次は、上間江望のブロックへ。ザクザクとしたギターの音を背景に、着替えを終えた彼女は、月照ラスのメンバーらの奏でる雄大な景観を描きだすロックナンバーに乗せて『0%』を歌いだした。ポップな表情を中心に歌の活動を始めた上間江望だが、自らの沸き立つ感情を表現する手段として、次第に彼女はロックな方向性へと舵を切りだした。その意志や意識を明瞭に感じさせる楽曲だ。凛々しい表情と声を武器にパフォーマンスをする今宵の上間江望の姿は、巨大な月を背負って歌うことで、煌めきを放つロックシンガーのようにも見えていた。力強く声を張り上げる姿、観客たちと一緒に歌声を交わす様など、そこには活き活きとした表情で、ここに立つことへ生きがいを覚えている上間江望の姿があった。
止まることなく演奏は、上間江望と観客たちが共に「Oh!Oh!Oh!」と声を交わしあう『ALIVE』へ。彼女がクラップをすれば、フロア中の人たちも一緒にクラップをしながら思いを交わしあう。月照ラスのときと大きく違うのが、フロアのあちこちにペンライトの輝きが生まれていたこと。月照ラスとして胸の内に渦巻く感情を解き放っていた姿とは異なり、自らが光を放つ存在となって歌っていたことだ。
この日は、月見ル君想フという大きな月を背景にした会場ということもあり、月や夜空を背景にした楽曲を多く用意。いや、そういう曲たちが上間江望にも、月照ラスにも多いからこそ、この場所を選んだと言ったほうが正解だろうか。
『星屑プラネタリウム』でも上間江望は、月の下みんなで楽しい宴を繰り広げようと無邪気な笑顔で、軽やかにスキップする楽曲に乗せ、歌を通して自らの感情を開放してゆくことを楽しんでいた。右手を左右に大きく振りながら観客たちと一緒に戯れる様など、ライブしてゆくことを彼女自身が本当に楽しんでいる。その空気が伝わるからこそ、ここにいる誰もが上間江望と一緒に無邪気な少年少女に戻っていける。それもまた、月や上間江望の掛けた魔法なのかも知れない。
『かざぐるま』では、観客たちが最初から手にしたタオルを高く突き上げ騒ぎだす。上間江望も、風を撒き散らすように軽快に走る楽曲に乗せ、光を携えた歌声をフロア中に解き放っていた。「くるくる回れ恋心」と歌いながら、自らも手にしたタオルを風車の羽根のようにくるくると回し、この空間に一体化した熱い景色を作りあげていった。
MCでは、10月1日で声優活動10年を迎えたことを改めて報告。さらに「原点に戻りたいなということで」と語りながら、初めてゲームのヒロインのメンバーの一人に選んでいただき、ゲームの主題歌も歌わせてもらった大切な想い出の曲を歌いたいと伝えてきた。
その言葉を受けて届けたのが、当時、Tifan名義で歌った『バレットガールズ』のオープニングテーマ『Faith』。曲が流れ始めた途端、フロアから「やったー!!」と声が上がれば、これまで以上に大きな声でエールを送る人たちが続出。この頃に上間江望に出会い、共に時を歩んできた人たちも多いからだろう。楽曲へ記した気持ちへ寄り添うように歌う彼女へ向け、大勢の人たちが理性のストッパーを外し、力強く声を張り上げていた。彼女自身も、自らの原点となる姿を確かめながら。始まったばかりの頃の自分に立ち返って歌うことを思いきり楽しんでいた。
止まることなく、歌始まりの『Eternal Glow』へ。この曲でも上間江望は、物語の世界へ身を投じつつも、未来をポジティブに見据えた楽曲へ自身の生きざまや仲間たちへの思いを重ね合わせ、声に乗せて届けていた。歌うごとに光を身にまといながら、自らも輝きを放ち続けていく。そして…。
上間江望が次に歌いだしたのが、10周年のために書いた新曲の『ネオ・グラビテーション』。最初から感情のアクセルをベタ踏みしながら力強く駆けだす、歌始まりの楽曲だ。これまでの歩みの中で歌詞にしてきた言葉なども散りばめつつ、これからも変わることなく攻め続ける強い意志を示すように、彼女は『ネオ・グラビテーション』へ今の気持ちをすべて詰め込み、高らかに歌いあげていた。途中には、ラップパートも組み込むなど、シンガー上間江望として進化し続ける姿も提示。力強く前を向き、沸き立つ感情を熱くぶつける様は、一つ一つの経験を積み重ね、自身が強い自分に成長してきたからこそ見せられる姿だ。
最後に歌ったのが、やはりこの歌だ。上間江望は、いつもこの曲を通してたくさんの仲間たちと出会ってきた。いや、この曲を通して、たくさんの仲間が生まれた。笑みを浮かべながらも、凛々しい表情で「遙かなる理想掲げ歌え 手と手結んで歌え」と『Beautiful World』を歌うたびに、フロア中から「Oh!Oh!Oh!」や「Oi!Oi!」と大きな声が突き上がる。誰もが上間江望の歌う言葉に共鳴、揺るがなき勇気を胸に抱き「Oh!Oh!Oh!」や「Oi!Oi!」と声を張り上げながら、心揺さぶる歌が降り注ぐ空間にいることへ喜びを覚えていた。上間江望の「歌え」の誘いに合わせ、ずっとずっと声を張り上げていた。
