バンド終幕時のライヴ映像や「覚悟の夜 その光を掴む」というキーワードがオープニングで意味深に流れた、LUNA SEAにとって約14年ぶりの東京ドームワンマン。

アリーナのセンターに位置するサブステージに、RYUICHI(Vo)、SUGIZO(Gt&Vn)、INORAN(Gt)、J(Ba)、真矢(Dr)がせり上がりで現れ、詰めかけたたくさんのSLAVE(LUNA SEAファンの愛称)を見渡しながらメインステージへと向かう所作、円陣で気合を入れる5人の顔付きには、同会場で前日に行なわれたGLAYとの対バンの際とはまったく違う、只ならぬ緊張感が漂っている。結成35周年ツアーのグランドファイナルでもあり、まさに滾るような“覚悟”が滲む。
前日の「The Millennium Eve 2025 LUNA SEA|GLAY」レポートはこちら


大きな節目になりそうな本公演は、楽しみと不安の中、アルバム『MOTHER』のジャケットでおなじみのマリア像がドーム天井に映り、カラフルなレーザーが降り注ぐ『LOVELESS』からスタート。まずは、フロントに立つRYUICHIの調子が上々で嬉しい。多彩な音色を担うSUGIZOのトリプルネックギター、ひんやりと響くINORANの12弦エレアコ、地を這うようなJのベース、全体を揺るぎなく支える真矢のドラムも絶対的な個性を持ち、各パートはクリアに分離されつつ美しく噛み合うグルーヴがなんともLUNA SEAだ。
特効の火花がド派手に炸裂した『G.』で、いっそう迫力を増す無敵感。刺激を求めて加速するエッジーかつ骨太なバンドサウンド、アウトロに訪れたJの熱量ほとばしるコーラスを受け、ドレスコードである黒服で埋め尽くされた客席のボルテージも一気に跳ね上がっていく。

「俺たちは覚悟を持って、この場所を選びました。今夜はたとえこの命が尽きようとも、お前たち一人ひとり全員の顔を覚えて帰るぞー!」
前日のライヴレポートにおいても触れたけれど、そう呼びかけるRYUICHIの見事な復調ぶりが本当に感動的で、つい最近までものすごく苦しんで歌っていたのが信じられない。肺腺がん、声帯ポリープの切除、静脈瘤の除去……ここ数年で度重なる手術を乗り越えたにもかかわらず、その後は発声障害の症状に悩まされた。だが、それでも希望を捨てることなく、万全とは言えないコンディションのもと、一行ずつでも取り戻すという想いで、35周年のツアーを回りながら必死に突破口を模索し続けてきた彼が、東京ドームの晴れ舞台に立ち、ファイナルでいちばん良い声を出している。

そんな奇跡を目の当たりにしたら、涙腺も緩むというもの。『Déjàvu』におけるSLAVEのシンガロングは、RYUICHIの回復を称えるような明るさで満ちていた。巨大な球場をLUNATICなライヴハウスに変え、『DESIRE』『JESUS』と快調に飛ばす5人の姿が眩しい。ボーカルが元気だと、バンドはノッてくる。SUGIZO、INORAN、J、真矢も、きっと感極まるほどの喜びを胸にプレイしていたと思う。

ツアータイトルの『ERA TO ERA』にふさわしく、LEDスクリーンで過去のミュージックビデオなどを使った粋な映像演出も。35年の集大成がタイムリープ感をもって味わえるライヴは、中盤にかけてディープな様相を呈し、INORANの切ないアルペジオリフに心奪われる『gravity』からのミディアムゾーンで、LUNA SEAの深遠な音世界、耽美的なリリシズムがいよいよ本領を発揮。

真っ赤な照明とともに奏でられた『RA-SE-N』は、文字どおりの螺旋を描くようなプログレッシブなアンサンブル、静と動のコントラストを活かしたドラマティックな展開が素晴らしい。狂気の膨脹に合わせてあふれる光がバンドの輝きを増幅させたり、天井を見上げれば星が流れていたり、視覚で魅せるアイデアにも脱帽。さらに、SUGIZOのバイオリンソロが始まると、RYUICHIは花道を歩いてサブステージに進み、9分超えの長尺曲『VIRGIN MARY』へ。

聖堂のステンドグラスや天使の羽根を背景に映し、今度はまるで儀式にも似た厳かな没入空間を作り出す。東京ドームを広く感じさせない、この圧倒的なスケールこそがLUNA SEAの真骨頂。アリーナ中央で目を惹くRYUICHIは、神に祈るように跪いて歌うシーンを含む、芯の強さが窺える絶唱でSLAVEの度肝を抜いた。
インターミッションを経て、再開は真矢のソロパフォーマンスから
LUNA SEA
10th Anniversary LUNATIC FEST. 2025開催決定!
10th Anniversary LUNATIC FEST. 2025
2025年11月8日(土)、9日(日)
会場:幕張メッセ