと自負する名曲『ジュリアン』で情感たっぷりに締め括られた。

観客の拍手に応え、ナチュラルな服装&ソロで再登場した岸谷は、ゆったりとトークを展開。素晴らしかった2022年の中でも特にグッときた経験として、12月に自身のラジオ番組で小学生のときに愛してやまなかったゴダイゴのタケカワユキヒデに会えたというエピソードを明かし、そこから自宅のアップライトピアノで『銀河鉄道999』を一生懸命コピーしていたという青春時代の記憶まで、思い出話に花が咲く。

アンコールでは、その話に出てきた小6の奥居香が大きな影響を受け、コピーして歌いまくっていたゴダイゴの『銀河鉄道999』を、当時のままのアレンジとキーでピアノ弾き語りカバー。ステージ後ろのカーテンが開いた夜景とイルミネーションが見えるシチュエーションで彼女の原体験に触れられるという、年の終わりにふさわしい贅沢な時間をもってライブはエンディングを迎えたのだった。

取材・文:田山雄士
PHOTO:MASAHITO KAWAI

《SET LIST》
  1. 1.パレードしようよ
  2. 2.THE SUMMER VACATION
  3. 3.ある朝魔女になってたら
  4. 4.スターライト・セレナーデ
  5. 5.Diamonds<ダイアモンド>
  6. 6.恋は素晴らしい
  7. 7.OH YEAH!
  8. 8.ジュリアン
  9. <ENCORE>
  10. EN.銀河鉄道999
岸谷香/Unlock the girls

LIVE

KAORI KISHITANI / Unlock the girls LIVE TOUR 2026 "59th SHOUT!" ~A面に恋をしたあなたへ~
6/13(土) 大阪・なんばHatch 
6/19(金) 神奈川・CLUB CITTA 
6/21(日) 愛知・名古屋DIAMOND HALL
6/27(土) 福岡・福岡トヨタホールスカラエスパシオ
6/28(日) 広島・広島CLUB QUATTRO
7/5(日) 新潟・NIIGATA LOTS
7/11(土) 宮城・仙台Rensa 
7/18(土) 北海道・札幌 PENNY LANE24
7/26(日) 東京・豊洲PIT
一般発売:2026年4月25日(土)
岸谷香オフィシャルHP http://www.kaorikishitani.com

EVENT

『ARABAKI ROCK FEST.26』
国営みちのく杜の湖畔公園 北地区 エコキャンプみちのく
2026年4月25日(土) 開場9:30 開演10:30
※雨天決行 ※キャンプサイト:土曜 9:00オープン
※詳細はHPをご確認ください。https://arabaki.com/

『LuckyFes’26』
8/10(月)に出演
会場:国営ひたち海浜公園
※詳細はHPをご確認ください。https://luckyfes.com/

RADIO

ニッポン放送 『オールナイトニッポン MUSIC10』
毎月第4水曜日 22時~24時

上映

プリプリ解散から30年。tvk秘蔵ライヴ・フィルムを全国30館で劇場上映
tvk(テレビ神奈川)の音楽番組で放送された貴重なライヴ映像を蔵出しし上映します。
※詳細はHPをご確認ください。
https://www.sonymusic.co.jp/artist/Princess/info/581186


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