2022.12.27@EX THEATER ROPPONGI 「SAYAKA YAMAMOTO LIVE 2022 “now”」での小名川氏のブース

―それにしても、(機材写真を見ながら)このブースは小名川さんの城ですね。

K:そういう城を築かざるを得ないので、ギターに関しても車に乗る機材量とかを考えたり、全部を移動させる大変さを考えて、だんだんアンプも使わない、ラインでどれだけ作れるかも極めたくなってきたりしてますね。

―それで極める方向に行って、素人目にはすごいお城だなって見えると思います。小名川さん的には凝縮した感じだと思うんですけど、これからも変わっていくとは思いますが、ざっくり解説していただいていいですか?

まずは鍵盤が2つ。

K:鍵盤に関してはYAMAHAのCP88が出たおかげで今はそれに落ち着いています。シンセとかオルガンに関しては、本当は音を考えるとハモンドとか並べたいんですけど、でもそうすると城が鍵盤3枚(台)とか必要になる。そうするとギターとマニピやる現場では僕の場所機材が膨れ上がってしまうので、今そっちにはなるべく行かないように、オルガンとかシンセ周りはセカンド鍵盤のみで網羅できるようにパソコンのソフトシンセを使ったりしています。

あと、セカンド鍵盤の中の音(編注:キーボードに内蔵されている音)を使えるようにと導入したのがYAMAHAのYC61です。YC61が2年前くらいかな?あれが出たおかげでYAMAHA MOTIFとかには突入せず、結構シンセの音も入ってたり、オルガン頑張って作ったという感じだったので、今導入して試している感じなんです。そのおかげでパソコンから出すのも今ちょっと減ってきたかなっていう感じではあります。

―今までの機材紹介記事でまだ追記すべきことってあったりしますか?

K:載せていただいているのがすべてだと思うので大丈夫だと思います。一個一個使い方とかどう使ってるかの説明までするとだいぶ大変になっちゃいますし。

―(写真を指して)これはなんでしたっけ?(RME Fireface UCX

K:パソコンの中のソフトシンセをアウトプットするインターフェイスです。

―この下のは?(Behringer Eurorack Pro RX1602

K:これは、僕はただ自分のモニターのミキサーにしてて。要はマニピのアウトと、自分の鍵盤の音と、昔は全部パラでここに立ち上げてやってたんです。でも最近はそれもちょっと、回線があまりにも複雑になりすぎるんで、もうPAからの返しだけにシンプルに変えました。

―では、このRadialは?(Radial SW8 USB

K:Radialが、SW8 USBってやつで、これがマニピのパソコンからのシーケンス出しのやつをここに立ち上げて、出すときに使ってるんです。マニピするときのメインパソコンとサブパソコンの自動切替をやってくれるやつなんです。

―今回、ギター機材としてQuad Cortexが新しく入ってましたよね?これを導入した感想はいかがでした?

K:僕がいままで、アンプシミュレーターをあちこち旅してる中で、これが一番良かったです。Fractal使って、Kemperは自分では買わなかったですけど勿論試してて、Bias Ampも使って、そう思いました。

FractalとKemperでそれぞれで物足りない部分を感じていて、Bias Ampがその物足りない部分もクリアしてくれてました。そのクリアしている部分もあるのに、コンパクトに持ち運べるQuad Cortexが登場してくれたことで、これに落ち着いた、という感じです。

―こういうのはどんどん進歩してさらにいいものも出てくるんでしょうね。

K:そうですね。出てくるような気がします。結局ラインでやると、生でアンプで出してる方と一緒にやるときに、(音像が)耳元に張り付きすぎちゃうんですよね。アンプの方がやっぱりマイクで録ってる分奥行きが出る。ここの差をどうやって埋めるかがずっとテーマだったんですよ。それが、結構調整できて、今のところPAさんと話してるといい塩梅になっている。ってところで落ち着いた感じですね。

―他にこの頃でお気に入りの機材はありますか?

K:あんまり僕エフェクターもヴィンテージとか使ってないので、ヴィンテージが絶対いいとは思ってないんですけど、こないだのさくちゃんのライブのとき、BOSS SD-1の83年製をたまたま見つけて導入してみたんですよ。すっごい良かったです。「これ、オーバードライブ?」っていうような、スコーンと抜けるロングサスティーンが出てくるので。これがSD-1の本来の姿なんだなって思いましたね。抜けが全然違いました。

Quad Cortexを中心に、ボード左奥にBOSS SD-1が組み込まれた小名川氏のペダルボード(写真提供:小名川高弘)

―大原櫻子さんの現場と山本彩さんの現場でも一見同じように見えて結構使っている機材は違いますよね?

K:そうですね。さくちゃんのとこはマニピやってるので、これ(Radial SW8)が大活躍してるんです。

―なんでこんなにケーブルが必要なんですか?

K:コンピューターから8トラック出してるからです。

―8トラックって言うと、その内訳を聞いてもいいですか?

