――今回の個展のテーマが、「反射」。どの作品にも、「反射」を想起させる表現が成されていますよね。
あいな:作品ごとにいろんな見せ方をしながらそのテーマを形にしています。今回の個展でもコントラストを持って展示していたように、飛鳥井ちゃんの写真だけで完成した作品もあれば、その作品へわたしが塗り重ねたアート作品、アミがわたしのアートをデータ化し、それを取り込みながらレイヤーしてゆくグラフィック作品など、いろんな組み合わせで作りました。作品を作るうえでも、「反射」を示す小道具として大きな鏡を使ったり、グラスや水などいろんな反射するものを用いて制作しています。3人で話しあったときや、それぞれの頭の中にあった完成図を思い浮かべながら、それを現場でブラッシュアップしながら作りあげています。
1点1点作品ごとにテーマ性を持って制作したのはもちろん、個展として展示したときのレイアウトを通しても見る側にメッセージを与えられたのはROOMCRIMの久松さんのアイデアによるところも大きいです。わたしたちだけでは思いつかなかったアイデアを、久松さんがいろいろと提案してくれて。個展という空間のレイアウトやデザインを通してもメッセージを伝えるなど、私たちのアイデアをまとめあげてくださった力もとても大きかったなと思います。
アミ:次々と出てくるアイデアがすごかったからね。
あいな:レイヤーしてない作品とレイヤーした作品を向かい合わせて展示するなどのアイデアは久松さんが提案してくださったことなんです。結果、作品の制作に於いても、発表の場となった個展の会場でも、いろんなアイデアが面白いように活かされていきました。
アミ:いっつも、4人で会議していたからね。
あいな:そう。4人でグループ LINEを作り、そこでやりとりを繰り返していく中でわたしだけだったら頭の中でぐちゃぐちゃに絡み合っていたアイデアをみんなとの打ち合わせを通して整理できた面も多々ありました。
――展示された作品の中で非常に興味深かったのが、あいにゃんさんの描いた、あのゴツゴツとしつつも起伏を持った絵の具を使ったアートでした。
あいな:絵というと平面の印象があるけど、わたしは立体感のある絵がすごく好きなんです。それを求めてという前提があったうえで、今回は「反射」をテーマにしていることから、艶と質感のある絵の具を使ってアートを表現しています。実作業のときも大きな半紙に習字を書くのと同じような感覚と言いますか、そのときにパッとひらめいたインスピレーションを大切にガッガッガッと仕上げました。
パソコン作業の場合はやり直しが効くけど、絵の具ってやり直しが効かない一発勝負の場。だから、額縁に入った写真が届くまでずっと頭の中では「どうしよう、どうしよう」と唸っていますけど…。
アミ:でも、作業を始めたら一瞬だよね。
あいな:「はいっ!!」と、気合を込めて一瞬で塗り上げるような感覚でしたね。
――やはり、インスピレーションが大切なんですね。
あいな:そうですね。もちろん、事前に頭の中にイメージはありますけど。今回は抽象画アートなので、やはりインスピレーションも大切なことでした。色合いに関しては、「反射」がテーマだから、シルバーの絵の具を用いていますけど。メンバーそれぞれにイメージカラーがあるから、メンバーごとの作品ではそれぞれの色も組み合わせながら表現しています。
――アートの元となる写真を撮るときにも、メンバーさんにいろんなお願いをしていたのでしょうか?
アミ:そこは、みなさんにお任せだったよね。
あいな:みんな撮影は慣れているから自由に任せました。そのうえで、大喜利じゃないけど、「はい、このグラスを使って」など手渡しては、各自が手渡された小道具や寝そべった大きな鏡など、いろんな題材をそれぞれのアイデアで自由に使ってもらいました。
――デザインする上でのアイデアの提示も、メンバーさんそれぞれにあったのでしょうか?
