“地獄のゆるふわバンド”を謳うNEMOPHILAが、自身初となる日本武道館でのワンマンライブを行なった。

2019年の結成から間もなくコロナ禍に見舞われたものの、YouTubeとストリーミング配信を中心に粘り強く活動して支持層を広げ、その後はロサンゼルスでのワンマンライブ、北米ツアー、国内Zepp対バンツアーなど、数多くの経験も積み重ねてきたNEMOPHILA。

そんな彼女たちが、昨年11月から開催の全12ヵ所を巡る『NEMOPHILAワンマンツアー ~おしくらまんじゅう押されて笑おう~』のファイナルとして、結成5周年のタイミングで迎えたのが、おそらくバンドの節目になる記念すべき本公演だ。ファンの想いもひとしおで、おなじみのバックドロップに加え、両サイドスピーカーの位置、ステージに敷かれたマットにも、NEMOPHILAのアイコンである家紋ロゴがドンとあしらわれ、頭上には崇高な日の丸という特別感いっぱいの空間を見渡すと、期待はますます大きく膨らむ。

“Now’s the time, raise your voice”の一声を合図に音玉がバーンと鳴り響き、ライブは『RISE』で勢いよくスタート。mayu(Vo)がのっけから怒涛のスクリームで攻め立て“強く生きるために進もう”と歌うさま、SAKI(Gt)と葉月(Gt)が繰り出すアグレッシブな速弾きツインリードの受け渡し、ハラグチサン(Ba)とむらたたむ(Dr)が軸となって放つパワフルなビートに、この日に懸ける彼女たちの熱量が早くもあふれまくっていて、観る側も食い入るような視線をメンバーに送る。

NEMOPHILAにとってめちゃくちゃスペシャルなライブのため、出だしこそ5人に少なからずプレッシャーがあったようにも見えたけれど、『鬼灯』でmayuが「行くぞ武道館!」と煽りを入れ、客席から「うおおおー!」と歓喜の拳&雄叫びが上がった以降は、会場全体の空気がいい感じにほぐれていく。

ドラムセットの前に集まって演奏したり、左右に伸びたステージの端まで駆け出したり。気持ちよさそうに躍動するメンバーの様子も見て取れ、こうしてオーディエンスを味方につけて一体感を増幅させた序盤の流れに、“みんなでいっしょにこの大舞台へと辿り着いた”という事実がビビッドに表れていたように思う。

ZEN』では、緑と青で彩られた網目状のレーザーが発光。バンドの凄まじい音圧に合わせて武道館一面をド派手に覆い尽くすなど、魂のこもったパフォーマンスをよりいっそう盛り上げる、NEMOPHILAらしい強力な照明演出もカッコいい。

SAKIのギターはお馴染みの7弦ギターKiller Guitars KG-Fascinator Seven the Empress「和柄ちゃん」。ピックアップはSeymour Duncanで、フロントがFull Shred(SH-10n-7)、リアがInvader(SH-8b-7)。

ああー、嬉しいです。“(お客さんが)全然いないんじゃないかな”“心を無にするしかないのかも”なんて考えていたけど、こんなにたくさんの人が来てくれて……本当にどうもありがとうございます。ライブハウス武道館へようこそー!この名言が生まれた歴史あるステージに私たちが立てたのが、ものすごく感慨深いです

今の喜びをそう伝えたmayuは、「私たちらしくバキバキのセトリでございます。汗だくになって、最後までとことん暴れ倒してほしいです!」と続ける。そしてスラッシーなリフが唸る『Enigma』に突入すると、MCを挟んでまたひとつリラックスできたのか、ここからは一段と快調に飛ばす5人。

葉月のギターはIbanez J.Custom RG8527Z。ピックアップはFishman Fluence Modern Humbuckerに換装されている。後方には葉月のKemper Profiling Amplifierも見える。

SAKIと葉月が奏でるヘヴィでいて包容力を湛えたギターサウンド、ハラグチサンのスラップ弾き、むらたたむのスティックトリックが冴えわたった『AMA-TE-RAS』。“おしくら”を冠した本ツアーを象徴する曲であり、mayuのミクスチャー的な歌唱が興奮を掻き立て、客席にタオル回しやヘドバンを巻き起こした『OSKR』など、このブロックは1月にリリースされたばかりの3rdアルバム『EVOLVE』の収録曲を連発し、持ち前の奔放さ、個々の存在感を打ち出しながら、NEMOPHILAの“進化”を印象づけた。

