続いてのセミナーパートは、先程に引き続きペダルボードの話。今度はボード内でのこだわりポイントとして、ディレイとスイッチャーに関する話を聞かせてくれた。

miyakoはバッキング、リード、ソロと大きく分けて3つのサウンドを使い分けており、このうちリードとソロにはディレイが掛かるように設定されている。しかし、以前使っていたアナログのスイッチャーでは、ソロの最後の音を伸ばしてバッキングの音に切り替えた際に、ディレイの残響音がブツッとカットされてしまい、ソロの余韻がバッサリなくなってしまう点が気になっていたそうだ。特にイヤモニをしていると自分の音がよく聞こえるため、ディレイの音が切れてしまうのが嫌だったという。CD音源のようになんとかソロの余韻を残したままバッキングの音に切り替える方法は無いものだろうかと頭を悩ませる日々を送っていた。

そんな中、ANTHEMと共に東名阪ツアーを回った際にANTHEMのリハーサルを見学していると、ギターの清水昭男氏の音はバッキングに戻ってもソロの最後の音のディレイが残っていた。どうやって実現しているのか清水氏に聞いたところ、ソロとバッキングで2つのアンプを切り替えて使用しているためソロの最後のディレイの余韻を鳴らしたままバッキングを弾くことが可能なのだという。しかし、そんな大掛かりなシステムはさすがにハードルが高い。すると、清水氏から、アンプを2台使わなくてもそれができる機材はあるはずだから調べてみるようにアドバイスされたそうだ。それを受け、テックスタッフに相談したところ、現在miyakoが使用しているスイッチャー、BOSS ES-8はディレイの音を残したままサウンドを切り替えることが可能なことが分かった。

BOSS ES-8

そうしてES-8を導入し、無事ディレイの残響音を残したままサウンドの切り替えが可能になったmiyakoであったが、更にディレイを細かく調整することができるように、BOSS DD-500を導入した。現在はチャンネルごとにディレイタイムの設定を変える等ES-8とDD-500を連携させ緻密なディレイ設定をしているのだそうだ。

BOSS DD-500

「美しくないですか!?」「かっこいい!」と最近入手し、EX THEATER公演でお披露目されたお気に入りのレスポールの杢目を自慢しながら(笑)、次の曲は「LOVEBITESではロック系のイケイケの曲はレスポールで弾きたい。気分はザック・ワイルドだと思いながらピッキングハーモニクスをギャンギャン入れながら弾いてる(笑)」という『Raise Some Hell』をGibson Les Paulで演奏。「私と言えばワウが必須。一番エグく掛かるのが良くてこのワウを買った」とJim Dunlop JP95 John Petrucci Cry Babyを紹介していたが(「“JP”はジャパンかと思ったらジョン・ペトルーシだった(笑)」という笑い話も)、このワウを使用したプレイもハードロックテイストの強い楽曲にマッチしていた。

Jim Dunlop JP95 John Petrucci Cry Baby

続くセミナーパートは、先程のスイッチャーの話からも繋がる、曲中の踏み替えについて。このセミナーが開催される数日前に公開されたYoutubeの「ROCK FUJIYAMA」にてLOVEBITESでのツインギターの相方であるmidoriの機材紹介が配信された。midoriはアンプ含めKemper Profiling Amplifierを使用しており、動画中でも語られていたように、Kemperのシステムがマニピュレーターの流すシーケンスと同期していて、曲中のシーンに合わせて自動的にサウンドが切り替わるようになっている。そのためmidoriは自分でスイッチを踏んで切り替える必要がなく、ステージ上を自由に動き回ってパフォーマンスすることができるのだ。

しかし、miyakoのシステムは前述してきたようにコンパクトエフェクターを並べたペダルボードと真空管アンプを組み合わせたもの。プログラマブル・スイッチャーであるBOSS ES-8を導入しているものの、midoriのようにすべてを同期してコントロールすることはできない。また、miyako自身の性分として「機械信じられない系(笑)」ということもあり、極力自分で踏み替えたいのだという。しかし、LOVEBITESの立つステージが大きくなれば大きくなるほど、ステージを広く使ったパフォーマンスも必要になってくる。曲によってはステージ中央やお立ち台に上がってツインリードのソロをキメるタイミングもあるだろう。そこで、miyakoは、自身の足元にあるものと同じBOSS ES-8を同期させて、ステージ袖のローディースタッフが操作できるようにもう1台用意することにしたのだ。これによって、立ち位置を離れたパフォーマンスをするタイミングのみローディースタッフに踏み替えてもらうことができるようになり、それ以外のタイミングでは自分で切り替えることができる理想的なシステムが完成した。

