体感的な興奮度が高いからだろう、この日のライブは、曲の過ぎ去るのがとても早い。けっして曲数が少ないわけではない。ただ、体感的な楽しさの度合いが高いからだろう、1曲1曲が強烈なインパクトを放ちながら過ぎ去っていく。だから、ここまで一瞬に思えていた。

次に奏でたのが、初披露となる『渇く、憂う』。理名の「スベテコワシタイ」の呟きも印象的だ。楽曲自体はとてもパワフルで、破壊力と臨場感とドラマ性を持っている。演奏陣の叩き出す音がとてもヒリヒリしている。だからこそ、気持ちが奮い立つ緊張感をずっと覚え、感情も昂り続けていた。『渇く、憂う』、トゲナシトゲアリのライブに凛々しい表情と興奮を与えてゆく楽曲になりそうだ。

スリリングな熱をさらにドラマチックに膨らませるように、トゲナシトゲアリは衝動へ突き動かされるままに『理想的パラドクスとは』を歌い奏でていた。4人は巧みに緩急をつけた演奏を通して、理名の感情的な歌声に熱を描き加えてゆく。だから、凛々しい表情で迫るメンバーたちの姿に惹かれつつも、ずっと身体を揺らしていた。

『偽りの理』、そして『渇く、憂う』~『傷つき傷つけ痛くて辛い』までの楽曲では朱李は5弦ベースXotic XJ-1T 5st “Lindy Fralin PU” ASH Light Aged Laquer White Blonde/RM-RM MHを使用した。

高音域の歌声を生かしながら、理名が「切り裂いた 空は綺麗で」と、『気鬱、白濁す』をおおらかに歌いだした。緩急の振幅激しい楽曲だからこそ、歌声や演奏から感情の揺れ動く様が見えてくる。ヒリヒリとした攻撃性も持った演奏だ。でもその中から、生々しい心模様が伝わってくる。だから、理名の歌う思いの行方を追いかけていたくなる。

ライブも後半へ。届けたのが、トゲナシトゲアリの始まりを告げた『名もなき何もかも』。理名がアカペラで早口で歌いだす。そこへ重なる演奏。楽曲が熱を持って激しく弾けるのに合わせ、場内中の人たちの気持ちも熱く騒ぎだす。とてもスリリングな、緊張感を持った演奏だ。その場へトゲトゲしい空気を作り上げ、触れた人たちの気持ちにヒリヒリとした刺激を与える。だから大勢の人たちが高く拳を振り上げ、ステージの上からあふれだす衝撃をその手でしっかりと掴もうとしていた。

理名の歌声で繋ぐように、演奏は『運命に賭けたい論理』へ。この曲でも理名は早口で言葉を繰り出していた。でも楽曲自体が、晴れた解放感を持っているからだろう、手を振りながら歌う理名と想いを重ねるように、フロア中の人たちが気持ちを嬉しそうに弾ませ、左右に大きく手を振りながら思いを分かち合っていた。「羽ばたくんだ 暴れるんだ 信じてるんだ」の歌詞に合わせて大きく手を振るたび、トゲナシトゲアリの演奏に合わせて高く羽ばたいてゆく感覚も覚えていた。

ピアノの音色を合図に、駆けだすように始まったのが『傷つき傷つけ痛くて辛い』。早口で次々と言葉を吐き出す理名。曲が進むごとに熱とスリリングさが膨らみだす。感情を貫く歌声や演奏へ刺激を受け、身体が踊りだす。だから、ずっと手を掲げ、声を張り上げずにいられなかった。

ライブもラストスパートへ、理名が「サヨナラ サヨナラ サヨナラなんだよ」と気持ちを力強く吐き出すように『サヨナラサヨナラサヨナラ』を歌いだした。その歌声を合図に、楽曲が一気に暴発するような勢いで駆けだした。ステージの上にいる5人が高ぶる感情を一つにし、熱情した音の塊としてぶつけてきた。間奏での夕莉の攻撃的なギター演奏も気持ちを奮い立てる。心の牙を剥きだして迫るその姿に興奮せずにはいられない。

その勢いへさらに興奮と高揚のドラマを描き加えるように、トゲナシトゲアリは『爆ぜて咲く』を突きつけた。高ぶる気持ちが限界を知ることなく上がり続ける。さぁ、もっともっと、すべての現実を消し去り、熱狂だけでこの身体中を染め上げてくれ。さりげなく、でも熱情した気持ちを胸に「爆ぜて」「咲いた」とやりとりを交わす場面も、この曲をドラマチックに彩る嬉しい要素になっていた。一瞬のブレイク後、「怒りも、喜びも、悲しさも、全部ぶち込めー!!」と叫ぶ理名。その言葉からクライマックスへと続く場面での興奮。「爆ぜて咲いた」と叫ばずにはいられなかった。