新曲の数々を楽しそうに聴かせたあとは、配信でライブを観ているファンに呼びかけたり、『EVOLVE』のレコーディングの苦労を振り返ったり、「ハラちゃんの仲間が作ってくれたんですよ!」と着物の生地を使った素敵な衣装について触れたりと、和やかに話すメンバー。中でも“ゆるふわ”だったのは「実は1曲目からズボンのチャックが下がっちゃってて……(笑)」というハラグチサンの一言で、そこにすかさず「今のでみんな、配信のチケット買おうと思ったんじゃない?」とSAKIが乗っかる場面も。

らしくなってきたところで、「次の曲はできればいっしょに手拍子してもらいたいです!」とmayuが前置きした『Waiting for you』へ。カラフルなライティングやポップパンクの明るい曲調、メンバーが人文字を作りながらチアっぽくコールする“N E M O P H I L A”により、先程までとはまた異なる輝きを生み出すと、そのまま『Night Flight』に繋ぐ。今度は5人全員がサングラスをかけ、ギラつくEDMサウンドに大きく舵を切っては、茶目っ気のあるパラパラ的な動きも入れ、遊び心と中毒性たっぷりにオーディエンスを踊らせる。こうしたハード一辺倒にならない、決然とキャッチーに攻められる振り幅の広さもNEMOPHILAの魅力だ。

ステージに炎が灯ったシチュエーションで、トライバル~ヒップホップなノリを織り交ぜた『STYLE』も投下されるなど、とりわけバラエティに富んだセクションを結んだのは、愛をテーマにした壮大なロッカバラード『ODYSSEY』。mayuのハスキーで美しいクリーンボイスに、雪吊りを思わせる淡いブルーの照明が添えられ、さらにオーディエンスのかざすスマホライトまでが優しく重なる。メンバーも予想外の粋な計らいによって、なんともドラマティックな光景が武道館に生まれたのも忘れられない。

むらたたむのドラムセットはTAMA Starclassic Walnut/Birch Series。シンバルはMeinl製で、写真ではライドシンバル:Meinl Byzance Foundry Reserve Light Ride 20″が大きく写っている。

ここでライブが終盤と聞き、正直あっという間だなとも思った。けれど、まだ結成5年のバンドである彼女たちが、この大舞台を臆することなく存分に楽しみつつ、他の追随を許さないストイックさのもと、持ち曲を“ガンガンいこうぜ”スタイルで放出していったその姿は、文句なしに清々しいものだったと言えよう。破壊力抜群の『Hammer Down』、陽のバイブスを帯びた『SORAI』などで圧倒し、クライマックスではmayuが充実の表情でこう告げる。

前に進むために、いろんな壁にぶつかって、気持ちとも闘って。NEMOPHILAはそうやって大きくなったんだなって思うけど、まだまだ自分たちには目指したいところがたくさんある。でも、まずはここに立てたこと。すべての人に感謝を込めて贈ります!

タイトルどおり、バンドの歩みを薫らせながら、今この瞬間を祝福するように届けられた『YELL ~軌跡~』。“精一杯大声で伝えるよ ただありがとう”という歌詞には、武道館まで連れてきてくれたファンへのまっすぐな愛情が、“もう一歩 もう一歩 踏み出そう 光の差す方へ”という歌詞には、ここがひとつの集大成であり通過点であることが示されていてグッとくる。本編ラストは銀テープも鮮やかに舞う中、猛烈なグルーヴが渦巻く『REVIVE』で新たな始まりを誓い、5人は素晴らしい余韻を残してステージを降りた。

ハラグチサンのベースはAtelier Z SI-345。聖飢魔IIゼノン石川和尚のシグネチャーモデルだ。

アンコール1曲目のパワーバラード『Life』では、「上の玉ねぎに向かって、大きな声を聞かせてください」というmayuのオーダーに場内が沸き、彼女の振るタクトが導く形で武道館に特大のシンガロングが響きわたる。この日いちばんと言っていい感動的なシーンを噛み締めると、メンバーそれぞれが想いを明かす展開に。

