Ayasaはずっと、心華やぐ宴を作り続けていた。たとえ目の前の宴は幕を降ろそうと、色とりどりの音球の跳ねたその演奏は、ずっと胸の奥で終わらぬ宴を続けていた。

最新ミニアルバム『A fraction-V』を手に、ヴァイオリニストのAyasaが東名阪で「Ayasa LIVE TOUR 2025 ~百花繚乱~」を開催。同ツアーのファイナルの地になった6月8日・日本橋三井ホール公演の模様を、ここにお伝えしたい。

とても艶やかで、雅びやかという言葉が似合う和な音色へ導かれるように、メンバーらが次々と舞台へ。次第に勇壮さを増す楽曲。最後にヴァイオリンを手にしたAyasaがステージの上へ。ライブは、優雅で華やかな音色を合図に『Bloomy merry-go-round』から、スタート。ドコドコとした激しいバンド演奏を背に、彼女は旋律へ巧みに強弱を与えながら、高速で美しくも雅なメロディーを次々と奏でていた。まるで歌っているようだ。早口で、しかも感情的な声で歌いかけるように、弦の上で駆けるAyasaの弓が、気持ちを踊らせる音球たちを次々とこの空間へ解き放つ。とても心が騒ぐ。彼女の演奏へ引き寄せられるように、気持ちが奮い立つ。楽器陣も、彼女の音と重ね合わせるように荒ぶる音を奏でていた。

続く『百日紅』では、まるで弦の上で音球たちが弾けるような、軽やかに跳ねる音色の数々を演奏。とても優雅だ。でも、ときにスタッカートした演奏や、美しく透明感を持って伸び伸びと響く音色が、もっと心を揺らしてはしゃぎなよと誘いかける。じっとしているのが、もどかしい。だから、大勢の人たちが手拍子をしながら、甘く軽やかな宴へ身を乗り出し、一緒に身体を揺らしていた。

Guitar 土方理久音の使用アコースティックギターはMaton ER90C

数本の白いピンスポットの光に包まれた中、Ayasaが低音域の音を凛々しく響かせて、ソロで演奏。その音色がキーを上げるのに合わせ、次第に熱を抱きだす。そこへ、情熱的にアコギをストロークする演奏が加わりだした。飛び出したのが、『Dandelion’s roar』。ときに変拍子を生かしたアタックの強いリズムを通して観客たちの心を野生に導き、優雅ながらも時を駆けるような音色の数々を通し、Ayasaはこの場にいる人たちを、異世界の理想郷の中で繰り広げる情熱的な宴へと誘い込む。緩急様々な表情を次々とめくりながら、その背景の場面を彩る感情的な音のドラマを描きだす。次々と演奏の表情が変わるたびに、気持ちが情熱的に揺さぶられていた。

写真左、Bass okamu.の使用ベースはFreedom Custom Guitar Research製Dulakeモデルのカスタム5弦ベース。写真右、Guitar 土方の使用ギターはAircraft製のAC7Pをベースにしたカスタムモデルだ。アンプはokamu.のベースアンプがMarkbass Little Mark IVヘッド+Markbass MB58R 104 ENERGYキャビネット。土方のギターアンプがBogner ECSTASYヘッドと同社製212CBキャビネットの組み合わせだ。

観客たちのクラップをリードに、そこに演奏陣がリズムを重ねだす。そのうえでAyasaが奏でたのが『音戯ノ舞』。タイトル通り、両足を左右に高く掲げながら勇ましく踊る踊り子のような様を、Ayasaのヴァイオリンが攻めた旋律の数々を通して描きだす。1曲の中、激しさと優雅さを巧みに色分けするように繰り出す様も、Ayasaらしい。軽やかにではない。本当に情熱的に、ときに膝を高く掲げて踊るような様で、Ayasaのヴァイオリンの旋律が唸りながら踊っていた。

続く『華吹雪!破天連娘』では、演奏陣が一気に華やかな音を、オーケストラのようにぶつけだした。その途端、フロア中の人たちが手にしたタオルを一斉にくるくると回しだす。緩急を付けながらも、Ayasaを筆頭に、メンバーみんなが気持ちを前のめりに、昂る感情をぶつけるように演奏。気持ちを勇ましくする奏者たちの調べに刺激を受け、フロア中の人たちも心騒ぐままにはしゃいでいた。途中には、メンバーらと観客たちが音と叫び声を交わす場面も登場。一つ一つの音が勇ましく響くたびに、その様に合わせて、会場中のタオルもくるくると大きく旋回し続けていた。

