
―ヌビアさんの活動を見ていると、マルチクリエイターという言葉ではくくれない「強さ」のようなものを感じます。
嬉しいですね、「マルチだね」と言われるのがあまり好きではなくて(笑)
もちろんやっていることの種類を考えれば、マルチであることに変わりはないのですが。自分としてはすべてにその時その時の全力を賭けて挑んでいるつもりで、そう出来ているなと思っているものだけをプロフィールにしているつもりなんです。
たとえば動画編集も好きですし、絵を描いたり料理とかも好きですけど、それをわざわざ名乗りに含めるかと言われればそういうものではないですよね。
でもチェロや作詞作曲などは違う。自分が体当たりで挑み切っているプロジェクトについては、いつだって全領域においてプロフェッショナルとして、最高峰のクリエイティブを生み出しているぞという気概を持ってやり切っています。
そしてもちろん見上げれば果てがなく、結局数えきれない失敗をして傷だらけですが(笑)。それでも周りに恵まれ支えられて今こうして活動できている、それにただただ感謝です。
だから一絡げに「マルチ」とくくられてしまうと、どうも軽い感じがして(笑)。ありがたいことに、チェロ奏者としての活動だけでも十分に道はあったと思います。それでも僕は、たくさんの道や可能性を選び、同じだけ捨てながら今ここにいる。
生半可な気持ちでこの道を選んでないよというか。もちろん悪意なく言われることがほとんどですし、そう言われないようにこれからもひたすら精進していきたいと思います。

―そんなヌビアさんが結成している、津軽三味線 しゃみおさんとのユニット「3x4xS(さしす)」がワールドツアーを開催するということで、ヌビアさんの考える3x4xSの魅力を教えてください。
3x4xSは「三味線とチェロで出来る表現、すべてに挑んでいこう」というテーマを持っています。
J-POPはもちろん、EDMからロック、時にはダブステップ、DnB(ドラムンベース)、さらには即興演奏も。演奏場所もホールからライブハウス、野外フェスからホテルまで。
これだけのことができているのは、相方であるしゃみおさんがいてこそのものです。枠にはまらない彼が、僕の中に生まれる凝り固まった部分や「壁」のようなものをいつだって壊してくれる。
3x4xSの演奏や活動に限らず、人生のあらゆるターニングポイントやブレイクスルーの瞬間に彼の存在があります。
だからこそ、そんな彼とツアーが出来るということが本当にかけがえなく、ワクワクばかりです。
あ、彼が「三味線を日本の伝統楽器ではなく、世界の楽器にしたい」とよく言うのですが、そこも意識していますね。
例えば和ロックを前面に押し出す、とすればもちろんウケがいいのも分かっている上で、それは自分たちの役割ではないなと。
大衆的なスタイルは崩さずに、「これが三味線!?これがチェロ!?」というような表現を考えていく楽しさが3x4xSにはあります。
武道館やメジャーデビューを目指すぞ、というようなアーティストとはまったく異なる活動スタイルですが。まさに「自分が楽しいと思える」を集約したものが3x4xSなのだと思いますし、それこそが魅力なのかなあと。

