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Ayasaは終わりを忘れた楽しいひとときを、ここに作りあげていた。
昨年より、East Of Edenのメンバーとしても活動をスタートしたヴァイオリニストのAyasaが、1月~2月にかけて、東京・大阪・名古屋・福岡を舞台に行った「Ayasa LIVE TOUR 2024〜A fraction〜」。同コンサートの中から、ツアー初日に当たる1月13日・品川インターシティホールでの公演の模様をお届けしたい。
用意した椅子はしっかり最後方まで埋まっていた。開演前、誰もが無言のまま、もしくは、言葉少なに、これから始まる熱狂描く物語が幕開けることを心待ちにしていた。
荘厳な幕開け。厳かな、でも、期待へ胸を弾ませるように、その音は熱を抱いて高鳴りだす。フロア中から鳴り響く熱いクラップ。そして…。
Ayasaのヴァイオリンの音色が弦の上を滑り出すのに合わせ、新曲の『華讃歌』が流れだす。その音色を合図に観客たちが一斉に立ち上がり、早くも熱い想いをぶつけだした。Ayasaも優雅な様で。でも、激しく弦を擦り、勇壮な音を響き渡らせる。曲が進むごとに激しさを増す演奏。Ayasaの音へ導かれるように、バンドメンバーもときに激しく、ときにたおやかな表情を示しながら、Ayasaの心の音とシンクロした生きたヴォイオリンの音色へ、さらに強い生命力を与えていた。
「さっそくタオルを回してもらいたいと思います!」の言葉を合図に飛びだしたのが『華吹雪!破天蓮娘』。Ayasaの奏でるヴァイオリンの音色が響き渡ると同時に、フロア中の人たちが手にしたタオルを頭上高く掲げ、くるくると回しだす。緩急巧みに表情を塗り変えるAyasaの演奏。場内を埋めた観客たちは、高ぶる気持ちのまま、自らの想いを熱い手拍子に変えてぶつけていた。後半には曲がブレイクするたびに、フロアのあちらこちらから熱い声も上がり出す。こんなにも優雅なのに、胸を激しく騒がせる音楽はなかなか無い。心が騒ぐ。だから高く手を掲げ、タオルやペンライトを大きく振りたくなる。
序盤から、この場には“熱”を求めあう空気が生まれていた。次に奏でた『君と僕と蒼い月』は、バンド編成で届けるのは久しぶりになった楽曲。穏やかに、でも心地好く弾む演奏とAyasaのヴァイオリンの音色がシンクロ。彼女の弾いた一つ一つの旋律が、音符の一音一音が翼を広げ、この空間を自由に、優雅に飛び交うようだ。Ayasaのヴァイオリンを弾く立ち姿がとても清楚で美しい。その出で立ちや彼女自身の心の揺れが、この上品な熱狂を生み出しているに違いない。
激しく躍動する演奏の上で、Ayasaはスケール大きな世界をこの空間に描きだす。『limelight』を通してAyasaが見せたのは、とてもおおらかな、でも、優雅で上質な音世界。その音色は、触れた人たちを異境の地へ連れ出す。それは、人の手を介在しない壮大な大陸の景色。自然の営みが、力強く命を謳歌する。そんな雄大な景観が心の中に広がっていた。駆けながらも巧みに転調してゆく様に合わせ、ヴァイオリンの音色も様々な色を見せていた。
続く、ライブ初披露となる『ネオンレイン』では、Ayasaのヴォイオリンの旋律と演奏が力強くシンクロしながら胸に突き刺さってきた。冒頭の激しさから少しずつ色を塗りかえるように壮麗さも見せてゆくが、Ayasa自身の気持ちが高ぶるたびに、妖艶さの中にもどんどん熱が加わりだす。ときに気持ちを荒々しく。いや、沸き立つ気持ちに、様々な高揚という感情の色をAyasaは塗り重ねる。そぼ降る雨のような音色の雨で楽曲に豊かな彩りを与えながら、演奏は突き進む。その様が、胸を熱く騒がせる。
続くブロックでは、カバー曲を中心に演奏。荘厳でシンフォニックな、とても激しい演奏が炸裂。どんな楽曲でも、彼女の手にかかれば、勇壮さと優雅さが増してゆくのも嬉しい。それにしても、まさかのYOASOBIの『アイドル』をカバー演奏するとは。場内から熱い声が上がるのもわかる気がする。Ayasa自身も高貴なアイドルに気持ちを染めあげて…と言いたいとろだが、とにかく攻めるように、ギュッと濃縮した分厚い音の玉の数々を、荒ぶる気持ちのまま次々とぶつけていた。そのスリリングな姿がとても刺激的だ。
