最高の音楽のコンダクターが作り上げた、心を奮わせたライブ。

今年、デビュー20周年を迎えた日野”JINO”賢二が、6月13日にLINE CUBE SHIBUYAを舞台に「日野”JINO”賢二20th Anniversary LIVE」を開催した。チケットはSold Outを記録。日野”JINO”賢二[Ba]率いる、アンディ・ウルフ[Sax]、Penny-K[Key]、NOBU-K[Key]、マサ小浜[Gt]、ジェイ・スティックス[Dr]のメンバーからなるJINO JAM、そして、ゲストボーカルとしてAI、佐藤竹善、Micro(Def Tech)が出演し、さらに、スペシャルゲストで父親の日野皓正[Tp]も登場。一夜限りのスペシャルな競演となった当日の模様を、ここにお伝えしたい。

ライブは、JINOの流れるようなベースの音色が響き渡る『Bin Smile~Number 1』からスタート。せせらぎのようなとても美しい音色の上で、JINOが甘い歌声を響かせる。気持ちが熱を帯びるのに合わせ、歌声やベースの演奏も熱を抱いて躍動。場内中の人たちが、JINOの甘い演奏の誘いにうっとり酔いしれてゆく。

JINO JAMの演奏が加わるのを合図に、楽曲は『Pop’s』へ。JINOのスラップするベースの音も心地好く跳ねだす。彼の気持ちが弾むのに合わせ、ベースの音色も羽根の映えた音符となり、この空間を自由に飛びかいだす。JINOの演奏へ寄りそうように、JINO JAMのメンバーたちも気持ちを嬉しく騒がせるファンキーな演奏をぶつけだす。途中に歌も挟みながら、JINOはこの空間を夜を彩る華やかなパーティー空間に染めあげた。各自のソロ回しも、この場を彩るための熱い掛け合いにも見えていた。気持ちが弾む。心が飛び跳ねる。それが、JINOのライブの魅力だ。スキャットをしながらベースを演奏する姿も、瞼に熱く焼きついた。

短いMCを挟み、ライブは『AALIYAH』ヘ。JINOの力強く跳ねるベースの音と甘い歌声を軸に据えながら、演奏は五線譜の上を滑るように進んでゆく。 Saxの音色が楽曲に華やかさを与えれば、曲が進むごとに演奏は、都会の夜を彩る…。いや、夜のクラブで、お酒以上に刺激的な音楽で触れた人たちの心を酔わせる演奏を醸造してゆく。 ベースを前へと突きたて、軽やかに。でも、気持ちを刺激する音の弾丸を、JINOは次々と打ち放つ。その姿も、とても刺激的だった。

JINOの甘いベースの音色に誘われ、ゲストヴォーカリストとしてMicroが登場。2人は、Microの『笑顔のその先に』を通して、甘い歌声と演奏を交わしあう。Microの甘い歌声へ優しく寄り添うJINOのベースの音色。2人の歌声と演奏がランデブーしながら、この場に淡い景色を描きだす。 場内中の人たちが心地好く身体を揺らし、その音色へ身や心を寄り添える。いつしか、自然に手拍子が沸き起こる。寄り添いだしたJINO JAMの演奏に触れ、気持ちが揺れだしていたからだ。互いに寄り添い、顔を見合せながら歌い奏でる様は、親友どうしが無邪気にセッションを楽しんでいる姿そのもの。彼らの演奏に触れていたら、心に笑顔が生まれていた。温かい気持ちに包まれながら、しばし微睡みを覚えていた。

続いても、MicroとJINO JAMによる演奏だ。彼らは『Something Like a Phenomenon』を披露。さざ波のような優しいMicroの歌声へ、この曲でもJINOのベースが、ハモるように寄り添っていた。軽やかにステップを踏みながらベースを奏でるJINO。次第に躍動するリズムに合わせ、Micro自身も身体を揺らしだす。つねに歌声とベースのメロディーが寄り添いながら、確実に熱を上げてゆく。お互いが、曲の中でリードを取り合いながら楽曲を彩り続ける。その様は、見ていて心地よい。

