桜が咲き始め、観光客で賑わいをみせる九段下。その人波を花道に変えるかのような足取りで、LOVEBITESのファンたちは約束の地へ向かった。

2026年3月29日、5人組ヘヴィメタルバンドのLOVEBITESが、日本武道館で初の単独公演を開催。完全ソールドアウトを果たした会場の空気は、開演前からすでに沸点に達していた。

5人が武道館前に集うオープニングムービーが流れ出すと、フロアの期待が声になって弾けていく。そんな客席の目醒めを加速させるように、1stフルレングスアルバム『AWAKENING FROM ABYSS』収録のインスト・ナンバー『The Awakening』が鳴動。ドラムを覆っていた幕が天井に吸い込まれていくと、LOVEBITESの5人が姿を現した。

The Hammer Of Wrath』を轟かせながら、真っ赤に染まった階段をメンバーが降りてくる様が神々しい。バックスクリーンに5人全員の笑顔が同時に映し出される光景も、この夜が本物だと告げるようだった。

このステージは、ファンとメンバーがトップスピードで愛をぶつけ合う公演だったと感じる。5人は勢いそのままに『When Destinies Align』『Rising』と、これまでバンドの歴史を刻んできた曲たちを怒涛のように披露した。

すでに最高潮のステージは、MCになっても拍手や歓声が止まらない。Asamiが「見て、天井に人がいる!」と声をあげると、フロアもどっと沸く。そして初の日本武道館であり、完全ソールドアウトであった喜びをファンと共有しあった。

この公演は、練り上げられたセットリストにも注目だ。跳ねるようなイントロで始まる『Unchained』からFamiによるベースソロを挟み『Stand And Deliver (Shoot ‘em Down)』へ。地を揺らすような重さを持たせつつも、間口の広さも失わない。この場にいる誰も置き去りにしないという、メンバーの意志が選曲に滲んでいた。

続けて鳴り響いたのは、歪むイントロからパワーコードへと降りるメロディラインが魅力の『Soldier Stands Solitarily』。途中で発動したステージに火柱が上がるギミックは、2階席にも熱波が届くほどの勢いだった。

MCではAsamiが「2025年にアメリカツアーから帰ってきて、日本でのステージは11月のファンクラブ限定ライブが最後でした。そこからの今日なので結構みんなドキドキしていたの。でも始まってみたら……最高ですね!」と力強くメッセージを届け観客を盛り上げる。

そして2026年2月に発売したフルアルバム『OUTSTANDING POWER』について言及しつつ「その中から一曲いっちゃいますか?」と一言。ライブ初披露曲『The Castaway』が始まった。落雷のようなスポットライトに照らされながら、まるで避雷針のようにお立ち台の上でギターを打ち鳴らすMidoriが眩しい。

流れが変わったのは、重心を落としたテンポで紡がれる『Dancing With The Devil』だ。速度を絞った分だけ、リズム隊の練度が地肌で伝わってくる。

ステージの転調は続く。真っ白なグランドピアノに歩み寄り、ショパンの『革命のエチュード』を奏で始めたのはMiyako。疾走する旋律を一音ずつ手渡す繊細さに、オーディエンスはただただ息を飲んだ。

ピアノの独演が生んだ緩急は、うねるグルーヴが猛る『Swan Song』へとなだれ込む。一度はギターへとチェンジしたMiyakoも、アウトロではまた鍵盤へと手を伸ばす。その振り幅が、彼女の底知れなさを物語っていた。

続けて披露されたのは、カントリー調のイントロが耳を引く『Addicted』。タイトル通りLOVEBITES中毒になったオーディエンスたちが、サビで一斉に手を挙げる様子が印象的だった。

後半戦に差し掛かった頃、「スマホのライトをつけていただけますか?」の声を皮切りに、武道館が光で埋まっていく。満席の光景を目の当たりにしたAsamiが目を輝かせ、「あなたのこれから生きていく世界がいつまでも輝き、そして美しくありますように」と静かに言葉を落とした。

そして今度はAsamiがピアノへと向かい『Eternally』を弾き始めた。そっと光あるところへ導かれるような旋律が、武道館を柔らかく包んでいく。しかし一瞬の静寂を挟んだのち、牙を剥くようなメロディが鳴る『Someone’s Dream』を叩きつけ、観客の情緒を揺らす5人。タッピングで低音域まで支配するFamiの指さばきは、恐ろしさすら覚えるほど魅力的だ。

このタイミングでAsamiが「ヘヴィメタルに挑戦する茨の道は、10年目にしてようやく形になった気がします」と語る。そしてファンのことを、同じ志を持った仲間だと評すると、フロアからも歓喜の拍手。その後も感謝の言葉を口にするたび、どこか涙声をにじませていた。

最後には「出会ってくれたすべての人に、LOVEBITESを愛してくれる世界中のすべての人に心から感謝します」と言いながら、メンバー全員がお辞儀。すると、あらたな門出を祝うがごとく雄大なメロディが。世界の栄光を願う歌『Glory To The World』を華々しく披露した。