―ヌビアさんは、あのファイナルファンタジーシリーズの音楽を手がけた植松伸夫さんの音楽ユニット「植松伸夫 con TIKI」にも参加されていますよね。出会いのきっかけや、植松さんの傍で感じていることなどを聞かせてください。
植松さんに出会ったきっかけはそれこそ相方のしゃみおさんなんですよ。元々はしゃみおさん個人に植松さんと共演するオファーが来ていて、それが一回流れてしまって。再度そのお話が復活した時に「どうせなら3x4xSで」という話をしゃみおさんが主催者側にしてくれたんです。
そうして共演させていただいた時に植松さんから、「前から自身の曲にチェロを使いたいけどなかなかイメージに合う方がいなかった」という話を聞きまして。どうやらそこに僕の「クラシックのスタイルとは少し違う」演奏スタイルがはまったようです。
実は僕はファイナルファンタジーシリーズを全然通ってこなかった人生で、それもご本人に隠さずお伝えしていたんですが。
逆にそれが良かったみたいなんですけどね。失礼ながら、最初con TIKIにお誘いいただいた時は「社交辞令かな……?」と思っていたくらいですし(笑)
僕がユニットへの参加を決めた理由はファイナルファンタジーの音楽だけでなく、植松さんがいま進めているcon TIKIのオリジナル曲そのものでした。短いオリジナルの物語に音楽を合わせて届ける、という活動をされていて、それが僕の今追求したいことに一番合致していた。
シーンが提示された時そこにどんな音を載せるのか、こういう情景にどんなメロディーを重ねるのか……単なる作曲家単体としての技術だけでなく、そういう多層的な視点や解像度の深さを一番近い距離で学び、盗んでいく。本当に恵まれているなと思います、これほどありがたい環境はありません。
―今回のツアーファイナルにはその植松伸夫さんや、VTuberのレヴィ・エリファさんがご出演ということですが、各地方公演やファイナル公演についての見どころを教えてください。
各地方公演は我々3x4xSが二人で周っていくスタイルになります。一部ピアニストが参加したりする公演もありますが。
これについては、普段東京近郊で活動することが多い我々の演奏を、なかなか聞きにこられない遠方の方に届ける機会を作りたいということがまず第一です。
やはり距離というのは大きなハードルで、そこを乗り越えて来てくれる方もありがたいことに多いですが、みんながみんな思い切れるわけじゃない。
だからまず僕らの方から自己紹介をしに行きたいなと思うんです。ネットで見るのと生演奏の感動はこんなにも違うんだぞ、という。
ファイナル公演については「初めての人からそうでない人まで、より大きなワクワクを届けたい」という思いがあります。
僕は全然知らないアーティストのライブに行く時、やはり「置いてけぼりにされる」感覚をどうしても覚えてしまうことが多く、3x4xSについてはそれを払拭できるような演出や構成をいつも考えています。
もちろんこれも人それぞれではありますが、僕は「自分がまず楽しむ」を掲げる以上、ここはブレたくないポイントです。
その点において3x4xSは非常に強く、まず「三味線とチェロ」という組み合わせの時点で前例がないため、みんなの入り口をある程度揃えられる。だって(3x4xS以外で)聞いたことがないものですし、だからこそ誰とでも一緒に舞台を作れる。
さらに我々には「即興演奏」があります。これも来てくれる人全員にとって平等に存在できるものです。その場で生まれる音楽を、その場の全員で楽しむ。
そしてそれらを組み込みながら、自分たちのオリジナルも含めて楽しんでもらえるような演出を作る。僕らの元々のファンはもちろん、日頃からお世話になっている植松さんやレヴィさん……色々なきっかけで来てくれる方がいることを認識し、その入り口の全てを大切にしながら公演を作りたいと思っているんです。
もちろんすべての人を楽しませることは不可能ですが、相方の言葉を借りるなら「誰も置いていかない音楽を目指す」ことを大切にしたいと思っています。なのでまずは気楽な気持ちで楽しみに来て欲しいですね。
そのためにまず自分は相方と二人三脚しながら、持てる全能力を駆使してこの公演を組み上げていきたいと思います。

―最後に、ヌビアさんが描く今後の目標や夢などがあれば教えてください。
うーんそうですね、もちろん脳内には長期の目標や大きなビジョンがあることにはあるのですが。
結局それを達成するためには、目の前のことを一個ずつ、地道にクリアしていくしかないんですよね。こんな型破りな活動スタイルのくせして、何事にも近道なんてないと、それこそ夢のない考え方をついついしてしまいます。
それに大きな目標を言ってしまうと、それこそ「最終回のネタバレをした上で進む」みたいな感じがしてしまって(笑)。
奏者として叶えたかった景色のいくつかは、ありがたくも早い段階で既に見せていただいたので。今は「全力で楽しむ」ことに集中したいと思いますし、それをブラさず追求した先に、自分の求める答えが手に入るのかなと感じています。
そして「全力で楽しむ」ためには、それに一緒に付き合ってくれる仲間が必要なわけで。
色々な人と出会い関わっていく中で、自分でも予想できないような結末を辿ることができたら、この物語はきっと大層ドラマティックなエンディングを迎えるだろうなと信じてますよ(笑)。
奏者として独自の技術と表現力を持ちながら、常に年間150曲以上の曲制作に携わり、さらにオリジナル脚本の舞台を企画する。そのアクティブで豪快な活動スタイルとは裏腹に、ヌビアの口からは「ありがたい」「恵まれている」という言葉が度々繰り返されていたのが印象的だ。
それが彼の、業種の垣根を超えて人を惹きつけている理由の一つなのかもしれない。飽くなき好奇心と、心の奥からの表現欲のままに。彼は真っ直ぐなまなざしで、今日も自身の「表現」のその先を見据えている。
インタビュー:木本
【3x4xS機材紹介】2024.4.13@吉祥寺CLUB SEATA 3x4xS JAPAN TOUR「新響地」THE FINAL ライブレポート 