アンコールは、上間江望ナンバーの中でも、ファン支持の非常に高い『キャッチライト』からスタート。上間江望には、気持ちに輝きを降り注いでくれるポジティブな歌がとても似合う。彼女自身もリラックスした心持ちで、歌うことを素直に楽しんでいた。笑みを浮かべながら歌う姿に触れていると、こちらまで自然と笑顔になれる。その眩しい笑顔と歌声で、これからもいろんな人たちの心をギュッとつかんでほしい。
「10年の中、いろんな作品やキャラクター、いろんな人に出会い、みんなに出会い、月照ラスという新しい形にも出会い、岐阜で引き籠もっていた頃と比べたら、目の前には考えられないような世界が今、広がっています。自分がスタートしたときに思っていた世界とは違っていたりするし、世の中もどんどん変わっていくけど。わたしはわたしの道を一歩一歩、自分のペースで歩いていきたいと思っています」
いただいた大きな花束を腕に抱えながら、「これから先も一緒に歩いていきましょう」の言葉をきっかけに、最後に上間江望は『あるこう』を歌唱。彼女自身が、この曲と一緒にこれまでの日々を歩み続けてきた。この曲を、前へと一歩を踏み出す力に変えながら歩き続けてきた。その姿勢はこれからも変わらない。歌詞の一節ではないが、歩んできた足跡が確かな痕跡を残し続ける限り、その経験を糧に、これからも上間江望は踏み出すのを恐れることなく歩み続ける。そこには、寄り添ってくれるたくさんの仲間たちがいる。それを、ここに足を運んだ人たちはわかっている。だから手を左右に大きく振りながら、その思いを、彼女自身の心の中へ足跡変わりに刻んでいった。上間江望自身も『あるこう』を背中を押す力に変えながら、これからも一歩一歩しっかりと歩み続けることを誓っていた。
今年は声優活動10周年。10年というのは確かに大きな節目だ。だけど、まだまだ終わることなき道を歩み続ける上間江望にとって、10周年も通過点の一つ。でも、素敵な、記憶に残るライブだったのは間違いない。さぁ、次はどんな月明かりの下で素敵な景色を見せてくれるのか、次のアクションを楽しみにしていようか。
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 月照ラス
- 1.Moonshot
- 2.Daydream
- 3.少年と月
- 4.Paranoid
- 5.透明
- 6.フラストレーション
- 7.My Criteria
- 8.サヨナラと言えない僕に
- 上間江望
- 1.0%
- 2.ALIVE
- 3.星屑プラネタリウム
- 4.かざぐるま
- 5.Faith
- 6.Eternal Glow
- 7.ネオ・グラビテーション
- 8.Beautiful World
- -ENCORE-
- EN1.キャッチライト
- EN2.あるこう
上間江望
上間江望10周年記念アルバム「アメとコトダマ」好評発売中
2023年10月3日発売!
【収録曲】
・ネオ・グラビテーション
・Eternal Glow
・メビウスの輪廻
・Crossover Soul
・Irony(ALBUM Ver.)
・Beautiful World
・Stargazer
・ET CETERA STORY~hope~
・ENDROLL,after
・0%
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月照ラス
月照ラス 1stアルバム「コエ」好評発売中
2023.9.29 発売
僕の心のサケビがコエとなり
月照ラス場所で僕らのウタになる。
【収録曲】
1. Moonshot
2. サヨナラと言えない僕に
3. 少年と月
4. Daydream
5. 特異点
6. 月影 -Instrumental-
7. 風切羽
8. Paranoid
9. My Criteria
10. 透明
11. 石膏少女
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Mashup LIVE -異彩-Vol.11 streaming by GALPO LIVE SHOW
Mashup records主催LIVE
Mashup LIVE -異彩-Vol.11 streaming by GALPO LIVE SHOW
日程 2023年11月30日(木)
会場 下北沢ReG
前売り 3000円 当日 3500円
開場17:45 開演18:00
配信 ニコニコチャンネル「GALPO LIVE SHOW」月額会員様
出演 立夏/太田家/囁揺的音楽集団AsMR/月照ラス/Mellows
チケット発売 10/18 18:00~ チケット販売開始
https://r.funity.jp/mashuplive_vol11