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今年の『FUJI ROCK FESTIVAL』への初出演も決まった“踊れるジャズ”をコンセプトに掲げるライブバンド、TRI4THが最新アルバム『CALM&CLASH』を携えて全国ツアーを開催。スペシャルゲストにTOSHI-LOW(BRAHMAN、OAU)を迎えた、東京・恵比寿LIQUIDROOMでのファイナルの模様をレポートする。

TRI4THのバックドロップが掛かったステージに、黒の革ジャンを纏ったスマートカジュアルな出で立ちのメンバー5人が登場。手を重ねて気合を入れ、『CALM&CLASH』の収録曲『Just Roll』で勢いよくライブがスタートした。のっけからボーカルも兼ねる伊藤隆郎(Dr)がそのタイトルを勇ましく叫び、フロントを陣取る藤田淳之介(Sax)と織田祐亮(Tp)のソロが華麗に炸裂、ウッドベースの豪快な低音でバンドを支える関谷友貴(Ba)、清涼感のある音色をアバンギャルドに振りまく竹内大輔(Pf)のプレイも凄みを発揮するなど、フロアはいきなり大いに沸く。
すぐさま『For The Loser』に繋ぐと、ゴキゲンなメロディに合わせて場内からシンガロングが生まれ、拳がどんどん突き上がり始める。さらに、竹内のド派手なピアノソロを挟み、『ルパン三世のテーマ‘78』を投下。誰もが耳にしたことがあるだろうおなじみのキャッチーな曲に、切れ味鋭いフレーズを次々とアグレッシブにぶち込む。あっという間に主導権を握ってみせた5人のアンサンブルは絶好調でしかない。

藤田のサックスが渋く唸る『Guns of Saxophone』になれば、マイクを持ってドラムセットの前へと出てきて、「ツアーファイナルにようこそ!楽しんでるか? いっしょに踊ろうぜ!!」と、オーディエンス全員の手を取るような感じでアジテートする伊藤。こういったシーンは以降もたびたび見られ、確かな演奏スキルだけじゃなく、熱くハートフルな生きざまもしっかりと伝えてくる点が、なんともTRI4THらしくて魅力的だった。

『Delight』『Goodtime』は、少しテンポを落としてレイドバックなムードに。『SWINGERS JIVE』で再び加速し、伊藤が「3年ぶりにデカい声出していこうぜ!」とコール&レスポンスを促す。いい流れを受けた『FULL DRIVE』では、藤田と織田の合図でフロアにモンキーダンスを大発生させたりと変幻自在のアプローチ。ニューアルバム『CALM&CLASH』のテーマに掲げた“静と動”が、ライブハウスにおいてもじわじわと実感できる。

お次は『Fineday』の朗らかなメロディとともに、伊藤、藤田、織田がダブルピースを掲げてワイパーするちょいダサなダンスも果敢に披露。「革ジャンを着てさ、こんなんやるの俺たちだけだよ! 3年間でいろいろ捨ててきたけど、いちばん大事なものを捨てました。羞恥心です。楽しんでいきましょう!」と伊藤は笑う。

その後もノンストップで曲を続けるTRI4TH。The Poguesのカバーで高揚感に満ちたスカチューン『Fiesta』、青と赤の照明のもとで色気たっぷりに届けたネオソウル『Sculpture Garden』、竹内の超速ピアノタッチに歓喜の声が上がった『Freeway』、伊藤が“HEY HO LET’S GO!”とロックに叫ぶ『Maximum Shout』と、ジャズやインストゥルメンタルの枠を飛び越えるハイエナジーな演奏をもって、大勢のオーディエンスをガンガンに踊らせていく。