次のゲストとして登場したのが、SING LIKE TALKINGの佐藤竹善。2人の選んだセッションナンバーがBobby Caldwellの『What You Won’t Do For Love』。今年3月に逝去したこともあり、2人は追悼の想いも重ね、この楽曲をセレクト。ここでは、原曲以上に甘い歌声と演奏を通し、触れた人たちに甘い微睡みを覚えるひとときを与えてくれた。佐藤竹善もJINOの演奏に寄り添い、互いにグルーヴを感じながら楽曲を形作っていた。夜の帳の降りたその空間へ一緒に身を寄せていたら、このまま心が落ちてしまいそう。そんな感覚も覚えるくらいだ。この曲では、甘く、でも深みを帯びたソウルフルな歌声でリード。ファルセットやスキャットなど、佐藤竹善自身も自らの歌声を楽器として用いながら、演奏陣とセッションを交わす場面も。みんなで一つの想いを作りあげる、その様にしばし酔いしれていた。

続いては、SINK LIKE TALKINGの『Together』を披露。とても華やかで跳ねた演奏だ。軽やかに舞い踊る演奏の上で、佐藤竹善自身が声を弾ませ、心を騒がせる歌を届けていた。場内中から、熱い手拍子が響き渡る。JINOも、ソウルフルなパワーをぶつけながら、華やいだ演奏を、より豪華に彩りあげる。この曲でも、途中にジャムセッションが登場。佐藤竹善がスキャットをしながら演奏陣と掛け合う様も、さすがだ。

次のゲストとして姿を現したのが、AI。JINOとAIが選んだカバー曲が、Marvin Gayeの『What’s going on』。ダイナマイトなソウルシンガーという言葉を引っ張りだしたくなるほど、冒頭からJINO JAMとAIは、奥深いソウルフルなグルーヴを作りあげる。曲が進むごと、歌声も演奏も、どんどんディープになる。何時しか会場中の人たちも、甘くねっとりとしたソウルミュージックの世界へどっぷり浸っていた。JINOとAIの掛け合いも含め、ずっと深いうねりの中へ心地よく浸っていられたのが嬉しい。

次に披露したのは、AIの『Story』。JINO自身、AIのコンサートツアーへ帯同した経験もあり、そのツアーの中でJINOのアレンジによる『Story』のライブバージョンも形作っていたそうだ。ここでは、その当時のスタイルで披露。ピアノの音色に寄り添うように淡い声でAIが歌いだす。想いを噛みしめるように歌うAIの声へ、少しずつJINO JAMの演奏が加わりだす。深みを覚える愛しい声で、AIは想いを告白するように歌い続けていた。その歌声に、JINOも音数を抑え、優しく寄り添うように演奏していた。流れるように、でも、心揺さぶる想いを持って歌と演奏は進み続ける。終盤、一気に感情が沸き立つように熱々と歌い奏でる様も、嬉しく胸を打つ場面だった。

ここからは、ふたたびゲストシンガーたちの楽曲を、3人のヴォーカリストを一同に招き、それぞれの持ち歌を順に演奏。まずは、佐藤竹善(SING LIKE TALKING)の『Rise』から。超ノリノリのダンスミュージックが流れだすのに合わせ、フロア中の人たちが立ち上がり、演奏に合わせて身体を揺らしだす。いつしかLINE CUBE SHIBUYAは、大きなダンスフロアに塗り変わっていた。佐藤竹善の歌をリードに、そこへAIやMicroも絡み合う。それだけでも豪華なのに、後ろからJINOとJINO JAMが、パッションあふれる演奏を通して、シンガーたちや観客たちの気持ちを熱く騒がせる。何時しかそこは、大勢の笑顔の人たちが踊りに興じる華やぐパーティー会場に染まっていた。

その勢いを、さらに加速するように披露したのが、AIの『ハピネス』。AIもソウルフルな歌声を爆発させるように熱唱。会場中の人たちと一緒に「LA-LA-LA-LALA-」と歌う場面も印象的だ。もちろん、佐藤竹善やMicroもAIの歌声へ寄り添い、JINOは演奏を通してAIの歌声と会話を楽しんでいた。とても口角の緩む演奏だ。誰もが、「LA-LA-LA-LALA-」と歌いながら、幸せと愛に包まれた素敵な時間を味わっていた。

最後はMicroをリードに、美しく優しい音色と歌声に乗せて『Yukiyanagi』を届けてくれた。温かな心模様で歌いあげるMicroに寄り添う歌い手や演奏陣。感情の起伏に合わせて歌声のボリュームを巧みに調整し、演奏もMicroの気持ちへ寄り添うように音を変化させていく。みんなで声を重ね合わせサビを歌っときには、この会場が温かさに包まれてゆくような感覚も覚えていた。

