DIR EN GREY

おどろおどろしい音色が流れだす。その音が強烈な歪みを上げ出すのに導かれるように、京が激しくグロウルしだした。DIR EN GREYのライヴは、漆黒の闇のような様相が覆うこの場を破壊的な衝動を持って切り裂くように『人間を被る』から始まった。身体を静める重苦しい音が、むしろ気持ちを掻き立てる。呪詛を叫ぶような京の声の存在感に魂が奮い立つ。
Shinyaのドラムの音へ誘われるように、DIR EN GREYは『The Devil In Me』を演奏。曲を重ねるごとに、彼らは暗鬱な世界へと観客たちの精神と身体を引き込み、奈落で縛りつける。重厚な音のハンマーで殴られたような衝撃と泣き狂うような京の歌声に喜びを覚えるのも、DIR EN GREYのライヴらしい感覚だ。

静謐の中の狂気とでも言えば似合うだろうか。『空谷の跫音』では、SUGIZOがエレクトリックヴァイオリンを弾き、feat.として参加。荘厳かつ哀切な様を描く音絵巻の中へ、心に狂気を掻き立てる音を描き加えていく。絶望を語るように歌う京の声が心を浸食していく。『Ranunculus』でもDIR EN GREYは、観客たちの心に爪を立てて掻きむしるように、赤黒い肌の傷跡に、嗚咽と恍惚という痛みを塗りたくっていった。

アコギの音色が鳴り響く。そこへ京の狂おしい呪詛のような歌声と重く歪みを上げた演奏が重なるや、『VINUSHKA』へ。今宵の彼らは、感情の内側に渦巻く狂気をなぶるように歌や音を繰り出していた。その演奏が次第に黒い絶望を増していく。やがて、演奏が一気に重く炸裂。その場に狂気が蔓延していった。

巧みに緩急を付けた楽曲は、『朔-saku-』が飛びだすのを合図に、会場中の人たちを一気に熱情した黒い渦の中へと巻き込み、感情を猛り狂わせた。会場中に巻き起こるヘドバンの嵐。京はグロウルし、ときに情熱的に歌い上げながら、黒い嵐のような演奏の上で猛り狂っていた。さらにDIR EN GREYは『THE FINAL』を突きつけ、歌で心を乱し、演奏を通して身体を狂わせ、自分たちの儀式の中へ大勢の人たちをしっかりと巻き込んでいった。
最後もDIR EN GREYは『詩踏み』を叩きつけ、観客たちの感情を黒く痛く塗りつぶし、熱狂にひれ伏させた。京の煽りを受け、場内中の人たちが歌う様も圧巻だった。
《SETLIST》
- 1.人間を被る
- 2.The Devil In Me
- 3.空谷の跫音 (feat. SUGIZO)
- 4.Ranunculus
- 5.VINUSHKA
- 6.朔-saku-
- 7.THE FINAL
- 8.詩踏み
BRAHMAN

トリ前を飾ったのがBRAHMAN。ライヴは、冒頭からSUGIZOを迎えた『初期衝動』のfeat.スタイルから始まった。ノイズのような音が響き渡る場内。やがてザクザクと轟く音が炸裂。曲名通りの初期衝動に満ちた、沸き立つ感情を叩きつけるメンバーたちの姿がそこにはあった。

いきり立つ音と歌声を殴りつける『賽の河原』でもBRAHMANは、重く歪む音の鉈で観客たちの理性を断ち切り、感情を壊していく。立て続けにBRAHMANは『BASIS』や『SEE OFF』を突きつけ、観客たちの身体を激しく揺さぶり続ける。どんな場だろうと彼らは、いつだって自分たちの色にその場を染めていく。掻き鳴らすギターの音色と激しく躍動するリズムを合図に、BRAHMANは『BEYOND THE MOUNTAIN』を演奏。さらに『順風満帆』を通して彼らは、この会場を身体が踊るサイコな宴の場に染め上げていった。