トゲナシトゲアリが最後にぶつけたのが、アニメ『ガールズバンドクライ』のオープニング主題歌『雑踏、僕らの街』だ。この日は、アニメのテーマ曲に縛られることなく演奏していたからこそ、最後に馴染み続けた楽曲が登場したことで、場内の爆裂度がハンパなかった。気持ちを剥き出しに、挑みかかる勢いで歌い演奏をするメンバーたち。満員の観客たちも、興奮した気持ちをダイレクトにぶつけていた。お互いに気持ちを高めあい、熱狂というクライマックスのドラマを描きながら本編は幕を閉じていった。

アンコールは、アニメのエンディング主題歌『誰にもなれない私だから』をしっとりと、でも熱を秘めた表情で歌う理名。そこへ、緊張感を持って奏でる楽器陣の音が折り重なることで、その歌と演奏が胸の奥へ奥へと染み渡る。だから、ずっとその歌声と演奏に気持ちを傾けていた。

「この活動をするまで知らなかった景色が、今の私たちの中心になっています」と語った理名の言葉に続いて歌ったのが、『無知のち私』。トゲナシトゲアリのライブには、いろんなドラマを覚える。それが、わかりやすいドラマであったり、いろいろと想いを想起させるドラマだったり。そういう瞬間瞬間を発見するたびに、気持ちが嬉しく奮い立つ。だから、顔をほころばせて熱情し続けていたかった。

朱李の歪むベースの音が炸裂。トゲナシトゲアリは最後に、『空白とカタルシス』を演奏。冒頭で理名が歌った「どれだけ手にいれても どれだけ自分のものにしてもしてもしても 追いつけないな」と絶叫するように歌う言葉が、希望を持った叫びとして胸に突き刺さった。一見、ネガティブな感情を歌った楽曲だが、今の彼女たちは、その気持ちを、前を向き、未来へと続く階段を駆け上がる勇気の糧にしている。だから歌声と演奏が、強烈な熱を放つように身体中を貫いた。それが今のトゲナシトゲアリの力だ。着実に、確実に成長の階段を駆け上がり続けている彼女たち。まだまだ成長過程とはいえ、逞しい姿を強く感じさせられたライブだった。

TEXT:長澤智典

《SET LIST》
  1. 1.運命の華
  2. 2.極私的極彩色アンサー
  3. 3.闇に溶けてく
  4. 4.碧いif
  5. 5.蝶に結いた赤い糸
  6. 6.偽りの理
  7. 7.黎明を穿つ
  8. 8.空の箱
  9. 9.声なき魚
  10. 10.視界の隅 朽ちる音
  11. 11.渇く、憂う
  12. 12.理想的パラドクスとは
  13. 13.気鬱、白濁す
  14. 14.名もなき何もかも
  15. 15.運命に賭けたい論理
  16. 16.傷つき傷つけ痛くて辛い
  17. 17.サヨナラサヨナラサヨナラ
  18. 18.爆ぜて咲く
  19. 19.雑踏、僕らの街
  20. -ENCORE-
  21. EN1.誰にもなれない私だから
  22. EN2.無知のち私
  23. EN3.空白とカタルシス
ガールズバンドクライ/トゲナシトゲアリ

トゲナシトゲアリ5th ONE-MAN LIVE "鳴動の刻"

5th ONE-MAN LIVE
■日時:2025年2月7日(金)
■時間:OPEN/18:00 START/19:00
■会場:パシフィコ横浜 国立大ホール
■チケット金額:9,900円(税込)

最速先行:10月30日(水)10:00〜 12月1日(日)23:59
当落発表:12月7日(土)18:00~
入金期間:12月7日(土)18:00~12月13日(金)23:59
シリアルナンバー1つにつき、2枚までお申し込みいただけます。

チケット最速先行抽選申し込み券は10月30日(水)発売の『ガールズバンドクライ』Blu-ray&DVD第5巻に封入
<Blu-ray&DVDの詳細はこちら>
https://girls-band-cry.com/goods/post-29.html

トゲナシトゲアリ 4th ONE-MAN LIVE "協奏の響"

■日時:2024年12月20日(金)
■時間:OPEN/18:00 START/19:00
■会場:豊洲PIT
■チケット金額:9,900円(税込) ※ドリンク代別途必要

MyGO!!!!!×トゲナシトゲアリ 「Avoid Note」

■日時:2025年1月12日(日)
■時間:OPEN/17:00 START/18:00
■会場:TOKYO DOME CITY HALL


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