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最後の最後まで思いを感じあえる、このひとときが本当に幸せだ。
久宝留理子が毎年恒例のバースデーライブ、その名も“久宝留理子 Birthday Live 2024「元気です!Vol.13」”を、誕生日当日の4月21日にGEMINI Theaterで行った。この日のメンバーは、大槻隆(Gt)、細野あきこ(Sax) 、小野寺みなほ(Key)、KEN (B)、實成峻(Ds)と、お馴染みの面々。まさに、久宝留理子らしさを存分に発揮出来る姿を持って、ライブに臨んでいた。
バンドメンバーらのセッション風の演奏からの幕開け。絡み合う音が熱を上げるのに合わせて、場内中からも熱い手拍子が沸き上がる。そこへ、久宝留理子が高く手を振り上げて登場。そのまま『泣くだけ泣いたらおやすみ』へ。久宝留理子やメンバーらの誘いを受け、演奏に触れながら心地好く身体を揺らしていると、少しずつ意識から現実が遠のいてゆく。軽快に駆けるギターの旋律や、演奏の上を自由に飛び交うサックスの音色も、心を楽しく揺さぶる。何より、ときに振りも交えて歌い踊る久宝留理子が笑顔だ。「楽しい」空気が、場内中をどんどん包みだす。そんな雰囲気が、この場に生まれていた。「泣くだけ泣いたら」「おやすみ」と、観客たちとかけあう様も楽しい!
力強く走り出すように、『プライド』へ。場内中から熱い声と拳が突き上がる。久宝留理子は、スタンドマイクに設置したマイクを力強く握り、凛々しい声で歌いあげる。「プライド」の声に合わせ、場内中から熱い声と手が振り上がる。その様を通して、互いに長く信頼関係を築きあってきたことを実感。熱を求めあうというよりも、互いに自然体で歌や演奏に酔っていくうちに、何時しか場内に熱を作り上げていた。そんな関係なのが素敵だ。
誕生日を迎え、“GO!GO!な気持ち”でいることをMCで報告。この「Birthday Live」シリーズは、子育てが少し落ち着き、活動を再開して以降から始めた企画シリーズ。すでに、12~13年経っていることにも感慨深い思いを述べていた。「元気ですか!?」「元気でーす!!」のやりとりも、めちゃめちゃ熱い!!
跳ねた演奏の上で、久宝留理子自身も気持ちを弾ませるように『いっそ牢屋で眠りたい』を歌唱。シャキシャキッと掻き鳴らされるギターの音やタイトな演奏の上で、軽やかにステップを踏むように歌う姿も胸を弾ませる。観客たちも、手拍子をしながら一緒に演奏へ参加。この場にいるだけで体温が自然と上がっていく、その感覚が心地好い。
ブルージーなセッション演奏を受け、久宝留理子のカウントする声を合図に飛びだしたのが『コンクリートジャングル』。少し挑発するような様も見せ、彼女は歌っていた。 サックスの細野あきこもコーラスで参加。ときにエモーショナルに、ときに女性としての恋する生き様を示し、相手へ問いかけるように歌う。その姿に視線が引き寄せられつつ、身体はしっかりと揺れ動いていた。
ノイズのような音も出しながら、ギターの音が激しく嘶きだす。そこへドラムカウントが入るのを合図に、久宝留理子が「乾いた唇」と『reduce(リデュース)』を雄々しく歌いだした。歪むギターのソリッドなカッティング音とは対象的に、エモーショナルな声で歌う。そのコントラストも魅力だ。言葉のひと言ひと言へ強く感情を込めて歌う、その声を受け止めた人たちの気持ちも、同じようにエモい感情に染め上がる。そう感じたのも、互いに気持ちと気持ちが繋がりあっていたからだろう。
MC で、「ここは競技場?みたいな、アスリートな気分になっている」と語っていたくらい、すでに場内にはムンッとした熱気が立ち込めていた。
次のブロックの始まりは、昨年シングルとしてリリースした『サクラサク空の下で』から。この曲の制作時は、まさにコロナ禍中。ソーシャルディスタンスな環境の中で作っていたことや、当時、感じていた思いもMCで語りつつ、演奏へ。
