SHIBUYA DESEO 10.22 RAYJI OneMan 4K.
東京・渋谷はこの夜もギラついた光を夜空に向けて放っていた。
ベーシストでありボーカリストでもある、またミックス・マスタリングエンジニアでもあり、アレンジャーでもあるRAYJIという男もまた、この日渋谷で4弦を響かせていた。

RAYJIというミュージシャンの魅力は多様な角度から音を捉えているところにあると、私は感じている。ベースだけで考えても、ベーシストからの視点、ボーカリストからの視点、エンジニアからの視点を備え持っているのだ。

そんな男、RAYJIのワンマンライブでのライブレポートをお届けしたい。

会場は渋谷DESEO。
彼がこの会場を選んだ理由を話してくれた。

「僕がO-WESTでワンマンライブをやった時、DESEOのスタッフさん達が交互に見に来てくれたんですよ。お仕事の合間に。それが本当に嬉しくて、絶対またここでやりたいって思ってました。こんなにスタッフさんみんな魅力的なライブハウスは他にないですよ」

-無機質なライブハウスのフロアに突如歌声が鳴り響く-

1. The Hill Where I Can See The Sun

歌声と共に幕が開いていく。
ライブのスタートをBGMでもなく、ベースでもなく、ほとんどアカペラに近い歌声で始めたのだ。この事態に私は驚きを隠せなかったが、気付けばファンにとってはもう違和感もないのかもしれない。彼はベーシストという枠を越えて、ミュージシャンなのだ。
そして、ベーシストという枠に収まらない歌声と可能性。
それをライブの最初8小節で魅せてきた男RAYJI。
この曲は以前にも聞いた事があったし、ミュージックビデオでも拝見していたが、今目の前で繰り広げられている同じ曲がまるで同じ曲ではない。
それは彼の内側から出る音の変化か、それとも彼の言う2026年に合わせて組み立て直した楽曲なのか、多分それは両方だろう。
楽曲がロック調というよりも、彼自身の内側から溢れ出るものがロックだ。
曲の後半にはかなりハイトーンボイスで歌うのだが、彼は悠々と歌っている。
公演後も彼は語ってくれたのだが、あの頃の限界は今は余裕なのだと。
必死感が出なくなるのも問題なんですけどね(笑)と笑っていた。

「今出来ない事があっても、それは出来るようになる事です。だって今出来る事も、今褒めて貰える事も全部、最初は何も出来なかった事ですから」

2. Euclid Ave. 2023

1曲目が鳴り終わるか否か、その刹那に始まる高速ベーススラップ。
余裕な表情で爽やかに彼は弾いている、弾いているし、弾きながら歌ってもいるが
きっとこのベースだけでも世界中全てを手に入れられるレベルの技術と鍛錬が詰まっているのだろう。
勿論この楽曲も2023という表記があるように、リリースされた時の音源とは別物と言っていいだろう。常に時代の流れを読み、自分自身に適切な形に楽曲も変化させていく事で楽曲を古くさせない彼なりの考えが詰まっている。

「ファンにとってこれって寂しい気持ちもあるんじゃないかなって思う時はあるんです。いつ見に行っても変わらないものがそこにある。それって素敵だしいいなあって僕も思うんですよ。でも、僕自身の変化のスピードが凄いのもあって(笑)。こいつまた変えたぞって気付きだったり、それを楽しんでもらえたら嬉しいですね」

とRAYJIはちょっと申し訳なさそうに語る。
彼の表現したい音楽にはいつもファンがいるのだろう。

この曲『Euclid Ave. 2023』は是非、音源よりもライブなりライブ音源で是非聞いて貰いたいと筆者は思う。

3. Dance With Me

一緒に踊ろうぜと叫び始まった『Dance With Me』。
今度は打って変わってベースをほとんど弾かずに、マイクパフォーマンスに振り切っているダンスミュージックだ。
’’Boogie woogie, beauty! Boogie woogie, ruby!’’
このフレーズが頭から離れなくなったのは私だけではないだろう。
間奏のコード進行も単純だがインパクトが強い。
今世界で流行っているダンスミュージックに近い立ち位置の楽曲にも感じつつ、サポートミュージシャン、ドラムのFUMIYAが混ざることで化学反応が起きていることを感じる。
私目線だが、この楽曲を生で聞いた時にFUMIYAがそこにいる理由を深く感じた。
冷たいデジタルの音に人間らしさをRAYJIは加えたかったのではないか?

4. 4K.