そして、バンドが繰り出す重心の低いグルーヴに乗り、メンバーと同じく黒の革ジャンを着たスペシャルゲストのTOSHI-LOWがいよいよセンターに降臨。まずは、BRAHMANの『真善美』をTRI4THによるアレンジバージョンで聴かせ、“ジャズ×パンク”をテーマに両者がコラボした最新アルバムの収録曲『光』へと怒濤のスピードでなだれ込む。
TRI4THのサウンドもいっそう熱を帯びる中、“生きる痛みを 光に変え放て”と鬼神のように激しくシャウト、荒れ狂う嵐のように2曲のみ(約5分)を快演し、颯爽と去っていったTOSHI-LOW。その超絶パワフルな歌唱と圧倒的な存在感はさすがの一言で、LIQUIDROOM全体のボルテージが一瞬にしてグンと跳ね上がった。
ほてった身体をクールダウンさせるように『Bloom』を奏でたあとは、「歓声がないライブに慣れてきてはいたけど、やっぱり感情と感情がぶつかり合うのを誰にも邪魔されないって最高だよね!」と伊藤が語り始め、このファイナルのみならず、福岡、広島、仙台公演も出演してくれたTOSHI-LOW(※当初はなんと、本ツアーの全日程に参加しようとしていたのだという)に改めて感謝を述べる。

伊藤はコロナ禍の3年でメンバーやライブに足を運んでくれる人たちのかけがえのなさを知ったそうで、バンドが結成18年目を迎えた現在、「この仲間と今日来てくれたみんな、これから出会うみんなといっしょに、ずっとずっと続けていくことが、いちばん大切なんじゃないかなと感じました」と話す。
その上で「もちろん、ただ遠くまで行けばいいわけじゃなくて。みんなで見たことのない景色を見に行きたいし、それは18年前となんにも変わってない」と付け加え、「18年経って……『フジロック』に出るんだよ! 夢じゃなかっただろ? 本気で必死でやり続けてたら、絶対に叶うんです。本気で必死でやり続けてたら、どんなにつらいときでも仲間が助けてくれるって信じてます。出会ってくれてどうもありがとう!!」と想いを爆発させた。
「始まりの曲です」という前置きから、ステージに温かなグリーンの光が灯る美しいシチュエーションで鳴らされたのは、『CALM&CLASH』のオープニングを飾る『A Touch of Yellow Bird』。TRI4THの新たな旅立ちを告げるような奥ゆかしさも相まって、演奏後にはこの日いちばんの長く大きい拍手が巻き起こった。そして、ライブは終盤へ。

気迫十分なラッシュを見せた伊藤のドラムソロ → 強烈な歪みが効いた関谷のベースソロ → とびきりアッパーな『ぶちかませ!』に突入するという鮮やかなリレーを決め、再びトップギアに変速した5人。そのまま『Sand Castle』でスカダンやモンキーダンスを誘い、本編ラストの『DISCO GARAGE』までをノリノリで駆け抜けた。演奏もMCも終始全力な姿勢がひたすら眩しい、命を燃やし尽くすかのようなパフォーマンスが本当に素晴らしかったと思う。

大歓声に応えて、メンバーが再登場。「ツアーファイナルで気張ってるところもあって、笑いが足りなかったね。その穴を今から埋めるとか、埋められねえとか思っているわけなんですけど、ここで俺らの頼れる兄貴をお呼びしてもよろしいでしょうか?」と伊藤がオーディエンスに問いかけ、スペシャルゲストのTOSHI-LOWをもう一度ステージに招き入れる。
TOSHI-LOWは「その呼び込み方だと、俺は笑い担当になるけど大丈夫?」と早速ツッコミを入れ、「打ち上げの様子をみんなに見せたいよ。あんなにスケベな話ばっかりしてたのにさ!」とメンバーの内情を暴露しようとしたりと、現れた途端にやっぱり主役感がものすごい。
「人生が楽勝な人はおそらくほとんどいなくて、苦しいとか大変だとか、たいてい大人になったらそういうのがバンバン降りかかってくる。病気、争い、経済的な事情、もしくは言われなき偏見、差別……めちゃくちゃむごいなと思うわけ。変えられないものはどうやったって変えられない。コロナや震災が起こったこと、変えられないじゃん。亡くなった人、帰ってこねえじゃん。だけど、自分たちで変えられるものもある」
一転して、TOSHI-LOWはオーディエンスへ向けてシリアスに語り出す。TRI4THのメンバー5人とツアーで各地を回り、少なからずいっしょに日々を過ごして感じた気持ちを。
「事務所がなくなった。たぶんスタッフもいなくなったんだろう。自分たちでチマチマといろんなことをやって、このツアーを成功させようと動いている彼らを見ました。大事な仲間を守るため、大事に想ってくれる人を守るため。こいつらは今までより何倍も強くなったと思うし、これからもっと強くなる。TRI4TH、応援よろしくお願いします!」
偉大な先輩・TOSHI-LOWからのそんな愛あるエールは、ツアー最終日のハイライトのひとつ。「俺は思ってる。どんなにつらくても、人生でいちばんいい夜は“今夜”」と続け、6人で共に演奏したBRAHMANの『今夜』を含め、メンバーにとってもファンにとっても忘れられない瞬間となった。
さらに、アンコールではチバユウスケ(The Birthday)とのコラボ曲『LET JERRY ROLL』も特別に披露。食道がんで療養中のチバに代わってボーカルを執ったTOSHI-LOWが「病室まで届くようにいっしょに歌おう!」と呼びかけ、会場の一体感と盛り上がりはとうとう最高潮に。