アミ:メンバーごとにではなく、その場を活かしてというのはありました。たとえば、メンバーさんの姿の映った影を活かすのに相応しい壁をスタジオで見つけて、「影を活かしたデザインにしたい」から、撮影も影を活かして撮ったり。撮影中もお姉ちゃんが「この影をもっと伸ばして撮ろうか」など、アイデアの提案を含めたディレクションにも関わるなど、良い意味でその場の発想も活かしながら撮影して。その題材を元に、わたしは後でデザインをしていった形でした。
撮影中の現場では3人で確認しあいながら、その場で出したアイデアも活かしながら進めてもいました。もちろん、絶対に3人でイメージを共有しあったほうが良いときは3人で確認作業もしましたけど。お姉ちゃんもモデルの一人だったので、ずっと現場にいられるわけではなかったから、お姉ちゃんの意図をわたしが汲み取る場面もありました。そこは、本当に姉妹で良かったなと思ったところです。
あいな:お互いに、感覚が繋がっているのはわかっていたから、わたしも「後は頼んだ」とお任せもしていました。
アミ:準備が出来て戻ってきたお姉ちゃんに、「こうなったよ」と後で確認もしたりね。
あいな:そこは、ずっと意識を共有しあってきた姉妹だからこその強みですよね。
――作業の面では、先に写真があって…。
あいな:わたしがアートとなる題材を作り、それをアミがデータ化して取り込み、最後にアミがレイヤー化して仕上げるパターンもありましたけど。絵の具を塗り上げたアート作品を含め、2人で作り上げた作品の上にわたしが最後に手を加える作業が多かったから、2人が作品を作りあげるのをわたしはいつも待ち構えていました。
アミ:ラスボス状態だったよね(笑)。
あいな:ただ、絵の具を塗ったのは良いけど絵の具自体がなかなか乾かなくて。中には、個展の前日ギリギリに仕上がった作品もあったくらい、本当にギリギリまで制作をし続けていました。
アミ:仕上がっても、試したいアイデアが出たらそれをまた試したりね。
あいな:そう。完成した作品を、少し時間を空けて見たうえで、「もうちょっとここをこうしてみたい」と思ったら、それを各自が、チームの他のメンバーに伝えたうえで、「そのアイデア、今からでも反映できますか?」と確認して、そこからさらにブラッシュアップしたこともあったから、作業は本当にギリギリの状態。だけど、みんながそれぞれの欲求に対して柔軟に対応してくれたこともあって、どの作品も本当に納得のいくものを作れました。
アミ:今回の作業の面白さであり難しさとしてもあったのが、それぞれがどの程度まで仕上げたうえで次の人に作品のバトンを渡せるかということなんです。
――それはどういうことですか?
アミ:わたしでいえば、上がってきたカラーの写真をモノクロにしたり、綺麗な質感をちょっとザラザラに加工したり、あえて一部を歪ませてみたりしていましたけど。あまりにも完璧に仕上げてしまってはいけないというか、それぞれが100%完成しきった作品を次の人に手渡すと、次の人の創作の余白が少なくなってしまうんですね。だから、それぞれが「もうちょっと欲しいな」というさじ加減を持って、次の人にバトンを手渡していきました。結果、それが良かったなと思っています。
あいな:もちろん、中には完成させたうえで渡される作品のバトンもありましたけど。そこは、作品によって各自がいろんなバランスを取りながらやっていたことでした。
アミ:わたし、基本的に計算をして作品を作るのは苦手なんです。それでも、「お姉ちゃんなら、こういう風に絵の具を塗り重ねてくるかな?」と想定したうえで、創作の余白を与える形でバトンを渡していました。
あいな:そのさじ加減があったことで、より創作意欲が沸いたり、めっちゃ助かったからね。
アミ:作品を作るごとにお互いのリレーションの度合いも見えてくるから、そこは毎回勉強になっているよね。
あいな:作品の制作を重ねることは、毎回かなり勉強になっていることですね。
――作品を作り上げると、自然と次への欲求も生まれてくるものなのでしょうか?