その勢いをさらに加速するように、AyasaはMY FIRST STORYの『REVIVER』を奏で、身体をしならせながら気持ちを騒がす音を生み出しては、観客たちを熱く挑発し続けていた。ときに身体を前屈姿勢にして弾きながら、Ayasaは沸き立つ感情と演奏を巧みに折り重ねあう。放熱するその演奏に、気持ちがずっと騒ぎ続けていた。
激しいギターの音が炸裂するのを合図に、彼女は荒ぶる演奏の上に、優美で、まるで花魁が妖艶に舞い躍るような演奏を重ねだす。激しいのに、なんて優雅で、見目麗しい演奏だろう。『籠鳥恋雲』を通してAyasaが見せた、心を躍動させながらも彩り豊かに染めあげる演奏。場内のあちこちで、拳やペンライトの光が突き上がるのもすごくわかる。華やかで艶やかな演奏なのに、やっぱり心が騒いでしまうんだもの。
次のブロックでは、アコギの音色も生かしつつ、心を優しく包みこむ曲たちを披露。『我愛你』では、オリエンタルかつチャイナ系の音色を魅力に据えた、心を穏やかに包み込む美しい演奏をAyasaは届けてくれた。曲が進むごとに、柔らかく優しい音色の数々がビロードの服のように優雅に煌めきだす。手触りよく肌に心地よい音を次々と塗り重ねてゆく。だから誰もが夢見心地に、悠久の調べにそっと身や心を寄り添え、しばし時を失くした時空の中でゆったりと漂い続けていた。
続く『告白の夜』でもAyasaは、幼き頃に母親の腕の中へ抱かれていたような心を優しく包む音を奏で、先程と同じように時の流れを忘れさせる空間の中へと観客たちを招き入れ、しばし、ゆったりと微睡みを覚える時を届けてくれた。大きく腕をしならせて音色を紡ぎだすAyasaの姿を、ずっと見ていたい。その姿にも、しばし惚れ続けていたい。
ここで、和を軸に据えたミニアルバム『A fraction-III』を、2月21日に発売することを報告。
次に披露したのが、そのミニアルバムにも収録される新曲の『鏡花水月』。歴史という川の流れを自由に行き来するように、Ayasaのヴァイオリンの音色が和心を持って響き渡る。決して優しい音色ではない。むしろ、時空という川を凛々しく泳ぎ渡るような強さを携えている。緩急巧みに色を変えながら。でも、全体的に攻めた表情を示してゆくのが嬉しい。ときに、たおやかに。でも、強く音を突きつける演奏に合わせ、Ayasaの奏でるヴァイオリンの色は、力強く、勇壮に時の川を泳ぎ続けていた。身体を小刻みに揺らして演奏する姿からも、目が離せなかった。
流れだすクラップ音と熱を抱いた演奏にあわせ、観客たちが一斉に立ち上がり、熱くクラップを始めた。同じく新曲の『音戯の舞』は、タイトル通り、音で一緒に戯れ、楽しく舞い躍れる楽曲。初見でも、すぐに力強く手を叩きながら、軽やかに躍る音色にあわせて一緒に身体を揺らせるのが嬉しい。途中に見せる、優雅で穏やかに音の景色を転調してゆく場面でもクラップ音が止まないこともあり、見ている側もずっと気持ちを高ぶらせ、軽やかに音の舞い躍る宴に楽しく参加していた。
和心抱いた演奏へ、激しく荒ぶる宴の色を塗り重ねるように、Ayasaは『千本の矢』を演奏。心地よくもスリリングさを抱いた演奏に触れ、場内中でも身体を小刻みに揺らし、気持ちを戦闘モードへシフトしてゆく人たちも次々登場。バンド側とAyasaの荒ぶる感情がシンクロするたびに、演奏が牙を剥き、雄々しき表情を持って襲いかかる。いや、けっして過激なわけではない。むしろ、華激といったほうが正解だろう。気持ちを優雅に華々しく染めながらも、ずっと心を沸き立てる。だから、身体や気持ちが、止むことなくうずうずと騒ぎ続けていた。
止まることなく『Dualism』へ。とても華やかなのに、力強い旋律の数々に気持ちが勇ましくなる。感情を高ぶらせながらもずっと気品を失わない。そんな高貴なプライドを持った演奏を通し、Ayasaは場内中の人たちの熱くなりたい気持ちを鼓舞してゆく。激しくドラマチック。だからこそ、高ぶる気持ちを抑えられなくなる。後半、自然にクラップが起きていたのも、沸き立つ気持ちを彼女へぶつけずにいられない衝動へ、大勢の人たちが身を駆られていたからだ。