K:僕がやってるのはリズム周り(パーカッションとか)と、音程楽器ものと、あとコーラス(がそれぞれステレオで計6トラック)。と、クリックだから7トラック使ってるんですかね。

―私も無知で申し訳ないんですが、マニピは曲が始まるときにボタンを押すだけじゃなくて、演奏中に細かくいじることもあるんですか?

K:それがですね、僕はPro Tools使いで、本来プロのマニピュレーターさんはデジパフォ(Digital Performer)を使う方が多いんです。Digital Performerではできることがいっぱいあるんですけど、Pro Toolsはマニピュレーター用に作られてるソフトじゃないので出来ないことがあるんですよね。で、次の曲のデータに移動するのにデジパフォはボタン1個で出来るんですけど、Pro Toolsは3ステップ必要なんです。そういうところに結構細かく違いがあります。でも、僕はオーディオの波形がどうしてもPro Toolsの方がいじりやすいので、こっちを選んでいます。要は、リハーサル中にバランス取ったり、ポンとアレンジを変えるときにオーディオをカッと切ってエディットしてっていうのが、普段そういうことをアレンジメントでやっているので、そっちの方が圧倒的に早いんですよね。なので、そのまま僕はPro Toolsを使っています。

だから、実はPro Toolsでやるときは結構コツが必要で、Xタイムの尺のとき、例えば、ドラムだけ始まって、喋ってて、合図が来たらスタート、みたいなときの間のクリック管理をどうするかっていうときがPro Toolsは一番大変で。オーディオをタイムリーにズラしてるんですよ、僕。アーティストさんからGOの合図が来たときに気持ち良いタイミングで入れるように、ちょっとずつちょっとずつポンポンってキーボードでずらしたりしてるんです。その辺がPro Toolsだとちょっと大変なんですけど、自分なりに方法を見つけてやっている感じですね。

―細かい作業が必要なんですね。

K:そうです。1小節単位でタイミングが変わってくるので、ここで合わせてスタート、とか。オーディオを動かすことでやってる感じです。

―今メインで使ってらっしゃるRevelator Guitarsとの出会いっていうのはどういうタイミングだったんですか?プロのギタリストで小名川さんしか使ってるのを見たことないのですが。

K:マニアックですよね。元々は同じJazzmasterで、普通にFender Custom Shopの水色を使ってたんです。彩ちゃんの現場も初期の頃はそれを使ってて。で、神戸のTONE BLUEさんのところにこれが売ってたんですよ。ギタリストの草刈さんと仲が良いのもあって、紹介してもらって試してみたいですって言ったらライブ現場に持ってきてくださって。それで弾いたら、本物のヴィンテージかっていうくらい、えらい鳴りがすごかったんです。ヴィンテージライクに作るのが得意なメーカーらしくって。わざわざブリッジとかも超錆びさせてたりしてて。エイジングがとても上手なのか、ピックアップの乗りもよくて、気に入って買ったっていう感じですね。

―どこ製でしたっけ?

K:アメリカのメーカーだったと思います。

―今も輸入してるんですか?

K:いや、そこも常に輸入してるわけじゃなくて、たまたま仕入れてきたみたいなことを仰ってました。

―いいですよね。小名川さんがこのギターを弾いてると、いつもいい音だなって思いますよ。

K:ありがとうございます。Free The Toneの林さんのところに遊びに行って、色々またエフェクター談義をしてたときに、林さんが61年製のJazzmasterを持ってらして弾かせてもらったらすごい音がして。その後、自分のと弾き比べたのですが、林さんがびっくりするぐらい「これすごいっすね!」みたいな感じでしたよ。キャラはちょっと違うんですけど。いい線いってるんだ、って思いましたね。

―いやぁ、いつもいい音ですからね。あと、山本彩さんと大原櫻子さんの現場での差とかってお聞きしてもいいですかね?

K:今はびっくりするぐらい同じかも知れません。今構築している形がとても気に入っていて、汎用性も兼ね備えているので、ギター周りに関してはほぼ一緒になっています。

―以前取材させて頂いたときはそれぞれでだいぶ違いましたけどね。でも、シンプルな中でも突き詰めていったところにあるんですね今は。

K:そうですね。彩ちゃんのところの方がギターの割合が多くて、さくちゃんの方がピアノの割合が多くなるので、それでも違うんですけど、このセットのままどちらのステージでも、曲のキャラクターの違いまでも作れちゃってるんです。

彩ちゃんの方がだいたい半々で、さくちゃんの方が8:2で鍵盤なんです。それは前から一緒で、楽曲のタイプによってそうなってる感じなんですけど。なので、彩ちゃんの現場の方がエフェクターとかは増える傾向だったのが、このQuad Cortexのおかげで増やさずにいろんなタイプをアサインして作れちゃったので。もう戻れないかも知れません(笑)。わかんないですけど(笑)

今後の活動への展望~小名川高弘が目指すものとは


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