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歌の本質に触れるライブを味わうことで、さらに山本彩の表現者としての本質に触れられたのが嬉しかった。
2024年9月よりスタートした、山本彩のアコースィックギターを軸に据えた全国ツアーSayaka Yamamoto Acoustic Tour 2024「Organic」。このツアーには、ギタリストの弓木英梨乃も同行。ここでは、9月19日にヒューリックホール東京で行われた公演の模様をお伝えしたい。
バンドという編成で感情を突きつけるライブは何度も目にしてきた。だからこそ、アコースティックなスタイルで挑むライブがとても新鮮だ。今回のツアーは、生音の鳴りが心地好く響く、比較的小箱でのライブが主。でも東京公演は、4桁を越す人たちが詰めかけたホールコンサート。舞台の上には「Organic」というツアータイトルを現すような、弓木英梨乃いわく「草」(花々)を彩りとして並べていたとはいえ、2本のギターのみで勝負するにはなかなか腕を試される環境だ。
暗くなった場内へ、山本彩が姿を現した。彼女は椅子に座り、本ツアーが初登場となるアコギ(ギブソンカスタムショップ製のSJ-200)を手に、客席という暗がりに向けて「空っぽの部屋 肌寒い風~」と『愛なんていらない』を弾き語りで歌いだす。6本の弦をゆっくりとなでるように音を響かせ、自らの心へ問いかけるように「愛なんていらない 心が削れるだけだ」と山本彩は歌唱。大勢の人たちを前にしながらも、舞台上の彼女は、自分自身と向き合うように歌っていた。それは、続く『君とフィルムカメラ』でも、そう。力強く弦をストロークする演奏の上で山本彩は、心の内から沸き立つ感情へ熱を加えるように歌っていた。曲が進むごとに、その声は生を帯びてゆく。「静かに瞬きのシャッターを切る」と歌いあげたときの張り上げた声が、気持ちを騒がせた。弾き語りというシンプルな、生々しさが露になるスタイルだからこそ、山本彩の生きた心模様を、いろんな色を持ってリアルに感じられる。
次のブロックからは、このツアーの相棒となる弓木英梨乃を迎え入れてのライブへ。まずは2本のアコギの音色を重ねあい(弓木はフェンダーのアコスタソニック)、ときに美しいハーモニーも描きだす『どうしてどうして』から。演奏が始まるのに合わせ、場内から手拍子が生まれた。次第に強さを増す2人のハーモニーや演奏へ導かれるように、観客たちもクラップをしながら参加。ファンたちも、2人が描き出す世界を共に彩りたくて気持ちを寄せてゆく。
その期待を嬉しく煽るように、山本彩が力強い声で『JOKER』を歌いだす。曲が進むごとに彼女の歌声に強さが増せば、舞台上での存在感も増していく。歌うひと言ひと言が、とにかくパワフルだ。
『Are you ready?』が始まった途端、 場内中から熱い手拍子が起き、声も上がりだす。山本彩が「Are you ready? 覚悟を決めて 後ろは振り返らないで」と強くメッセージするたびに、場内中の人たちも座ったままとはいえ、しっかりと手を振り上げ、ときに声を荒らげて、共に未来へ向かって進み続ける約束を交わしていた。
アコギを置き、弓木英梨乃の演奏を背景に歌ったのが、アヴィリル・ラヴィーンの『Keep Holding On』。山本彩自身に衝撃を与えたアーティストの楽曲を、アコースティックなスタイルでカバー。優しく流れるような演奏に身を預け、ゆったり心地好く。ときに声を張り上げ、彼女は曲の持つ世界へ浸るように歌っていた。
弓木英梨乃が爪弾くナイロン弦のアルペジオの音色へ寄り添うように歌声をはべらせた『あいまって』。続く『残影』では、ときに胸に手を当て、歌声を響かせていた姿も印象的だった。心地好いビートを作りだす弓木英梨乃のアコギの演奏と、場内から生まれたたくさんの手拍子に乗せ、深く思いを込めて歌った『心の盾』。この曲で山本彩は、弓木英梨乃と一緒に美しいハーモニーを描き、ときにマイクを両手で握りしめ、気持ちを揺さぶるように声を強く奮わせていた。その思いが、聞き手の心も同じように揺さぶっていた。
ここからは、再び山本彩と弓木英梨乃の奏でる2本のアコギによる演奏へ。2人は、手にしたアコギを力強くストローク。『oasis』では、凛々しい歌声や演奏を軸に据えながら、ときにエモーショナルな様も見せていた。場内から、次第に熱が上がりだす。続く『喝采』では、山本彩が野太い声を魅力にパワフルに歌いだす。この曲では観客たちも声を張り上げ、一緒に歌う場面も登場。アコースティックなスタイルとはいえ、誰もが胸に熱い思いを覚えながら、2人の姿に視線を向けていた。そして…。
