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今の時代に則した音楽面での多様性を打ち出したRiOの心踊るライブ。
“踊るヴァイオリニスト”として、今やポップスシーンでも名を馳せているRiO。クラシックという枠を超え、様々なシンガーやコンポーザーともコラボレート。今の時代に則した多様性を打ち出した彼女の音楽性は、クラシックに疎い人たちからも興味感心の視線を受け、今、大きく支持を広げている。
RiOは、8月10日に新宿ANTIKNOCKを舞台に「RiO ONE MAN LIVE 2024 らんするー!」公演を行った。メンバーは、RiO(Vn)を筆頭に、Juker(Gt)・佐々木亮太(Ba)・生田目勇司(Dr)・髙島ユータ(Key)の5人。さらに、ゲスト・ヴォーカルとして鈴木花純が参加。当日の公演の模様を、ここにお伝えしたい。
メンバーらが舞台へ登場。場内が暗くなるのにあわせ、荘厳な演奏が場内中に鳴り響く。ドラムのリズムが軽快に駆けだすのに合わせ、楽曲が滑るように走りだした。フロア中から起きた熱い手拍子。やがてピアノの音色が軽やかに踊りだすのに合わせ、RiOが舞台に姿を現した。彼女の弾くヴァイオリンの旋律が、演奏陣の鳴らす音の上で軽やかにステップを踏み出した。冒頭を飾ったのが、『Across The Field』だ。巧みに展開する演奏の上で、RiOの弾くヴァイオリンの音玉たちが優雅に、軽やかに舞い踊る。軽快に走る楽曲の上で身体を揺らしながら、時に優しい音色を、ときにはスリリングな太い音を響かせ、RiOは1曲の中へいろんな表情を描き出す。お伽の国から飛び出したお姫様のような可憐な服を身にまとい、RiOは優雅な姿で煌めく音を振りまき続ける。途中には、メンバーのソロコーナーも用意。一人一人がリード演奏を繰り広げている間、RiOは、魔法のステッキ(ペンライト)を手に、演奏に合わせて手拍子をしていた。メンバーたちを盛り上げながらも、可憐さを忘れない姿も彼女らしい。後半には、華やぐ演奏へ力強い色を描き加え、この場をさらに華やかに彩っていった。スリリングさと優美さがクロスオーバーしながらドラマを描きあげる。その様に、気持ちがずっと引き寄せられていた。
次に奏でた『Beyond The Paradigm』は、今年2月にリリースしたアルバムの表題曲。RiOは演奏前に、「何かを得ようとするときに、手放すことも出てくる。その決意を投影したのが、この曲」と語っていた。
堰を切ったように流れだすピアノの音色をきっかけに、RiOのヴァイオリンの音色を筆頭に、楽器陣の演奏が一気に花咲くように躍動した。アタックの強い演奏の上で、巧みにスタッカートしたヴァイオリンの音色が跳ねるように響き渡る。RiOは、奏でる一音一音に強い決意を刻みながら、粒だった音を言葉代わりに次々と投げてきた。ときにスリリングかつハードな様を示せば、優しく寄り添う演奏も見せるなど、クールとハートフルな顔を巧みに交錯しながら、一つの物語を描きだす。迷い惑いながらも、やがて確かな決意を抱く心模様を示すように、RiOのヴァイオリンを先頭に走る演奏が、『Beyond The Paradigm』を通して気持ちを奮い立てるドラマを見せていた。
ここで、ゲストの鈴木花純が舞台へ。RiOと鈴木花純とは10年近くの付き合い。最近では共演する機会も減っていたが、長年の戦友らしく、舞台の上では気心知れた会話を繰り広げていた。ここからは、2人でリリースした楽曲の数々を披露。