続いては、Ayasaのライブではお馴染みのカバーコーナーへ。今回のツアーでは、「和」を強く意識していたことから、カバー曲でも和の香りを強く漂わせる楽曲を用意。最初に奏でたのが、跳ねた琴の音色からの始まりも印象的な、亜沙の『吉原ラメント』。Ayasaのヴァイオリンを筆頭に、楽器陣みんなの音色が心地好く跳ねながらこの場を彩り、跳ねた音の球が熱を帯びるたびに、気持ちもはしゃぎだす。攻めた演奏の上で、Ayasaの繰り出す優雅さを持って跳ね続ける音色が、とても印象的だ。

続く陰陽座の『甲賀忍法帖』では、気持ちを露に、激しく攻めた演奏が炸裂。その音に刺激を受け、フロアでは声を荒らげる人たちも。対してAyasaは、優雅に、でも、胸踊る旋律の数々に情熱を込めながら次々と繰り出してゆく。まさに歌うような、心で泣くような演奏だ。いや間違いなくAyasaのヴァイオリンの音色は感情的な声で歌っていた。そのエモい美しさに触れ、心が嬉し泣きしていた。

Ayasaが使用するバイオリンはルーマニアのハンドメイドメーカー「Gliga」製のAyasaモデル5弦バイオリン。

そこへ繰り出したのが、黒うさPの『千本桜』だもの。この空間が、艶やかな桜の花びらが舞い踊る華やかな宴の場へと瞬く間に染まっていた。ここへ至るまでの熱を帯びた演奏に刺激を受け、一気に、しかも満開に咲き誇った様が、この場に生まれていた。間奏では、演奏陣が激しく音を戦わす姿も見せ、その上へ、Ayasaのヴァイオリンの優雅な音色が、艶やかな音の花びらを舞い踊らせてゆく。その様に触れ、場内中の人たちが心浮かれていたのも、当然だ。

続いて披露したのが、最新作に収録した新曲の『彩泡沫 -irodoriutakata-』。ここからはゆったりとした楽曲のブロックへ。『彩泡沫』では、一つ一つの音が流れるたび、その音色はまるで、大河の中から顔を覗かせゆったりと流れる、美しく輝く音球たちのようにも見えていた。どこか儚さをその音色へ覚えるからこそ、弓の上で生まれる儚げな一つ一つの音の球たちを、しっかりと掌で零さないように受け止めたくなる。本当に優雅なひとときだった。

続く『桜めくり』では、触れた人たちをまどろみの中へ優しく招くように、Ayasaが温かく包み込むような音色を奏でだした。月夜を愛でながら。その夜空から音の花たちがゆったりと舞い散るように降り続け、その音色が肌に心地好い潤いを与えてゆく。この曲でも、ずっと優雅な気持ちで演奏に触れていた。微睡みを覚えるのは、その演奏が温かく、優しくて心地好かったからだろうか。

少し音色を華やがせるように、Ayasaが奏でたのが『鏡花水月』。それまでのゆったりとした景色の中へ、刺激的な藍色の音を塗り重ねるように、彼女はこの空間を、幻惑した神秘的な色へ染め上げてゆく。弦の音が力強く声を響かせるたび、演奏陣も音を荒ぶらせ、この場へ勇ましい色を塗り重ねていた。

ここで、Ayasaがダンサーたちをステージへ呼び入れた。Ayasaの手には、ヴァイオリンではなく扇子が握られている。まずは、Ayasaが扇子を使った踊りをレクチャー。その上で、彼女は、ふたたびヴァイオリンを手にして演奏へ。

ダンサーを招いて奏でた、三味線の跳ねた音色から幕開ける『宴でぃすこ』は、優雅な演奏に乗せ、心を童心に返してはしゃぎたくなる楽曲だ。Ayasaも、振り付けのパートでは、扇子代わりに弓を用いて踊っていた。優雅な姿で舞い踊っていた花魁が、次第に気持ちを高めて大胆に踊りだす。そんな美しくも豪胆な存在感を放つ楽曲だ。いつしかAyasaも、ダンサーたちと共に花道へと歩を進め、扇子を手に踊る観客たちと一緒に、この場に宴の様を描きだしていた。

