雰囲気も変わり『Vortex』。
速弾きやタッピングなど、ギターのテクニックが目立つ楽曲ではないが、ラテンのノリはロックミュージシャンには中々表現が難しい楽曲。
レコーディング時、ラテンのリズムと今まで弾いてきたアグレッシブなロックギターが融合するとどうなるか実験した曲でもあるという。ハネすぎてもロックではなく、タイトに弾くとラテンのノリにならないが、しっかりとラテンとロックが両立した絶妙なグルーヴが聞こえてきた。
次曲は『Vulcan』。曲の殆どがタッピングによるメロディーになっており、ギターのテクニックを存分に味わえる楽曲だ。前回よりもメンバーが楽曲を理解してきたということもあり、非常に良いグルーヴ感だ。
続いて『Lucifer D』。この楽曲もテクニカルで壮大なプログレ曲となっている。「メンバーが一番苦労する曲」ということだったが、前回に比べドラムの引っ掛けのリズムや連打感がより一層パワーアップしていた。
本人曰く「ミュージシャンの技量が試される曲」。こういう曲が1曲でもあるとお互いに刺激できて、良い緊張感を持ってメンバーが輝ける楽曲だそう。
『Volcano High』はG-Life の初号機Blue Lifeでの演奏。
リハーサルには7弦のG-Phoenixも持ち込んでいたが、やはりサウンドの方向性や楽曲のノリを意識しBlue Lifeを使用したようだ。単純に弦が太く、ローが出る楽器ではアグレッシブさに欠けるという。このギターはレンジが少し狭い分、音色にまとまりがあり、ふくよかな歪がある。今までいろいろなギターで試してきたが、攻撃的でエッジも鋭く、楽曲とベストマッチしているように聞こえた。
次が本編最後の楽曲で『Zenith』を演奏。ホールという空間に合う楽曲だ。ワウペダルを踏んだ時のサウンドが非常に綺麗に響いてくる。
これは特にこだわりがあるようで、1曲の中ではアンプは統一するが、その中でもアプローチの違いでチャンネルを変更していた。基本のメロディー、バッキング、ソロと全てアンプのチャンネルを変更し演奏することにより曲の広がりを感じられる。
ここで会場は換気時間となる。本来ならばアンコールの声援が響くのだが手拍子のみ。やはりライブとしては異様な空間で、オーケストラのコンサート会場にいるような雰囲気すら感じた。
そしてアンコール1曲目はライブでは久々の演奏となる『Handroid』。ソロ活動の中でもずっと長く弾いてきたので思い入れがある楽曲とのこと。久しぶりに聞くからなのかいつもよりもスピーディーに感じた。
続いて『Triptych 2020』。ここ最近はよく演奏される曲の一つ。実際に会場で聞いた方は同じことを思うかもしれないが、今回はDAITAソロの『Triptych』ではなく、SIAM SHADEの『Triptych』のような印象だったのではないだろうか。
これは後日談だが、やはり本人もそう感じていた。ドラム青山英樹がSIAM SHADEをコピーしていたこともあり、楽曲の本質を見抜いて演奏していたことから、気持ちよく演奏できたという。
『Emphatic Line』はロックでありながらもホール会場がよく似合う楽曲だ。ハーモニクスから始まり曲に横の広がりを感じる。インストの世界観を1曲に凝縮し、ライブには欠かせない楽曲となっている。
ライブの最後を飾るのは『19 Boogie』。今回もメンバーのソロコーナーもあり、ベースBOHのアレンジやセッションが光っていた。6弦ベースならではの超絶なテクニックや様々な奏法で見せる姿は素晴らしく、止めなければいつまでも弾いているのではないかというプレイ。
BOHはDAITAにとって教え子のような存在で、元バンドのメンバーでもあり、いい後輩でもあるという。
「彼のようなミュージシャンを育てたくてやっているということもあり、ああいうプレイをやってくれて、お客さんも反応してくれるのは嬉しい」とのことだ。
各プレイヤーの素晴らしいプレイをフィーチャーできるセッションは次回のライブでも楽しみのひとつになるだろう。
最後に今回のライブを行った感想を本人の言葉をそのままお伝えしようと思う。
「見方によっては様々な意見があると思いますが、先陣を切って大きい会場でライブを行った意味は実際に見に来てくれたお客さんには感じ取ってもらえたと思います。以前も暑い時期の野外ライブで靴が溶けたり、ステージから落ちたりと色々経験してきましたが、それとは比べ物にならない緊張感と精神的に過酷だったライブは今までで初めてでした。お客さん、スタッフの全員が張り詰めた雰囲気で、こんな静かな環境でのロックコンサートをやったのは自分が最初なので歴史に残せたと思います。少なからず自分のスピリットは届いたと思うので、先のことはまだわかりませんが、このような状況がクリアになっていけばまたステージに立ってライブをやろうと思っています」
取材・文:河本亘介
撮影:小野寺将也
《SET LIST》
- 1.Singular Point
- 2.真実と闘争
- 3.WILD BLOOD
- 4.Rock’n Roll Driver
- 5.Melodicfall
- 6.Reincarnation
- 7.Maillot Jaune
- 8.Dawn Valley
- 9.Vortex
- 10.Vulcan
- 11.Lucifer D
- 12.Volcano High
- 13.Zenith
- 14.Handroid
- 15.Triptych 2020
- 16.Emphatic Line
- 17.19 Boogie
目次
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