そこへ突きつけたのが、ツーバスドラムの音も激しく轟き渡る『亡霊たちの舞踏会』。激しく唸る演奏の上で、優雅さを忘れることなく、気持ちを躍らせる音色の数々をAyasaは奏でていた。いや、躍らせるどころではなく、思わずヘドバンしたくなるくらいの激しい衝撃と刺激を彼女は与える。舞踏会なんて生やさしいものではない。優雅なのに突き刺すような音の数々に刺激を受け、気持ちが、身体が、激しく揺さぶられる。大きく躍動する演奏にあわせ、身体を揺らし続ける観客たちの姿も印象深く見えていた。
華やかでダンサブルなエレクトロ音が響き渡る。Ayasaは『ナデシコロデオ』を通し、観客たちの理性を一瞬で時の流れの向こう側へと消し去った。これまで以上に激しく、速く旋律を奏でるAyasaへ向け、場内中の人たちが手にしたタオルやペンライト、腕をくるくると振り回し、Ayasaの演奏というロデオに飛び乗った。その勢いに振り落とされまいと身体を大きく揺らし、激しくもおおらかな演奏へ一緒にライドし続けていた。躍る、躍る、旋律が踵を高くあげ、スカートを大きく翻しながら踊り続ける。踊り子となったAyasaの演奏に、誰もが熱狂の視線を向けていた。演奏が終わり、場内中から「オーッ」と熱い声が飛び交っていた気持ちも、すごくわかる!!
Ayasaは最後に、アルバム『A fraction』の1曲目に収録された、このシリーズの始まりを告げた『Invitation from a faily』を届けてくれた。晴れた気持ちへ導く楽曲だ。とても優雅な、心を浄化し、一人一人の気持ちを天使に変えてゆく演奏だ。華やかな旋律の上で舞い躍るような楽しさを、つい歌を口ずさみたくなる優しさを、Ayasaと演奏陣が届けてくれた。演奏中、ずっと鳴り響いていた手拍子は、音楽という花園で、Ayasaと一緒に笑顔で戯れていたことで生まれたもの。純粋で、無垢で、華やかな演奏に触れながら、いつの間にかにやけた笑顔になっていた。
ふたたびこの空間へ華やかな熱狂を描きだそうと、Ayasaはアンコールの最初に『Re:birth』を演奏。感情を嬉しく騒がせる楽曲だ。躍動した演奏の上で、Ayasaのヴァイオリンの音色が、ときに優雅に、ときに感情を剥き出しに踊り続ける。熱狂を導くコンダクターとなったAyasaの演奏へ誘われるまま、観客たちも身体を揺さぶり、その音色に興奮と高揚の熱をぶつけ返していた。
この日のライブで、Ayasaは自動車の仮免許を一発で取ったことを報告。この記事が掲載される頃には、きっと免許を取得しているに違いない。
最後にAyasaは『Bloomy merry-go-round』を通し、会場中に彩り鮮やかな音の香りを振りまくように奏でだした。終わりを知らずに回り続けるメリーゴーランドではないが、この曲の間中、ずっと華やぐ気持ちに心が染め上がり、この熱狂の中、ずっと身体を揺らし続けていたかった。ときにメンバーらと顔を見合せ、舞台の上を左へ右へと歩きつつ、Ayasaは終わりを忘れた楽しいひとときを、ここに作りあげていた。まるで、一緒に天界へと登ってゆくような、そんな優雅な心地好さへ、ずっと身が包まれていた気分だった。
TEXT:長澤智典
Photo:リリィ(ririco:ramu)・飴屋
《SET LIST》
- 1.華讃歌
- 2.華吹雪!破天蓮娘
- 3.君と僕と蒼い月
- 4.limelight
- 5.ネオンレイン
- 6.アイドル
- 7.REVIVER
- 8.籠鳥恋雲
- 9.我愛你
- 10.告白の夜
- 11.鏡花水月
- 12.音戯の舞
- 13.千本の矢
- 14.Dualism
- 15.亡霊たちの舞踏会
- 16.ナデシコロデオ
- 17.Invitation from a faily
- -ENCORE-
- EN1.Re:birth
- EN2.Bloomy merry-go-round
Ayasa
【ライブ情報】Ayasa VIOLIN LIVE 2024 〜A fraction extra〜
Ayasa VIOLIN LIVE 2024
〜A fraction extra〜
2024年06月16日(日)
焼津市焼津文化会館 小ホール
〒425-8585
静岡県焼津市三ヶ名1550
開場:16:30/開演:17:00
■4月13日(土)9時〜チケット一般発売開始
窓口:焼津文化会館・電話 054-627-3111
■公演詳細
https://ayasa-official.com/contents/727940