2021.10.2@自由学園 明日館 ライブレポート
「いつもはライブハウスなんですけど、個人的に重要文化財や現代建築物が好きで、今回はここ自由学園 明日館でやらせていただいてます。ツアータイトルの“アトリエ”にちなんで、観葉植物やランプを置いてみたり。ステージは理想のアトリエにしてみました。私が曲を作っているお部屋に遊びに来たような感じで、羽根を伸ばしながらたっぷり楽しんでいってもらえたら嬉しいです」――MCで本ツアーのコンセプトをそう話した竹内アンナは、普段と趣の異なるシチュエーションの中、終始晴れやかなパフォーマンスを繰り広げ、集まったファンを大いに魅了してくれた。

竹内アンナの初となる弾き語りツアー『弾き語り TOUR 2021 atELIER -アトリエ-』は、先述したとおり建築物を巡るのが趣味である彼女のリクエストによって、東名阪の芸術の秋にふさわしい会場3ヵ所で開催。ここでは、東京・池袋の自由学園 明日館で行なわれた夜公演(東京のみ2部制)の模様をレポートする。
1921年の創立から今年で100周年を迎えた、国の重要文化財でもある自由学園 明日館。敷地の南側に建つ講堂は、ウェディング会場としても使われる、荘厳さを持ち合わせつつもなんとも心が落ち着く味わい深い空間で、開放的な高い天井、両脇と最後方に連なった外の様子が見える窓が目を惹く。チャペルベンチが並ぶ着席スペース、その上にいくつかのボールライトが配され、辺りを穏やかに照らしている。そして、木製の壁面を背にしたステージには、大きなラグマットが敷かれ、観葉植物やランプのほか、アコースティックギターにウッドシェルフ、アンティークチェア、サイドテーブルなどが揃い、まさに竹内が憧れるアトリエさながらのリラックスした仕様で彩られた。
そんな素敵なステージに、デビュー3周年を機に髪を金色に染めた竹内アンナが、秋らしいカラーのワンピースを纏って登場。「みなさん、こんばんは。『弾き語り TOUR 2021 atELIER -アトリエ-』へようこそ。今日は歌とギター、私とあなただけです」という挨拶に続いて、起き抜けの脳に寄り添う感じの『Sunny day』でライブがスタートした。のっけから彼女の歌声が、アコギの音が、由緒ある講堂の静けさと溶け合い、心地よい響きとなって建物内に染みわたっていく。挙式に出席しているような温かい見栄えの空間、一対一のプライベートな雰囲気の中、軽快なギターソロも交えた『ALRIGHT』、きりりとしたストロークでグルーヴが光る『Ordinary days』と、観客は席に着きながらも身体を揺らし、贅沢な弾き語りに酔いしれる。

「すっかり夜になりまして、いい雰囲気になってきました。ここ自由学園 明日館は、今年で創立100周年 だそうです。もともと小学校やったみたいで、だから窓が多いんですよね。お昼の公演では日差しがけっこう入ってきてたんですけども、夜はまたぜんぜん印象が変わって。私もステージから見ていてすごく楽しいです。座ってはるみなさんも、いつもと違ってちょっとドキドキしませんか? 初めての弾き語りツアーということでギターを3本持ってきたので、音の感じもぜひ聴き比べて観てください」
その言葉どおり、竹内アンナは敬愛するジョン・メイヤーモデルのギターなど3本のアコギを使い分け、たったひとりでも抜群のノリを生み出してみせる。サンプラーやルーパーを駆使したライブも得意な彼女だが、今回のツアーは原点である完全に歌とギターだけのネイキッドなパフォーマンスとなっていて、ボーカルの素晴らしさ、自由なタイム感、細やかなフレーズ、アグレッシブなギター奏法、コード展開の妙がダイレクトに味わえるのが嬉しい。シンプルなスタイルにもかかわらず、アッパー~ミドル~スローを自在に行き来し、TLCのカバー『No Scrubs』ではレイドバックなサウンドに鋭い高速ラップを重ねたりと、飛び道具がなくてもアプローチは驚くほど多彩。弾き語りだからこその縦横無尽ぶりが痛快だ。

