Black Smokerのギターは今までになかった国産の音

―お話しを伺うと、専門学校時代の人との出会いっていうのは先生よりも同級生が印象深かったんですかね。

森本:先生にも本当にお世話になりました。僕が行った学校は、ジャンル別に特化した先生がすごいたくさんいて。ジャズが強い人、ブルース・ロックが強い人、ハードロックが強い人、歌謡曲系の仕事をしてる人、オールラウンダーな先生もいて。どの先生も好きでした。どの先生もみんな尊敬してて。学生たちも「あの人はここが凄いよな」とか「あの人はここが苦手そうやな」とか(笑)そんな話も学生同士でしたり。かなり充実した学生生活でしたね。

―doaに受かって、全国ツアーを回るようになったときに使っていたギターはTokaiとGibsonですか?

森本:そのときは、Gibsonと、Paul Reed Smithを使ってました。513ていうモデル。

―そのPRSはいつどこで買ったか覚えていますか?

森本:それは20歳になった時に。買ったのは心斎橋の三木楽器だったと思うんですけど。

―何色の?

森本:アンバーカラーの513ローズウッド、ハカランダネックのやつですね。

―そのギターは森本さんがプレイしているのをあんまり見た記憶がないですね?

森本:売っちゃったんですよ(笑)

―それは、その大変な時期に?

森本:J.W.Blackのテレキャスターを買うときに売りました!doaをやっていた頃はレスポールとPRSをメインで弾いてたんですけど、doaがイーグルスとかドゥービー・ブラザーズとか、いわゆるウエストコースト・ロックをイメージして作ったグループなんで、ハムバッキングのギターっていうよりはシングルコイルが合いそうな音楽性で、そこで、ツアーを一緒に回ってくれてたFATというB’zのテックチームのハッカイ(畠山勝紀)さんが、「じゃあ家にあるシングルコイル何本か持ってくるよ」って言って持ってきてくれたのが、サドウスキーのストラト2本とフジゲンのテレキャスターだったんです。そこでフジゲンと出会うんですね。で、そこから、「あーやっぱシングルコイルって弾くの難しいな~」って思いながら、でも徳永さんとかハッカイさんとかにアドバイスを頂いて、育ててもらいながら、頑張って弾いてましたね。

で、シングルコイルの良さも大分わかってきたとある日。僕はジャズマスターを探して色んな楽器屋を回っていたんですが、良いのが見つからず。今でもお世話になってるBrush Eightっていう(大阪市)新町にある楽器屋さんがあるんですけど、その時そこにJ.W.Blackのテレキャスターが置いてありまして。「そういえばこのテレキャスすごいかっこいいよな~」って思って、で、ちょっと予算オーバーですけど、参考程度にこれ弾いていいですか?って言って、一音弾いた瞬間にもう震えちゃって。「あーもうこれ買わなきゃいけない!!」ってなって、そのテレキャスを買うときに、そのPRSの513を手放したんですよ。

―それが何歳のときですか?

森本:25、6歳ぐらいじゃないですかね。7~8年前、上京する1年ぐらい前だったと思うんで。

J.W.Blackのテレキャスターをプレイする森本(写真提供:森本隆寛)

―そこから今メインで使われてるBlack Smokerのギターと出会うまではどういう流れなんでしょうか?

森本:doaのツアー中にフジゲンのテレキャスを使わせて頂いていて、確か東京公演をフジゲンの方が見に来られていて、黒岩(真一/現Black Smoker代表、マスタービルダー)さん含めいろんな方が見てくださってて。後にFATと320designとフジゲンがコラボして、「サウンドテストツアー」っていう…

―スタジオノアでやったやつですか?

