Key.太田ひさおくんの奏でる優しいピアノの旋律が聞こえてくると、季節が夏から秋、そして冬へと移り変わっていくのを感じた。『スノーグローブ』の主人公からの”忘れられない人”に宛てたメッセージとともに届けてくれたのは、太田彩華の息遣いや声の美しさが際立つ切ないラブソングだ。想いを寄せる相手が夏のアイツだったらどうしようか。しかしそれはそれで素敵なストーリーかもしれない…と、この曲が思わせてくれた。雪景色のなかに立っているような静けさを残したまま、さらに『旅立ちの日に』へと続く。卒業式で歌った人も多いであろうこの曲が、太田家らしく明るく背中を押してくれる楽曲へと昇華している。声を出してライブを楽しめる世の中が再びやってきたら、間違いなくオーディエンスも一緒に大合唱してくれるだろう。
ライブも後半戦に差し掛かり、太田彩華から周りへの感謝の想いが語られる。
「太田家はまだ始まって3年。がっつりバンドをやるのもベースボーカルをやるのも初めてで、メンバーやスタッフに助けてもらいながら、試行錯誤で進んでいます。太田家が始まってすぐコロナが流行りはじめて動きが止まりそうになった時も、ファンの皆さんが助けてくれたお陰で、動きを止めずにここまで来れました。みんなにいっぱいありがとうを伝えたくて、感謝の気持ちがいっぱいいっぱいあって…そんな私の気持ちを花男さんが形にしてくれた曲、聴いてください」
兵庫県出身の太田彩華が関西弁も交えながら飾らない言葉でそう話し、ベースで優しい音色のフレーズを奏でる。『ツアーは続く』は、楽曲提供した花男の人柄のような、暖かさを感じられる曲だ。太田ひさおくんが吹くハーモニカの音が温かく心に染み込んできた。約1年間、この日に向かって進んできた太田家だが、これもまたゴールではなく始まりの日なのだと歌い上げてくれた。
そのまま「みんなの明日がもっと強く もっと優しく輝きますように」というメッセージから始まった『光れ feat. 吉崎綾』。等身大のロックナンバーは、これまでの四季をこえて太田家が目指すもの、示す先を提示してくれたような選曲だ。そのまま音を止めることなく本編ラストの曲『愛とアストロノミア』へと続く。太田彩華のベースもより一層力強く体に響いてくるし、曲に込めた想いを全力でぶつけた歌声に引っ張られるように、メンバーの演奏とコーラスの熱量も高まっていく。こんな瞬間をこの先ももっともっと見せてほしいと思わせてくれたライブだった。
アンコールの拍手に応え、太田家は再びステージへ。
この日先行発売となった2nd Album『四季織々』について、「人生は四季に喩えられる。青春、朱夏、白秋、玄冬…聞いてくれる人のどんな季節にも寄り添って、きれいだよ、かっこいいよって言ってあげられるようなアルバムを作りたくてこのタイトルにしました。なんでもない日常でも私が主題歌を歌ってあげる。そう思いながら歌っています」と話す。
また、今回参加してくれたレジェンド達への想いも語ってくれた。
「今日出演してくださったバンドの曲は、学生時代から聴いてて何回も助けてもらったし、本当に背中を押してもらっていました。すごいかっこいい、ヒーローみたいなバンドと一緒にライブが出来たのが本当に嬉しいです。バンドや音楽を続けていくことはとても難しくて、私の活動は3年足らずだけど大変だなって思うことがいっぱいあったし、コロナ禍で音楽辞めちゃった人も、活動休止しちゃったり解散してしまったりしたバンドもいっぱい見てきました。そんな中で、私が大人になった今でも皆さんは歌い続けてきてくれて、また新しい誰かの背中を押してるんやって思ったらめちゃくちゃかっこいいなって思いました」
太田家もいつかそんな存在になっていきたい…そんな想いを込め『シュプレヒコールが眠らない』、そして太田家の始まりの曲である『名もなき少年の 名もなき青春』を披露してくれた。
曲中の”名もなき少年の 名もなき青春を 僕が歌わずして 一体誰が歌うと言うのだ”という叫びは、まさにMCで太田彩華が語ってくれた「あなたの人生の主題歌を歌いたい」というメッセージそのものであり、太田家が結成当初から変わらぬ信念を持って活動してきた事をあらためて思い知らされる。取るに足らない日々でも、時に熱く、時にふざけながら、家族のように寄り添い背中を押してくれる。それが太田家なのだ。曲の終盤に向かうにつれ、太田彩華の歌声はより力強くなっていく。それに応えるようにオーディエンスの拳も力強く掲げられ、会場の盛り上がりは最高潮に。最後に力強い「太田、家ーー!!!」のコールで『おおた祭り例大祭 レジェンドとおおた!』は締めくくられた。太田家が歩いてきた四季をぎゅっと濃縮したような、まさに四季織々なステージであった。
今回のライブは、新型コロナウィルス感染拡大の影響により一部予定を変更し、名古屋と北海道からの中継を交えながらの開催となった。
太田彩華はMCの中で「どんな形でも開催できたことが嬉しい!今回会えなかった2組にまた会って例大祭を開催するのが太田家の新しい目標」だと語ってくれた。コロナ禍の中で活動を続けてきた太田家だからこそ、この先もどんなことがあろうと前に進み続けてくれるに違いない。 会場にはたくさんの幟が掲げられており、ここまで”全国おおた作戦”として各地を巡って家族を増やしてきた太田家の足跡を感じられた。バンドとしてもプロジェクトとしても着実に力を付けてきた太田家が、これから私達にどんな季節を見せてくれるのか、とても楽しみである。
PHOTO :菊島明梨
TEXT :上間江望
《SET LIST》
- 1.星明かりのメロディ
- 2.青春
- 3.夏のイカれ野郎
- 4.赤赤
- 5.じゃぱにーず・いでぃおっと
- 6.クソゲーって言うな!
- 7.スノーグローブ
- 8.旅立ちの日に
- 9.ツアーは続く
- 10.光れ
- 11.愛とアストロノミア
- 12.シュプレヒコールが眠らない
- 13.名もなき少年の 名もなき青春
太田家
太田家3rdフルアルバム「あいことば」
5周年を迎えた太田家の魅力を詰め込んだ1枚!
[収録楽曲]
・夏影方程式
・君と世界征服
・言ノ葉ニ咲ク
・ストラトシャウト
・ERIKA様インスト
・パンクソーラン
・咖喱
・鋼
・沈黙と歓声の間
・ハナミズキ2
・限界ヒーロー
・新曲
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