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吉田篤貴(Violin) 使用楽器紹介
YUKI HORI(堀 酉基) FECE IN TOKYO ANNO 2012 Inspired by GIUSEPPE GUARNERI DEL GESU 1742 “EX DONALDOSON”
日本の弦楽器製作家で、(株)文京楽器や(株)アルシェの代表取締役社長も務める堀酉基氏作のバイオリン。「ソリストのためのバイオリン」の理想を1742年製デル・ジェスに求めて製作された。オールド・クレモナの銘器が持つ気品を纏うべく、細部に至るまで丹精込めて仕上げられている。
■いつ頃から愛用しているのでしょうか?愛着の理由や気に入っている部分、楽器との出会いなどを教えて下さい。
5年ほど前から使用しています。自分が手にする前に、自分の師である久保陽子氏がしばらく弾いていらっしゃったのですが、久保さんから僕の活動や音楽のスタイルにきっとこの楽器が合うのではという提案があり、しばらくお借りすることになりました。弾いているうちにこの楽器のキャラクターが自分のやっている音楽とかなりフィットするということが分かり、とてもありがたいことにメイン楽器として使わせていただくことになりました。
自分の活動は、クラシック以外の音楽ではあるのですが、かなりジャンルの幅が広く、求められる音色やキャラクターの種類がとても多いです。ECMサウンドの様な非常にクワイエットな表現から、タンゴ、ロック、ポップス、アニソン、ゲーム音楽のバトル曲等で求められるような熱くシャープな表現にまで応えてくれる心強い相棒です。(吉田)
■この楽器のサウンド面での特徴や魅力を教えて下さい。また、独自の調整や改造をしていることがあれば教えて下さい。
どんな重みのボーイングにも耐えうるねばり強い弓(E.A.OUCHARD)とも相まって、かなり深めの圧力にも反応して様々な感情表現をさせてくれます。sul tastoのような弓使いをするとハスキーな声を聴かせてくれます。
また、自分がいつも大事にしているヴァイオリン本来のクラシカルな響きに関しては格別で、新作らしからぬオールド楽器のような艶やかさと渋みを併せ持っているところは、この楽器の大きな魅力でしょう。
近年の、数々のサウンドトラックやCDでは、全てこの楽器を使用していますので、読者の方にもどれかの音源で聴いていただけたら嬉しいです。
独自の調整というと、顎当てはオーダーメイドのものを使用しています。今までに、自分の体型と合うと思えた唯一の顎当てがあるのですが、その型をとって完全に再現をしてもらい、その上でかなり高さを加えてもらったメープル製のものを使っています。自分の首の長さ、あごの形のために、違和感なく構えられる顎当てはとても少ないのですが、そんな自分の変わった体型をカバーしてもらっています(笑)(吉田)
Emile A. OUCHARD of Paris in New York circa 1954
撮影:小野寺将也