タイトルそのままに「サクラサク空の下で」と歌いだす『サクラサク空の下で』は、温かな春の日射しも覚える楽曲。胸の内に抱いている思いを、久宝留理子は声の風に乗せて運ぶように歌っていた。攻めるような歌声も魅力だが、温かな思いを優しい声色で歌う姿にも心惹かれる。この曲で細野あきこはフルートを携え、歌声の花びらを舞い上がらせるように音色を奏でていた。いくつもの管楽器やコーラスを担当、彼女のマルチな楽器の演奏ぶりも、久宝留理子のライブに華やかな色を添えていた。
ふたたび軽快に駆けだすように、『キャンセル待ちじゃない』が登場。歌声も演奏も軽やかながら、踏み出す一歩一歩に強さを覚える。とくに大槻隆の奏でるギターの音に躍動した熱を覚えるからこそ、軽やかに弾む久宝留理子の歌声にも熱を感じずにはいられなかった。
ここからは、しっとりとした楽曲のブロックへ。このタイミングのMCでは、アメリカで行うイベントに呼ばれた際、ライブとライブの合間の期間にプライベートで巨大なクルーズ船に乗って過ごした話なども織り交ぜつつ、ライブを行ったデトロイトは自動車の街ということから、車のCMにも起用された楽曲をデトロイトのライブでは歌ったという話をしていた。その話を受けて歌ったのが、日産自動車「STAGEA」のCMソングとして流れていた『次の夢』。
久宝留理子の歌う声を始まりに、そこへエレピの音色が優しく寄り添いだす。揺れ動く心模様と重ねあうように、久宝留理子の歌う言葉のひと言ひと言も、感情の波を生み出すようにエモーショナルに揺れ動く。そこへ、アコースティックギターの旋律も温かく折り重なる。少しずつ感情を露にするのに合わせて、他の楽器陣の演奏も加わりだし、場内にいる一人一人の心を揺さぶりだす。見惚れるのはもちろん、揺れ動くその温かい歌声を、零すことなくしっかりと胸に受け止めていたい。そんな気分で、『次の夢』を歌う彼女の姿を見つめていた。終盤には、観客たちも歌に加わり、温かな合唱を作りあげていた。
ソプラノサックスの音色をリードに、少しずつ熱を上げるように『雨やどり』を演奏。少し速度を上げた楽曲の上で、久宝留理子は哀切さも抱いた歌声を、ときに壊れそうな色を持って、ときには声を張り上げ、切ない思い出に浸る女性の心模様を歌声の絵筆で描き現していた。
続く『道』では、低音域の声色も活かしながら、愛しい人との寄りを戻せるならと少しの希望も込めた声を持って、すれ違う恋心を切々と歌っていた。彼女が『道』を通して綴れ織った恋の物語は、気持ちを生々しく投影した声を通すことで、より膨らんだ心模様として胸に響いてきた。だから『道』に触れながら、胸をギュッと締めつけられるような思いを感じていたのかも知れない。
ここで、アコースティックギターの音色なども加えた形で、ロバータ・フラックの『Killing Me Softly With His Song』をカバー歌唱。とても艶のある、大人の色気を持った歌声だ。歌詞のひと言ひと言に深みを与えるように歌う久宝留理子に、この曲もとても似合う。つい聞き惚れてしまうのも、当然だ。
ギターを手にした久宝留理子が、ジャーンと弦を掻き鳴らし、歪んだ音に乗せて歌いだしたのが『MY LOVE, MY SOUL』。彼女のストロークするギターの音の上に、野太いギターのフレーズを奏でる大槻隆の姿も印象的だ。楽曲は、ふたたび音の風を吹かせるように駆けだした。久宝留理子みずから、掻き鳴らすギターの音と歌声をシンクロ。間奏では、ブルースハープも演奏。歌い手としてのみならず、楽器奏者としても豊かな表現力を持っている姿を示してくれたのも嬉しい。
その心地好さへ、さらに熱情した風を吹かせるように、久宝留理子と大槻隆が向き合いながらギター演奏のバトルを始めた。その音がロックンロールの演奏に乗せて走り出すのを合図に、『Dreams』へ。場内からも「このまま夜を超えて」の声へ思いを重ねるように熱い声が飛び交いだす。観客たちのクラップや上げる声も演奏に加えながら、久宝留理子は気持ちを揺らすロックンロールなパーティーを目の前に描きだす。途中には、メンバーと観客たちが「HEY!HEY! HEY!HEY!」と熱い声を交わす場面も誕生。曲が進むごとに観客たちの声のボリュームが上がりだす様を通して、この空間へ一緒に楽しさを作りあげているのを感じていた。