山本彩が立ち上がり、手にしたタオルを振り回しながら歌いだしたのが、『Let’s go Crazy』。観客たちも座りながら、手にしたタオルを振り回し、声を上げ、羽目を外したパーティームードを作り出す。たとえアコースティックなスタイルだろうと、気持ちを解き放ち、一緒に「最高のパーティータイム」を作ってこそ、山本彩のライブのあるべき姿。そんな風に思いたくなる胸弾む景色を、舞台の上でタオルを回しながら歌う彼女が作りあげていた。
最後は、弓木英梨乃の爪弾くしっとりとした優しいアルペジオの音色に乗せ、ここに集まった仲間たちと共に素敵な未来を描くために歩み続けようと『Larimar』を届けてくれた。「あなたがいるこの世界は 何より素晴らしい」の歌詞の一節のように、山本彩は、ここに集ったみんなと小さな幸せを温かな歌声を介して分かちながら、本編の幕を閉じていった。
アンコールでは、優しい歌声でみんなを包み込むようにRADWIMPSの『セプテンバーさん』を歌唱。最後の最後に、ギターをギブソンからマーティンに持ち替え、この日のライブの余韻を胸に染み渡らせるように『ブルースター』を歌ってくれた。言葉のひと言ひと言を胸の奥へ奥へと響かせるように歌うその声が、気持ちを癒してゆく。そんな温かな思いを心に満たしながら、ライブは幕を閉じていった。
アコースティックという形を取ることで、山本彩自身の思いの揺れを、よりリアルに感じられたのが嬉しい。躍動した音に乗せて、一緒にロックンロールするのも楽しさだが、こうやって、歌の本質に触れるライブを味わうことで、さらに山本彩の表現者としての本質に触れられたのも嬉しかった。
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 1.愛なんていらない
- 2.君 とフィルムカメラ
- 3.どうしてどうして
- 4.JOKER
- 5.Are you ready?
- 6.Keep Holding On
- 7.あいまって
- 8.残影
- 9.心の盾
- 10.oasis
- 11.喝采
- 12.Let’s go Crazy
- 13.Larimar
- EN1.セプテンバーさん
- EN2.ブルースター
山本彩
山本彩 New EP『U TA CARTE』2024.12.25 Release!!
<通常盤>
■形態:CD only
■品番:UMCK-1785
■価格:¥2,200(税込)
・Seagull ※TVアニメ『シンカリオン チェンジ ザ ワールド』エンディング主題歌
他、新曲含む全5曲収録。
11月30日(土)には大阪にて『U TA CARTE』発売記念リリースイベントの開催が決定!
■CDのご予約はこちら:
https://SayakaYamamoto.lnk.to/newEP
山本彩×ライブナタリー Zepp TOUR「SYnergy」開催!
2024年
11月19日(火)東京・Zepp Haneda(TOKYO)
18:00開場/19:00開演
出演:山本彩 / 阿部真央
11月27日(水)愛知・Zepp Nagoya
18:00開場/19:00開演
出演:山本彩 / ACIDMAN
11月29日(金)大阪・Zepp Namba
18:00開場/19:00開演
出演:山本彩 / SCANDAL
チケット詳細はこちら
https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2455103
ニューアルバム「&」Now On Sale!!
山本彩が3年ぶりに自身4枚目となる待望のオリジナルアルバムを発売!
前作『α』以降のシングルCD「ゼロ ユニバース」、「ドラマチックに乾杯」の収録曲に加え、デジタルシングル「yonder」、「Don’t hold me back」、「あいまって。」、さらに未発売曲「ラメント」他、新曲2曲を含む全12曲収録!
『&』と名付けた今作は、一人一人、その時代時代を形作る上で表れる様々な面(二面性、多代性)に着目し、それも自分と認めることや、認識していくことに対して、&(アンド)という一つのテーマで表現。
前作『α』以降の彼女の歩みと、そのアルバムテーマを新曲2曲に落とし込んだ、楽曲を通して様々な感情の山本彩を堪能できるアルバムとなっている。
【形態/品番/価格/仕様】
・通常盤 (CD only):¥3,000+税 品番:UMCK-1743
・初回盤 (CD + DVD):¥4,500+税 品番:UMCK-7210 ※三方背ケース仕様
・FC盤 (CD + DVD + Photo Book):¥9,000+税 品番:PROS-1927 ※豪華BOX仕様
▼CDのご購入はこちら
https://sayakayamamoto.lnk.to/4thalbum