Michael Schenker ライブレポート

歴代ヴォーカリスト達との饗宴に見た
過去を受容れ現代を生きる「神」の最新型

2016年よりスタートしたMICHAEL SCHENKER GROUP歴代のヴォーカリストたちを一同に集めて行うプロジェクトMICHAEL SCHENKER FEST。 今年2月にはアルバム『RESURRECTION』をリリース、8月には同作品を手にMICHAEL SCHENKER FESTは日本を駆けめぐった。

 ここでは、日本最終公演となった9月5日・東京国際フォーラム ホールAでのライブの模様をお伝えしよう。

 メンバーは、Michael Schenker(G)を筆頭に、Gary Barden, Graham Bonnet, Robin McAuley, Doogie White(Vo)、Chris Glen(B)、Ted McKenna(Dr)、Steve Mann(G/Key)という面々。 MSGナンバーはもちろん、ScorpionsやUFO時代の楽曲も登場。その日の模様をお伝えしたい。

 ワーグナーの「ワルキューレの騎行」のSEに載せマイケル・シェンカーがフライングVとともに舞台へ姿を表した時点で、鳥肌が立つほどの高揚を覚えていた。 でも、それはほんの始まりにしか過ぎなかった。 マイケルのギターが最初に奏でた旋律こそ、まさに衝撃だったのだ。 流れ出したのがScorpionsの『Holiday』。 会場中の人たちが演奏やマイケルの歌に合わせ、ともに大声で合唱。 とても胸を熱くさせる始まりだ。 なんて雄々しき楽曲を通した幕開けだ。 昂る気持ちを抱いたまま、演奏はUFOの『Doctor Doctor』へ。 この流れを体感した時点で、身体中の血が沸騰するように騒ぎだした。 でも、本当の興奮はこれからだった。 『Doctor Doctor』の歌をグラハム・ボネットが、ゲイリー・バーデンが、ロビン・マッコーリーがリレーするように歌い繋いでゆく。 3人の歌の掛け合いや合唱に魂の震えが止まらない。 誰もが彼らとともに歌っていた。 いつしか理性のストッパーが外れ、それぞれが青き日々の自分の心へ孵り、気持ちの沸き立つままに拳を振り上げ、歌いあげていた。

 MICHAEL SCHENKER FESTには4人のヴォーカリストが参加。 演奏する楽曲に合わせ、その歌を担当していたヴォーカリストが登場し歌うのはもちろん、MICHAEL SCHENKER FESTナンバーでは4人のヴォーカリストが一堂に会し、一緒に歌を掛け合いしてゆく様も。 その姿はまさに圧巻だった。

 今回のセットリストでは、序盤に『Lie And Let Live』や『Vigilante Man』などドゥギー・ホワイトをヴォーカルに据えたMichael Schenker’s Temple of Rockナンバーを披露。 ズクズクと身体を突き刺すマイケル・シェンカーのヘヴィなギターリフとドゥギー・ホワイトの伸びやかに響き渡るヴォーカルが重なりあうドラマティックな世界観を堪能できた。

 『Into the Arena』をブリッジに、次のブロックでは『Bad Boys』や『Save Yourself』など、ロビン・マッコーリーをヴォーカリストにMcAuley Schenker Groupが持つワイルドなロックンロールワールドを体感。

 MICHAEL SCHENKER FESTの楽しさは、ヴォーカリストが自分の担当曲を歌うのはもちろん、そこへ、他のヴォーカリストも加わりセッションしてゆくところにもある。 事実、McAuley Schenker Groupの『Anytime』には、グラハム・ボネット、ゲイリー・バーデン、ドゥギー・ホワイトも参加。 サビで雄大な景観を描き出した4人の歌声の存在感には、強く心が惹かれていた。 しかもその流れで、MICHAEL SCHENKER FESTナンバー『Heart and Soul』を、マイケル・シェンカーのドリルのように身体へ重く突き刺さるギターリフの上で4人が歌いあげる光景も登場。

 今回は、MICHAEL SCHENKER FESTとして制作したアルバム『RESURRECTION』を手にしたツアーということもあり、セットリストの随所に同アルバムからの楽曲を演奏。 4人の歌声が絡み合う『Warrior』では、歌い手たちがバトルしてゆく姿も堪能。その手の様を、各所で観れたのも嬉しいポイントになっていた。