あいな:出てきます。今回の個展にしても、もうちょっと開催時期が先だったら今とは違う内容になっていた可能性もあります。チームのみんな、ギリギリまで粘って最高の作品を作ろうとしていく人たちだからこそ、追求する欲求は果てしないです(笑)。
――山内姉妹としても定期的に個展は開催していますが、今回、カメラマンの飛鳥井さんと一緒にコラボレートしたように、関わる人によってやはり作風も変わっていくんでしょうね。
アミ:間違いなく変わっていきますし、そこがいろんな人とコラボレートを行う面白さだと感じています。
――山内姉妹に関しては、もう鉄壁な関係性が出来上がっていますよね。
あいな:だからこそ、姉妹として目標にしているのがこのプロジェクトをChapter.100まで続けること。それこそ、お互いおばあちゃんになるまで山内姉妹としての作品作りは長ーく続けていきたいと思っています。
アミ:そこは焦ることなくのんびりとね。そうやって、お互いに好きな創作を続けていきたいなと思っています。
――Chapter.100となったら、本当に何十年後になりますよね。
アミ:今はまだChapter.3だけど。年に2回のペースでやれば50年くらいあればたどり着ける?
あいな:Chapter.100を達成しても、お互いまだ生きて創作していられる年齢だと思います(笑)。ただ、年老いてきたらもうちょっとペースを上げて、Chapter.100を目指すかも知れないけど(笑)。
アミ:今回の「REFLECTION」は、姉妹以外の人ともコラボレートしているからChapterは付けてないけど、コラボシリーズもコンスタントに回数を重ねていきたいなと思ってて。むしろ、いろんなチームを作ってみたい。
あいな:今回の個展のように、いろんな人たちといろんなバランス感を持って作りあげるのも楽しさだからね。
――今後の予定もいろいろと決まり出しているそうですね。
あいな:まずは、6月5日から11日まで、原宿にある「おすし屋さんのポークたまごおにぎり」さんの店内の絵を山内姉妹として書き下ろし、それを飾らせていただきます。11日には、1日店長としてお店に立つことも決まっています。それが、Chapter.4です。詳しくはまたご報告しますので、こちらも楽しみにしていてください。
インタビュー・文:長澤智典
撮影:小野寺将也
飛鳥井 里奈
1993年、愛知県生まれ。
2018年よりアイドルやバンドのアーティスト写真、CDジャケット写真、ポートレートやライブ撮影を中心に東京を拠点とし活動をしている。
Instagram:https://www.instagram.com/rina_asukai/
ROOMCRIM
「想いを創る そして像を発信する」
クリエイターのアート・ミュージック・アパレルを中心としたクリエイティブ企画展を発信する”コンセプトストア”。
SNSコミュニティだけにとらわれないフィジカルコミュニティの形成、ステークホルダーの未来へ繋がることを目的とした”実像”展開を基軸とし、新たなる価値創出を手掛ける事業を展開しています。
えじにゃん個展vol.03『film』 in Tokyo & Nagoya
★東京会場: WONDER PHOTO SHOP
2023年5月12日(金)〜5月24日(水)
開場:11:00 / 閉場:19:00 (※第2・第4木曜日は17:00まで)
入場料:無料
★名古屋会場:ROOMCRIM NAGOYA conceptshop
2023年5月24日(水)〜5月28日(日)
開場:11:00 / 閉場:20:00
入場料:無料
※28日はイベントを開催しているため、一部時間が変更になっております。
https://www.roomcrim.conceptshop.online/blogs/news/ejinyan_film
Chapter.4×おすし屋さんのポークたまごおにぎり展
2023年6月5日(月)〜2023年6月11日(日)
open 10:00~20:00
会場:おすし屋さんのポークたまごおにぎり(東京都渋谷区神宮前6-2-7)
https://osushinoportama.shopinfo.jp/
★山内姉妹1日店長
2023年6月11日(日) 16:00〜20:00