2019.5.23@マイナビBLITZ赤坂 “KAORI KISHITANI 2019 LIVE TOUR 52nd SHOUT! -Unlock the girls 2-” ライブレポート
PRINCESS PRINCESS、奥居香、岸谷香と、様々な時代の名曲たちを味わえた、世界でいちばん熱いライブ!!!
5月に行われた岸谷香のワンマン公演「KAORI KISHITANI 2019 LIVE TOUR 52nd SHOUT! -Unlock the girls 2-」。今回のツアーは、同月に発売した最新アルバム『Unlock the girls 2』に収録した楽曲を軸に据えながら、「昭和、平成、令和と3時代をプリプリ、奥居香、岸谷香の時代から、皆様のリクエストを参考に選曲しお届け」するという内容。本誌では、マイナビBLITZ赤坂を舞台に5月23日(木)に行われたライブの模様を取り上げ、お伝えします。
PRINCESS PRINCESSのヴォーカリストとして、昭和58年にデビュー。平成8年にバンドを解散後は、奥居香としてソロ活動をスタート。平成13年より岸谷香と、結婚後の名前へ改名。平成30年には、岸谷香が率いるバンドUnlock the girlsを結成。令和になった今は、岸谷香としての活動と並行し、Unlock the girlsとしての活動へもとても力を注いでいる。
今回のツアーは、岸谷香(52歳)名義を掲げつつも、Unlock the girlsとして作りあげた最新アルバム『Unlock the girls 2』の発売を受けて行われた。そのうえで彼女が掲げていたテーマが、「昭和・平成・令和」と、3つの時代を共に歩んできたファンたちと一緒に改めて振り返ろうという想い。
もう一つ加えるなら、Unlock the girlsのメンバーたちは全員が平成生まれ。つまり、昭和を知らない女性たち。そんな彼女たちに昭和という時代が持っていたパワーを、音楽/楽曲を通して伝えようという岸谷自身の気持ちも込められていた。
先に結論めいたことを書いてしまうと、会場に訪れたファンたちは、令和から平成、昭和へと遡る形で繰り返される演目に触れながら、楽曲と共に自らの心を青春時代へ揺り戻し続けていた。「懐かしむ」気持ちはもちろんのこと。今でも僕たち私たちは、音楽を介すことで、何時だって”あの頃”に覚えた気持ちを取り戻せることに嬉しさと喜びを感じていた。
チューニング音のSEが鳴り響く場内。雑音混じりの音は、いつの時代にチューニングを合わせようとしているのだろうか。そのノイズに導かれるように、メンバーたちが次々と舞台へ姿を表した。最後に登場した岸谷香がギターを手にし、力強く弦を掻き鳴らすと同時にライブは幕を開けた。
冒頭を飾ったのは、令和にリリースした最新アルバム『Unlock the girls 2』の1曲目を飾った『バタフライ』(令和元年)だ。ザクザクとした音を刻みながら走り出した演奏。岸谷自身の歌声にも、走り出す楽曲に合わせ、徐々に熱が加わりだす。演奏が進むごとに熱を増す曲は、サビで一気に爆発。そのタイミングを待っていたと言わんばかりに、その歌声と演奏は翼を広げ空高く舞いだした。サビへ向かう流れを繰り返すたびに熱が、輝きが増してゆく。その刺激を覚えるたび、心の翼が大きく羽ばたきだす。
凛々しく、ワイルドに攻めた演奏。でも岸谷の歌声は、牙を剥いた激しささえも甘い歌声で包み込んでいた。なんて、心をウキウキ弾ませる曲だ。『レミニセンス』(令和元年)へ触れている間、誰もが心地好いビートに身を任せ、大きく身体を揺さぶっていた。
「胸のロック解除していいんじゃない?」と、岸谷香は『Unlocked』(平成30年)を通し歌いかけてきた。彼女の歌声を合図に、誰もが理性の留め金を外し、無邪気だった青春時代の自分へ心を戻していた。胸騒がすグルーヴへ身を預け、気持ちはしゃぐままパーティに興じようじゃない。岸谷香は、時代を少しずつ遡りながら、会場中の人たちを”戻りたいあの頃”へ連れてゆく。その音楽の一つ一つが、閉ざしていた過去という扉を次々壊してゆくように…。
岸谷の弾き語りから、演奏はスタート。奏でたのが、奥居香時代に歌った『ひまわり』(平成10年)だ。閉まっていた大切な人への胸の内を思い返し告白するように、岸谷香はとても温かい声を届けてくれる。その歌と音色に身を任せながら、会場中の人たちが空高く伸ばした手を大きく振っていた。それはまさに、太陽に向かって伸びながら花を揺らすひまわりの姿にも見えた。