まだまだいくよ!全部見えてるから」と言いながら5人は、観客と共創できる楽曲『Golden Destination』と『M.D.O.』を重ねていく。『Under The Red Sky』ではなんと、ヴァイオリン6名を加えたアレンジバージョンで披露。重なるほどに厚みを増す弦の音が、メタルの轟音に絡みついた。

ステージに人が増えるほど際立つのは、Famiの笑顔だ。その穏やかな雰囲気とは裏腹に、奏でる音は一切ぶれることを知らない。無邪気さと精度が同居するギャップが、武道館の熱をさらに押し上げた。

続く『We The United』のイントロでAsamiが「Everybody, hands up!」と叫ぶと、フロア全体がたまらず両手を突き上げる。このやりとりが、もはやシンプルに楽しすぎてたまらない。

観客たちの様子もそれぞれだ。拳を振り上げ弾けるように楽しむ者もいれば、一音ずつ噛みしめるようにステージを見つめる者もいる。ただ全員に共通していたのは、LOVEBITESを愛していること。そのフロアを前にAsamiが「最高だ武道館!」と叫び、メンバーはステージを去った。

「LOVEBITES!LOVEBITES!」まだ終わりたくないとばかりに叫ぶ観客たち。アンコールの空気を切り裂いたのはなんと、Harunaによるドラムソロだった。バスドラを起点に、祭の太鼓のように打ち鳴らす。音が積み重なるにつれ椅子から立ち上がり、フィルインはさらに自由になっていく。和の空気をまといながら、海外で鍛え抜いた底力がそこに宿っていた。途中フロアへハートマークを届け、観客を沼らせる一面も。

誰しもがHarunaの一挙手一投足に釘付けになっていると、気付けばステージにメンバー全員が集合。アンコール一発目は、ツインギターとベースによるユニゾンが鋭い『Holy War』で幕開け。

ステージの終わりが近いなかでも、Midoriのギターが放つ熱量は武道館の後方にまで届いてくる。音だけではない、音楽を楽しむその姿勢こそが、観るものの鼓動を早くしているのだ。

あっという間に舞台はクライマックスへ。「LOVEBITESはここから始まったんだ」とAsamiが叫ぶとともに鳴り響いたのは、彼女たちのデビュー曲『Don’t Bite The Dust』。

LOVEBITESと描かれた大量の大型バルーンたちがフロアを舞い、一つがMiyakoのもとへ漂い着く。ギターの切先が触れた瞬間、バルーンが弾けた。驚きながらも、Miyakoはさらに音圧を上げていく。

Asamiは曲が終わろうとする寸前「今日のこと一生忘れない。ありがとう武道館」と言葉を紡いだ。鳥肌ものの純粋な愛のメッセージに、ここに居合わせた者たちがホーンズを掲げ応えた。

ゴールドの紙吹雪が舞う中、いよいよステージは終わりを迎える。5人の表情には、やり切った者だけが持つ清々しさがあった。自然発生したLOVEBITESコールに送られながら、メンバーはステージを後にした。

ライブの途中、Asamiはこう語っている。「LOVEBITESの終着点がどこなのか、私たちにもわかりません。でも続けるしかないんです。なぜなら私たちは、音楽なしでは生きられないから

その言葉の重さが、武道館の熱とともに胸に残った。

取材・文:川上良樹
Photo:Hajime Kamiiisaka、Makiko Takada、Ryutaro Saito、Takumi Nakajima

《SETLIST》
  1. 01.The Awakening
  2. 02.The Hammer Of Wrath
  3. 03.When Destinies Align
  4. 04.Rising
  5. 05.Unchained
  6. ~Bass solo~
  7. 06.Stand And Deliver (Shoot ‘em Down)
  8. 07.Soldier Stands Solitarily
  9. 08.The Castaway
  10. 09.Dancing With The Devil
  11. ~Piano solo~
  12. 10.Swan Song
  13. 11.Addicted
  14. 12.Eternally
  15. 13.Someone’s Dream
  16. 14.Glory To The World
  17. 15.Golden Destination
  18. 16.M.D.O
  19. 17.Under The Red Sky
  20. 18.We The United
  21. <ENCORE>
  22. ~Drum solo~
  23. EN1.Holy War
  24. EN2.Don’t Bite The Dust
LOVEBITES

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9月26日(土) 東京・Zepp Haneda
詳細はLOVEBITESオフィシャルサイトへ
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2024年のワールド・ツアー「The Thin Line Between Love And Hate」を経て、2025年に入ってすぐからバンドは本格的に作曲フェーズに突入。EP『LOVEBITES EP II』を携えてのジャパン・ツアー「Eternal Phenomenon」とも並行して強力な楽曲を作り続け、ツアー後は制作に集中。8月からは、11月頭に「Eternal Phenomenon」米国版で渡米する直前まで、約2ヶ月にわたってレコーディングを行った。その音源は、ミッコ・カルミラ、ミカ・ユッシラというフィンランドの名匠エンジニアふたりの手によって、それぞれミキシング、マスタリングが施され、そのタイトルのとおり、「尋常ならざるパワー」が充満した傑作が完成した。オリジナル・フル・アルバムとしては、オリコン週間アルバムランキングにおいて初登場5位を記録した『JUDGEMENT DAY』以来、実に3年ぶりとなる。

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