最初に届けたのが、昨年リリースした『Message』。なかなか共演する機会を得ることのなかった中、久しぶりに共にする機会が訪れ、一緒に楽曲を制作。「離れていても、心は繋がっているよ」という、互いの関係を記した楽曲だ。
ギターのアルペジオの音を背に、「光照らす方へ 虹の向こう側へ 離れてたって繋がってるよね」と、思いを込めた鈴木花純の歌が響き渡る。その声へ、たおやかなヴァイオリンの音色が優しく寄り添いだす。大切な人へ向け、胸の内に秘めていた思いを歌の手紙に乗せて伝えるように鈴木花純は歌っていた。その想いをしたためるインクのように、RiOの奏でるヴァイオリンの音がずっと寄り添っては、歌声の背中を優しく押していた。鈴木花純の歌を耳にしながら、ゆっくりと身体を揺らし、音を紡ぐRiO。ときに彼女の歌に耳を傾け、ときにヴァイオリンの音色を添え、RiOは鈴木花純の歌う声に華やかな彩りを与えてゆく。いや、一緒にデュエットしているようにも感じていた。同じようにRiOのヴァイオリンの旋律も、愛しい人へ思いを届けるように歌っていた。次第に感情的になるヴァイオリンの音色を通して、RiO自身の気持ちの揺れもしっかりと伝わってきた。
続く『星になっても』では、夜空の間をゆっくりと漂うようにRiOのヴァイオリンの音が流れだす。その音へ誘われるように、鈴木花純が思いを綴った物語を、言葉のひと言ひと言を大切に歌いあげる。抑揚を持った声で鈴木花純が歌うからこそ、RiOのヴァイオリンの音色はあえて抑揚を抑え、穏やかな音を滑らせるように鳴らしては、鈴木花純の声に寄り添っていた。後半には、鈴木花純の歌声が感情的になるのに合わせ、RiOのヴァイオリンの音も色を増しながら、力強い音の絵筆で、楽曲へ記した思いに暖かな色を描き加えていた。気持ちが強く揺れるたびに、楽曲も華やかさを増してゆく。
次に届けたのが、RiOと鈴木花純のデュエット曲。ヴァイオリンを置いたRiOは、この曲ではヴォーカリストに。2人が歌ったのが、『今日から恋人になる君へ』。2人は、客席に背中を向けてスタンバイ。楽曲が始まるのに合わせ、振り向いて客席へ向かって駆けだした彼女たちは、ポップ&チャーミングに弾む楽曲に心地好く身を預け、互いに顔を見合い、歌声を交わしあっていた。キャッチーな楽曲に乗せ、チャーミングな笑顔で歌う、出来立てのポップコーンのように弾ける2人の姿は、まるで煌めく姿を魅力にしたアイドルユニットのよう。心地好く跳ねる演奏に乗せ、ときに背中あわせで歌うなど、2人は軽やかにステップを踏みながら一緒に声を踊らせていた。互いに歌をリレーしあい、サビでは甘い歌声をハモる様に触れ、互いの好きの気持ちが急接近するような感覚も覚えていた。
途中、「好きだけど」とRiOの歌うパートを、鈴木花純が間違って歌ってしまうハプニングも登場。演奏が止まり、コミカルなトークで、巧みにハプニングを乗り越える鈴木花純。なぜかそこから、メンバー一人一人に「好きだよ」の告白をしてもらうコーナーが誕生。Jukerと佐々木亮太が、「みんな愛してるよ」や「大好きだよ」とシンプルな言葉で伝えれば、生田目勇司と髙島ユータは、ドラマ仕立てで「大好き」の想いを伝えていた。最後にRiOが、 半ばやけくそで「はいはい、好き」と告白。ふたたび始まった後半からは、さらに気持ちを晴れやかに染め上げる演奏を披露。RiOと鈴木花純も、「君のことが好きたよ」「いつまでも一緒だよ」と、気持ちを明るく弾ませた歌声を重ねあわせ、その場にいる人たちへさりげなく愛の告白?いや、感謝の思いを伝えていた。