場内に広がった温かい香りを受け継ぐように、岸谷香はアコギを鳴らし始めた。届けたのが、PRINCESS PRINCESSのナンバー『THE LAST MOMENT』(平成2年)。なんて心温まる歌声と演奏だ。それまで蔭っていた気持ちに日の光が射すような感覚が身体中へ染み渡る。心に爽やかな風が吹き抜ける、その解放感がたまらなく心地好い。
続く『STAY THERE』(昭和63年)では、メンバーたちがブルーズなセッション演奏も交えながら、ふたたび観客の騒ぎたい気持ちへ熱を注ぎだしていた。演奏が熱を帯びるごとに、気持ちが飛び跳ねる。いつしか大勢の人たちが、その場で跳ねながら、熱狂というウネリの中へ心地好く溺れていた。
MCでは、ポニーテールに破れたジーンズ姿をしていた20歳前半の頃の自分を振り返っての懐かしい話に興じていた。観客たちも、彼女と同じように昭和・平成・令和と歩み続けている人たちが多かったという理由もあるのだろう。岸谷香の話に何度も頷きながら、たくさんの人たちがあの頃の気持ちへ浸っていたのではないだろうか。
ここで岸谷香は、心の襞を細かく揺らす悲しみを音に変えて伝えるように、12弦ギターを奏でながら『覚えていてほしいな』(令和元年)を届けてきた。繊細な感情の動きを少しでもきめ細かく届けようと、手にした12弦のギターの音色が、揺れる切ない心模様をより微細に表現してくれたのも嬉しかった。何より、その歌声と演奏に、悲しさを背負いながらも温かさを覚えずにいれなかった。
心に絶望を抱いている人へ、少しでも希望の光が射し込むようにと作りあげた、奥居香時代のナンバー『絶望的に泣いている生きものへ』(平成9年)が流れだした。彼女が「生きていてごらん」と歌いかけるたびに、沈みかけた気持ちが、少しずつ螺旋を描いて上へ上へと上がり続けてゆく。そんな感覚を、この歌は与えてくれた。本編の流れを通し心に光を感じていたせいか、この歌は、いつも以上に心地好い励ましの歌として気持ちを優しく押してくれた。
恋しい想いを、切ない恋心を、募る想いを次々と積み重ねるように、続いたのはPRINCESS PRINCESS時代の名バラード『ジュリアン』(平成2年)。恋する想いが痛みを増すほどに、切ない気持ちも心をチクチク揺さぶり続けてゆく。想う心模様へ触れるたび、気持ちを映し出す瞼が滲んでいく。岸谷香とYukoのギターの音色が同じフレーズを重ねるごと、切なさが感情の堰を決壊させてゆく。なんて、心を濡らしてゆく歌だろう。このままじゃ、壊れた涙腺を補修なんて出来ないよ。
続くMCでは、ケータイ電話など存在していなかった、誰もが家の固定電話にかけながら、恋心を育んでいた頃の時代の話に花が咲いていた。その当時の時代背景を懐かしんだうえで、電話を通して育んだ恋心を歌ったRRINCESS PRINCESSナンバー『KEEP ON LOVIN’YOU』(昭和63年)を披露。こういう想い、今の子たちにもぜひ感じてもらいたい。
続いて披露した『ウェディングベルブルース』(令和元年)は、Unlock the girlsを支えるベーシストのHALNAと作詞家の木村ウニが結婚、二人が幸せをつかんだことを祝おうとちょっぴりの皮肉混じりに書いたというウェディングソング。この手の幸せに包まれた歌が、これからも未来へ語り継がれる結婚ソングになってくれることを願いたい。この曲の演奏中、フロア中に幸せのオーラが染み渡ってゆく光景を見ていたからこそ、尚更、そんな気持ちになっていた。
さぁ、ここからふたたび共に熱狂を描こうか。ファンキーでディスコティックな『Black Market』(令和元年)が、会場中の人たちの身体をご機嫌に揺らしだす。岸谷香を筆頭に、舞台上のメンバーたちも軽やかにステップを踏みながら、可愛らしい振りも交えつつ歌い演奏。ここは、快楽の地?? そんな感覚を覚えながら、誰もが身体を跳ねさせる心地好いグルーヴへ身を預け、華やかなパーティ気分を味わっていた。
ライブも終盤戦へ。今回のライブを行うにあたり、岸谷はファンから「昭和・平成・令和時代の楽曲の中で聞きたい曲」のリクエストを募っていた。その中で一番支持を集めていた楽曲を披露。それが、PRINCESS PRINCESSの『19 GROWING UP -ode to my buddy-』(昭和63年)だ。