今回のワンマンライブのタイトルにもある『4K.』のスタートだ。
彼は自身のSNSで生で届けるのが過去で一番厳しい曲だと語っていた。
それもそのはず、高速ラップをしつつ高速でスラップを叩き込む。そして間髪入れずハイトーンな歌を歌い、勿論間奏は彼のベースの見せ場がやってくる。
3分30秒、全速力で走りこむ楽曲なのだ。
通常というべきか、こういう場合歌を流してしまう演者も多いのが現実だ。
しかし彼は逃げなかった。
「それが良いか悪いかは分からないです。ただ、挑戦しないと気が済まなかったので」
と伝えてくれた。
「歌だけだったら音源と同じクオリティでいけますよ。ベースだけでも勿論。でもこれ、混ぜたらあかん!」
ともふざけて言っていた。
それにしてもこの楽曲『4K.』は素晴らしい。ベースが主体の新しい音楽を完成させている。
本来ベースを目立たせると、楽曲の邪魔になったりベースなくていいのではとなる。
彼の試行錯誤してきた7年間の答えを目の前で魅せられた時、
筆者はこのベース主体の音楽、『4K.』は既存の音楽の均衡を壊しうる楽曲なのだと感じた。
実際、この楽曲のリリースに合わせてTV出演・特集もされYOUTUBEのフォロワーもうなぎ登りだ。
同時にこの楽曲『4K.』の歌詞はとても寂しく、そして力強い。
’’1人1人いなくなっていってしまうことが寂しい。それが僕を苦しませる。過去はプリズムみたいに輝いているからこそ、前に進む。’’
今のRAYJIには以前にまでなかった力強さを感じる。
それはもしかしたら寂しさや悲しさからかもしれない。それは歌詞から、何よりステージ上の彼の姿、音から感じる事が出来るだろう。

5. The Pact

Hands Up!と煽りスタートした『The Pact』はRAYJIの楽曲の中でも力強い曲だ。
勿論彼はベースをスラップしながら歌っている。
そういえば彼の歌の安定感が以前より遥かに安定しているように感じる。
上にも述べたが、彼はベースだけでも世界で数本の指に入るだろうプレイをしながら歌っている。
『Euclid Ave.2023』でも使用していたが、彼のベースは独特な音を出す時がある。
間奏でギターソロのような音をベースで奏でる彼は、遠く離れ離れになった友人に向けて音を高らかに響かせていた。

6. Rebels

反逆者という意味の楽曲『Rebels』だ。
この楽曲もまた、生で聞くと感じ方が変わる。音源ではアコースティックギターが強く表現されているが、生だと歌声とドラムとベースがビシビシと伝わってくる。
今のRAYJIの声に一番合ってる楽曲なのではないかとも感じる。
ライブレポートを書くにあたり過去の彼の楽曲を聞いたのだが、彼の声がどんどん変化していっているのが分かる。
日本人でありながら、この『Rebels』を事前情報なしに耳にしたら洋楽そのものなのだ。
「ここから全部ひっくり返していくぞ!」
彼の叫びから始まった『Rebels』は、題名の通りそこに集まったファンと一緒に全てをひっくり返していきそうな可能性で溢れていた。

7. Tokyo Knife

彼は渋谷O-WESTでのワンマンライブの頃から、それまでとは比較にならないほど海外でのイベントに招待されたり公演を重ねていった。
日本でのライブがやりたくなかったわけじゃない、と彼は言っていた。
でも今は我慢して自分自身を鍛え上げてもっと強くならないといけない、と。
そんな彼がその期間に制作した楽曲が『Tokyo Knife』だ。
’’日本に帰りたくても帰れない、これが自分の決めた道だから’’
ノリ易く、でもどこか切なさがにじみ出るこの曲。
そしてベースのフレーズも素晴らしく、歌メロと同じメロディーを弾いている部分がある。
歌物の楽曲ではあるが、是非ベースラインも追いかけて聞いて頂きたい。

8. Losing Face

今回のライブで初披露の『Losing Face』。ロックバラードだ。今年7月に亡くなった父親に向けた楽曲となっている。この曲は来年1月頃にリリースされる予定ということだ。
歌詞を渡して貰ったが、彼自身が語る通り決して綺麗な歌詞ではない。
この手の曲でよくある’’生んでくれてありがとう’’とか’’あなたの子供でよかった’’というような歌詞からは大きく外れている。そこに着飾っていないリアルを感じる。
歌詞とは裏腹に空に向かって放つような曲、歌、音は真っすぐありがとうという言葉を出さなくてもしっかりとそれを伝えていた。
来年1月のリリースが待ち遠しい作品に仕上がっている。


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