森本:それはもう少し後で、最初は京浜島(FAT)ではじまって。後は、京都のヒルトップさんとか、大阪のHILLSパン工場っていうライブハウスとかに行ったんですけど。そのサウンドテストツアーのときにデモ演奏を担当させて頂いて。そのときに黒岩さんが「すげーこの子いいカッティングするんだよ」みたいなことを言ってくれてたのを覚えてますね。それは多分僕が22歳ぐらいのときだったと思うんですけど。そこから実は黒岩さんとも何年も会ってなかったんですよ。

その会ってない間に大阪でJ.W.Blackを買い、シングルコイルに取り憑かれ。1年ちょっとして上京して、楽器フェアに行ったんですね。そのときにまた黒岩さんとお会い出来て、「実はBlack Cloudって会社やりはじめて、すげーいいよ」って言ってて(笑)。僕、黒岩さんとはちょっとしか話したことなかったんですけど、明るくて頼りになる感じがしてすごい好きだったんですよ。で、ふと「そう言えば僕、自分のストラト持ってないな」って思って、黒岩さんが当時そのBlack SmokerでΣ(シグマ)とδ(デルタ)でSTタイプとTLタイプを作っていたので、「ストラト作ってもらえたりします?」って言ったら「いいよ!」って言ってくれて。それで、Σの白いSTタイプがやってきて。

Black Smoker Sigmaをプレイする森本(写真提供:森本隆寛)

実際すごくいい楽器だったんですけど、今だから言える話で、やっぱり音が少し固いって思ったんです。いわゆる国産の固さがあるなと。なので、J.W.BlackとSigmaでライブやるときも、持ち替えると「あ、ちょっと固いな~。ちょっとアンプいじりたいなぁ」っていう感じだったんですよ。でも、色々意見を頂戴って言われてたんで、「やっぱちょっと音固いっすね~」とかお伝えして色々試行錯誤して頂いて。

やっぱりあの人達は作るののプロじゃないですか。で、僕のJ.W.Blackだったり、後に僕から紹介したギタリストの小川翔さんもJ.W.Blackのストラト持ってて。あとSuhrとか。そういういわゆる海外のギターのメンテナンスをするときにバラバラにしてデータを取って、なんかすごい大発見をしたみたいで、そこからBlack Smokerが大成長期を迎えるんですね。そこからのBlack Smokerっていうのは今までになかった国産の音というか、凄い進化を遂げたと思います!

―今使っているのはジャズマスタータイプで。ピックアップもちょっと独特ですもんね。

森本:そうですね。J.W.Blackのテレキャスを買ったときに元々はジャズマスターを探してたって言ったじゃないですか。で、ふと黒岩さんに「黒岩さんジャズマスタータイプって作らないんですか?」って言ったら、予定は無いけど面白そうだねって言ってくれて。じゃあ作りたいです。っていうのがはじまりだったんです。当時作る予定はなかったみたいなんですよ。

―Black Smokerのジャズマスターは森本さんが第一号なんですか?

森本:一応、昔サウンドメッセでプロトタイプを作られてるんですよ。プライベートリザーブっていう名前で出していたと思います。ローズネックで、ジャズマスタータイプ1本とテレマスターもありました。その後Black Smokerとして作ったのは多分僕のが1本目だと思います。

Black Smoker Sigma JMをプレイする森本(写真提供:森本隆寛)

―どうですか、そのBlack Smokerのジャズマスタータイプは?

森本:すごい調子いいです。最初に作って頂いたSigmaはウレタン塗装だったんです。でも、JMはラッカー塗装にしてもらったんです。個人的にはラッカー塗装の鳴りや振動感が好きですね。

P-94タイプのピックアップが載ってて、フロントは最初からめちゃくちゃ良かったんですけど、リアがキンキンしてて結構ピーキーな音がしてて。黒岩さんに相談したら、やっぱりP-90系のリアはみんな苦労してると仰ってました。で、新たにピックアップを用意して頂いたり、細かくグライコを見ながら、弾いてピックアップのポールピース回して云々カンヌンて色々調整して。あとはJMにはシンクロのトレモロを搭載しているので、後ろのスプリングの種類や数を調整したり、色々試していたら好みのバランスが取れました!

ただ、Black Cloudの柳沢さん曰く、「やっぱり弾き込んでるのもあるだろうね」って言ってて。メンテに出したときに、成長してる感がある。やっぱり弾き込むって大事だねって言ってました。

―ちなみに、ピックは何を使ってるんですか?

森本:PICK BOY製のセルロイド、少し短めのティアドロップ型で、0.75mmの物を使ってます。少し薄めのやつが好きです。

―それでは、森本さんの活動の話に戻るんですけど、活動していく中で、ご自身でなんとなく軌道に乗ったなっていう瞬間とか、どのタイミングから、ギタリストとしていけるなと思ったとかありますか?