千両役者ぶりが見事だったTOSHI-LOWが捌けても、TRI4THの5人はグルーヴィに大暴れ。「最高の今夜に、俺たちのいちばん踊れる曲を捧げるぜー!」と伊藤が宣言した『Dance em’ All』では、藤田が沸き立つフロアに降り、サックスを吹きながら観客のそばを練り歩くなど、踊れるジャズをこれでもかと体現する。
「TOSHI-LOWさんにいろいろ勉強させてもらったけど、これから大切にしなきゃいけないのは、勝ちに行くんじゃなくて逃げないこと。身の丈なんて自分で作るもんじゃねえんだということ。このメンバーさえ集まっていれば、何にだって負けないよ。みんなが居てくれたらさ、どこへだって行けるんだよ。『フジロック』、ぶちかましに行きます! ロックフェスにジャズバンドが、インストゥルメンタルが必要だって、俺たちが証明していくんだよ!!」
バンドの揺るぎない覚悟を伊藤がきりっと表明し、最後の最後は陽のバイブスにあふれた『SENRITSU』で『CALM&CLASH』ツアーは大団円となった。なお、TRI4THは7月30日(日)に『FUJI ROCK FESTIVAL ’23』に出演。9月末から12月にかけて、全国15ヵ所を回る『TRI4TH 2023 GIVE OFF!Tour』を新たに開催する。
Photo by Seiji Watanabe
取材・文:田山雄士
《SET LIST》
- 1.Just Roll
- 2.For The Loser
- 3.ルパン三世のテーマ‘78
- 4.Guns of Saxophone
- 5.Delight
- 6.Goodtime
- 7.SWINGERS JIVE
- 8.FULL DRIVE
- 9.Fineday
- 10.Fiesta
- 11.Sculpture Garden
- 12.Freeway
- 13.Maximum Shout
- 14.真善美
- 15.光 feat.TOSHI-LOW
- 16.Bloom
- 17.A Touch of Yellow Bird
- 18.ぶちかませ!
- 19.Sand Castle
- 20.DISCO GARAGE
- <ENCORE>
- EN1.今夜
- EN2.LET JERRY ROLL
- EN3.Dance em’ All
- EN4.SENRITSU
TRI4TH
TRI4TH A/W 2023 GIVE OFF!Tour チケット一般発売中!

9/30(土)横浜 F.A.D w/SCOOBIE DO
10/6(金)仙台 BIRDLAND
10/7(土)盛岡 MUSIC+BAR
10/8(日)宇都宮 Snokey Records
10/13(金)豊橋 club KNOT
10/28(土)滋賀 Blue
10/29(日)岐阜 YANAGASE ANTS
11/11(土)伊那 GRAMHHOUSE
11/12(日)山梨 桜座
11/17(金)広島 Live Juke
11/18(土) 福岡 LIVEHOUSE秘密※2マン
11/19(日)熊本 NAVARO
12/17(日)名古屋 JAMMIN'
12/18(月)大阪 Music Club JANUS※2マン(大阪公演のみ後日発売)
12/23(土)東京 月見ル君想フ
チケット販売プレイガイド受付先等詳細はTRI4THオフィシャルサイトをご確認ください。
https://tri4th.fanpla.jp/live_information/schedule/list/?year=2023&month=10