安藤秀樹
ブルージーなギターの音色が、気持ちを嬉しく騒がせる。安藤秀樹はいい感じでしゃがれた声の色も混ぜながら、この空間に燦々とした歌の光を降り注ぐように『どなんの光』を歌唱。開けっ広げな性格と歌声に触れていると、無条件に気持ちが騒ぎだす。安藤秀樹は、冒頭から熱い熱い姿を見せてきた。
熱を浴びたこの空間へ、さらに眩しい笑顔の光を降り注ぐように、安藤秀樹は『笑顔にBANZAI』を歌唱。言葉のひと言ひと言が、とても明瞭に伝わる。たとえ初見の人だろうが、すぐに歌詞へ記した思いと気持ちを重ねあわせ、一緒にいろんなドラマの中へ溶け込み、共に青春の息吹を感じていけるのが嬉しい。フロア中の人たちも、最初から熱い手拍子を舞台の上に届けていた。
エレピの前に座った安藤秀樹が、足立区千住にある地元の中学の校歌を軽く歌ったあとに届けたのが、”ときめいた恋心を”や”切なさに心濡れる思い”を歌にしたバラード『もしも叶うものなら』。惑い、揺れ動く心模様を、コードを鳴らす音の上に乗せ、ハートフルな歌として届けていた。間奏で響かせたギターの泣いたブルースの音色も胸をキュッと締めつける。それ以上に、思いを募らせるほど揺れ動く気持ちを込めて歌う安藤秀樹の声に、どこか切なさを覚えていた。
今は亡き盟友・有賀啓雄が手がけたバラードの『さよなら愛しのbabyblues』でも安藤秀樹はエレピを弾きながら、歌唱。切ない男の心模様を、彼はむせび泣くブルースの音色に乗せて歌う。切ない中にも、ただ悲しみに暮れるだけではなく、後悔する気持ち振りきるように歌っていた姿も印象深かった。
夜公演は配信もあり、2週間アーカイブが残るライブにも関わらず、MCでは、電波に乗せてはヤバそうなトークも軽妙にしてゆくところが、安藤秀樹らしさ!?
『蓮の花LOTUS』からは、ふたたびフロア中の人たちを立ち上がらせ、熱い手拍子も導きながら、この空間に夢あふれる世界を描き出す。いや、気持ちを奮い立て、未来へ突き進めと強い意志を胸に熱く歌っていた。「青い空に夢いっぱい描き続ける人生だ」の言葉を受け止めるたび、彼から熱く生きろよとエールを送ってもらえる気分になれる。終盤には、観客たちも巻き込み、一緒に歌声を交わしあっていた。
「まだいくぞー!!この夏の鬱憤を晴らすぞー!!」の声を合図に歌ったのが、豪快に駆けだすロックンロールナンバーの『あっかんべー』。青春時代の自分に巻き戻し、気持ちが騒ぐままに、青春という輝きへ向かって、安藤秀樹と観客たちが一緒になって走っていた。ときに惨めな自分にさえあっかんべーをしながら、不器用な生き方でも必死に毎日を楽しんでいたあの頃の自分を巻き戻すように、全力で歌っていた。
時節柄にもあわせたのか、夏の甲子園中継のテーマソングとしても流れたことのある『交差点』を歌唱。ずっとずっと夢を追いかける姿は、いくつになっても変わらない。あの頃も、今も、安藤秀樹は夢を追いかける気持ちを胸に、未来へと続く道を探しては、目の前に見えた階段を一つ一つ登り続けてゆく。その夢が色褪せない限り、青春は終わらない。だから60代の安藤秀樹の歌やパフォーマンスからは、今も”若さ”という言葉が似合うパワーと存在感があふれ出てくる。
「心の青空へ」。ふたたびエレピの前に座り、安藤秀樹は心の中へ青空を浮かべ、その景色に向かって思いを響かせるように、思いを込めてバラードの『青空に会いたい』を歌っていた。弾き語りで始まったパフォーマンスへ、気持ちを寄り添えるように楽器陣が次第に音色を重ねだす。真っ直ぐに思いをぶつける彼の歌声が、胸の内にダイレクトに響く。このまま歌に浸っていたい。終盤には、観客たちも歌に参加し、一緒に思いのハーモニーをこの空間に描き出していた。
アンコールでは、安藤秀樹が久宝留理子のために作った『道』を、舞台の上に久宝留理子も呼び寄せてデュエット。実は、ライブでの共演は、初めて。少しドキドキした姿の安藤秀樹も珍しい。人生の機微も重ねあわせた大人の女性の心模様を歌った『道』は、すっかり大人になった久宝留理子に、とても似合う歌として成長。色々な思いを胸に歌詞の一節一節を浪々と歌いあげる姿が、心にさまざまな景色を映し出す。二番は、安藤秀樹が熱唱。彼の歌声へ寄り添うように歌う久宝留理子。人生の機微を熟知した2人が歌う『道』は、まるでロックの演歌のようにも胸に届いていた。
最後に安藤秀樹は、エレピの弾き語りで『今元気でいるか』を、これからもずっと元気な日々を送り続けようと、世代の近い仲間たちにエールを送るように歌っていた。安藤秀樹の弾き語りへさりげなく寄り添う演奏も、同じ時代の中、必死に今日という日々を追いかけ、明日へ小さな夢を馳せる人たちへのエールの旋律としても響いていた。
昔からわかりあえている。そんな関係性を持った2人が、2MAN LIVEという形で共演。とても温かい空気に包まれたひとときだった。
PHOTO:中村義幸
TEXT:長澤智典
《SET LIST》
- 安藤秀樹
- 1.どなんの光
- 2.笑顔にBANZAI
- 3.もしも叶うものなら
- 4.さよなら愛しのbabyblues
- 5.蓮の花LOTUS
- 6.あっかんべー
- 7.交差点
- 8.青空に会いたい
- -ENCORE-
- EN1.道 with久宝留理子
- EN2.今元気でいるか
久宝留理子
2024.8.14(水)GEMINI Theaterにてライブ開催決定!
8月14日(水)GEMINI Theater
久宝留理子のバラードからカバーまで魅力たっぷりにお酒とお食事と共に真夏の夜に大人な空間をお届けします。
チケット詳細等は決まり次第、久宝留理子ホームページ、Xにてお知らせします。お楽しみに!
http://www.drops-rk.jp