  後半には、グラハム・ボネットが登場。『Dancer』を歌いだしたときに会場中が沸き立っていた姿も印象深かったが、そこへ、ゲイリー・バーデンやロビン・マッコーリーも加わったことで、より解放感を持った楽曲へと昇華。 グラハム・ボネットソロとしても、『Assault Attack』などを耳にしたときには、あの雄々しき歌声に魂を震わせずにいれなかった。

 Scorpionsのインスト曲『Coast to Coast』を挟み、終盤はゲイリー・バーデンを中心としたステージへ。 『Ready to Rock』や『Rock My Nitghts Away』などのハード&ロックンロールナンバーを通した豪快に弾けた様に熱い感情の昂りを覚えれば、『Armed And Ready』を歌いだしたときには、身体中のアドレナリンが沸騰していた。 しかも本編最後に、ゲイリー・バーデン、ロビン・マッコーリー、ドゥギー・ホワイトの3人がリレーする形でUFOの『Rock Bottom』を熱唱。 会場中の人たちも「Rock Bottom」と叫び続けていた。

 アンコールは、『Shoot Shoot』『Natural Thing』『Lights Out』とUFOナンバーを三連打。 中でも最後を締めくくった『Lights Out』で、マイケル・シェンカーの最新スタイルMICHAEL SCHENKER FESTを担う4人のヴォーカリストが、マイケルの歩みの始まりの時期を担う1977年の楽曲を2018年のスタイルで蘇らせ歌っているところにも面白さを感じていた。

 そう、MICHAEL SCHENKER FESTとは、マイケル・シェンカーの音楽人生の歩みを時空を超えて繋ぐだけではなく、マイケルを筆頭に彼と共に時代の一部を塗り固めてきたメンバーたちを起用することで、時代ごとの楽曲を”懐か進化”させてゆくところに面白さがある。 レトロに浸るのではない、あの頃の息吹を思い出しながら、今の時代でも十分に似合う楽曲として彼らは生かし続けている。 我々が魂を青春時代に戻しながらも、今の肉体や意識に合わせた感覚で今を生きる音楽として体感していたように…。

取材・文:長澤智典
ライブ撮影:Mikio Ariga
機材撮影:小野寺将也

《SET LIST》
  1. 1.Holiday
  2. 2.Doctor Doctor
  3. 3.Live and Let Live
  4. 4.Vigilante Man
  5. 5.Lord of the Lost and Lonely
  6. 6.Take Me to the Church
  7. 7.Before the Devil Knows You’re Dead
  8. 8.Into the Arena
  9. 9.Bad Boys
  10. 10.Save Yourself
  11. 11.Anytime
  12. 12.Heart and Soul
  13. 13.Love Is Not a Game
  14. 14.Warrior
  15. 15.Captain Nemo
  16. 16.Dancer
  17. 17.Desert Song
  18. 18.Night Moods
  19. 19.Assault Attack
  20. 20.Searching for a Reason
  21. 21.Coast to Coast
  22. 22.Ready to Rock
  23. 23.Attack of the Mad Axeman
  24. 24.Rock My Nights Away
  25. 25.Messin’ Around
  26. 26.Armed and Ready
  27. 27.Rock Bottom
  28. EN1.Shoot Shoot
  29. EN2.Natural Thing
  30. EN3.Lights Out
Michael Schenker

マイケル・シェンカー・フェスト2ndアルバム『レヴェレイション』絶賛発売中! マイケル・シェンカー・フェストのセカンド・アルバムが早くも登場!神による鬼気迫るプレイ。4大ヴォーカリストの絶唱。さらにはレインボーやDESTINIAで活躍するロニー・ロメロがゲスト参加。HR/HMのアルバムに、これ以上何を求めようか。テッド・マッケンナ急逝の悲しみを乗り越え完成させた感動作。 日本盤のみLOUD PARK 17から「アソート・アタック」「ドクター・ドクター」のライヴ・テイク、さらにはLOUDNESS高崎晃がゲスト参加した「ザ・ビースト・イン・ザ・シャドウズ」をボーナス収録。東西ギター・ヒーローが激突する究極のギター・ソロ・バトルを聴き逃すな!


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