RiOと鈴木花純のコラボコーナーの最後は、2人が初めてコラボレートした、鈴木花純の『ハックルベリーフレンズ』を演奏。鈴木花純の歌う声から始まった楽曲は、華やぐ演奏が一気に駆けだすのに合わせ、この空間に晴れた温かい景色を描きだす。サビからは、RiOのヴァイオリンの音色も加わり、友情を歌ったこの曲に温かな音色の手を差し伸べていた。鈴木花純が歌っている間、ちょこちょこ彼女の顔を覗き見ていたRiOの姿も印象的。間奏では、互いの友情を分かち合うように、RiOのヴァイオリンの演奏が笑顔を浮かべていた。歌声とヴァイオリンの音色がユニゾンで進む様に、ずっと心が踊っていた。だから、フロア中から温かい手拍子が自然と生まれていた。
続いては、「RiOセレクト夏のJ-POP曲のメドレーコーナー」へ。この日は4曲を演奏。その選曲が、なかなか冴えている。冒頭を飾ったのが、Supercellの『君の知らない物語』。イントロの音色が流れたとたん、胸が嬉しく騒ぎだした。とても美しい旋律だ。その調べは、胸をドキドキ鳴らす魔法の呪文のよう。RiOの滑らす弓が弦の上で踊るたびに、気持ちをときめかせる音が次々と流れだす。一転、桑田佳祐の『波乗りジョニー』では、軽やかにスキップするように跳ねた音色を鳴らし、ヴァイオリンで歌心をしっかりと伝えてきた。続く松田聖子の『青い珊瑚礁』では、鈴木花純がゲストシンガーとして登場。松田聖子になりきって愛らしく歌唱。最後は、Mrs. GREEN APPLEの『青と夏』を奏で、この空間を野外の夏フェス会場のように染め上げていった。RiOがメドレーコーナーを通して描いたのは、ひと夏に思いを馳せる、青春という言葉が似合う物語の数々。甘い香りを覚える夏のいろんな景色に触れながら、素敵な夏気分に浸っていた。
過ぎゆく夏の終わり頃の夕暮れ時に思いを馳せるように、次にRiOが演奏したのが『ツキミソウ』。けっしてしっとり想いに浸るわけではない。むしろ、ひと夏の中に綴れ織ったいろんな思い出を夏が過ぎ去る前に振り返るように、RiOは、歌いたくなるような華やかな旋律を奏で、眩しい思い出の景色の数々に、改めて彩りを与えていた。後半には、夕暮れ時を思い起こす郷愁を抱いた演奏も披露。楽しさの後にやってくる、少し寂しくもの悲しい思い。そんな想いへ浸る気持ちも見せながら、ふたたびRiOの奏でるヴァイオリンの旋律が、素敵な思い出の数々にいろんな言葉を描き加えていった。
次に披露したのが、新曲の『Steppin’ Up My Story』。この曲には「ステップアップする」「自分自身も応援していこう」という思いを投影し、制作。「『Beyond The Paradigm』が新しいことへチャレジしていく曲だとするなら、『Steppin’ Up My Story』は、変わらないことへの喜びを形にしている」とRiOは伝えていた。同時に、「曲自体は明るくてかわいくてハッピーな、これからもよろしくという曲として作り上げた」とも語っていた。
『Steppin’ Up My Story』は、冒頭から満開の花が咲き誇るような、一瞬で気持ちを明るく染め上げる、とても親しみやすく華やかなポップチューン。穏やかさも見せるとはいえ。音色にあわせてずっとスキップしていたくなる楽曲だ。一つ一つの旋律を歌うように奏でるRiO。後半には、さらに優雅でたおやかな様も描きだす。ときにメンバー同士で会話をしているような演奏も届けながら、胸を弾ませる楽曲を通して、観ている人たちの気持ちをずっとワクワクさせていた。心踊る、まさにRiO自身の心模様を表した、明るくてかわいい楽曲だ。