トップを任されたハラグチサンは、「新宿のWildSideTOKYOでのセッションからNEMOPHILAが始まり、たむさんとmayuちゃんの妊娠・出産とか、いろんなことがありました」とこれまでを回想。さらに「ベースやバンドしかやってこなかった社会不適合者みたいなやつですが、ひとつのことに夢中になることの大事さって言うの?諦めなければ夢は叶うんだなと。目の前のことに全力で向き合った結果が、今日に繋がったのかなって思ってます」と、少し気恥ずかしそうに、それでも自分の生き方を肯定するように話す。

最も注目を集めたのはSAKIで、「個人的な重たい話をしてもいいですか?私、けっこう昔に母親を亡くしたんですけど、実は昨日が命日で、今年は母親が亡くなったときの年齢に自分がなるタイミングだったりもして、“巡り合わせなのかな”“母親の運もちょっともらえているのかな”なんて思いました。武道館ってなかなか立てる場所じゃないですから」と告白。また、この日は初めて関係者リストに母の名前を入れてみたそうで、「ボーッとした人だったし、気づいてないかもしれないので」と照れつつ、観客全員に「SAKI」と呼んでもらう時間も。子を持つ親であるmayuとむらたたむは、たまらずステージ上で涙する。

SAKIのトピックが強かったのもあって「話そうとしていた内容をすべて忘れてしまいました(笑)」となし崩し的にしゃべり始める葉月だったが、「あっ!今年やりたいことがあるんですよ」となんとか記憶の糸をたぐり寄せ、自身の地元での凱旋ライブを熱望。さっきの感じに上手く倣って、絶大なる武道館オーディエンスの力を借り、「島根県公演、来てくれるかな?」の問いに、景気よく「いいとも!」と返してもらっていた。事務所スタッフの前でしっかり言質を取っていたので、これはぜひ実現に結び付いてほしい。

まんまと泣かされてしまったむらたたむは、「愛してるよ、SAKI」と改めて本人にメッセージを伝えたほか、ライブの手ごたえについて、「みんなが私たちの音を聴いて、何かを思ってくださったりするわけじゃないですか。それだけが意味のあることで、もはや使命のようなものだなって。そして、こうやって来てくれた今日の景色、『ODYSSEY』でプラネタリウムみたいな景色を見せてもらった経験が、これからのNEMOPHILAの活動に繋がっていくんだなと感じています」と嬉しそうに発言。

類まれな歌唱力でバンドを牽引してきたmayuは、「まさか自分の人生で武道館に立てる日が来るとは思ってなかった」のだという。高校時代は剣道部の教師に「音楽(の道)なんて絶対に無理だから」と決めつけられてしまうつらい体験もしたそうだが、「その先生が言ったことを信じないで、逆のことをやって本当によかったです。だって、この景色を見られたのは続けてたからだし!すごく幸せなんですよ」と最高の笑顔で語った。

笑いあり涙ありの“ゆるふわ”な雰囲気を経て、再び“地獄”のように激しいサウンドへと転じた5人は、もっと暴れたいファンのために、キラーチューン『DISSENSION』『OIRAN』を連打。エンディングまで攻めの姿勢を崩さず、ぶっちぎりの声量と音塊を容赦なく轟かせる。火柱が噴き上がる一方で、葉月が“武道館”、ハラグチサンが“最高”と墨書きした巻物をオーディエンスに掲げるなど、痛快な飛び道具でも楽しませ、夢のひとつだったライブを大盛況のうちに締め括った。mayu曰く「明日からはまた新たな目標に向かって進むだけです」とのことなので、NEMOPHILAの第2章にも期待しよう。

なお、本編で披露された『ODYSSEY』は、3月20日公開の『映画おしりたんてい さらば愛しき相棒(おしり)よ』のキャンペーンソングに決定している。こちらもお見逃しなく。

取材・文:田山雄士

《SET LIST》
  1. 1.RISE
  2. 2.鬼灯
  3. 3.雷霆 -RAITEI-
  4. 4.ZEN
  5. 5.Enigma
  6. 6.AMA-TE-RAS
  7. 7.OSKR
  8. 8.Justice
  9. 9.Waiting for you
  10. 10.Night Flight
  11. 11.STYLE
  12. 12.徒花 -ADABANA-
  13. 13.ODYSSEY
  14. 14.Seize the Fate
  15. 15.Hammer Down
  16. 16.SORAI
  17. 17.YELL ~軌跡~
  18. 18.REVIVE
  19. <ENCORE>
  20. EN1.Life
  21. EN2.DISSENSION
  22. EN3.OIRAN
NEMOPHILA

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