ここからは、ふたたびJINO JAMの演奏へ。超絶ファンキーな『Outlaw (Intro)』が炸裂。JINOも、右指を弦の上でバチバチに鳴らしだす。彼の右手が、弦の上で大きく踊るたびに、音も熱く跳ねれば、場内中にも気持ちを揺さぶる音が響きだす。メンバー人一人とソロで絡み合うJINO。熱情したグルーヴが、大きく、大きく膨らみだす。そして…。

スペシャルゲストとして、JINOの父である日野皓正が登場。演奏したのが、『Still Be Bop』。猛々しい日野皓正のトランペットの演奏が炸裂した瞬間、ステージの上から強烈な音符の弾丸を次々と打ち放たれる。とてもスリリングな演奏だ。心地よい緊張感を持ったトランペットの音色が、それまでの会場の空気を一変させた。日野皓正の音が放たれるたびに、場内中から沸き立つ熱狂の歓声。日野皓正は、ときにタップ風のステップも踏みながら、各メンバーたちの前へ足を運び、一緒にセッション演奏を楽しんでいた。もちろん、JINOとも、互いに向き合い、熱々とした音の掛け合いをし続けていく。いつしか演奏の主導権を日野皓正が握り、演奏をどんどん熱情させる。「ヤバいよ」という言葉が止まらないくらい、スリリングなのにパッションに満ちた演奏に、ずっとずっと興奮し続けていた。

最後に、この日の出演者全員が舞台へ。みんなで演奏したのが、The Beatlesの『Come together』。クールに、スリリングに始まった演奏の中、この曲でも日野皓正が自由奔放に暴れだす。いつしか演奏は、とてもゴージャスでスリリングなセッション・パーティーへ。途中、2人のドラマーもゲストで登場。そのうちの一人が、若干16歳。その演奏へ絡む80歳の日野皓正。年齢を超えて音楽で一つになるなんて最高じゃないか。その楽しさが、ここには生まれていた。ゲストの熱演も勿論だが、この日の心騒ぐ楽しい宴を作りあげていたのはJINO自身であることは間違いない。最高の音楽のコンダクターが作り上げた、心を奮わせたライブだった。

取材・文:長澤智典

《SET LIST》
  1. 1.Bin Smile~Number 1(JINOソロ)
  2. 2.Pop’s(JINO JAM)
  3. 3.AALIYAH(JINO JAM)
  4. 4.笑顔のその先に(JINO+Micro)
  5. 5.Something Like a Phenomenon(JINO JAM+Micro)
  6. 6.What You Won’t Do For Love(JINO+佐藤竹善)
  7. 7.Together(JINO JAM+佐藤竹善)
  8. 8.What’s going on(JINO+AI+Cho)
  9. 9.Story(JINO JAM+AI+Cho)
  10. 10.Rise
  11. 11.ハピネス
  12. 12.Yukiyanagi
  13. 13.Outlaw (Intro)(JINO JAM)
  14. 14.Still Be Bop(JINO JAM+日野皓正)
  15. <ENCORE>
  16. EN.Come together(JINO JAM+All guests)

JINO JAM メンバー紹介

日野”JINO”賢二

大熱狂のうちに幕を閉じた<JINO JAM>スペシャルライブ、追加公演が決定!

MIN-ON Music Jam Session
日野“JINO”賢二 20th Anniversary LIVE
ゲスト:大黒摩季/佐藤竹善/Micro (Def Tech)
2023年11月7日(火)18:30開演
日本特殊陶業市民会館フォレストホール(愛知県名古屋市)

<主な出演者>
日野“JINO”賢二[Ba]、アンディ・ウルフ[Sax]、Penny-K[Key]、NOBU-K[Key]、マサ小浜[Gt]、ロレンゾ・ブレイスフォー[Dr]、大黒摩季、佐藤竹善、Micro(Def Tech)

主催:MIN-ON
協力:フェンダーミュージック株式会社、株式会社黒澤楽器店、StageGearMagazine
制作協力:(株)アプローズ
公演に関するお問い合わせは
MIN-ON中部センター TEL:052-951-5391(平日10:00~16:00)


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