『19 GROWING UP -ode to my buddy- 』が流れはじめた途端、観客たちが大熱狂。誰もが全力でモンキーダンスに興じながら、全力で跳ねだした。この瞬間、誰もが時を超え、あの頃の自分に戻り、無邪気な少年少女の顔ではしゃいでいた。「19 GROWING UP」と叫ぶ岸谷の声を合図に、頭上高くタオルを投げ上げるときの興奮が、たまらない。僕らの、私たちの、瞼に焼きついたあの光景は今もここに生きている。この瞬間、昭和と令和が繋がり、僕らは、あの頃と同じ興奮の中、あのときの笑顔を取り戻していた。あの頃に覚えたときめきは、まだまだ自分をこんなにも輝かせてくれる。そう感じられたことが、素直に嬉しかった。無邪気な笑顔で騒げることが、本当に楽しかった。
熱狂へ追い打ちをかけるように、PRINCESS PRINCESSナンバー『世界でいちばん熱い夏』を“令和元年バージョン”として届けてくれた。平成生まれのメンバーたちが時代の中で培ったワイルドなロックスタイルを原曲へ重ねることで、楽曲は、ただ明るく開放的なだけではない、強靱さを増していた。そのタフな表情が野性味を帯びてて格好いい。より進化した形で届けた『世界でいちばん熱い夏』は、まるで異常気象続きの夏のようなギラギラとした灼熱さを持っていた。
会場に生まれた勢いへ、さらに勢いを重ね合わせるように、『ハッピーマン』(平成9年)を演奏。上がり続ける熱。その熱を掻き集め、岸谷香は、Unlock the girlsは、その熱を大きな塊としてフロアへ投げ続けてゆく。
最後に岸谷香は、ファンキーなディスコソウルチューン『ミラーボール』(平成28年)をプレゼント。いつしかマイナビBLITZ赤坂が巨大なディスコに変貌。誰もがミラーボールの光を浴びながら、頭上高く両手を掲げ、心地好く陶酔した表情で踊り続けていた。身体がはしゃぎたいのなら、素直に身を預ければいい。メンバーも、セッション演奏を楽しみながらパーティへ興じていた。誰もが理性を忘れ去り、感情が求めるまま笑顔で熱狂に溺れていた。それって、最高の快楽じゃない!!
アンコールでは、恋した想いを投影した『また恋ができる』(令和元年)を優しく演奏。いくつになっても、こういうときめきを歌に出来る気持ちが嬉しいじゃない。
最後の最後に、これが今の岸谷香のスタイルだと突きつけるかのように、Unlock the girlsとしての最新ナンバー『バタフライ』(令和元年)をふたたび演奏。会場中の人たちを熱狂する祭り人に変えながら、「岸谷香は過去を糧にしつつも、何時だって進化した姿がベストなんだ」という姿勢を観客たちに示していった。もちろん、誰もがその気持ちを真っ直ぐに受け止め、これからも、令和という時代を岸谷香と、Unlock the girlsと一緒に歩み続けようと心の中で指切りを交わしていたに違いない。
最後に岸谷香は「また年内にはUnlock the girlsとしてみんなの前で出会えそう」と語っていた。その言葉が実現するのを、楽しみに待っていようじゃないか。
取材・文:長澤智典
機材撮影:小野寺将也
ライブ撮影: MASAHITO KAWAI
《SET LIST》
- 1.バタフライ(令和元年)
- 2.レミニセンス(令和元年)
- 3.Unlocked(平成30年)
- 4.ひまわり(平成10年)
- 5.THE LAST MOMENT(平成2年)
- 6.STAY THERE(昭和63年)
- 7.覚えていてほしいな(令和元年)
- 8.絶望的にないている生きものへ(平成9年)
- 9.ジュリアン(平成2年)
- 10.KEEP ON LOVIN’YOU(昭和63年)
- 11.ウェディングベルブルース(令和元年)
- 12.Black Market(令和元年)
- 13.19 GROWING UP -ode to my buddy-(昭和63年)
- 14.世界でいちばん熱い夏(令和元年バージョン)
- 15.ハッピーマン(平成9年)
- 16.ミラーボール(平成28年)
- EN1.また恋ができる(令和元年)
- EN2.バタフライ(令和元年)
目次
岸谷香/Unlock the girls
岸谷香 Unlock the girls『Unlock the girls 2』好評発売中!
ガールズバンドプロジェクト第2弾!
初のフルアルバム!テーマは80’s!
「Unlock the girls 2」/岸谷香
発売日:2019年5月1日
品番:SECL-2430
価格:3,500円(税込)
初回仕様:イベント参加券&特典応募券封入予定