森本:軌道に乗ったなと言うのは、一度も思ったことがないですね(笑)。いけるなっていう根拠のない自信はずっとありますが(笑)

でも、やっぱり、“サポートギタリスト”なので、結局アーティストとか、アーティストのプロデュースをしてる側が、見せたい、聞かせたい世界観にうまく自分がハマってるかどうかっていうところが大事じゃないですか。だから、例えば、今まではハマってたけど、ちょっと方向性を変えたいからって言うと、多分メンバーも変わっちゃったりとかもすると思いますし。ただ、その中で「こういうのは森本くんに任せるといいよね」っていうポジションで呼ばれたいっていうか。こういう曲をやるなら、こういうステージにするなら森本くん呼びたいよねって言われるギタリストには今後なっていきたいなっていう目標はありますね。

―発表できる範囲で、今後の活動の予定を聞かせてもらってもいいですか?

森本:ライブが決まってるのは、ビッケブランカと、FIELD OF VIEWと、あとは小比類巻かほるさん、あと、まだオフレコなのが色々とあります。

―今年の抱負というか、こういうことをやっていきたいっていうのがあれば教えてもらますか?

森本:最近、日本人のプレイの仕方とアメリカ人のプレイの仕方のとある絶対的な違いを知る機会がありまして。そもそもの、音楽の聞き方、リズムの取り方から違うっていうものを、発見というか、したんですけども。それを今習得するのにすごく苦労してて。それを習得できたら、ちょっと広めたいなっていうものがあって。で、それをやることによって、最終的には例えば40代に突入したときとかに、世の中がどうなってるかわからないですけど、アメリカとか行ってプレイできるようなギタリストになれたらなと思ってます。まずは、その土台を作れればいいなって思ってますね。

―それは何でヒントを得たんですか?何がきっかけで?

森本:これは、実際にアメリカで十数年間プロでやってた方がこっちに帰国してきて、「日本人、その音楽の仕方してたらもったいないぞ」と発信している方がいて。

文化や歴史を辿ると、そもそもの音楽の聞き方、演奏の仕方が違うみたいで。その手法を発信してくれてるんですけど。今まで日本で育ってきて、日本の音楽教育を受けてきた自分としては、感覚的には右利きを左利きに変えるぐらい難しい事なんです。

―でもそれがこの事だっていうのは森本さん的には感じとっていて。

森本:そうですね。なのでこの、海外のギタリストをコピーして、真似て弾いて、一緒に弾いて、録音してみても、なんでこんなにちょっと微妙に違うんだろうというか。タイミングも合ってるはずなのにな、とかいうモヤモヤが解消する出来事だったというか。

でもまずは自分が習得しないと説得力がないので、まずは少しでも習得して、土台作りをして、将来は日本だけじゃなくて、海外でもやれるギタリストになりたいなと思ってます。

―じゃあ森本さんの先に見えてるものは、もう日本にこだわらずに世界でプレイしていきたいと

森本:そうですね。そうなれれば。目標はでっかく!!

―世界的な方向に向かってるってかっこいいですね。

森本:まぁ、日本でもまだ全然結果出せてないから(笑)。何を大口叩いとんねんて感じですけどね(笑)

―そんなことないですよ。実力派ですから。

森本:いえいえ。足りないですよ、全然。

―世界に出て行くってなるとして、それはどういう形でっていうのは考えてるんですか?自分のバンドを作ってでしょうか?それともインストでギタリストとして出るんですか?

森本:そこは特に決まってないんですけど。兎に角、自分自身ができる限りホンモノに近づきたいです。で、そこにバンドという縁があれば、バンドもそういう方向性でやりたいですし。あとはやっぱり、世界的なアーティストのツアーとか回れたら本当に幸せですよね。

―基本はやっぱり有名なアーティストのバックで弾きたいとか。そういうところだとファンの皆さんもイメージがつかみやすいかもしれないですね。

森本:世界中回れるようなギタリストになれるといいですね。

―頑張ってください。

森本:頑張ります!ありがとうございます。

インタビュー・撮影:小野寺将也

森本隆寛

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