さらに、夢へ夢を描き加えるように『あの空に続けDream』へ。スケールが大きくてドラマチックな展開を描き出す楽曲だ。久宝留理子も、高く振り上げた両手を打ち鳴らす。高らかな気持ちに胸を染め上げ、ときにスタンドマイクに置いたマイクをしっかりと握り、視線の先に捉えた空の、その先に広がる夢の景色に向かって歌いあげていた。
ライブも、後半へ。『早くしてよ』の演奏が始まるのに合わせ、久宝留理子と観客たちが掲げた両手を左右に大きく振り出した。甘い歌声を響かせ、観客たちのハートを刺激する。ポップでメロディアスな楽曲のように、彼女と一緒に歌を口ずさみながら、このまま心地好いひとときを味わい続けたい。メンバーの動きに合わせて大きく揺れ動く手の動きや熱い手拍子が、久宝留理子と心を一つに溶け合わせていた観客たちの心模様を映し出していた。
そこへ、さらに熱を降り注ぐように、最後に『「男」』が飛び出した。久宝留理子の「Come On!!」の声に合わせ、場内中から熱情した野太い声が響き渡る。目の前にいる満員の観客たちを挑発するように歌う彼女の姿が、さらに気持ちを熱く掻き立てる。サビでは、会場中の人たちが「Ai Ai Ai Ai 愛してると」と歌い、久宝留理子が「くり返し言ってるじゃない」と歌い返せば、ふたたび観客たちが「Ai Ai Ai Ai 愛がたりない」と歌い、彼女が「ふざけないで わがまますぎ」と、お馴染みの熱いやりとりを繰り広げていた。一緒にシンガロングし、ライブであるべき『「男」』の形を作りあげる。何度も繰り返される熱情したこのやりとりを交わしあってこそ、久宝留理子のライブ。終盤になるにつれ、観客たちがサビを歌う頻度が増してゆくところも、思いをぶつけあうライブらしい景色だ。
アンコール前には、この日が誕生日だった久宝留理子のために、バースデーのサプライズ演出も。そのうえでアンコールは、ザクザクと音を刻むギターと熱い手拍子に乗せて『薄情』を熱唱。チョーキングするギターの音に合わせて、身体を横に揺らす久宝留理子の動きも愛らしい。シャキシャキッと音を響かせるギターをストロークするリズムと歌声を合わせるように歌う様も活かしている。サビでは、挑発するように歌う久宝留理子に向けて、場内中から指差す多くの手が上がっていた。間奏では、細野あきこの吹くサックスの音色に合わせて心地好く身体を揺らし、歌が始まると、ふたたび観客たちを熱く挑発。その姿を見て、一緒に熱を分かち合わずにはいられなかった。
久宝留理子のライブと言えば、最後の最後はやはりこの曲だ。ここに集まった仲間たちとのしばしの別れを惜しむように、愛しい思いを声に乗せて、久宝留理子は『泣かずにいられない』を届けてくれた。とても温かな、そこへ深い思いを覚える歌声だ。場内中の人たちも優しく手を鳴らし、ふたたびこの場を分かち合う日までしばしの別れを惜しむように。いや、この日に感じあい、分かち合った一つ一つの思いや思い出をしっかりと胸に刻むように、一緒に「LA LA LA~」と歌い、手を打ち鳴らしていた。終盤には、観客たちの大きな大きな合唱と手拍子が誕生。最後の最後まで思いを感じあえる、このひとときが本当に幸せだ。
TEXT:長澤智典
Photo:Futa
《SET LIST》
- 1.泣くだけ泣いたらおやすみ
- 2.プライド
- 3.いっそ牢屋で眠りたい
- 4.コンクリートジャングル
- 5.reduce
- 6.サクラサク空の下で
- 7.キャンセル待ちじゃない
- 8.次の夢
- 9.雨やどり
- 10.道
- 11.Killing Me Softly With His Song
- 12.MY LOVE, MY SOUL
- 13.Dreams
- 14.あの空に続けDream
- 15.早くしてよ
- 16.「男」
- <ENCORE>
- EN1.薄情
- EN2.泣かずにいられない
久宝留理子
2024.8.14(水)GEMINI Theaterにてライブ開催決定!
8月14日(水)GEMINI Theater
久宝留理子のバラードからカバーまで魅力たっぷりにお酒とお食事と共に真夏の夜に大人な空間をお届けします。
チケット詳細等は決まり次第、久宝留理子ホームページ、Xにてお知らせします。お楽しみに!
http://www.drops-rk.jp