
そこには熱狂という彩り鮮やかなグラフィティが描きだされていた。
1stEP『Graffiti』を手に始めた東名阪ツアーも、8月5日にZircoTokyoで催した「Little Lilith Release Tour 2022「Graffiti」」で、ファイナルを迎えた。チケットはSold Outを記録。

ライブは、最新シングルの表題曲であり、オートチューンを用いたヴォーカルLILLYの歌声が響き渡る最新作の表題歌『Graffiti』から幕を開けた。ジェント系のスタイルを標榜するバンドらしく、激しく重い音が背景に渦巻いている。でも、LILLYの声が、耳にこびりつくねっとりとした艶やかさを持っているからだろう。その歌は、じんわりと心にまとわりつく。それが、心地好い。戸惑いを記した歌なのに、むしろ、惑う感情に気持ちが共鳴。一緒に戸惑いの中、救いを求めて叫びたくなる。サビ歌では、LILLYが歌いながら大きく振り上げる手の動きに合わせ、フロア中の人たちも大きく手を掲げ、一緒に高く身体を揺らしていた。轟音を背負いながら、ゆっくりと上がり続ける感情と高揚。


異境の空間へ染め上げるエレクトロな音が響きだす。LILLYのグロウルした声を合図に、演奏は『LadyBug』へ。タイトなビートの上で、沸き立つ感情をグッと抑え、囁くように歌うLILLY。静かなる衝動。いや、演奏は重く揺れ動いている。ただ、LILLYが噴火寸前のマグマのように気持ちをグッと抑えながら歌っていた。ジワジワと上がり続ける熱と感情。けっして炸裂しきるわけではない。むしろ、ヒリヒリとした痛い感情をさらけ出すように歌うことで生々しさが増していくようにも感じられた。轟音の上で祈るように歌う、その姿に視線は強く惹かれていた。

とてもクールでオルタナィブな楽曲だ。続く『Thanatophobia』でもLILLYは、言葉をつぶやくように歌っていた。そこへ絡む、ERIKAの突きつける重厚なギター音。演奏も歌声もときに感情を露にするが、気持ちを沸点へ持っていく前後は、あえて嘆くようにLILLYが歌えば、演奏陣が黒い刺々しい音で刺激を与え、LILLY自身の気持ちを揺さぶっているかのようだ。終盤、歌声も演奏もエモくバースト。炸裂したまま、演奏がブツッと終わる流れも心地好い。


「あなたの声が好きじゃないわ 苦いシロップみたいで騙すだけだから」と、LILLYが甘くメロウな声で『嘘』を歌いかける。重厚ながらも跳ねた心地好いリズムとザクザクとしたギターの音が絡み合う演奏の上で、気持ちが騒ぐまま、LILLYは恋に傷ついた女性の心模様を艶かしい声で歌いあげる。どこか歌謡ムード漂う歌とジェントなサウンドが絡み合う。激しく高揚した音の上で、艶めいた歌声が黒い五線譜の上を跳ね続ける。切ない恋心なのに、その歌に酔いしれるのは、LILLYの歌声があまりにも艶めいているからだ。3人の奏でる音が気持ちを強く弾ませるせいだ。


続く『fuse』では、ふたたびオートチューンを使用。あえて感情に服を着せたような声で抑揚したい気持ちを抑えるように歌うLILLY。だが、強い衝撃を抱いた音とタイトなビートが、もっともっと気持ちを解き放てと煽りたてる。時折バーストした感情も織りまぜながら。Little Lilithは『fuse』を通し、揺れ、惑う感情を、緩急を付けた表情を持ってエモーショナルに突きつけていった。

『Smoky Refrain』のイントロが流れ出した途端、フロア中の人たちが大きく手を振り上げ、LILLYが歌い始めたのに合わせ、身体を大きく揺さぶりだした。激しい衝撃を突きつける楽曲だ。荒ぶる音が気持ちを熱く煽れば、歌謡メロした歌がねっとり絡みつき心をギュッと締めつける。騒ぎたい衝動が全身を駆けめぐる。いや、『Smoky Refrain』に身を預けフロア中から数多くの拳が突き上がれば、身体も大きく揺れていた。気持ちを火照らせる、とても感情的でエモーショナルな高揚歌だ。今はただ、衝動へ導かれるまま騒ぎ続ければいい。



MCでLILLYは「めちゃめちゃ楽しいです」と語っていた。その楽しさをさらに膨らませるように、歌始まりの『ESCAPER』へ。気持ちを制御することなく、高まる感情のままに歌声を上げれば、演奏陣も、LILLYの気持ちの揺れに合わせて音を塗り重ねる。時折ファルセットも交えたメロウなサビ歌が心地好い。たとえ、混沌とした感情の中でうごめいていようが、気持ちが熱く高ぶったのなら、想いへ導かれるままに自分を壊せばいい。終盤、ピアノの音色の音を背景に甘くメロウに歌うLILLYに向け、無数の手が伸びていた。

轟音を撒き散らすように演奏が駆けだした。『Gun Bullet』に合わせ、フロア中から多くの拳が突き上がれば、荒ぶる演奏に合わせヘドバンしてゆく人たちもあちこちに登場。歪んだ音を背負って爆走する楽曲とエモーショナルなLILLYの歌声に刺激を受けた観客たちが、沸き立つ気持ちへ突き動かされるままに騒いでいた。そこには熱狂という彩り鮮やかなグラフィティが描きだされていた。


アンコールでは、新曲の『Double Suicide』を披露。この楽曲が、最高にエモいジェントチューン。この日、初めて曲に触れる人たちばかりとは思えないくらい、フロア中から拳が突き上がっていた。LILLYの歌うメロディーが胸に心地よく響き渡る、激しくエモい楽曲だ。触れた瞬間から気持ちを熱く騒がせる曲調という理由もあり、演奏中、フロア中の人たちがずっと拳を振り上げ、身体を折り曲げるなど、楽曲の展開に合わせてその身を動かしていた。この曲、これからもライブで熱狂の景色を描きだすキラーチューンになりそうだ。



最後にLittle Lilithは、ふたたび『Graffiti』を披露。冒頭で触れたとき以上にパワーを感じるのは、ここへ至るまでに凄まじい熱をこの空間が蓄積していたからだ。心が奮い立つ。サビ歌を届けた頃には、フロア中の人たちが高く突き上げた手を大きく揺らしていた。この日、Little Lilithが描き上げたグラフィティはとても激烈でエモかった。でも、僕らはそれが欲しかった。それを味わえたのが、素直に嬉しかった。

Little Lilithは、12月3日、渋谷club asiaを舞台に、ワンマン公演「A Rebellion」を行う。リトルリリスからLittle Lilithになって1年。その1年間の歩みの一つの答えを、この日のワンマン公演で彼女たちは見せてくれるはずだ。
取材・文:長澤智典
撮影:小林弘輔
《SET LIST》
- 1.Graffiti
- 2.LadyBug
- 3.Thanatophobia
- 4.嘘
- 5.fuse
- 6.Smoky Refrain
- 7.ESCAPER
- 8.Gun Bullet
- EN1.Double Suicide(新曲)
- EN2.Graffiti
Little Lilith
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QACW-1048
¥2,200(tax in)
1.Graffiti
2.LadyBug
3.fuse
4.Gun Bullet
5.Thanatophobia
https://littlelilith.com/discography/0c3bacf1-e205-4b8d-bb5d-ccaf3be5f683