止まることなく、演奏は『KAGUYA』へ。この曲でもAyasaはダンサーたちを従え、終始、和エレクトロでダンサブルな楽曲に乗せて観客たちを優雅に、でも、アタックの強い刺激的な演奏で気持ちを騒がせていた。華やかで艶やかなのに、スリリング!?その心地好い攻めた優雅な演奏と、挑発するようなダンサーたちの踊りに誘われ、フロアのあちこちで扇子の花が大きく舞い踊る。この宴、観客たちの理性のストッパーを外し、心を解き放つ様をこの場に見せてくれた。

Drums 新保惠大のドラムセットはPearl Masterworks Maple/Gumのキット。

楽器陣が荒ぶる演奏を繰り出した。終盤へ向かう熱狂の道を彩り豊かに染め上げ、観客たちの踊り騒ぐ気持ちをさらに熱く刺激しようと、Ayasaは『華讃歌』を演奏。次々と高速で音球を繰り出す彼女の演奏に触れ、気持ちが沸き立つ。高速で音を弾き倒すAyasaの演奏とシンクロするように、高速で演奏を繰り出す楽器陣。この曲では、Ayasaとメンバーたちによる荒々しい音の饗宴が繰り広げられていた。その演奏に触れ、気持ちが高ぶり続ける。スタッカートの利いた演奏の上で、弓をしならせ観客たちを煽るAyasa。後半へ進むにつれ、その演奏は情熱を増していった。

篠笛の音色を合図に、Ayasaと演奏陣が、攻撃的な旋律を次々と矢のように放ち、観客たちの気持ちを勇ましくしてゆく。『千本の矢』でAyasaと演奏陣が見せた、感情を露にし、熱情した音を繰り出す姿。優雅なのに勇ましい、その気高き様と演奏に興奮しながらも、Ayasaから目を離せずにいた。

最後に届けたのが、こちらも最新曲の『繚乱乱舞』。タイトル通り、演者たちの演奏へ呼ばれるように、感情を乱し、心の求めるままにはしゃげばいい。攻撃的な演奏陣の音が挑発するたびに、フロアから拳か突き上がる。終始優雅さを持ちながらも、Ayasaの奏でる一つ一つの音色は炎のような音を撒き散らしていた。Ayasaが和を軸に据えて魅せたのは、気高き乙女が本能のままに自らを解き放つ、大和の魂を燃えたぎらせたライブだった。

アンコールでは、ふたたびダンサーらを迎え入れ、本編以上に気高く、優雅に、凛々しい様で演奏。『Spectrum』を通して見せたその姿は、勇壮な宴の場を先頭に立って導く勇者のよう。巧みに緩急の表情を付けながら、曲が進むごとに音の光彩を閃かせ、演奏は進んでいった。

最後にAyasaは『Dreamship』と名付けた演奏の船に、みんなの笑顔を乗せ、また次の楽しい宴の地へと向かって力強く進みだした。一つ一つの音色が踊るたびに、一緒に気持ちが踊りだす。気づいたら誰もが、Ayasaの用意した巨大な船の上で、夜を明かす勢いで宴に興じていた。途中、Ayasaを筆頭にした竿隊が花道へ踊り出て演奏を共演。彼女はずっと、心華やぐ宴を作り続けていた。たとえ目の前の宴は幕を降ろそうと、色とりどりの音球の跳ねたその演奏は、ずっと胸の奥で終わらぬ宴を続けていた。

PHOTO:リリィ(ririco:ramu)、ZENTA
TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. 1.Bloomy merry-go-round
  2. 2.百日紅
  3. 3.Dandelion’s roar
  4. 4.音戯ノ舞
  5. 5.華吹雪!破天連娘
  6. 6.吉原ラメント
  7. 7.甲賀忍法帖
  8. 8.千本桜
  9. 9.彩泡沫 -irodoriutakata-
  10. 10.桜めくり
  11. 11.鏡花水月
  12. 12.宴でぃすこ
  13. 13.KAGUYA
  14. 14.華讃歌
  15. 15.千本の矢
  16. 16.繚乱乱舞
  17. -ENCORE-
  18. EN1.Spectrum
  19. EN2.Dreamship
Ayasa

「Ayasa Birthday Festival 2025」

「Ayasa Birthday Festival 2025」
2025年10月19日(日)
*1st公演:Birthday Live
open14:30/start15:00
*2nd公演:あやたみんちぱーてぃー
open18:30/start19:00

▼会場:SHIBUYA PLEASURE PLEASURE
▼詳細:Ayasaオフィシャルサイトへ
https://ayasa-official.com/


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