BRAHMANは、ここで、Jを迎え、MOTERHEADの『Ace Of Spades』とBUCK∞TICKの『ICONOCLASM』をカバー。攻めたパンクなイズムのあふれるJとBRAHMANのセッションにとても似合う選曲だ。観客たちはもちろん、何よりメンバー自身が楽しんで音を重ね、交わしあっていた。
美しいギターの旋律に乗せて、BRAHMANは人生で一番すごい夜に今宵を染め上げようと『今夜』を演奏。言葉のひと言ひと言を大切に噛みしめ、深く思いを込めて歌うTOSHI-LOWの心模様が、歌声と演奏を通して伝わってきた。
『charon』や『ANSWER FOR…』でも、一つ一つの言葉や音色に思いを込めながら、演奏が炸裂するのを合図にエモーショナルに歌い奏でるメンバーたち。曲が進むごとに感情が露わになっていくからこそ、その思いに気持ちが強く惹かれていく。観客たちの気持ちをおおらかな歌声と演奏を通して抱きしめるように届けた『鼎の間』。

最後にBRAHMANは、ふたたびSUGIZOを今度はエレクトリックヴァイオリンの奏者として迎え入れ、『満月の夕』を朗々と歌いあげていった。慈愛に満ちたSUGIZOのヴァイオリンの音色とBRAHMANの楽器陣の演奏が深く深く握手を交わしながら、心を歌うTOSHI-LOWの声に愛を重ねてゆく。その歌声と演奏に触れ、気持ちが温かい雫で潤っていた。
《SETLIST》
- 1.初期衝動 (feat.SUGIZO)
- 2.賽の河原
- 3.BASIS
- 4.SEE OFF
- 5.DEEP
- 6.BEYOND THE MOUNTAIN
- 7.順風満帆
- 8.Ace Of Spades (feat.J/MOTERHEAD COVER)
- 9.ICONOCLASM (feat. J/BUCK∞TICK COVER)
- 10.今夜
- 11.charon
- 12.ANSWER FOR…
- 13.鼎の間
- 14.満月の夕 (feat.SUGIZO)
LUNA SEA

真矢に代わってドラムにSIAM SHADEの淳士を迎えた今宵のLUNA SEAのライヴ。フィードバックした音が鳴り響く。トリを飾ったLUNA SEAのライヴは、この空間に演奏と歌声の輝きを降りそそぐように『TONIGHT』から幕を開けた。最初から、感情のアクセルを全開に、雄々しき姿を示して5人はせまる。その勢いをさらにぶつけるように『Déjàvu』を演奏。とても切れ味鋭い演奏と、魂を揺さぶる歌声だ。その思いを力いっぱい受け止めたくて、場内中で無数の手が揺れていた。RYUICHIとINORANが背中合わせで歌い演奏をするなど、見どころの多い生々しいドラマが、目の前で繰り広げられていた。最後に、投げKISSを送るRYUICHIの姿もインパクト強く目に焼きついた。

力強く、高ぶる熱を抱いて『DESIRE』が駆けだした。気持ちを前のめりに歌い演奏をするメンバーたち。その気合と気迫が楽曲を通して、強いオーラを放つように、一つ一つの音色や歌声から伝わってくる。だから、気持ちを奮い立てて彼らと向き合っていたかった。止まることなく歌始まりの『TRUE BLUE』へ。耳や身体に馴染んだ楽曲が次々飛び出すたびに身体が自然に反応し、頭を揺さぶらずにいられない。サビが始まるたびにRYUICHIと一緒に歌を口ずさみながら、熱情した5人の思いを全身で抱きしめていた。もっともっと心のすべてを、狂いそうで壊れそうなほどに魂を奮わせる、その歌声と演奏で奪い取ってくれ。

天空へ届くようにRYUICHIのおおらかな歌声が響き渡る。LUNA SEAは『宇宙の詩 〜Higher and Higher〜』を通して、この空間に広大な景色を描きだす。RYUICHIの歌いあげる声をSUGIZOとINORAN、そしてJと淳士の楽器陣が音を掻き鳴らして支えながら、この場に宇宙のような壮大な世界を描きあげていた。曲が進むほどに、雄大なその世界へ身体と魂が吸い込まれていくようだ。

淳士とJによるリズム隊の演奏の上に、INORANが音を積み重ね、SUGIZOが彩りを与える。楽器陣のセッションのようなスリリングな演奏から『inside you』へ。身を切り刻むソリッドな音の上で、同じようにRYUICHIも、言葉のひと言ひと言に強い意志を込めて歌声を放っていた。そして、「今夜集まってくれた一人一人に心からI for You」と口説くように語った言葉を合図に、『I for You』へ。この曲でもRYUICHIは一つ一つの言葉へ深い愛を込め、会場にいる全員に真心溢れる愛しい思いを届けていった。彼らが届けた歌声のラブレター、あなたには、どんな思いとして届き、気持ちを揺さぶっていただろうか…。

