続く『さよならリフレイン』では、森田理紗子がエレピを演奏。彼女の穏やかなピアノの音色から楽曲はスタート。森田理紗子が弾き語りながら、切ない恋の思い出を振り返るように歌いだす。歌が進むたびに、切なさが胸の奥から込み上がる。そこへ、大野真依のドラムが優しく音を重ね、サビに入ると同時に全員の演奏が重なり、切ない思いをドラマチックに描きあげてゆく。愛しい人へ向けて、「あなたに届きますように」と歌う森田理紗子。曲が進むごとに感情の揺れと力を増してゆく歌声に心を揺さぶられていたからだろう。彼女の姿が、少しずつ滲んで見えていた。心の本音を焦がすように歌う、その恋心をしっかりと全部受け止めたかった。そんな森田理紗子の隣に、今だけは寄り添っていたい。この曲でも彼女たちは、この会場にいる一人一人を物語の中へと感情移入させていた。だから、その歌声を、言葉を、演奏を追いかけていたかった。清原梨央のギターの旋律も、胸を揺らしてくれた。

きみとバンドの強みは音楽の振り幅」だと、ここで清原梨央が伝えていた。

ふたたび森田理紗子がアコギに持ち替え、『シャボン玉』の演奏へ。ふわりと空中で揺れ踊るシャボン玉のように、淡い思いや切ない恋心を覚える歌だ。森田理紗子の歌声には、乙女が心に秘めた感情を零すように歌う曲がとても似合う。シャボン玉のような淡い思いが、すぐに消えてしまうのではなく、ずっと心に染み渡る。この曲でも、森田理紗子の告白するように語る歌声と揺れる思いの物語をずっと追いかけていたかった。

ドラムとアコギとエレキのアンサブルが心地好い。きみとバンドは、ゆったりとした心地よいウネリを描きながら『歌にのせて』を演奏。リードを取る森田理紗子の歌声が、この空間を心地よく舞いだした。その思いを受け止めたくて、場内を飛びかう歌声の風を、心の手を伸ばしてつかみ取ろうとしていた。胸に優しく響きながらも、切ない女性の胸の内を。壊れてしまった恋心や、いろんな思い出をくれたきみに向けての感謝の思いを、森田理紗子は伝えるように歌っていた。

温かくまろやかな空気へ気持ちを騒がせる熱を注ぐように、『きみが好き』を演奏。愛しい人に向けた「きみが好き」という思いを、森田理紗子と清原梨央が、晴れた歌声で真っ直ぐに届けてきた。明るく華やいだ気持ちに染めあげる2人の歌声や3人の演奏に向け、場内中から熱い手拍子が響き渡る。「きみが大好きだよ」という思いを、こんなにも力強く元気で前向きに伝えられたら、はしゃがずにいられない。2人の「きみが好き」の歌声がハモッた瞬間、ドキッとした。いや、心がもっともっとときめいていた。

後ノリの演奏に乗せ、胸の奥から思いを引き出し、じんわりと伝えるように、彼女たちは『蝉しぐれ』を歌い奏でていた。力強く前向きな、青春を覚える開放的な楽曲もきみとバンドの魅力だが、このブロックで響かせた、切ない乙女の心の本音を零す歌たちにも気持ちが寄り添い続ければ、いろんな物語を心のスクリーンに映しだしていた。改めて、森田理紗子には“泣き歌”が似合うなと実感。ほんと、ずーっとその歌声に引き寄せられていたよ。

MCでは、この日のライブに向けての思い。掲げた武道館へ向け改めて感じた気持ちを、大野真依が語りだす。「何でも受け入れて、何でも柔軟に対応していく、わたしのそこがいいよと言ってくれる人たちもいるけど、それが嫌だと思うときもあります。以前まで、明確な目標がなく、空っぽだったわたしにとって、応援してくれる人たちを、みんなを日本武道館へ連れてゆく明確な目標が、わたしのすべての原動力になっています。だからわたしは、みんなとの約束を守るためならなんだってするし、絶対に(ファンを含めた)このチームで日本武道館に立ちたいと思っています。みんなで日本武道館へ行きましょう

その言葉を合図に、きみとバンドは思いきりパワフルに『あの場所へ』を演奏。いつもはギターを手にして歌っている森田理紗子だが、この曲では楽器を下ろし、歌い手に専念。激しく駆けあがるように躍動する楽曲に乗せ、力の限り声を張り上げ、心にピン止めした思いを凛々しく、いや、きみとの約束を絶対に叶えるからと、強い意思を持って歌っていた。森田理紗子の歌う「オーオーオー」の声にあわせ、客席中からもたくさんの拳が突き上がる。身体を揺らし、パワフルな演奏を見せる清原梨央と大野真依。3人の強い意思が楽曲に反映。最後の「オーオーオー」の合唱も激アツだった。