『TOKYO NITE』でとりわけムーディーに、リバーブ深めに響いたアコギの音色は、自由学園 明日館の風情に一段とマッチしていて、そんなことを思っていたらステージ上のウッドシェルフに置かれたボトルランプまでが美しく灯り出す。『If you and I were,』へと続くこのメロウな流れにおいては、竹内独特の吐息混じりの歌唱が冴え、フェイクをふんだんに効かせるなど、よりソウルフルに進化しつつある彼女のボーカルが際立っていた。『Love Your Love』の《信じた「好き」はちゃんと本物だから 大丈夫》《誰かの「好き」をあなたも否定したりはしないでね》。そのメッセージもアコースティックゆえか、いつも以上にやさしく柔らかく耳に残る。日が沈んで窓の外が暗くなるにつれて、曲後の静かな場内に沸き起こる拍手がどんどん大きくなっていくのも気持ちいい。

中盤のMCでは、この弾き語りツアーがもともとは予定になく、自分のリクエストを汲んでもらって実現したと明かす竹内。そのうえで「でも、私がやりたいと思ってるだけじゃ叶わないことで。やっぱり、聴きたいと言ってくれる人たちがいるからです。こうして今日ここに集まってくれたみんながいたおかげで回れました。本当にありがとうございます!」とあらためて感謝を伝えた。
その後も、裏打ちのリズムを活かしてブルージーに爪弾くアレンジで魅せた『I My Me Myself』、ラテン風味を織り交ぜて歯切れよく聴かせた『+imagination』と、原曲に新たな色を加えると同時に、揺るぎない芯の強さが見えてくる演奏は、「THE FIRST TAKE」のようなスリルに満ちていて、それ以上にワクワクさせられるものだった。自由学園 明日館という特別な会場に対し、《人と違うことしたい?》《自分次第なんじゃない!?》と清々しく歌う『Free! Free! Free!』がまたハマる。そして、最新曲の『ICE CREAM.』も終盤で披露され、キュートな歌詞とメロディに思わずうっとり浸るオーディエンス。ちなみに、この日は気温30℃近い残暑日となり、そんな状況が重なる中で『ICE CREAM.』を堪能できたのも格別であった。

現在、次のアルバム作りを絶賛行なっているとサプライズ発表もした竹内アンナ。「今日がみんなにとって特別な非日常であったら嬉しいなという想いを込めて」と、少しテンポを落とした『RIDE ON WEEKEND』で本編ラストを奥ゆかしく締め、アンコールは再び日常へとやさしく送り出してくれるような『ペチュニアの花』『TEL me』をプレイ。終演後には手ごたえを得た充実の表情を浮かべ、大盛況のうちにステージを降りた。次のワンマンはニューアルバムを携えたライブだろうか。その日が来るのを楽しみに待ちたい。
取材・文:田山雄士
Photo by Mai Komatsu
※本記事の掲載写真は大阪市中央公会堂公演のものです。
《SET LIST》
- 1.Sunny day
- 2.ALRIGHT
- 3.Ordinary days
- 4.20 -TWENTY-
- 5.No Scrubs (TLC Cover)
- 6.SUNKISSed GIRL~Midnight Step
- 7.TOKYO NITE
- 8.If you and I were,
- 9.Love Your Love
- 10.I My Me Myself
- 11.+imagination
- 12.Free! Free! Free!
- 13.ICE CREAM.
- 14.RIDE ON WEEKEND
- <ENCORE>
- 1.ペチュニアの花
- 2.TEL me
竹内アンナ
《ライブ情報》
ACOUSTIC LIVE -atELIER-
2025年3月29日(土) ヒューリックホール東京
開場16:00 / 開演17:00
ゲスト:幹葉(スピラ・スピカ) / 竹内朱莉 / 佐藤まりあ(フィロソフィーのダンス)
<チケット>
at TENDERチケット:8,000円 (終演後に竹内アンナの生歌演奏+お見送り)
指定席一般:6,500円
指定席学割:5,000円
ファンクラブ先行受付中 https://smam.jp/s/sma01/artist/2103
一般発売日 2025年2月15日(土)
問 HOT STUFF 050-5211-6077