世界で一番熱い場所になったこの会場。そこへ、さらに凄まじい熱量を持った思いを詰め込んだ『BELIEVE』が飛びだした。彼らが全身全霊で真っ直ぐに伝える思いに触れるたび、心が火傷しそうになる。でも、その熱さにもっともっと触れたくて、同じように熱い思いを5人にぶつけていた。なぜなら、想いというのは切なすぎるほどに燃え上がるのだから。

『ROSIER』の登場に、会場中の熱気と熱狂がさらにヒートアップした。この日は、様々なバンド目当てで大勢の観客たちがライヴに足を運んでいる。でも、誰もがこの曲を自分のテーマソングのように知っていた。まるでクライマックスのような、凄まじい熱狂の光景がそこには広がっていた。荒ぶる感情を溜め込み、どんどん高めていくメンバーたち。フロアからも熱い掛け合いの声が飛び交う。サビでは、大勢の人たちが『ROSIER』を口ずさんでいた。Jのラップがトリガーとなり、さらに場内の熱気が高まる。RYUICHIに寄り添い演奏をするSUGIZOの姿も印象的だ。この会場には、間違いなく愛しき熱狂の花が咲き誇っていた。
そこへ突きつけたのが『WISH』だ。会場中から轟いた「I WISH」と叫ぶ声。会場中の誰もが、心の中から眩い希望の輝きを放っていた。LUNA SEAの歌が魂に希望を灯すトリガーとなり、この場にいる一人一人に消えない希望の輝きを注ぎ込み、その光をみんなが最高の笑顔で解き放っていた。この景色を、この興奮と感動をずっと抱きしめていたい。会場中の人たちが想いと願いを一つに歌いあげる。その合唱が、心に消えない笑顔を刻んでくれた。


止まない熱狂の声を受けた5人は、ふたたびステージへ。アンコールには、BRAHMAN、DIR EN GREY、lynch.、GODLAND、T.M.Revolution、SIAMSOPHIA、Novelbright、シド、さらに真矢も姿を現した。この豪華なメンバーらと一緒に、最後の最後に、この空間にふたたび熱狂の嵐を巻き起こすように『STORM』を届けてくれた。まさに、最後の最後に最強のお祭り騒ぎの場をLUNA SEAは作りだした。淳士の側に、笑顔で寄り添う真矢。いろんなバンドの楽器陣が混じりあい、歌い手が歌を繋ぎあう。まさに、一夜の奇跡のような光景を目にしながら、熱狂する観客たちも巻き込んで、「LUNATIC FEST. 2025 Day1」の幕を閉じていった。
《SETLIST》
- 1.TONIGHT
- 2.Déjàvu
- 3.DESIRE
- 4.TRUE BLUE
- 5.宇宙の詩 〜Higher and Higher〜
- 6.inside you
- 7.I for You
- 8.BELIEVE
- 9.ROSIER
- 10.WISH
- -ENCORE-
- EN.STORM(セッション)
TEXT:長澤智典
2025.11.9 「LUNATIC FEST. 2025」Day2 レポートはこちら
LUNA SEA
12月23日 有明アリーナにて「LUNATIC X'MAS 2025」開催決定!
LUNATIC X'MAS 2025
-OUR JOURNEY CONTINUES-
2025年12月23日(火)
有明アリーナ
開場 17:30|開演 18:30
詳細はこちら https://www.lunasea.jp/live/20251223ariake

2025.11.9@幕張メッセ LUNATIC FEST. 2025 Day2 ライヴレポート
STAGE Vol.28 《表紙・巻頭》ジェイク・シマブクロ/トゲナシトゲアリ
STAGE Vol.26 《表紙・巻頭》春畑道哉/A Tribute to Jeff Beck by Char with HOTEI & Tak Matsumoto
2025.2.23@東京ドーム 「LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR ERA TO ERA -THE FINAL EPISODE- LUNATIC TOKYO 2025 -黒服限定GIG-」ライヴレポート
2025.2.22@東京ドーム 「The Millennium Eve 2025 LUNA SEA|GLAY」ライヴレポート
2024.8.25@東京ガーデンシアター 「LUNA SEA 35th ANNIVERSARY TOUR 2024 ERA TO ERA -EPISODE 2- SEARCH FOR MY EDEN」ライヴレポート
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