きっとスタンディング会場だったら、フロア中の人たちが『恋のモンスター』の演奏にあわせ、飛び跳ねていたんだろうな。この日はその欲求を、場内中の人たちが力強い手拍子や振り上げた拳に込め、3人にぶつけていた。森田理紗子と清原梨央の歌声も力強く跳ねている。清原梨央に至っては、ピョンピョン飛び跳ねながらギターを演奏。大野真依のドラムも、音がひと際弾んでいた。 清原梨央の飛び跳ねる動きにあわせて、客席中で振り上がった拳が揺れれば、彼女たちと一緒に「オッオーオオオッオッー」と声を張り上げ、気持ちを一つに重ねあわせていた。

「浅草が大好きやけん」。森田理紗子の「浅草好きやけん」の歌声も印象的。『∞YAKEN』が始まった途端、場内中から弾む手拍子の音が響きだす。森田理紗子の「浅草好きやけん」の歌声に合わせてフロア中からたくさんの拳が突き上がる景色も、観ていて気持ちを熱く騒がせる。一体化した、この景色が素敵だ。唸りをあげた清原梨央のギターソロも胸アツだ。落ちサビで場内中に響いた熱い手拍子。この一体化した空気がめっちゃ好きやけん。

最後は、東京に訪れた春の季節を、この空間でもみんなと一緒に感じあおうと『春風問答』を演奏。舞台の上から優しく色づいた歌声の花びらが、客席の上を次々と舞い踊る。舞台の上には、3人に向けてたくさんの桜の花びらが降り注いでいた。観客たちの思いの熱風に吹かれるようにたくさんの花びらが、ライトに照らされキラキラと輝きながら3人に降り注がれていた。終盤、3人で顔を見合せて演奏する姿もキラキラ眩しく見えていた。

アンコールの最初に披露したのが、清原梨央がラッパーになった『東温ラブストーリー』。ビートにあわせ、彼女は明るく力強い声でラップをぶちかます。気持ちをラッパーに染めあげた清原梨央は、リズムに合わせて身体を揺さぶり、今のプライベートな自分の姿や感情も交えた思いの数々を、舞台の上を右に左に歩きながらラップしていた。サビを森田理紗子が歌うのだが、最初のサビでは、側に寄り添った清原梨央のラッパーとしての勢いに押され、一瞬、歌うタイミングを外してしまう場面も。この曲で清原梨央が見せる、パリピモードに染めあげ、テンションをアゲアゲにライムする、ノリノリの姿をぜひ味わってもらいたい。

最後にきみとバンドは、『rebirth』を演奏。清原梨央の歌声をリードに、森田理紗子が歌を掛け合い、ハモりながら、この空間に心温まる景色を作りあげていった。客席中の人たちも、掲げた手を左右に大きく振りながら、3人に思いのエールを届けていた。 熱情した物語の最後を、ほっこりとした温かい歌声と演奏でギュッと包んでくれたのも嬉しかった。改めて、きみに出会えたことに嬉しさとあったかい笑顔を感じていた。 またこの景色を楽しみたい。また、この空間で会おうな。

きみとバンドの全国ツアーが決定。これからの動きも楽しみになってきた。

TEXT:長澤智典
PHOTO:森本一誠、佐藤圭

《SET LIST》
  1. 1.きみとバンド
  2. 2.スタートライン
  3. 3.はなればなれ
  4. 4.amulet
  5. 5.rosemary
  6. 6.きみとふたり
  7. 7.オレンジ⾊の世界
  8. 8.スローモーション
  9. 9.レリビ☆
  10. 10.さよならリフレイン
  11. 11.シャボン玉
  12. 12.歌にのせて
  13. 13.きみが好き
  14. 14.蝉しぐれ
  15. 15.あの場所へ
  16. 16.恋のモンスター
  17. 17.∞YAKEN
  18. 18.春風問答
  19. -ENCORE-
  20. EN1.東温ラブストーリー
  21. EN2.rebirth

森田理紗子(Gt/Vo) 使用楽器・機材紹介

きみとバンド

インディーズガールズバンド史上初Zeppワンマン全国ツアー決定!

きみとバンド Zepp全国ツアー2025 開催決定!
2025/6/22(日)@ Zepp Fukuoka
2025/7/06(日)@ Zepp Osaka Bayside
2025/7/20(日)@ Zepp Nagoya
2025/8/03(日)@ Zepp Sapporo
2025/8/17(日)@ Zepp HANEDA(きみとバンド5th anniversary)
※チケット発売等詳細は今後公式X(旧Twitter)で発表される。
https://x.com/with48263996


ESP E-II Horizon Infinite MOGAMI
山野楽器Ginza Guitar Garden Digimart LOVEBITES
Ryoga Snare Weight DRUMSHOW
Dean Martin Ukulele Cannonball
Hofner Orange Valve Tester MkII Heritage
Orange Glenn Hughes MONO