確かに現実は、「お伽話みたいに上手くはいかない」。「だからこそ気付ける優しさがある」ことを、いつだってyucatは、ライブを通して気付かせてくれる。
パラレルワールド…そこは、さまざまな物語を詰め込んだ部屋が密集したアパートメントのようなものだろうか?そこへ足を踏み入れることで、僕ら、私たちは、現実に生きる自分を消し去ることが出来るのか?yucatは、僕らを冒険に連れてゆくメーテルなのだろうか??
これまでもyucatは、僕らの前にいろんな世界を見せてくれてきた。yucatと一緒にその空間へ足を踏み入れるたびに、僕らは現実を打ち消すドリーミーでファンタジックな世界の住人となり、その地に踏みとどまりたい衝動に駆られる…と思っていた。でも、どの世界も、現実以上の悲しみと、それでも希望や幸せをつかもうとする葛藤が渦巻いていた…。
僕らは、ただ、幸せを探し求めたくて冒険家yucatが繰り広げる旅についてきたし、今も、心に希望の種を植えつけてもらえると期待をして、yucatが用意した暴走マシーンに505号室の改札から毎回乗り込んできた。
今宵(6月30日)、yucatは「yucat ワンマンライブ PARALLEL LIVE vol.18 -May all your dreams come true-」と題し、品川クラブeXを新たな世界の舞台に選び、「あなたのすべての夢が叶いますように」と祈りを託すようにイリュージョンの世界へと手招いた。
ライブは、語り部(yucat)の言葉から幕を開けた。彼女が語ったのは、yucatがこれまでに歩み(旅をし)続けてきた道のりの記録と記憶。語り部は、最後にこう告げた。「“本当の”物語を取り戻すべく今宵も扉は開く」と…。
いくつものパラレルワールドという駅を巡るように、yucatは2人の妖精たちを従え、品川クラブeXに集いし乗客たちと共に『暴走マシーン』へ乗り込んだ。yucatの気持ちが高ぶるのに合わせて演奏が熱を上げれば、乗客たちも熱いクラップを鳴らし、身体を揺らしながら、急勾配さえ速度を落とすことなく走り続ける暴走列車の揺れに身を任せてゆく。誰もが、その刺激さえもこれから巡る物語を彩るための装具と受け止めていた。その刺激さえも、魂を熱く揺さぶる狂走曲として楽しんでいた。
目の前には、雷鳴が響く空間が広がりだす。幻惑の音色を操る全知全能の神と化したyucatは、荒れ狂う音が騒ぐ中、華麗に舞い踊りながら『Zeus』を歌っていた。我こそが世の中の心理や秩序を司る女神であるかのように、雄々しき声を張り上げ、ここに刺々しい楽園を描きだす。そんな彼女が、乗客たちの前で「心理の扉」を開くや…。
yucatは、「始まりの書」を手に、これから繰り広げる物語を語りだす。そこに記されていたのが…。
「PARALLEL WORLDの原動力は、人々が現実界で捨ててきた負の感情である。闇の力が強まり、ついには汚染が始まる。光と闇の戦いは留まる事なく、歴史は過ちを繰り返す…。
大地ノ物語﹁Gaia
雷ノ物語﹁Zeus
水ノ物語﹁Siren﹂
火ノ物語﹁Prometheus
風ノ物語﹁Aura
光ノ物語﹁Ether
闇ノ物語﹁Pandora﹂
この世界は歌で景色が変わってゆく」
書物を読みながらも、惑うyucat。その姿を天から見つめていた”プリンセス天功”が、「信じていれば奇跡は起こります」と声を響かせていた。
その言葉を受け、yucatは心の底から届けたい想いを込めて『Gaia』を歌いだす。荘厳で雄大な音色が、この空間を紅の色に染め上げる。オリエンタル/エスノサイコな演奏の衣を身にまとったyucatは、この大地を壊し、改めて無から創造するように、生まれ変わった新たな創造の星の中へ、パズルをはめ込むように新しい始まりの物語を次々と創り出す。
気がついたら、yucatは深い深い海の底へと身を寄せていた。蒼い海の色に塗り上げられた世界の中、優しい声で『Seiren~人魚姫ノ涙~』を歌いながら、孤独に泣き濡れる人魚姫の涙を泡に変え、ここではない何処かに生きる人たちへ、心の言葉を詰め込みながら送っていた。愛しくも切ないyucatの歌声には、人魚姫の焦がれる心が映し出されていた。
ふたたび、舞台の上に現れた2人の妖精たち。彼女たちは、「壊して創って何して遊ぶ?」とyucatに誘いかける。無邪気な彼女たちとは裏腹に、「もしもあの時、こうしていれば…。もしもあの時、言葉にしていたら…。もしも…もしも…」と、心の中で自問自答を繰り返すyucat。
たおやかでメランコリックな三拍子の音色に優しく身を寄せ、yucatは遥か遠くで優しい光を注ぐ月へ向け、思いを添えるように『MOONCLOWN』を歌っていた。微睡みを覚えるとてもメランコリックな音色と歌声だ。yucatは悲しみの翼を隠し、彼方に眩く光る星に希望という願いを捧げ、祈るように歌っていた。
プリンセス天功のかけた魔法を受け、yucatはオリエンタルな音色へ優しく寄り添うように『Ether』を歌っていた。癒えぬ心の痛みを消し去ろうと、彼女は言葉のひと言ひと言を艶やかで、たおやかな音色の風に乗せ、月が照らす無限に広がる夜の砂漠へ向けて響かせてゆく。
yucatが操る暴走列車は、果てのない路線の間に間に生まれた駅ごとに止まっては、その世界へと繋がる扉を開き、さまざまな嘆きや悲しみの物語を見せていく…。
Ayasaの奏でる荘厳で勇壮な弦楽(ヴァイオリン)の音色が響きだす。猛々しき衝動と情熱を抱いた『Rosenkreutz』の演奏は、破壊と創造がダンスを繰り広げるような様を創りあげていた。この会場を震撼させるが如く、荒ぶるバンドの演奏が鳴り響く。その音の上で、勇ましく沸き立つ気持ちをヴァイオリンの弦の音を奮わせながら演奏。今宵の演奏陣たちは『Medousa-破壊ト創造-』を奏でながら、悲しみが石化し、怒りや狂気に変貌してゆく一人の女性の心模様を、熱情した演奏に変えて届けていた。
yucatの音楽を形作るうえで欠かせないギタリストのYASHIROが、心の内を零すように弾き語りだしたのが『ひとりしずか』。YASHIROの歌う姿を見つめながら、やがて、共に心へ寄り添うようにyucatも透明な歌声を響かせる。2人の音と歌声が心の中で手を結び、互いに共鳴した想いが倍音を響かせてゆく。その様に、僕らはずっと魅入っていた。
yucat
12月札幌、大阪、東京でのツアー開催決定!!
12月札幌、大阪、東京でのツアー開催決定!!
PARALLEL LIVE Tour’23~闇ニ導カレシ野望~
http://www.yucat1031.com
※公演の詳細は随時公式HPでお知らせいたします。