ローディー用に用意されていたBOSS ES-8スイッチャー。

そんな、ローディーによるサウンドの切り替えをフィーチャーしてデモ演奏するのは、「まだどこでも弾いてない」という、(セミナー開催時点で)ライブ未披露の楽曲『Soldier Stands Solitarily』。ギターソロのタイミングでのローディーによるサウンド切り替えも阿吽の呼吸のタイミングで決まり、更にこの場で初めて生演奏を見ることのできたこの曲に受講者たちからは惜しみない拍手と歓声が送られた。

最後に、受講者から機材に関する質問を募り質疑応答が行われた。ここではその中からいくつか抜粋してお届けしたい。

まず最初の質問は、「ペダルボードの中で今一番お気に入りのエフェクターはどれですか?」というもの。これに対しmiyakoはLUNASTONE True Over Drive 2を挙げ、その理由として、偏っていなくてなんにでも使えるという点を強調した。他のペダルは主張が強く好みに左右されそうな音で、実際miyako自身もギターによって使い分けているがLUNASTONEは様々なシチュエーションで使えるとしてそのユーティリティ性の高さを評価していた。

LUNASTONE True Over Drive 2

また、アンプに関する質問もあった。使用しているアンプのチャンネルやEQ設定、またバッキングとソロでの音作りの違いについて聞かれたmiyakoは次のように回答してくれた。

音作りとしては先程のセミナー内でも述べた通り、バッキング、リード、ソロの3種類を主に切り替えており、バッキングはアンプのリズムチャンネル、リードとソロはリードチャンネルを使用している。また、バッキング<リード<ソロの順でボリュームも大きくなるように設定されており、今回は会場の都合もありあまり差はつけていないが、実際のライブではリードになるとかなり音量が上がる設定にしてあるそうだ。また、バッキングはボード内の歪みエフェクターを掛けているが、ソロは歪みエフェクターは使わずにアンプの歪みをブースターでプッシュしており、このブースターが優秀で音が太くなりコシのあるサウンドが得られるそうだ。アンプのEQ設定に関しては、やはりメタルという音楽の性質上ロー感を大事にしつつ、中域は削り過ぎず出し過ぎずの塩梅に気をつけているのだという。色々なギターを持ち替えるので、どれか1本に特化しすぎるのではなく、バランスを見ながらセッティングしているそうだ。

Bogner Harlow

最後に取り上げる質問は、同じ楽曲でも時間を経て何度もプレイするうちに音作りは変わっていくのか?というもの。これに対しては、バンドの音を追求したり、見たライブから影響を受けたり、ツアーごとに機材をアップデートしたりと音が変わっていく要因はいくつもあると回答。楽曲ごとの音作りと言うよりは、使用するギターに対しての音作りにはなるが、ツアーごとに機材はマイナーチェンジしたり、大型アップデートをしたりしてサウンドも変わっていく。常に現時点で最高だと思う音になるようにしているが、明日には変わっているかも知れないとして、日々アップデートをしていく向上心と探究心の高さをうかがわせた。

最後にこれまでのセミナー内容を踏まえつつ、受講者たちに改めて感謝を述べ、『When Destinies Align』をプレイ。大きな拍手に見送られながらステージを後にし、大充実のセミナーは終了した。なお、セミナー受講者はこの後、実際にmiyakoが使用している楽器・機材を撮影することができた。ここでも本誌で撮影した当日の使用楽器・機材写真を紹介していこう。

当日の使用楽器・機材写真を紹介!

LOVEBITES

最新ライヴ作品『KNOCKIN' AT HEAVEN'S GATE - PART II』Now On Sale!!

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《各完全限定盤付属品》
<Blu-ray / DVD> ※完全生産限定盤A / B
ベーシスト・オーディションのドキュメンタリー+スタジオ・セッション4曲収録
「The Hammer Of Wrath」「Golden Destination」「Shadowmaker」「Bravehearted」
<CD> ※完全生産限定盤C
全10曲のインストゥルメンタル・ヴァージョン収録


modegear Miyako
ガールズバンドクライ Low Boy SILENT SIREN
NCIS LOVEBITES MONO
Fishman AFX Hofner BlackSmoker_BM_MISA