壮大な音色が流れだす。楽曲が躍動するのを合図に、最後に届けたのが『Enchanting Melody』。激しく躍動する演奏の上で、RiOのヴァイオリンも優雅に駆けるように華やかな音の数々を響かせる。攻めた曲調の中、女性らしい優雅さを消すことなく、RiOは心躍る演奏を響かせる。途中、三拍子に変わるパートでは、観客たちの手拍子に乗せ、まるで社交場で躍るような、優雅で上品かつ可憐な演奏を披露。後半からは、心の奥底から燃え立つ気持ちを音に乗せ。でも、愛らしい表情をけっして崩すことのない姿で、観客たちの気持ちを熱く沸き立てていった。その様こそが、RiOらしい。
アンコール前には、事前に録音してきた「アンコールまでちょい待ちレディオ」と題したラジオ番組を放送。そして…。
アンコールの最初にらんするーした(奏でた)のが、『Luminous』。冒頭から、楽曲が唸りを上げて駆けだした。スリリングな演奏の上で、ヴァイオリンの音が性急さを抱きながらも、歌心を持った旋律を次々と繰り出し、観ている人たちの気持ちを心地よく熱情させる。一つ一つの音が華やかに踊るたびに気持ちが熱く沸き立つからだろう、フロア中の人たちも熱い手拍子をしながらはしゃいでいた。間奏では、鈴木花純が登場し、コール表をフロアへ提示。RiOへ向け、みんなで「世界で一番愛してる 愛してる」とガチ恋口上をぶつける様も誕生。その声にRiOも少し照れながらも、満足げに「気持ちよかったです」と述べていた。後半、優雅な音をゆったりと奏でつつも、少しずつ熱を上げ、ふたたびこの会場にいる人たちの心を踊らせていった。『Luminous』、とても華やかでドラマチックな楽曲だ。
ふたたび鈴木花純が登場。最後に届けたのが、RiOもメンバーとして参加しているレースクイーンユニットraffinee μ’sの『メロンソーダ飲みたい』。この日は、同楽曲を鈴木花純の歌声で披露。「メロンソーダ」「飲みたい」のやりとりを合図に楽曲がスタート。『メロンソーダ飲みたい』は、ファンたちのコールやMIXもめちゃめちゃ飛び交う超盛りあがり曲。鈴木花純の歌に向け、観客たちから合いの手の声が入れば、RiOも、ヴァイオリンの演奏の間に振りに参加してこの場を盛り上げる。この会場に生まれた灼熱の夏ライブのような空気に触れ、気持ちはしゃぐままに演奏を届けるRiO。フロアにいる人たちが、ときめいた気持ちを爆発させ、声を上げて叫ぶのも納得だ。RiOも演奏しながら鈴木花純と一緒に身体を大きく揺らし、華麗に躍るように演奏。まるでアイドルのコンサートのような熱狂ぶりも見せながら、鈴木花純のポップに弾むチャーミングな歌声とデュエットするように、RiOは演奏。眩しい輝きを放つ姿を通し、彼女は、この場を夏らしい華やかな熱狂の場に染め上げ、ライブの幕を閉じていった。
さぁ、次は12月のワンマン公演だ。
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.Across The Field
- 2.Beyond The Paradigm
- 3.Message
- 4.星になっても(鈴木花純&RiOコラボ曲)
- 5.今日から恋人になる君へ(鈴木花純&RiOコラボ曲)
- 6.ハックルベリーフレンズ(ゲスト鈴木花純楽曲)
- 7.RiOセレクト夏のJ-POP曲メドレー
- 君の知らない物語(Supercell)
- 波乗りジョニー(桑田佳祐)
- 青い珊瑚礁(松田聖子)
- 青と夏(Mrs. GREEN APPLE)
- 8.ツキミソウ
- 9.Steppin’ Up My Story
- 10.Enchanting Melody
- -ENCORE-
- EN1.Luminous
- EN2.メロンソーダ飲みたい(raffinee μ’s)
RiO
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